「だして~!!」
「ゆっくりだしてよ~!」
「おがーしゃんおもいよおお!!」
籠の中からは幼いゆっくりと大きなゆっくりの声がけたたましく聞こえてくる。
その籠を背負っている男はというと、まるで気にしていない様子だ。
男はそのゆっくり家族が入った大きなかごを自分の家の中までかつぎ玄関においた。
男の家は所謂合掌造りのようなもので家具も少ない為とても広い。おそらく独り身なのだろう。
しかしそんな日本家屋に似つかわしくないモノがその家の端においてあった。
それは高さ1m、幅3m、奥行き1.5m程の直方体らしいもの。
何故直方体の箱である、と断言できないかといえばその場所には大きく黒い布が覆いかぶされているからである。

「おにーさんはやくだして・・・」
「れいむの子供達がつぶれちゃうよぉ・・・」
「おかーしゃあん・・・」
玄関先で疲れきっている饅頭、もといゆっくり家族を籠ごと担いできた男はその黒い布を少しだけめくり
箱の天井にある開閉式のドアを開いてそのままゆっくり家族を中に流し込んだ。
「ゆぅううぅぅぅう!!!」
「うぎゅ!うべべべべべべべ」
「ゆぅううう!!おもいよおおおお!!!」
最初にでてきたゆっくりに次に入ったゆっくりが重なる、そして次の、次の、次の、次の。
最後にでてきた子まりさ以外のゆっくりは全員のしかかりによるダメージを受けた。

「くらい?おかーさん!ここくらいよ!」
「なんもみえないよ~」
「ゆ!おにーさん!お部屋の明かりをつけてね!」
「子供達が怖がってるの!」
注文を受けた男はすぐに黒い布を取り払う。ゆっくり達はサッと入る光に目をくらました。
徐々に光に慣れ始めるゆっくり達の目。箱の中で彼らが最初に目にした物は
「ゆ・・・ぐぎいい・・・」
異常な目つきと気配をしたゆっくりまりさだった。
「ぎぎ・・・ゆっくりくわせろおおおおおお!!!」
家族がお決まりの挨拶をする暇すら与えずに襲いかかってくる異常まりさ。
当然標的にされた側は黙って食われるわけが無い。
「子供達は食べさせないよ!」
「そんなまりさとはゆっくりできないよ!!」
異常まりさに渾身の体当たりをかます親まりさ。
その異常な気迫を見た親まりさは長期戦を覚悟していたが異常まりさは最初の一撃で地面にへたってしまった。
そこにすかさずストピングの嵐をかけるゆっくり家族。
「れいむ達を食べようとするからこんな目に遭うんだよ!ゆっくり理解してね!」
抵抗もせず静かにしている異常まりさを家族は仲良く潰していく。
一通り安心したのか家族は異常まりさを踏むのをやめて箱の中をうろちょろし始めた。
男はそれを待っていたかのように箱側面にある人用の出入り口から死ぬ直前の異常まりさを連れ出した。
男は抱えている異常まりさに何かを吹き込んでいるようだったがゆっくり家族にとってはそんなことは気にすることではない。
重要なのは子供達のご飯をどうすればいいのかということ、それだけだ。

「おにーさん!れいむの子供達のご飯はどうすればいいの!?」
「まりさ達、ご飯何ももってないよぉ!」
「おかーしゃんおなかすいたー」「ごはんがたべたいよぉ・・・」「お外に出たいぃ!」
家族は男に対して文句や注文を続けるが当の男はゆっくりの言葉など聞く気もない。
だが男は何かを持ってこようとしたのかゆっくり家族の入っている直方体から離れ家の奥の方へと向かっていった。
ゆっくり家族にとってはそれは食事を持ってくる当然の行為に見えたのだろう。口々に喜びを語り合っている。
「ゆ~ごはん~♪」「きっと虫さんだよ!」
「ありがとうおにーさん!ゆっくり子供に食べさせるよ!」
「これでゆっくりできるね、れいむ!」

男は戻ってきた。小さな14インチのテレビデオを持って。
食事が食べれると思っていたゆっくり達からすれば見たことは無いが明らかに食べれない電化製品が目の前にやってきたのだ。
戸惑いは頂点に達していた。
「どどどどういうことぉ!!!」
「おにーさん、これは食べられないよ!ご飯はまりさ達でとってくるからここからだしてよ!」
「おねーちゃんこれ食べ物?」「違うよ!きっとおにーさんが勘違いして持ってきた物だよ!」「ゆぅ~たべれないよぉ~」
当然男は耳を貸さない。ただ静かに直方体近くにおいてある発電機にコンセントを挿し、テレビをつけ、ビデオを再生し始めた。

テレビに映っているのはまりさとれいむ。当然ゆっくり家族の一員の誰でもない。
二匹の顔は恐怖におののいていた。
『・・・・』『・・・・・・・・・・』
テレビの中の二匹は何かを喋っているのだろうか。しかしテレビからは微塵も音は聞こえない。
「おにーさん!なにこれ!」
「ゆ~こんな小さな箱の中に小さなゆっくりが二匹もいるよぉ~」
「おにーさん!この子達も可哀想だから箱の中から早く出してあげてね!」
「まっててね!いまからまりさが助けてあげるからね!」
まりさは何度も自分達をかこっている直方体に向けて体当たりをするが衝撃は箱の表面に均等に伝わり消えていくのみで
割れる気配など全くない。そうこうしているうちにテレビの中には恐ろしい生き物がでてきていた。
『・・・・・・』『・・・・・』『・・・・・・』
テレビに映っていたのは満面の笑みを浮かべるれみりゃ。二匹のゆっくりの顔にはより強い恐怖がにじみ出ている。
「いやあああああ!!あのゆっくり達がたべられちゃうよおお!!」
「おおおおおにーさん、お願いだからあの子達を助けて!子供達にもよくないよ!」
そう言われると男はすぐにテレビの方へと歩き出した。
よかった、これであのゆっくり達が助かる。そう思ったゆっくり家族の思いはいとも簡単に打ち砕かれた。
『・・・・ゃぁぁぁぁ・・・』『・・・・ぇぇぇぇぇぇ・・・』『・・・ぅ~・・・・・』
男はテレビの中のゆっくり達に手を差し伸べることなどせずテレビの音量を一つ上げた。
微かに聞こえてくる声には悲壮感がこもっている。
「いやああああああああ!!!あのれいむ達がたべられちゃうよおおおお!!」
「おおおおおにーさんお願い、あの子達を助けてあげて!」
「あの子達がゆっくりできないよぅ!!」「ゆっくりさせてあげてよぅ!!」
ゆっくり家族は必死に男に助けを訴える。だがその声は大きな家の中で綺麗にこだまするだけだった。
『・・・っ・・・っ・・・・・ょ』『・・・・ぅ~ぅ~・・・・・・・』
そうこうしているうちにビデオは終わった。テレビ画面には満面の笑みで踊っているれみりゃがうつされている。
「あぁ・・・ひどい・・ひどいよぉ・・・!」
「ゆぅゆぅ・・あの子達死んじゃったよぉ」
「どうしてぇ!どうしておにーさんこんなことするのぉ!!!」
悲しみと怒りが入り交じった言葉が男に投げつけられる。それでも男は同様の色を見せない。
男はゆっくり家族が自分を見つめ続けていることを確認すると映像が消え、真っ黒になっているテレビを指差した。
「ゆ!あの子達だ!生きてたんだね!」
「よかったよぉ!心配したんだよ!」
「ゆっくりちていってね!」「ゆっくりしていってね!」
さっきと表情も体型も全く同じゆっくりにゆっくり家族は一切疑問を持たなかった。
『・・・・ゃぁぁぁぁ・・・』『・・・・ぇぇぇぇぇぇ・・・』『・・・ぅ~・・・・・』
だが再び映像が映し出されて5分すると流石のゆっくり家族もその映像がさっきと全く同じ物であると気づいた。
「いやああああああああ!!!やめてええええええええええ!!!」
「おにーさんやめてあげて!!あの子達を何度もころさないでえ!!!」
「ゆあああああああ!!!ゆあああああああああ!!!」「おちついてね!おねーちゃん達がついてるよ!」
ビデオは120分間同じ映像を流し続ける物だった。そして全てが終わったら巻き戻し、また最初から。
ゆっくり達に向けられたその同族殺しビデオは捕獲してきた時刻夕方6時から夜12時までの間、すなわち半日もの間流された。

次の日、最初の日同様男はゆっくり家族に餌を与えなかった。
家族に用意されている物は直方体とテレビデオだけだ。
「ゆぅぅ!おなかすいたよお!」「おかーさんごはんたべたいよぉ!」
「ごめんね、もう少し待っててね。」
「おにーさん、お願いだよ・・・ごはんくれないならまりさがご飯をとってくるからここからだして!」
「おにーさんおねがい!れいむかまりさをここからだして!ご飯とってくるだけだから!」
両親は自分達が逃げることだけを考えてるわけではない。ただ純粋に子供達に食事を食べさせてあげたいだけだ。
その想いを知って知らずか男は部屋の奥へと向かっていく。
だが帰ってきた時に持っていたのは食べ物ではない。その手にあるのはビデオテープだった。
「ゆぐぅううううううう!!それはいやあああああああああ!!!」
「もうあれはみたくないいいいいいいいい!!!」
昨日のれみりゃ映像が余程トラウマなのだろう。
半日も費やしたおかげでゆっくり家族はビデオの仕組みを何となく理解したようだった。
映像の根源、ビデオテープを見るだけで恐れおののくようになってしまったのだ。
だが今日再生された映像は昨日とは全く異なる物だった。
「逃げてえええええ!!!」「ゆっくりしないでね!はやくにげてね!!!」
テレビに映っていたのは密室に閉じ込められた5匹のゆっくりが迫る刺付き天井から必死に生き残ろうとしている映像だった。
微かに聞こえる聞こえたくない声。だが男はテレビに指をかけまた一つ音量を上げた。
『いゃぁぁ・・・ぁ!!!』『だ・・てぇえぇぇえ・・・!』『・・・っくり・・・・・ぉぉぉ!!』
昨日よりも少しだけ聞きやすくなるテレビの音声にゆっくり家族の悲鳴はますます大きな物となった。
「やめでええええええええええええ!!!」
「声をおおきくしないでえええええええええええ!!!」

それからゆっくり家族は20日間、様々な種類のゆっくり虐待ビデオを朝から晩まで食事をさせられないまま見せ続けられた。
ある時はれみりゃが
『う~う~うまうま♪』『いやあああああああれいむおいしぐないよおおおおおお!!!』
ある時は人間が
『あづいいいいいい!!火はいやああああああ!!』『おにーさんお願い!まりさを焼かないで!おねがいだからぁ!!!』
そしてある時は加工場の機械により商品へと変えられていく同族を見せつけられた。
『ゆああああああ!!まりざのあがぢゃんがああああああ!!!』『おがあああしゃあああああん!!』
「やめて・・・おねがいだからみせないでゆっくりさせて・・・」
「おかーしゃん!れいむの耳ふさいでええええええ!!」「ききたくないよおおおお!!!」
「いやだいやだいやだいやだいやだいやだ」「お・・・おなかしゅいたよぉ・・・」
両親ですら心身の疲れで衰弱しきっている中、子供達にとっては音量が最大となったテレビからの悲鳴は
そのまま体のダメージとなっていた。
その日も12時までの上映会が終わり直方体に大きく黒い布がかけられた。
辺りは森の夜よりも深い黒で覆われる。
本来子供達にとって恐怖の対象であるこの暗闇の時間がここ最近ではゆっくり家族の数少ない憩いの時間となっていた。
「おかーしゃん、いつここからでれるの?」「もういやだよぅ・・・!」
「怖いのみたくないぃ!」「お家帰ってご飯食べたい!」「ゆっくりしたいよぉ!!」
子供達の意見は最もだった。この日までゆっくり家族の誰もが欠けずに生きていけたのが不思議な程
ゆっくり家族は食事をとっていなかった。子供達の限界も後一週間とないだろう。
ゆっくり両親はこの家の主である男に自分の命を賭してでも子供達の平和を約束させようと決心していた。

翌日
いつも同様男がテープを持ってゆっくり家族に近づいてきた。子供達はテレビから最も離れた所でゆぅゆぅと震えている。
しかしゆっくり両親は子供達とは逆に男にできる限り近づいてきている。
「おにーさん!おねがいがあります!」
「子供達がもうお腹がへってゆっくりできなくなりそうなんです!」
慣れない敬語、それは人間達に対して少しでも誠実な気持ちを表す為のゆっくり達の必死な手段だった。
「だから・・おねがいっ!」「まりさ達はなんでもしまずがら・・・!」
「「ごごがらごどもだぢをだしであげてくだざい!!!」」

男はその場で沈黙し持っていたテープと一緒に直方体から離れていった。
思いが通じたのだろうか、両親は少しだけ期待をした。
男が帰ってきたその手にあるのは
やはりビデオテープだった。
「どおおおおじでええええええええ!!!」
「おねがいでずううう!!なんでもじまずからあああああああああ!!!」
そこからの男はいつもと一切変わらないかった。淡々とテープをセットし再生の用意をしていく。
映像が始まった。
「いやああああああああああああ!!!もういやあああああああああああああああああ!!!」
「・・・・・っ!・・・?」
目をつぶっていたまりさはその映像が今までとは違うことに気づいた。
そこには幸せそうな笑顔を浮かべながら食事をしているゆっくりが二匹映っているのだ。
『むーしゃむーしゃ、しあわせ~♪』『うっめ!これめっちゃうっめ!』
『まりさ!こっちのお皿のもおいしいよ!』『ゆぅう!おいしい~♪』
ひたすら食べ物を食べ、その感想を述べるゆっくりだけが映されている映像、
これが両親達のみならず子供達の興味を引かないわけが無かった。
「ゆっ・・・?なにこれぇ?」「あぁ~おいしそ~」
「いいなぁ、ゆっくりしてるなぁ。」「れいむもたべたいよぉ!」
一体何故男はこの映像を見せるのか自分達に見せるのか、ゆっくり両親にはその理由が全く分からなかったが
テレビという珍しい娯楽道具を楽しく見れた時点でそんなことはどうでもよくなっていた。
『おいし~い♪』『これだけあれば冬も越せるね!』
「一体何を食べてるんだろう?」「あんなにおいしそうにしてるからきっとお菓子じゃない!?」
「ゆぅう、まりさお菓子なんてたべたことないよ!」「とってもあまくておいしいんだよ!」
ゆっくり達がお菓子談義をしている時、テレビの映像はカメラが後ろに下がっていってるのかだろうか全体が見え始めた。
チョコレートかな、アメさんかなと子供達がお菓子の正体をいろいろと想像している中、
テレビに映された物は子供達の想像を遥かに超えていた。

『ゆ・・・ぐぅ・・・』『いだい・・・いだいよぉ・・・・』『まりざのあんこがぁ・・・!』
二匹を中心にして散らばっているのはゆっくりれいむとゆっくりまりさの残骸。
うまいうまいと二匹が舌鼓を打っていた食べ物は彼らの同族だったのだ。

「「「「「い゛い゛い゛い゛い゛やあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」」」」」
ゆっくり家族、とりわけ子供達は今までに無い程に発狂し始めた。
「おげえ!?おげえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛」「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
「ぎぎぎぎうぎぎぎぎい゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛」「はあ゛あ゛あ゛はあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
「みみみみんなおちついてええええ!!!」「気をしっかりしてね!ゆっくりしてね!」
ゆっくり両親は場を納めるのに必死だが子供達は全く耳を貸さない。
そして突然やってくる暗闇。それでも子供達の悲鳴は止まない。真っ暗な中で狂った叫びが響き渡る。
「ゆっ!?おねがいおにーさん!もう少しだけ明るくしてね!」
「おにーさん!子供達が落ち着くまで明るくしてね!うぎぃ!?」
「ま、まりさ!?」
どうやら親まりさが誰かに噛まれたらしい。それは当然子供達の内の誰かだ。

そう言えばさっき何の映像を見た?そうだあの映像だ。
ゆっくりまりさとれいむが、「ゆっくりまりさとれいむを食べる」映像。
れいむの餡子が水にさらされた様にサーッと冷えた。
「みんなだめだよ!おなかへってるからって家族を食べちゃあがぁっ!?」
親れいむの後頭部に激しい強打。まずい、このままではま・・ず・・ぃ・・・・・
暗闇の中、無駄だと思いながらも親れいむは家族の無事を祈りつつ意識を遠のかせた。










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最終更新:2022年05月03日 09:51