ユルジンと魔法のランプ
ある日、ゆっくりありすの一家が食料庫を作るために巣穴の中を掘っていました。
すると、土の下から黄金に輝くランプが出てきました。
「ゆゆ、これはとかいはにふさわしいかみかざりね」
「しょうだね、おかーしゃん」
「うほほほほほほほほおおおおおおーーー」
数分後には、そのランプに体をこすり付けて発情しているありすの一家の姿がありました。
「ゆっゆゆゆゆゆゆゆゆ」
「ゆふふふふふうふんほおおおおおおおおおおおおおお!!!すっきりー♪」
最後に、親ゆっくりありすがひときわ大きく体をのばして一気にこすりつけ、すっきりー♪(笑)すると、
どうでしょう。ランプからもくもくと煙が湧き上がり、大男があらわれました。
『ご主人様』
その大男はランプの魔人でした。魔人は、揉み手をしながら
『今から3つの願いを叶えて差し上げましょう』
と言いました。
「ゆゆ、ゆっくりしていってね」
「「「ゆっきゅりしていっちぇね」」」
『はい、かしこまりました』
(残り2つ)
『それで、続いての願いは何でしょう。』
「ゆ?なんのこと?どういうこと?ゆっくりせつめいしてね!」
「「「せつめいしてね!」」」
『はい、分かりました。』
(残り1つ)
『わーーーーーーたーーーーーーーしーーーーーーはーーーーーーー、ラーーーーーーーンーーーー』
「意味が分からないよ!ゆっくりできないおじんはゆっくりでていってね!!ぷんぷん!」
「「「ぷんぷん」」」
『分ーーーーかーーーーーーーりーーーーーーーまーーーーーーーーしーーーーーたーーーーーー』
そう言うと、魔人は巣穴の外に向かって本当にゆっくりと歩き出しました。
「ゆゆ、ふざけてないでさっさとありすたちのいえからでていってね!!」
しかし、魔人はもう、3つの願いを叶えてしまっているのでゆっくりたちの言葉には全く答えません。
「ゆ、おじさん、むししないでね」
「そして、さっさとでていってね」
「「「でていっちぇね!」」」
そう言いながら、ありすたちは魔人に体当たりを繰り返しましたが、人間と比べても大男である魔人相手に、ゆっくりごときがどうにかできる訳ありません。
そうしている内に、ゆっくりたちは巣の入り口が魔人で塞がっている事に気が付きました。
「ゆゆゆ!これじゃあおそとにでられないよ、おじさん、さっさとどいてね!」
「どいてね!」
しかし、とても『ゆっくりと』出て行っている魔人は、意に介さずに『ゆっくりと』動いています。
「ゆっくりどけ!ゆっくりどけ!」
「どけ!どけ!」
「「「じょけ、じょけ!」」」
「ゆぅぅぅぅ~」
「おかあしゃんおなかすいたよぉ」
「「おながずいだぁぁぁ!!!」 」
あれから一週間たってもまだ魔人は巣の入り口にいました。
いえ、動いていないわけではありません。本当に『ゆっくり』出て行ってるんですよ。
1[μm/day]ぐらいで。
「ゆっくりおきてねっ」
「・・・」
「ゆ"っぎゅりおぎでよ"ぉぉ!」
「・・・」
とうとう、あかちゃんゆっくりの一匹が動かなくなりました。
周りがいくら呼びかけても起き上がりません。
その事を理解すると生きているゆっくりたちも絶望に広がっていきます。
「じに"だぐな"いいいいい!!」「い"っい"や"だああああ!!」
それでも、魔人はゆっくりと出て行きます。
ある日、ゆっくりありすは動かなくなった赤ちゃんゆっくりをじっと見つめていました。
親子だからなのでしょう、残った赤ちゃん達はすぐに理解したようで、叫びました。
「「おきゃあしゃん、たべちゃだめだよ!」」
しかし、とうとう、ゆっくりありすは動き始めました。
「むーしゃむーしゃ」
「「お"があ"じゃん、な"んでぇぇぇぇぇ!!」」
ある朝、ゆっくりが目を覚ますと、あかちゃんゆっくりが一匹もいません。
一方で自分の空腹がだいぶましになっている事に気が付きました。
しかし、ゆっくりは落ち着いていました。
決して諦めたわけではありません、その証拠に、目には決意がみなぎっていました。
「いつか、かならずここからでて、いなくなったあのこたちのぶんまでゆっくりするよ!」
食べたのは自分だというのに、相変わらず自分に都合の良い餡子脳です。
きっと、ありすのなかではお兄さんに連れて行かれたか大雨に流された事になっているのでしょう。
それから、ありすは幾日も幾日も恐ろしい飢餓を忍ばなければなりませんでした。
どこにも食料がなく、万策尽きてしまったとき、ありすは、自分の足を食べ始めました。
ひとかけら、またひとかけらと。
それらが無くなってからは、今度は胴を裏返して、餡子の一部を食べ始めました。
少しずつ少しずつ。
こうして、ありすは自分の体をすっかり食べ尽くしてしまいました。
餡子から、髪飾り、そして皮に至るまで完全に。
外の世界では、とても、とても長い年月が経ちました。
いくつもの国が栄えては滅び、そして滅んでは栄えました。
何千人ものお兄さんがゆっくり達を”かわいがり”、そして、地獄に落とされ、地獄でも持て余され、再びお兄さんに転生しました。
ある日、一人のお兄さんが山でゆっくり狩りをしていると、ゆっくりの巣を見つけました。
もう、入り口には魔人はいません。
今日の収穫に心躍らせながら巣穴を覗き込むと、しかし、お兄さんは落胆しました。
中には、すすけたランプ以外何もありませんでした。
朽ち果てた家具の跡があったので、大昔にはゆっくりが住んでいたのでしょう。
お兄さんはランプを持って帰りました。
巣穴の中は本当にいつまでも空っぽでした。
いつまでも、いつまでも…
けれども、ありすはまだそこに居ました。
ありすが消えてしまった後ですらも、永遠にそこに生きていました。
薄暗い、湿った穴の中で、
誰からも忘れられた巣穴の中で、
永遠に――――――――――――
おそらく、幾千の時を超えて
―――人の目に見えないモノが生きていました。
(END)
あとがき
こんな良く分からない駄文を最後まで読んでいただき、まことにありがとうございます。
畑で集団自滅モノを書いていたのですが、
気分転換に思いついたネタをメモしていたつもりがいつの間にかこんな事に…。
そして、世界の名作の小ネタパロディーの詰め合わせをいくつか書くつもりが、こんな事に…。
ゆっくりたちを絶望させて終わらせるはずが、いつの間にか「死なない蛸」(萩原朔太郎)に………
世の中とは儘ならぬものです。ゆっくりした結果がこれだよ!
しかし、巣穴の中の土は食料庫を掘れる位に柔らかいのだから、別の入り口を掘れば助かったのに。
結局、餡子脳ということでしょうか。
ちなみに、1[μm/day]だと、1m進むのに2738年弱かかる事になりますね。
さすが、虐待お兄さんは永遠に不滅です!
これまでに書いた作品
by.アールグレイ
最終更新:2022年05月03日 09:57