家に帰る途中で、四匹のゆっくりが一匹のゆっくりを囲んでいるのを見つけた。
囲んでいる側は体当たりをしている。笑っているようなので楽しんでやっているようだ。
基本的にゆっくりは仲間意識が強い。
飢えれば子供を食うし、髪飾りをなくせば仲間から殺されるが、意味もなく同じゆっくりに攻撃するのは珍しい。
興味を持った俺は饅頭共に気づかれないよう静かに近づき、どんなゆっくりがいるのかを確認する。

体当たりをしているのはれいむにまりさ、そして争い事に滅多に関わらない病弱なぱちゅりーとゆっくりレイパーのアリスだ。
そして、囲まれているゆっくりは星形マークの入った緑色の帽子に赤い髪… 見たことのないゆっくりだ。

大きさはどれもソフトボール程、同じ大きさの四匹から体当たりを受けているあれは皮はまだ破けずに体が汚れているだけ。
同じ大きさのゆっくり四匹に囲まれているのに、いまだに皮が破れていないのは凄い。
それとも相手が痛めつけるのを目的に手加減でもしているのだろうか?

とりあえず一気に近づいて、四匹から髪飾りを奪い取る。
こうすれば逃げないので俺はゆっくり話ができる。向こうはとてもゆっくりなんてできないけどね。

「おじさんなにするの!」
「まりさのぼうしをいそいでゆっくりかえすんだぜ!」
「むぎゅぅぅぅぅぅぅ!」
「ぼうしをうばうなんてほんとうにいなかものね!とかいはのありすにあやまってね!」

案の定騒ぎだすゆっくり達。これがないと大変な事になると本能で理解しているから必死である。

「ごめんごめん、ちょっと君達から話を聞きたくてね。ちゃんと話が終わったら帽子は返すからね」
「そんなのしらないよ!」
「ぼうしをかえさないおじさんはゆっくりしね!」
「ばかとはなしてもじかんのむだよ!」
「いなかものはさっさとぼうしをかえしてどっかいってね!」
「ちゃんと話してくれたらお菓子をいっぱいあげるから駄目かな?」
「「「「ゆっ!?」」」」
「ほんとうにおかしをくれるの!?」
「おかしほしいんだぜ!」
「ついでにほんもほしいわ!」
「しょ、しょうがないからきいてあげるわよ!」
「いいかな?」
「「「「ゆっくりしつもんしてね!」」」」
「うん、ありがとう。じゃあ早速だけど、君達はなんでその子を虐めてたのかな?」
「これのこと?」
俺が指さしたゆっくりをれいむが踏んづける。踏まれている奴は怖いのか、先程からずっと目を閉じて震えている。
「こいつはクズだからいじめていいんだぜ!」
「クズって… 君達と同じゆっくりじゃないか」
「こんなクズととかいはのありすをいっしょにしないでね!ありすのまむまむにまったくかんじないふかんしょうのやつといっしょにされるなんてふゆかいだわ!」
黙れよレイパー。
「ばかなおじさんのためにせつめいしてあげるわ。それはめーりんていってね、からだがじょうぶなだけのやくたたずよ」
「役立たず?」
「しゃべれないしいっつもねてばかりいるんだよ!」
「まりさがみつけたやさいをたべようとしたらじゃましてくるいやなやつなんだぜ!」
「かわがじょうぶだかられみりゃにもたべられないからおとりにさいてきなのよ!」
「ま、かこうじょうにすらみすてられてるからそれだけでくずってよくわかるわ」
「加工場にねえ…」

加工場は捕獲及び持ち込まれたゆっくりを研究し、様々なゆっくり関連の商品を作っている。
最近では数が足りないのでゆっくりの養殖までしているようだ。
とりあえずそれが本当かどうかを確かめる為に、れいむに踏まれているめーりんを帽子を持っていない左手で抱き抱えた。

「おじさんそんなのどうするの!」
「はやくぼうしとおかしをもらいたいんだぜ!」
「とりあえず加工場にすら見捨てられたっていうのが気になってね。こいつを連れていこうと思うんだ」
「そんなことしてもむだなだけよ!」
「いなかものはじかんをむだにするのがすきなのね」
「ま、すぐ終わるさ。君達も一緒にくるといい。これを連れていったら帽子を返してお菓子をあげるよ」

加工場の名前を出したらついてこないと思ったのだが、帽子の為かすぐに四匹は一緒に来ると言った。

加工場への道中は、わりと大変だった。
体の弱いぱちゅりーは普通に歩く速度だとついてこれず合わせねばいかなかった。
それでも何度か中身のクリームを吐き出し、大丈夫かと聞くとその度に「自分は馬鹿で体が丈夫なめーりんと違って頭がいいから仕方がない」と言い訳をした。
れいむとまりさは足にまとわりつき、ニヤケ顔で「「かこうじょう!かこうじょう!」」と連呼していた。こいつを怯えさせたいのだろう。
そしてありすだが、こいつは自分がどれ程素晴らしいのかを語っていた。
自分の子供を授かる事のできたゆっくりは幸せだの、どれだけ素晴らしいテクニックを持っているのか見せてやりたいなど。
そしてそのテクニックで感じないめーりんは不感症のクズだと何度も言っていた。
そして、左手に収まるこいつは何度か暴れた。叩かれようがつねられようが、何度も何度も。
それは周りにいる四匹に対して、付いてこないでと伝えてるように思えた。
もしかしたら俺の狙いに気づいているのかもしれない…


ぱちゅりーに合わせた為に予定よりも時間がかかったが、漸く加工場に着いた。

「これでクズとおわかれだね!」
「でもクズだからすぐおいだされるんだぜ!」
「そうしたらまたわたしたちのあそびどうぐにすればいいのよ!」
「それでしかやくにたたないからしかたないわね!」

そう言いながらゆっくり達は楽しそうに笑った。
俺は職員に指定された場所に髪飾りを置き、声をかける。

「ここに髪飾りは置いとくから自由に取ってな。お菓子を今持ってくるから」
「わかったよおじさん!」
「はやくおかしをよこすんだぜ!」
「ほんももってきてね!」
「とかいはのありすにふさわしいおかしをもってきてね!」

四匹がちゃんと入ったのを確認して、加工場の職員と一緒に檻を閉めた。

「「「「ゆ!?」」」」
「おじさんなんでしめるの!?」
「ゆっくりだすんだぜ!?」
「おかしは!?ほんは!?」
「いなかもののくせにだましたの!?」

すぐに騒がしくなるゆっくり達。これでやっと俺の苦労も報われる…

「はい、そうです。俺は君達を騙しましたよ」
「なんでそんなことするの!」
「なんでって、良いじゃないか。君達は加工場に引き取ってもらえるクズじゃない優秀なゆっくりなんだろう?ならこうやって役に立てよ」
「い゛や゛だよ゛ぉぉぉぉぉ!!」
「ごっがら゛だじでぇぇぇぇ!!」
「嫌です。諦めて死ぬまで加工場で暮らしてね~」
抱えてるめーりんは悲しそうに檻の中の四匹を見つめている。あいつらに虐められてたというのに、優しい奴だ…

「わかったわ!めーりんがぜんぶわるいのよ!」

はい?

「めーりんがわたしたちをわなにはめたのよ!」

目の前で展開される超理論。俺は何も言えずに黙って聞くしかなかった。

「ほんとうにしょうねのくさったやつだぜ!」
「わなにはめたクズめーりんはしね!」
「このゆっくりのかざかみにもおけないクズ!」
「ゆっくりのたれじんでね!!」

ひたすら続く罵詈雑言に、こいつは泣いていた。
声を出せないから、必死に行動で逃げるように伝えていたのに…
俺に叩かれつねられ、痛い目にあってもこいつらを逃げるように伝える為に暴れた。
何度も何度も、暴れる度に痛い目にあい、四匹に悪あがきと笑われ、それでもこいつは危ないから付いて来るなと伝える為に暴れたのだ。
そして、今は責められている。
助けようとしたこいつに、あいつらは全てこいつが悪いと言っている。
だから、俺は…

檻を蹴り飛ばした。

中にいたこいつらにとっては恐ろしかっただろう。
逃げ場のない檻で、何度も何度も蹴られる。
振動、音、全てが恐怖を伝える。
「や゛め゛でぇぇぇぇ!」と叫ぶ声も聞こえた。
「だずげでぇぇぇぇぇ!」と叫ぶ声もちゃんと聞こえた。
それでも止めない。ずっと、ずっと、俺は蹴り続けた。
やめたのはこいつらが中身を吐き出し、気絶してからだ。

近くにいた加工場の職員に謝ると、気にしなくていいと言ってくれた。
めーりん種と他のゆっくりを連れてくる人間は大抵同じことをするらしい。
そして、抱えていためーりんは… 眠っていた。
先程れいむが言っていたよく眠るというのは本当らしい…
なんでこいつの為に怒ったのか馬鹿馬鹿しくなったが、起こすのもあれなのでそのまま寝させておく。
そして、加工場の職員にこいつについて簡単な特徴をいくつか聞いた。

喋れない代わりにゆっくりとは思えない程知能が発達しているとの事。
やってはいけない事をちゃんと教えさえすればちゃんと守るらしい。
また、人間の畑から野菜を盗もうとするゆっくりを邪魔をしたりする事もある。
その事からゆっくり業界からはブリーダー泣かせという異名があるらしいが、
それ程数がいないため飼っている人間は極僅からしい。
まぁ、そこら辺は飼ってみればすぐにわかるだろう。
あと、めーりん種はゆふらん種を育てることが多いとの事でゆふらんの子供を貰った。どんな風に育つのかが楽しみだ。
最後に、めーりん種はどこでも寝るわけではないらしい。
安全で、安心できる場所でしか寝ないそうだ。


ずっと眠っているこいつを抱えたまま、俺は家を目指す。
同じゆっくりから嫌われているこいつとの生活はどんなものになるか、結構楽しみだったりする。
家に帰ったらまずはこいつを守るために柵を作ってやらなきゃな…


ちなみに加工場の人がめーりん種を捕獲しなり最大の理由は、ゆっくりから見捨てられた可哀想な奴だからやめようという理由らしい。
あそこの責任者の発案らしいが、不思議に納得できる理由だと思った。

fin

ゆっくりれいむやまりさに虐められてる奴がいてもいいんじゃないかなぁって思って書いてみました。御目汚し失礼。


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2022年05月04日 22:06