仕事に疲れた体をゆっくり休めようと家に帰ってくると家の中からなにやら蠢く音が。
こんなぼろい家に入ってくるのは、最近急激に増えてたゆっくりとか言うやつだろう。
案の定家の中にいたのはゆっくりであった

「おにいさん、ゆっくりしていってね」
「ここはまりさがみつけたから、まりさたちのおうちだよ。
 わかったらごはんをもってくるか、ここをゆっくりでていってね。」
「うっせぇ、糞饅頭共め。少しは静かにしてろ。」

このあたりにも出没しているらしいことが分かっていたので、食料だけはしっかり保管していたため
被害にあった物といえば破れかけの襖にゆっくり大の穴が開いたことと、剥れかけの壁紙が剥がれてしまった事位だろう。
戸の建てつけも悪かったからそこから入ったんだろうと暢気に部屋の中を見ていると割れたガラスを発見した。

「まじかよ…。」

家に取って置いたお金も博打と酒と女に消え、次の給料日まで赤貧生活をしなければならない私にとってこれは大きな出費であった。
がそれは仕方がないとあきらめ適当な廃材を持って窓自体を塞ぐことにした。
家にいたゆっくりは非常食ぐらいになってくれるだろうと気にもしなかった。
壁から生えている怪しげなキノコを食べてるし、ゆっくりが食べて大丈夫なら焼けば食えるんだろうか。
こうして一人と2匹の奇妙な生活が始まった。
非常食用のゆっくりが逃げ出しても困るので、ゆっくりが逃げ出せないような衝立(ついたて)を立てかけて仕事に行く毎日。
そんなある日、実入りのいい仕事があるが数日かけての泊り込みというものを受け、家を開けてしまう。
食料も帰ってくる頃には腐ってしまうだろうと部屋の中のゆっくり共にぶちまけておいた。


そうして幾日か過ぎた頃、ゆっくりの体に変化が現れた。
ゆっくりの体が少しずつ黒ずんできたのである。
この部屋は湿気を多分に溜め込みやすく、唯一の窓も廃材で蓋をしてしまったため空気の循環がなくなってしまったのである。
唯でさえキノコとか(笑)が生えていただけにその部屋の汚さは想像できるだろう。

「からだがかゆくなってきたよ。まりさはうしろをかいてね。」
「わかったぜれいむ。」

そうしてれいむの後頭部をまりさが頬で擦ってやる。
擦っているうちに発情してきたのか段々と擦るスピードが増してくる。
いつの間にやら顔を上気させて「ゆっ!!ゆっ!!ゆっ!!」とおぞましい交尾をしていた。

「「すっきりー。」」

まりさの頭から蔓が生えていき、幾つかの実ができる。

「あかちゃんができたね。」
「すごくゆっくりしたこになるといいね。」

翌朝眼が覚めると、まりさの蔓に付いていた実の半分ほどは真っ黒になっていた。
また、まりさの頬も黒ずみ始めていた。

「あかちゃんがまっくろになっちゃったよ。まりさどういうこと?
 まりさのほっぺたとおんなじいろをしているよ。」
「わからないんだぜ。」
「まりさがなにかわるいものでもたべたせいだよ。」
「まりさはれいむとおなじものしかたべてないよ。」

それでもゆっくり達は少し調子が悪いだけですぐに良くなるだろうと思っていました。

「まりさ、またうしろがかゆくなってきたからかいてほしいよ」
「またなのかだぜ。しかたがないなぁ。」

こうして今日もカビ胞子を自分にくっつけることになるまりさ。
それから数時間後には無事に(?)赤ゆっくりが生まれることになった。

「「「「ゆっくりしちぇいっちぇね」」」」
「「ゆっくりしていってね」」

生まれた赤ゆっくりはれいむが2匹にまりさが4匹。
そのうちれいむ1匹とまりさ2匹は真っ黒であった。
初めて生まれた子供に対して感慨深かった親ゆっくりであったが、
黒ずんだゆっくりは

「「「かりゃだがすごくかゆいよ。
   おかーしゃん、かりゃだをかいちぇね」」」

黒ずんだゆっくりをきれいにしてやろうと親ゆっくりは体を舐めてやる。
しかしいつになってもきれいにならず、赤ゆっくりのかゆみも引くことはない。
いくら舐めてもかゆみが引かないことに痺れを切らした赤ゆっくりは壁に自分の体をこすり付ける。
しかし体に根ざしたカビは深く、体が削れてもかゆみが引かない。
体を擦りすぎて餡子がはみ出している物もいた。

「あかちゃんはそれいじょうこするとしんじゃうよ。」
「ゆぎぃ、かゆいよ。すごくかゆいよー。」

かゆみに耐えられず擦り続けていた赤ゆっくり達はついに事切れてしまう。

「れいむのあがぢゃんがー。」
「まりざのがわいいあがぢゃんがー。」
「ここはゆっくりできないばしょだよ。
 ゆっくりはやくゆっくりできるばしょにいこうね。」

しかし外に出ようにも、窓を塞がれ衝立が高く聳え立つこの場所から逃げ出すことはできなかった。



さらに数日後、男はホクホク顔で家に戻ってきた。

「短期だったが実に実入りのいい仕事だった。
 ゆっくり共がぎゃーぎゃーうるさいがそれさえ耐えれたらなんとかなるな。
 また加工場で募集してたら受けよう。」

この金で何に使おうか思案しながら家に入ってみるとそこは魔境であった。
部屋にいたゆっくりは全身真っ黒になっていて、その周りにはソフトボ-ル大の黒い塊が3個あった。
その辺に脱ぎ散らかしてあった下着からはキノコまで生えている。

「この部屋に住むのはもう無理だな。
 幸いここに金はあるから別の場所に引っ越すか。」
「おにいさん、ここからだしてね」
「なんだこりゃ。気持ちわりぃ。」

その声に驚く男。
まさか生きてるとは思いもしなかった。
新しい住人がここに来るにもゆっくりを置きっぱなしもまずいと思ったのかゴム手袋をし、黒い塊を外へと放り投げる。
「ゆぐっ!」や「ゆべっ!」など聞こえたが気にしない。

貸主に引っ越す旨を伝えてこの家を去ろうとするが、貸主も家の惨状にびっくりしていた。
多額の修繕費を払わされたのは言うまでもない。



外に放り出されたゆっくりはかつての我が家へと戻っていった。
が巣の中にはすでに新しい住人がいたようだ。

「ここはまりさとれいむのおうちだよ。
 はやくでていってね。」
「なにをいってるのかしら。
 ここはありすがみつけたおうちなんだからありすのものにきまってるでしょ。
 それにまりさとれいむはどこにいるのかしら。」
「まりさたちはここにいるよ」

ありすに向かって黒い塊が抗議の声をあげる。

「そんなまっくろなまりさやれいむはみたことないよ。
 ゆっくりでていってね。」

そう言って黒い塊に体当たりをする
自分の子供まで体当たりされ始め、このままでは子供が死んでしまうと思ったのかこの場から逃げ出してしまう。

「おかーしゃん、かゆいよ。」
「がまんしてね。おかーさんもかゆいんだから。」

それから親しい友ゆっくりの元に向かうが、皆黒い塊に怯えたりしたため追い払われてしまう。
このゆっくり達にとってゆっくり出来る場所はなくなってしまった。

またカビゆっくりに体当たりをしたゆっくりにも変化が起こっていた。
カビゆっくりに触れたところから黒ずみ始めたのである。
このカビは接触感染する物だったがこのかゆみをやわらげてあげようと、子供やつがいのゆっくりが擦ってあげたため、瞬く間に伝染してしまった。

この山には夜な夜な黒い塊が動くという怪談が里まで広がりいっそう恐れられることとなった。





あとがき

スレのほうでカビが話題になっていたので急いで書いてみた。
カビに対する知識がないから想像して書いてみましたが、この男の部屋には住みたくないなぁ。

3作目なので私も作者名を作ろうと思います。
しゃべらないゆっくりと言うことにします。
それではまた次のSSで

by しゃべらないゆっくり

これまで書いた物

狭き門
ゴッドかなこ




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最終更新:2022年05月04日 22:39