※虐待描写は極小です。



ありすの部屋を出た俺は、あのれいむとまりさの部屋に戻ってみた。
しかし二匹はまだ眠っていた。どうやら少しガスの量を多くしすぎたようだ。
しかたがないので自室に戻ることにする。どうせ昼になると腹を空かせて起きるだろう。
そう思い、自室に戻った俺は、家計簿の整理を始める。


正午。
そろそろあの二匹も起きただろう。それにありすたちに昼食も用意してやらないと。
俺は台所に行き、ありす用の食料庫からありすと赤ちゃんの食事を用意してやる。
今日の昼食はパンくずに蜂蜜をたっぷりかけたものと野草だ。

赤ちゃんの段階で、人間が食べるような豪勢な食事を出すと、ゆっくりは舌が肥えてしまい、野生に出たら3日と経たず死んでしまうそうだ。
以前紅魔館の豚もといれみりゃの1匹が行方不明になった際にも、メイド長が3日間探した結果、れみりゃは餓死していたとのことだ。
そのため万が一野生に出ても生きれる様に、赤ちゃんの段階では野草や虫の死体などを与えなければいけない。

食事の用意ができ、ありすの部屋に入った。
「おーいみんなー。ご飯だよー。」
部屋ではありすが赤ちゃん達と、ゆっくり用の遊具であるブランコや滑り台で一緒に遊んでいた。
「ゆ、おにーしゃんだれ?」
「ここはれいむたちのゆっくちぷれいすだよ!」
「ゆっくちできるのならごはんを、ぷぎゃ!!」
図々しくも要求する赤ちゃん達、しかし最後まで言えなかった。
ありすが怒りの形相で体当たりをしたからだ。もちろん手加減はしている、じゃないと赤ちゃんはつぶれているだろう。
「お、おかあしゃんどうちてこんなことするのおおお!!?」
「おかあしゃん、なんで!? れいむたちこんなにかわいいn」

「だ ま り な さ い !!!!」

隣の家にまで響くんじゃないかと思うほど、それぐらい大きな声で怒鳴るありす。
幸いにも防音処理をしているのでそこまで聞こえることはないはずだが、近くにいたので耳がキーンとなる。
赤ちゃん達の鳴き声も罵声も、何もかも止んだ。
「おにいさんはおかあさんをたすけてくれた人だよ!! やさしくご飯をもってきてくれてあそんでくれた人だよ!!
それにここはほんとうはありすの家じゃないのに、こんなにもいいへやをわけてくれたひとなんだよ!!
そんなありすの、おかあさんのだいすきなおにいさんをばかにしちゃだめなんだよ! そんな子はありすの子じゃないよ!」
いや、本当に君の子じゃないんだけど。
そんな野暮な突っ込みはしないでおこう。ありすは本気で怒っている。
しかし、そこまでありすは俺に感謝してたのか。ありすの内心を始めて聞いた気がする。

赤ちゃんたちはしゅんとなってうつむいて黙り込み、少し考えたようなしぐさをした後、俺のほうを向いた
「おにーしゃん、ごめんなしゃい…」
「れいむたちがわるかったでしゅ…」
「「「だからゆっくちしゃせてくだしゃい!!」」」

なんと殊勝な赤ちゃん達だろう、人間でも子供のときというのが一番わがままで手のかかる時期なのに…。
まだ半日も経ってないとはいえ、ありすの教育というのがわかるほどだ。
「いいんだよ、お兄さんは気にしてないからね。」
これ以上怒ることはないだろう。俺は優しく、赤ちゃん達に語り掛ける。
ついでに人差し指ですりすりしてやる。「くすぐっちゃいよー」とキャッキャッと笑う赤ちゃん達。
ぷにぷにしてて可愛いよなー。ありすも微笑ましくその様子を見ているのがわかる。

おっと忘れかけてた。昼食持ってきたんだった。
「みんなー、ご飯持ってきたんだったよー。お母さんと一緒に食べようなー」
そう呼びかけると、いっせいに跳ねながらこちらに駆け寄ってきた。
「ごはん♪ ごはん♪」
「おにゃかしゅいたー」
「おにーしゃんはやくー」
「こら、みんな。とかいはのゆっくりはしずかにまつのがマナーよ。」
ありすの呼びかけで赤ちゃんたちはいっせいに静かになる。うーんちゃんとお母さんしてるんだなぁ。

ちなみにありすの言う『とかいは』というのは、野生のありすの言う『とかいは』とは天と地ほども違う。
野生のありすの場合は無駄に高いプライドと自尊心、優越感から出る言葉で、そもそも何のことかもわかっていない場合がほとんどだ。
しかしありすの場合は、マナーや人間と一緒に仲良くするための常識というものを学んでおり、他のゆっくりとは一線を画している、真の意味での『とかいは』だ。
人前に出しても恥ずかしくないほどの立派な『とかいは』だと俺も自負している。

赤ちゃんたちには野草を出す。一応食べやすいように一度煮詰めている。
赤ちゃんのうちは噛む力も弱い。成長するたびに徐々に煮詰めないなどして固くしていけばいいのだ。

「むーしゃ、むーしゃ♪ しあわせー♪」
「おいちいー♪」

赤ちゃんたちは幸せそうに食事をしている。
ありすもパンを美味しそうに頬張っている。食い散らかすようなことは絶対にしない。
それを横目で見ながら、俺は静かに部屋を出た。



「ゆ、おじさん!! れいむの赤ちゃんをどこにやったの!!!?」
「赤ちゃんをだせ!! 出さないならおじさんはゆっくりしね!!!」
おーおー元気だねーこいつら。
しかしまだ立場はわかってないようだな。それは後できっちりと教えてやらないとな。
「赤ちゃんたちはちゃんと元気だよ。」 嘘ではない。
「ゆゆ!? じゃあ早く会わせてね!! それとごはんもってきてね!!」
「赤ちゃんを返したらまりさのいえからでていってね!!」
あーもううるせえなぁ。
「ち、わかったよ。そこの鏡を見ろ。」
もう口調を無理して変えない。
二匹は「ゆ?」と不思議そうに壁の一面、鏡になっているところを見る。
俺は壁にあるスイッチを押した。

すると不思議なことに、鏡はいきなり隣の部屋を映し出した。
そう、もうお気づきだろうがこれはマジックミラーだ。
元々この部屋は悪いゆっくりの制裁用の部屋で、いつもの用途は隣で幸せそうにしているありすを見せることで精神的に追い詰めていた。
絶食させた後でありすが幸せそうに食事をしているところを見せ、発狂させたことなど何度かある。

隣の部屋では、食事が終わったのか赤ちゃんたちは思い思いに過ごしていた。
ありすと頬ずりをするもの、ブランコで姉妹仲良く乗って遊んでいるもの、トランポリンで跳ねながら笑っているもの、さまざまだ。

「れ、れれれれれれれっれれれ、れいむのあがじゃん゛ーーーーーーーー!!!!!」
「ゆ!!! おじさんどういうこと!!? あれはまりさとれいむの赤ちゃんでしょ!!?」

おー意外だ。親のほうは自分の赤ちゃんがわかるものなんだな。
今度永遠亭の薬売りの兎さんが来たら教えてあげるとしようか。あそこ結構エグイ実験してるそうだし。

「どういうことって、見ればわかるだろ? 赤ちゃんたちはありすと遊んでもらってるんだよ。」
「ゆゆー!! みんな逃げて!! ありすとはゆっくりできないよ!!!」
「あがじゃん゛が、でい゛ぶの゛あ゛がじゃん゛があ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」
ありす種の危険性は知ってるようだな。しかし失礼なやつらだ。
愛娘にも等しいありすをそんな野生の品も何もないありす種を一緒にしないで貰いたい。

「くっくっく、さて、あの赤ちゃんたちはいつまで持つかなぁ?」
しかしそんなことはおくびにも出さず、俺はあくまで「あのありすは危険」と思わせる。
あまりにも二匹の様子がおかしいので、邪悪な笑みまで浮かんでしまった。
それがさらに恐怖心を煽ったのだろう、もう二匹は気が気ではなくなっている。

「おじさん、はやく赤ちゃんを返せ!! ゆっくりしね!!!」

あーもううるせえな!
ヒャア、我慢できねえ!!! 嬲ってやらア!!!!!!

「うるせえええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!」
「ゆびゅっ!!?」

今までの鬱憤を晴らすかのごとく、しかし最大限に手加減をし、まりさを蹴り飛ばす。
壁に盛大にぶつかるも、飛び散るようなことはない。
ボールは友達ってか? ヒャッハー!

まりさは口から餡子が出ているが、ピクピク動いていることからまだ息があることがわかる。
れいむは泣き止み、ガタガタと震えていた。

「お、おじさん、どうして…?」
「おじさん?」 鬼のような形相で睨む。俺ハ狩人ダ!!
「お、おにいさん! どうしてまりさをいじめるの!?」
慌てて言い直し、媚を売るような目で問いかけてくる。
何故? 愚かだなこいつ。

「君たちが悪いゆっくりだからだよ」 正直に、率直に答えてやる。
しかしこいつらは何も理解できてないらしい。
「ま、まりさは…わるいことなんか…」 ほう、あの時道のど真ん中で何を言っていたのか覚えてないのかな?
「お前ら、俺が初めて遭った時、自分達の話の内容が聞かれてたのも気づかなかったのか?」

その言葉で二匹はハッとしたようだ。漸く気づいたか。
しかしここでまりさはお得意のスキルを発揮した。
「ま、まりさは悪くないよ!! れいむがにんげんの畑をあらそうってさそったんだよ! だからまりさをにがしてね!!」
「ま、まりざ、どおじでぞんなごというのおおお!!!?」

媚を売るような笑顔で、将来を誓った伴侶すら見捨てようとするまりさ。逃げようと扉の方まで後ずさっているのもわかる。
だが残念だったな。

「じゃーねれいむ、ゆっくりしんでね~♪」
そういって扉にダイブするまりさ。

だがしかし。

その思いが届くことはなかった。

扉は開くことなく、まりさをはじき返した。

「どおして!? なんであかないのおおおおお!!?」
慌てて何度も体当たりを繰り返すまりさ。
しかしそんなことで扉が開くわけがない。ゆっくりの力を差し引いたとしても、その扉は
内側からは10桁の暗証番号を打つか鍵を使わないと開かないようになっている。
万が一を考え、厳重に強化したゆっくり専用の牢獄。それがこの部屋の正体だった。

「おいおいれいむ。まりさはおまえにしんでね、だってさ。」
放心状態になり、何が起こったのか理解できていないれいむに現実を教えてやる。

「ま、まりさ… なんで……」
「ち、ちがうよれいむ、まりさはなにも…」
この期に及んで言い訳をしようとするまりさ。しかしそれが通用する状況ではない。
だがれいむは飛び掛って噛み付くことも、罵倒することもなかった。
愛情が捨てられないから、ではない。
餡子脳が現実に追いつけず、理解するのに時間がかかっているのだ。

必死に言い訳をしているまりさを尻目に、俺はいったんこの牢獄から出る。

そして部屋からある道具を持ち出す。

アルコールランプ、ペンチ、バリカン、ピンセット……
さて、本番といこうかね






アイデアが膨らみすぎて時間がかかった結果がこれだよ!

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最終更新:2022年05月19日 15:15