ZUNNNNNNNNNNN……

突然に発射されたドススパーク。
当然何匹かのゆっくりは巻き添えとなり粉々になった。
生き残ったゆっくり達はゆっくりと目を開ける。
「ゆう~……」
そして砂煙がはれる
「どす!!」
「ゆ!」
ドスも視界がはっきりした。
そしてそこには……
膝を突いてうなだれる人間の姿があった。
しかも槍を持っていた手が半分なくなっていた。
「ゆ、ゆ、ゆ……ゆうううううううううううう!!!」
ドスは雄たけびを上げた。
「ゆ? かったの?」
「ゆ~? まりさたちのかち!?」
「そうだよ! みんなの勝ちだよ!!」
「「「「「ゆゆ~~~ん!!!!!」」」」」
ドスの勝利宣言に群れが一気に沸き立つ。
「ばかなにんげんがしんだね! ざまあみろだね!!」
「ゆっへっへ! やっぱりまりささまにかなうはずなかったんだぜ!」
「しょせんいなかものね! おお、ぶざまぶざま」
「わかるよ~はいぼくしゃなんだね~」
「ほーーーーーーーーけーーーーーーーーー!!」
普通ゆっくり達は彼に群がり体当たりを始めた。
一方巨大ゆっくり達は、群れの被害を確かめたり、ドスの元に駆け寄り気遣ったりしていた。
「ゆぅ……どす、だいじょうぶ?」
「大丈夫だよ。もう、ドスパークは撃てなくなっちゃたけどね……」
「どす、まりさのたいはぜんめつしちゃったよ」
「ありすのたいもよ……」
「ゆぅぅぅ……また群れを頑張って作り直さないとね……」
たった一人の人間にこれだけの被害。
ドスは考えを改めようとしていた。
「みんなゆっくり聞いてね……これだけの生き残りじゃ、とても人間の村に攻める事なんてできないとおもうよ。
だから……一旦山に戻って体制を立て直そうと思うんだ」
「……わかるよー。ちぇんもそうおもうよー」
「ゆうぅぅ……れいむももうつかれたよ……やまでゆっくりしたいよ……」
「なかまがたくさんしぬたたかいなんて、やっぱりとかいはじゃないわ……」
「……れいむのいってたことを、まもっていればよかったんだぜ……」
「ゆ……」
広場の隅に体の一部とリボンを残して転がっている養育係巨大れいむ。
一人で戦いに反対し続け、最後は子供達の敵をとるために挑み散っていった。
もしかしたら……この群れで一番強かったのは巨大れいむだったのかもしれない……。
ドスや巨大ゆっくり達は思った。
自分達はただ体が大きくなった事に慢心して、ゆっくりとして本当に大事な事を忘れていたのかもしれないと。
「そうだね……」
ドスも自分の間違いを認めた。
「ゆ、みんながなっとくしてくれるかな……」
「ゆん。大丈夫だよゆっくり説得すればみんな理解してくれるよ!」
巨大ゆっくり達はつき物が落ちたかのように、ゆっくりとした顔をしていた。
もう戦いは終わり。
これからは山の中で平和に暮らしていこう。
そう決心したのだ。
できれば人間とも仲直りしたい。
犯した罪は償わねばならないだろうが、自分はそれを甘んじて受けよう。
例え命を失うことになろうとも……。
ドスはひそかにそう決心していた。

一方、普通ゆっくり達はまだ彼に対して、体当たりをしたり罵声を浴びせたりしていた。
「ゆっくりしね! ゆっくりしね!」
「まりささまにひざまづくんだぜ!」
「ゆん! ゆん! れいむのかたきー!」
「ゆゆ~ん♪ しーしーひっかけてやる~♪」

グシャ

「ゆ?」
握り締められた左こぶしの下で、しーしーをひっかけようとした普通れいむが潰れていた。
そして上に載っていた普通まりさを掴むと、そのまま地面にたたきつけた。
「ゆぎゅ!?」
「「「「「「……」」」」」」
沈黙。
立ち上がる。
「ゆ、ゆ、ゆ、ゆ……」
恐怖でガタガタと震える普通まりさ。
彼の右手は肘から先がなくなっていた。
持っていた槍もない。
残った左手を仮面に添える。
ガコッ、という音がして仮面が外れる。
シュー、という空気が漏れる音。
その仮面の下から現われたのは―――
「「「「「「「!?!?!?!?!?」」」」」」」
人間ではなかった。
四本の牙。
醜く盛り上がった顔。
その中に蠢く血走った目。
人間とは似ても似つかない顔がそこにあった。

オオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォ!

咆哮。
それこそ世界の果てまで届くのではないかと思うほどの。
森の動物はおびえて巣の中に飛び込む。
魚達は池から飛び跳ねる。
鳥達は地面に落ちる。
虫達は大群をなして逃げる。
博霊神社の巫女は箒を止め目を向け。
箒に乗っていた魔法使いはバランスを崩し。
メイド長は抱えていたれみりゃを落とし。
月の兎は竹林の中で足を止め。
寺子屋の教師は本を読むのを止めた。
花畑の妖怪は向日葵のざわつきに目を開き。
寝ていたスキマ妖怪は五月蝿そうに寝返りをうった。
そしてゆっくりたちは……固まった。
野生動物は絶対的絶望に出くわすと体が完全に硬直するという―――

グシャッ

足元にいた普通まりさを潰した瞬間、すべてが動き始めた。
「ゆぎゃ! ゆぎゃ! ゆぎゃあ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”!!!」
「よ”う”がい”ざん”だぁぁぁーーーだずげでえぇぇぇぇ!!!」
「ゆ“っぐり”でぎな“びぃ”ぃ“ぃ”も“う”い“や”だあ”あ”あ“あ”あ“!!」
巨大ゆっくりやドスも恐怖で声をあげた。
そこにはもう、純然たる恐怖しかない。
彼は意味を成す言葉は一切発してはいない。
だが、ゆっくり達は悟った。
殺されると。
自分達は殺される。
ここから逃げないと殺される。
しかし、彼には一匹も逃がす気がないということ。
絶望というものを叩きつけられたのであった。
「だずげでどずぅぅぅぅ!!!」
「じにだぐな“いぃぃぃぃじにだぐな”い”よ”お”お”お”お”お”!!!」
「ゆ”あぁぁぁぁぁーーーーーーー」
「がえ”じでよ”お”お”お”お”ぉぉぉぉぉも”り“に”がえ“じでよ”お”お”お”お”ぉぉぉぉ」
「ゆゆゆゆゆゆゆゆ、ゆっ、っくり……し、しないで……にげ……」

ザグッ

「ゆぎゃあああああああああああああ」
「どす!?」
ドスの目に何かが突き刺さったた。
それは彼が投げつけたもので、外周部に鋭い刃が取り付けてあるリングブレードだった
「ま”り”ざ“の”目“があ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”ぁぁぁ」
「どすうぅぅぅ!?」
さらに

シュバッ バサァ

「ゆっがああああ……ゆ“ゆ”!?!? どぼじでう”ごげな“い”のおおおおおお!?!?」
彼の左手の装置から網が発射された。
それは昨夜ゆっくり達を絞め殺したものだった。
今回はドスを包み込むとそのまま絡まり、ドスの動きを止めてしまった。
「う“ごげな”い“よ”お“お”お“お”お“お”ぉぉぉぉ!!」
「ゆっくりまってね! いまゆっくりたすけるからね!!」
「ゆっくりしないでねえぇぇぇぇl!!」
巨大ゆっくりたちはドスを救出しようと躍起だった。
だが、普通ゆっくりたちはそんな彼らを見捨てて逃げ出している。
「ゆ! むのうなどすはそこでゆっくりしんでね!」
「どすについてきたけっかがこれだよ! しんだみんなにわびいれてゆっくりしね!」
「おっきいこたちもどうざいだわ! そこでゆっくりしになさい!」
「おちびちゃんたちがしんだのもどすのせいだよ! どすがかわりにしねばよかったよ!」
「「「「「どぼじでぞ”ん“ごどい”うの“お”お“お”お“おぉぉぉぉぉ!?!?」」」」
いちいち恨み言を言って行くのも忘れない普通ゆっくり共。
一方彼はショルダーキャノンに手を伸ばし、付いていたボタンを押した。
すると、森の木に仕掛けられていた『黒いモノ』の表面が赤く光りだした。
それはゆっくりが村に入るとき、参謀巨大ぱちゅりーが気がついていたものだ。
よく見ると村の入り口の杭や、民家の壁にも取り付けられていた。

そして、普通ゆっくりがほとんどいなくなった時、ドスの近くにいた巨大まりさが逃げ出した。
「ゆ! まりさはゆっくりしないでにげるんだぜ! ドスはしっかりおとりになるんだぜ!」
「わからないよー! こわいよー!」
「もうやだ! おうちかえる!!」
それにつられるかのように他の巨大ゆっくり達も逃走を始めた。
「なんでぞんな“ごどい”う“の”ぉぉぉ!! お“い”でい“がな”い“でえ”え“え”ぇぇぇ!!!」
ドスも声を上げるが涙声のため全く威厳がない。
そんな情けない声を巨大ゆっくり達は全く聞かない。
結局ドスは動けないまま一人取り残された。

「ゆっゆっゆ!! もう少しで森なんだぜ!」
逃げ出した巨大ゆっくりまりさ。
大きい分他のゆっくりより進むスピードが速かったのだ。
まりさはドスの言葉に従って今までやってきたがもううんざりだった。
なりたくもない、隊のリーダーをさせられ、普通の大きさしかないゆっくり達の世話を焼く日々。
なんでおっきいまりささまがちびゆっくりのめんどうをみなきゃならないんだぜ!
まりささまはおっきくてとくべつなゆっくりだ
だからほかのちびどもはまりささまをゆっくりさせる“ぎむ”があるんだぜ!
しかしドスの目が怖く、その思いをひたすら隠して生きてきた。
だがもうそんなことはやめだ!
群れをでて自分だけのゆっくりプレイスを見つけに行こう。
そしてそこで自分の群れを作り思う存分ゆっくりする。
他のゆっくりたちは奴隷だ。
自分だけの群れ。
自分のためのゆっくりプレイス。
そのためにはまずこの村からでて―――バシュン ビシャア

まりさの体が突然はぜた。
まりさは痛みを感じるまもなくただの爆ぜた饅頭となった。
原因は杭に取り付けられた装置。
そこから光弾が発射されたのだ。
その正体はセントリーガン(動体感知器付き弾幕発射装置)だった。
動くものに反応し弾幕を発射する優れものだ。
続いて後続のゆっくり達が続々とやってくる。
結果は同じだった。
「ゆっくりしないでにげるよ! ゆっくりしないゆびゃあ!!!」
「ゆ? れいむがいなくなっゆべびょぼ!?」
「どぼじでぶだり“がい”な”ぐな”でる“のべぼっ!!」
「ゆびゃあ“あ”あ“あ”あ“あ”ぁぁぁぁぁゆ”っぐり”ざぜでえ“え”え“え”え“」
「も“う”い“や”だ! お”う”ち”がえ”ぶぅぅ~~!!」
「わ”がら”ない“よ”お“お”お“ぉぉぉぉ!?」
次々と爆ぜた饅頭となって行くゆっくり達。
セントリーガンは動くものに反応する。
狙われたくなければ動かなければいい。
だが森に帰るには動かなければならない。
すでにゆっくり達の命運は尽きていた。
森に行けないと判断し村に戻っても、村の中にあるセントリーガンで撃たれる。
あるゆっくり達はドスのいるところまで逃げてきたが、それでもセントリーガンから逃れる事は出来なかった。
ドスは目の前で群れのゆっくりが爆ぜるのを見ているしか出来なかった。
「ゆ”う”う”う“う”う“……」
「どぼじでごん“なごどに”ぃぃぃぃぃ……」
「どず……どぼじでだずげでぐでな”い”の”ぉぉぉぉ」
「どずがに“ん”げん“を”だお“ずな”ん“でい”だっだがら“だぁぁぁ」
「な“ん”でどずばう”だれ“でな”い“ん”だあ“あ”あ“ぁぁぁぁ!!」
「う“ら”ぎり“も”の“ぉぉぉぉぉ!!」
「(ち、違うよ! 裏切ってないよ! それに助けたくても動けないんだよ!)」
ドスは現在ワイヤーネットに包まれており動けないし、口を動かせない状態にあった。
だがそのおかげでセントリーガンの狙いから外れていたのだ。
「う“ら”ぎり“も”の“の”どずは“ゆ”っぐり”じね“ぇぇぇぇぇ!!」
「じね“ぇぇぇぇぇ……」
「じね”ぇぇぇぇぇ」
「「「「「じねええええええええ!!!」」」」」
「(ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい)」
ドスは目を瞑りつつひたすら謝った。
そして怨嗟の声を受け続けた。
そして―――
「(ゆっ……?)」
何も音が聞こえない。
ドスはゆっくりと目を開いた。
目に飛び込んできたのは―――死に絶えた群れのゆっくり達だった。
もうどこにも動くゆっくりはいなかった。
ただただ、物言わぬ死体が転がっているだけ。
「ぁ“ぁ”ぁ“ぁ”ぁ“!!!」
ドスは声にならないうめき声をあげた。
無能な自分のせいで。
力ない自分のせいで。
群れのみんなが死んでしまった。
もういやだ。
自分もこのまま殺されよう。
ドスはいつの間にか目の前に立っていた彼に目を向ける。
既にセントリーガンの自動探知は切られており、自由に移動できるようになっていた。
「(妖怪さん……まりさを早く殺してね……早くみんなの所にって謝らないといけないから……)」
彼は腰につけていたもう一個のリングブレードを手に取り―――ドスの網を切り裂いた。
「ゆ?」
ドスはまさかの展開に驚いた。
「ど、どういうこと……?」
ドスは恐る恐る彼に尋ねた。
彼はリングブレードを地面に投げ捨てた。
そして―――
ドスを思い切り蹴り上げた。
「ゆびぃぃぃ!?」
突然の衝撃に悲鳴を上げるドス。
三メートル以上あるドスの巨体が宙に浮く。
その浮いたところに鋭い回し蹴りが炸裂。
「ゆぎょっ!!」
ドスは勢いよく後方に吹っ飛ばされ地面を転がった。
体があまりに勢いよく吹っ飛んだので、頭の帽子はその場にパサリと落ちた。
ドスにとってすべてが初めての経験。
この体になってからというもの、体の皮が厚くなり中身も増えた事から外からのダメージにはある程度の耐性があった。
特に打撃に関しては並みの攻撃なぞドスには無意味である。
だが、彼の攻撃は違う。
人間の腕力を軽く凌駕しているそれは、人間が喰らえば骨が砕かれ、下手すれば一撃で死に至らしめる。
ドスにとってもそれは同じだった。
さすがに死には至らないものの、今までに受けたこともない程の衝撃にドスはのた打ち回った。
「い“、い”だい”い“い”い“い”ぃぃぃぃぃ!! 
どぼじでごん”な”に”い”だい“の”お“お”お“お”お“ぉぉぉぉ!?!?」
彼が再び近づいてくる。
足が振りかぶられた。
「ひっ!」

ドッガァァァ

「ゆぎゃぎゃぎゃぎゃぁぁぁぁぁ!!」
ドスはゴロゴロと転がり村の入り口までいってしまった。
「も“……も”う”い”や”だあ”あ”あ”あ”ぁぁぁ……だずげでぇぇぇぇぇ」
ドスは入り口からむらの外に出ようとするが

シュバッ ドーン

「ゆびゃああああああああ!?」
ドスの目の前にショルダーキャノンの弾が炸裂し、ドスは逃げる事ができなかった。
彼は再びドスの近くに立った。
「ど、どううじでごんなごどずるのぉぉぉぉ!!?!?」
目の幅と同じ涙を流しつつドスは叫ぶ。
その言葉がわかったのか、彼は飛び上がると失った右腕の肘でドスの頭頂部を穿った。
「ゆ“ぼぉ!!」
頭頂部に大きな凹みができる。
「ゆがっ! ゆがっ! ゆがっ!」
ドスは痛みに苦しみながらもその理由を知った。

―――そこからはただただ一方的だった。

ありとあらゆる方向からの打撃。
彼は決して武器を使わなかった。
それに動きを拘束もしていない。
ある意味、ドスも抵抗すれば生き残るチャンスはあったのかもしれない。
曲がりなりにも三メートルを越す巨大な体躯。
飛び上がって潰せば彼でも相当なダメージを負ったかもしれない。
だが、群れの仲間を失い、先の咆哮で戦意をそがれたドスは抵抗する事を放棄した。
一時は殺されて楽なりたいと思ったが、与えられる痛みによって生存本能が強くなった。
その結果、ただただ、
『逃げたい』『生きたい』『助かりたい』
そのための行動さえもしないのに、ドスはその願望にすがり続けた。
攻撃によって餡子が漏れ出し。
足も破壊され動けなくなり。
痛みだけで満たされた全身をのた打ち回らせ。
ドスは村の中を転がり続けた。
そして

ドサ

「ゅ“……ゅ”……ゅ“……」
ドスは小さくうめき声を上げるのみ。
ドスの体は、蹴られた衝撃で外の皮が薄くやわらかくなり、所々破れたり、伸びきっていたりして
、三メートルあった高さが半分ほどにまでになっていた。
彼はいまだドスの目に刺さっていたリングブレードを引き抜く。
それさえドスは反応しなくなっていた。
いまや二メートル近くある彼がドスを見下ろす形だ。
そしてドスの体を踏みつけ、リングブレードを振り下ろした―――



「な、なんだこりゃ……」
後日、村の様子を見に来た人間達は異様な光景に目を見張った。
ゆっくり達が建てた杭の上や村の木々にゆっくりの皮がぶら下げられていた。
広場にはドスのものと思われる皮が、大きく広げられる形で杭に打ち付けられていた。
同時に、ゆっくりのものと思われる餡子が村の広場に高々と積まれていた。
人間達は気味悪がり、やがてこの地を去っていった。
誰もいなくなった廃村。
ゆっくりがいなくなった森。
何者にも介入される事がなくなった大自然の営みだけがその地に残った。





地面から小さな植物の芽が出たところで画面は暗転した。
続いて黒い画面に流れるスタッフロール
「どうだ? いいできだろ?」
「ど、どういうこと?」
暗い部屋に男とドスまりさが居た。
このドスまりさは村で『彼』によって死んだはずのドスだ。
「わからないか? つまり、全部映画だったんだよ」
「え、えいが?」
「これだ」
男は肩に抱えらるほどの大きさの、黒い箱のようなものを持ってた。
「外の世界から流れてきたものらしい。これにはその時の光景を記録する働きがある。
さらには特定の場所を拡大して写したり、小さくして写すこともできる」
そこから男はどういう経緯で映画を撮ることになったか説明しだした。
それを手に入れた男は周りの人間や河童、さらには河童を通じて妖怪の協力を得た。
そしてあの村を大きな『セット』としてつくり、下準備としてそこに居たゆっくり達を殺した。
続いて冒頭で出演したうーぱっくに、永遠亭印の成長促進薬(丸薬)を落とさせた(冒頭のうーぱっくの動作は演技)。
次に森のゆっくり達の動向を探るため、光学迷彩で姿を消したカメラマンが常にその様子を追う。
それによって例のゆっくり達の決起集会をとらえることに成功。
あとは見ての通りだ。
村にいたのは映画のために雇ったスタントマン達で、あらかじめ逃げる手はずで村を明け渡す。
その後の人間の攻撃もゆっくり達が人間を倒しているという『演出』のための狂言。
「まあ、お前達はよくできた道具だったよ。おかげでいい絵が取れた」
「……道具?」
ドスは放心した様子でそうつぶやいた。
「そうそう。映画をよくするための『生きた道具』。ほんっと、思い通りに動いてくれたとよ。
あんな反戦派れいむまで出てくるとはね~。あのちびゆっくり達絡みの演出なんて素晴しいだろ。
ちょっとしたお涙ちょうだいだよな !いや~よくやってくれたよ、ド~ス!」
男はドスの頭をポンポン叩いた。
その頭には帽子はなく、体はあの痛めつけられた時と同じくボコボコだった。
「ち、違うよ……」
「ん?」
「ドスだぢは!……群れ“の”み“ん”な“ば……道具な”ん“がじゃな”い“よ”おおおぉぉぉぉぉ!!!」
ドスは泣きながら叫んだ。
「ぞれ“に”お“兄ざん“が言っ“て”る“ごども”全部嘘だ! ドズだぢばみ”ん“な”で決め”で人間を“攻め“だん”だ! 
ぞれ“が全部人間の”考“え”だ事だっだな”ん“て”嘘だぁぁぁぁぁ!!」
そうでなければすべてが無駄になる。
死んだ仲間の意思はすべて虚言だったことになる。
ドスは認めるわけにはいかなかった。
「ハァ……惨めだな。まあいい、これをみろ」
男が部屋を明るくした。
そして、映像を映し出していたモニターの横に居たのは。
「ゆ”ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああ」
ドスの絶叫が響いた。
そこに居たのは『彼』だった。
仮面を外した、素顔をさらした状態でそこにいた。
「ごな”い”でえええぇぇぇぇ!! ゆ“っぐり”じな“い”であ“っち”に“いでぐだざいいいいいいいいぃぃぃぃ!!」
体に刻み込まれた痛みと恐怖を思い出し、ドスは半狂乱状態になった。
「ははは、あまりびびらすなよ!」
「あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”……ぁ……?」
フレンドリーに『彼』に近寄っていく男。
「ぐぉぉぉぉぉ」
うなり声を上げる『彼』。
「それ外せよ。ちゃんと話せないだろ?」
「ぉぉぉぉ……」
『彼』は頭の後ろに手を回した。
そして何かを掴むと下に降ろし……その顔を外した。
「むせるーーー!!」
「ご苦労さん」
「ああ……久しぶりにこれ着たなあ」
「おう。どうだった?」
「いやあ~思うけど、よくできてるよな~これ」
「ど、どう”い“う”ごど“お”お“お”お“お”ぉぉぉ!?!?」
「だから言ってんだろ。映画だって」
『彼』が説明を始める。
彼の名前は『鬼井山郎』。
男の友人であり、とある道場の師範。
今回、男の依頼を受け映画に出演。
アクション全体を請け負ったという。
「ちなみにこれは服みたいな感じでな、後ろのつまみを下げると脱げるんだ。何でも……なんていったけ? これ?」
鬼井三郎が男に尋ねる。
「ん? 外の映画の……あ~……わすれた。なんでも人間と……宇宙人って奴が戦う映画の宇宙人だ」
「そうそう。それを観た河童が装備品とか全部見よう見真似で作ったんだ。威力も近い設定で。
しかも身体能力上げる結界付き。ゆっくり相手にやりすぎだよな~」
「いやあアレでよかったと思うぞ。千匹超えるゆっくりを全部倒すんだから、派手に行かないとつまらんだろ?」
「まあな。でもドススパークは少しあせったな」
「馬鹿言え。ドススパーク用結界張ってたくせに。吹っ飛んだ腕は『あえて』張ってなかっただけだろ」
「そうだけどさぁ。腕をスーツの中に折り曲げたままだったからな、少し血流悪くなったぞ」 
二人はそんな話をずっと続けていた。
一方のドスは……
「うぞだうぞだうぞだうぞだうぞだうぞだうぞだうぞだうぞだうぞだうぞだうぞだ」
虚ろになった視点で、ひたすらそう呟いていた。

スタッフロールが終わった画面には一つの文字が書いてあった。

『―――to continue…?』




「あとがき」
最後まで読んでくださり。ありがとうございます。
途中で最後まで飛ばした方も、目に止めていただきありがとうございます。
自分がゆっくり虐待で重要なのはゆっくりの『悲鳴』なんじゃないかと
勝手に思っています。
そこを上手く書く方法を今後は模索していきたいと思います。
ちなみに何故こんなものを書くに至ったかというと……
『ゆっくりをひたすら虐殺してみたかったから』です。
でも、途中からどんどん肉付けされてって……気づけばこんなに長く……。
それでは失礼いたします。
お付き合いくださいましてありがとうございました。

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最終更新:2022年05月03日 21:16