ティガれみりゃ その3


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≪はじめに≫

  • 『ティガれみりゃ』の続きになります。

  • 時系列は、ティガれみりゃ1→ティガれみりゃ2→本作、となります。

  • 他の作者様の設定や名称を一部使わせていただいております。

  • パロディネタおよび、自分設定有りです。

  • 今回のエピソードには、本家東方のキャラが出演予定です。
 口調やキャラなど、壊れ気味かもですが、ご容赦あれ。

  • すみません、まだ続きます。
 また、今回のエピソードは長くなってしまったので、前編後編に分割しました。

以上、何卒ご理解・ご容赦ください。
少しでも楽しんでいただければ幸いです。

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3、誇りをかけた試練(前編)



「ゆぐぅ……もっと…ゆっくりじだがっだ、よ……」

とある山の、とある森。
一匹のゆっくりれいむが、今まさに力尽きようとしていた。
あちこち皮が破け、その傷と口から大量のあんこを吐き出している。

しかし、この森に充満する甘い匂いは、このれいむだけが原因ではなかった。

「みんな……れいむもゆっくり……そっちへいくよ……」

れいむが語りかけた先、
れいむの眼前、左右、背後、
そこには膨大な量のあんこが飛び散り、地面や木に染みを塗りたくっていた。

所々にリボンや帽子の残骸が垣間見えるそれは、大量のゆっくり達の死骸であった。
赤ちゃんから、大人まで、原型をとどめないその数は200を越えていた。

「ゆぅ……くやじぃ、ょ……」

視界がぼやけ、意識が朦朧としていく。
そんな状態でなお、この惨状を生み出した元凶の影が、目に焼き付いて離れない。
耳をすませば、今なおアノ恐ろしい鳴き声と歌が聞こえてくるようだ。

その歌い手の主、たった一体のゆっくりによって、
れいむの家族も、友達も、喧嘩相手も、同じ森に住むまだ見ぬ同胞達も、
みんなみんな殺されてしまったのだ。

圧倒的な力で、抗いようの無い絶望を撒き散らしたそのゆっくりを、れいむは決して許さない。
その憎悪の炎だけが、れいむの命を辛うじてつなぎ止めていた。

……もっとも、許すも許さないも、どうせ自分はこのまま死んでしまうのだろう。
ゆっくりのあんこ脳であっても、その事実だけはハッキリ認識できた。

「むっきゅーっ! まだ生きてるのね!」

「……ゆ、ぅ?」

聞いたことの無い声だった。
ゆっくりと目を開き、最後の力を振り絞り、声の主を見上げるれいむ。

そこには人間の少女に似たゆっくりが立っていた。

「大丈夫!? しっかりしてね!」

れいむを心配する少女。
よく見れば、少女もまたゆっくりであるようだった。

『ぱちゅりー、どうしたの?』

「むきゅ! まだ生きているれいむがいたのよ、まりさ!」

ぱちゅりーと呼ばれたゆっくり、
即ち胴体付きのゆっくりぱちゅりーの背後から、重たそうに跳ねて近づく巨大なゆっくり。
れいむはそれを知っていた。とっても強くて大きくて優しいゆっくり、ドスまりさだ。

それも一匹ではない。
二匹、三匹、四匹……次々とやってくる。

さらには普通のサイズのまりさやアリス、ちぇんにみょん、
何十匹ものゆっくりが、木々の隙間を跳ねてきた。

「ゆゆゆ?」

わけがわからなくなる、れいむ。
疑問と困惑があんこ脳を支配し、一時的に痛みも恐怖も忘れさせていた。

「むきゅー。もう大丈夫よ、れいむ」

ボロボロのれいむを優しく抱え上げる、ゆっくりぱちゅりー。

「ゆぅ……おねぇさんたち……だれ?」

「むきゅ! よくぞ聞いてくれたわ!」

ゆっくりぱちゅりーは、れいむを抱えたままドスまりさら仲間へ向き直る。

「わたしたちは、ゆっくりフォース!」

「ゆっ!?」

「ティガれみりゃを倒すために集まった、ゆっくりなれじすたんすよ!」

高らかに宣言する、ゆっくりぱちゅりー。
れいむは、力を振り絞って、ゆっくりぱちゅりーに懇願する。

「おねぇーさん、れいむをみんなの仲間にしてね! れいむもティガれみりゃを許せないんだよ!」

口からあんこを吐き出しながら、されど目には炎を宿して叫ぶれいむ。

ティガれみりゃと戦う上で、この傷だらけのれいむがどれほど役に立つかはわからない。
けれど、その気高いゆっくりマインドだけは、ぱちゅりーやドスまりさ達にも痛いほど伝わった。

なぜなら、その場に集まる殆どのゆっくり達が、ティガれみりゃの犠牲者だったから。

故に、そのれいむの申し出を断るゆっくりはいなかった。
ぱちゅりーを筆頭に、数多のゆっくり達が、れいむに歓迎の言葉をかける。

「「「「「ようこそれいむ! ゆっくりしていってね!!」」」」」



      *      *      *



「うっめっ! むっちゃうめぇっ!」

「まんまぁぁぁーーっ!たしゅげでぇぇぇぇっ!!」
「やめでぇぇぇぇっ! れみりゃのあがぢゃんたべないでぇぇぇぇぇっ!!」

通称・ゆっくりフォースが、そのメンバーを増やしていた頃。
とある湖畔で、胴体付きれみりゃの親子が、複数のゆっくり達に襲われていた。

親だと思われるれみりゃが一匹、その子供が4匹。
親れみりゃは四肢をもがれ、地面にころがされている。
四肢の切り口は、強引に食いちぎられ、断面から肉汁があふれている。

その親れみりゃの前で、4匹の子供達はリンチされ、食い散らかされていく。

「むーしゃむーしゃ♪」
「なにこのにくまん!むっちゃうめぇ!」
「すっごくゆっくりできる味だぜ!」

れみりゃ達を襲っているのは、3匹のまりさ種だった。
それも、もっとも性悪といわれ、専門家達からがゲスまりさと分類される種だ。

「うわぁぁぁぁぁん! しゃくやぁぁぁ! はやぐぎでれみりゃとあぢゃんをたすけるんだどぉぉぉぉ!!」

泣きわめく親れみりゃ。
そんな親れみりゃを、見下すゲスまりさ達。

「おお、おろかおろか」
「うるさいにくまんだぜ!」
「よわいれみりゃは、ゆっくりたべられるんだぜ!」

そう言って、一匹の子れみりゃを丸呑みにして、咀嚼していくゲスまりさ。

「うぎゃぁぁぁ!!」
「うわぁぁぁぁぁっっ!!」

子れみりゃの断末魔と、親れみりゃの悲痛な叫びが湖畔の森に響き渡る。

「ぎゃおぉぉぉーーーーっ! ぎゃおぉぉぉぉーーーーっ!!」

怒りと悲しみで、ゲスまりさを倒そうと体をジタバタよじる親れみりゃ。
だが、四肢の千切られたその体では、文字通り手も足もでない。

「ったく、うるさいにくまんだぜ!」

ゲスまりさがピョンと跳ね上がり、親れみりゃの顔に体当たりをくらわす。

「ぷぎゃぁぁーーーっ! いたいぃぃぃぃーーーっ!!」

苦痛の叫びを上げ、ボロボロと大泣きする親れみりゃ。

「まんまぁぁぁ! がんばてぇぇぇぇ! こいちゅらやっちけてぇぇぇぇ!」

いじめられる親を見て、これまた泣き出す子れみりゃ。
なんとか助けて貰おうと、親れみりゃを応援する。

「ブサイクなにくまんのぶんざいで、なまいきだぜ!」

「うっぎゃっ!」

気分を害したゲスまりさが、跳ね上がり、子れみりゃを押しつぶす。

「どうだぜ! まいったかだぜ!」

「「「うぎゃ! ぷぎゃ! いだっ! ゆぎぃ!」」」

何度も何度も、子れみりゃ達をプレスしていくゲスまりさ。
間もなく、子れみりゃ達は物言わぬ肉まんの残骸と化してしまった。

「ああああああっ! れみりゃのあがじゃんんんんんっ!!!

目の前で全ての子供を失い、白目を向きながら泣き叫ぶ親れみりゃ。
その脳裏に、子供達と過ごした日々が浮かぶ。

森の中でアリスに襲われ、妊娠した日の戸惑い。
自分の体内で新たな命が育まれていくのを感じた感動。
とっても痛かった出産と、それ以上に可愛い赤ちゃんとの対面。
はじめて「まんまぁ~」と呼んでもらえた時の嬉しさ。
一緒に顔中を汚して食べた、さくやとくせい・ぷっでぃんの甘さ。。
立てるようになった子供達に、れでぃーのたしなみとして歌とダンスを教えた日々。

いままでも、そしてこれからも、自分と赤ちゃんたちには楽しくて素敵な毎日が待っている。
だって、れみりゃたちは、とってもえらくてかわいくてつよい、こーまかんのおぜうさまなのだから!

だから、今日だって、メイドの言いつけをやぶってでも、
一緒に遠くまでお散歩に来たのに。

それなのに。

あかちゃん。

なんで。

「……あかちゃーん、あかちゃーん♪ ……とぉーってもかわいいどぉー♪」

親れみりゃは、放心状態となり、空想の中で子供達と遊びだした。

一方、ゲスまりさ達は、そんな親れみりゃの様子を見て、ふざけだす。

「おいおい、せっかくのにくまんをつぶしてどうするんだぜ♪」
「おっと、ついやっちまったんだぜ♪」
「そうだぜ、でも心配はいらないんだぜ♪」

ニヤニヤと笑みをこぼしあうゲスまりさ達。

「……う、う~~~~?」

そのゲスまりさ達の言動に、現実に引き戻され、
不安な気持ちでいっぱいになる親れみりゃ。

「「「だって、にくまんはまだこんなにあるんだぜ!」」」

そう言って、いっせいに親れみりゃに噛みつくゲスまりさ。

「うぎゃぁぁぁ! やめてぇぇぇ! れみりゃはにくまんじゃないどぉぉぉ!!」

「なに言ってるんだぜ! どうみたってお前はにくまんだぜ!」
「そうだぜ! 肉汁だってこんなにアツアツウマウマなんだぜ!」
「かんねんするんだぜ! このぶさいくなにくまんが!」

「ちがうのぉぉー! れみりゃはぷりてぃーなこーまがんのおぜうさまなのぉっ! 
 にくまんでもぶさいくでもないのぉぉぉ!!!」

「なにいってやがるんだぜ!」
「そうだぜ! このにくまん!」
「おぜうさまにこんな尻尾なんかあるわけないんだぜ!」

そう言って、尻尾にかぶりつくゲスまりさ。

尻尾。

そう、この親れみりゃは、胴体つきは胴体つきでも、
希少種であるゆっくりゃザウルスであった。

しかも、元々ゆっくりゃザウルスであったわけではない。
ついこの間まで、紅魔館に住み着き、メイド達に甘やかされて育った、
ごくごく普通の胴体付きれみりゃであった。

だが、子供を産み、子育てを経ていく間に、れみりゃの体に異変が起こった。
ある朝、起きたらゆっくりゃザウルスになっていたのだ。

ゆっくりゃザウルスとなった親れみりゃを見て、
普通の胴体つきれみりゃである子れみりゃ達は、たいそう感激し、
「まんま、かぁっこいいどぉ~~♪」と、ことあるごとに褒め称えた。

ただでさえ子供達と優しいメイドに囲まれ幸せだったのに、
さらにこんなにも素敵な体になって、いいんだろうか!?
しばらくの間、親れみりゃは幸福感でいっぱいになった。

だが、いくつかの誤算が、親れみりゃの幸福に水を差す。

メイド達が、館の外へ出してくれなくなったのだ。

いつもは定期的にお散歩に行けたのに、
今ではどこかへお出かけしようとするたび、
名前を忘れた門番に呼び止められ、連れ戻されてしまうようになった。

自分は、こーまかんのあるじなのに!
こんなにかっこよくなった自分を、いろんな人に見せてあげたいのに!
そしたらきっと、みんな喜んで、褒め称えて、自分と赤ちゃんにぷっでぃーんをくれるのに!

腹をたてたれみりゃ親子は、たまに館にやってくる、箒にのった少女に頼み込み、
こっそり館の外へ連れ出してもらったのだ。

けれど、そこで二つの誤算があった。

一つは、遠くへ来すぎて、館へ帰れなくなってしまったこと。

そして、もう一つは、このゲスまりさ達にからまれたことだ。

たしかにゲスまりさ達は、いつもれみりゃ親子がエサとして与えられるゆっくりより大きかった。
その体長は、帽子を抜かしても50cm前後はあるだろう。

だが、そこはくさっても捕食種・れみりゃ。

殆どが子供とはいえ、れみりゃ5匹に対して、
少しばかり大きいエサが3匹いたところでものの数ではないと思っていた。

しかし、それが大間違い。

親れみりゃは、ぎゃぉ~~とゲスまりさに襲いかかったが、あっさりよけられ、
逆に3匹のゲスまりさのコンビネーションの前に、なすすべもなく体当たりされ続け、
あっという間に泣き出してしまった。

すると、あんなにも強くて格好良いと思っていた親れみりゃがやられたことで、子れみりゃ達もすっかり意気消沈。
子供達だけで狩りをしたことが無いこともあり、パニック状態に陥ってしまう。
その隙を突かれ、子れみりゃ達も、さして抵抗するでもなくゲスまりさ達のオモチャとなってしまった。

これこそが、館のメイド達がゆっくりゃザウルスを外へ出したがらないかった理由だった。

当のれみりゃ達は、何故か"最高に強そうで格好良い"と感じるのだが、
ゆっくりゃザウルスへの変化はパワーアップでも何でもないのだ。

むしろ、全ての面において弱体化しており、
その戦闘力は、れみりゃ種の中でも最弱と言っても過言ではない。

しかし、なまじ物珍しく、また肉まんとしてもより肉厚が増えて美味しくなっているため、
ゆっくりを愛好する人間達や、れみりゃの味を知っているゆっくり達から、しばしば狙われ命を落としてしまう。

それを知らず、勘違いしたが故に、このれみりゃ親子の悲劇は起きた。

「おねがいやべでぇぇぇぇ! れみりゃをたべぢゃだべぇぇぇぇぇっっ!」

「「「むーしゃむーしゃだぜぇ~♪」」」

泣き叫び哀願する親れみりゃと、構わずれみりゃの尻尾を食べ続けるゲスまりさ達。

親れみりゃにとって、永遠に続くかと思われた生き地獄は、
断続的な地響きと、その後に続く鳴き声……"とってもエレガントでイケている"と
親れみりゃが苦痛を忘れて聴き惚れた歌によって、遮られた。

『ティ~ガティガティガ♪ ティガれみりゃ~~♪』

「だれだぜ! じめんをゆらすのをやめるんだぜ!」
「なんだぜ? だれがうたってるんだぜ?」
「だれだぜ? まりさたちのしょくじをじゃまするのは!」

きょろきょろ左右を見回すゲスまりさ達。
しかし、見えるのは、湖と木と緑と潰れた肉まんと今たべているにくまんと……。

「ゆっ? だれもいないんだぜ?」
「おかしいんだぜ!」
「もういちどかくにんするんだぜ!」

ゲスまりさは警戒を怠らず、3匹がそれぞれ背中を合わせて、死角を無くす。
ゆっくりらしからぬコンビネーションは、この3匹が長年をともにし、
いくつかの修羅場を乗り越えてきたことを示していた。

「……うぅ?」

一方、一時的にとはいえ、解放された親れみりゃもまた、
"エレガントでかっこよくて綺麗な声の"歌の主を、目だけを動かして探す。

『ティ~ガティ~ガティガ♪』

「「「姿をあわらせだぜ!」」」

いらつくゲスまりさ達。
何度みても、そこには異常は確認できない。
見えるのは、湖と木と緑と潰れた肉まんと今たべているにくまんと……。

……緑?

この緑は葉っぱじゃない。
それによく見ると動いている。

『ティ~ガティガティガ♪ ティガれみりゃ~~♪』

ゲスまりさ達は、その視界に入っている緑を追って、徐々に顔を上げていく。
同じく、その緑色の存在に気付いた親れみりゃも、つられて瞳を上へ向ける。

そして。

「「「うぶっぼげぇぇぇ!!!」」」

「うーーーーーーっ!!!」

声にならない驚愕の叫びと、まるで神にでも出会ったかの如く感嘆に染まった叫びが、湖畔に重なる。

ゲスまりさと、親れみりゃが見上げた先、
そこには、超巨大ゆっくり・ティガれみりゃの満面のしもぶくれスマイルが広がっていた。

ゲスまりさの視界に入っていた緑色は、ティガれみりゃの足先だったのだ。

『ティガ☆れみ☆りゃ☆う~~~~♪』

「げぇぇぇぇぇぇぇっっっ!」
「う~~~~~~~~♪」

ゲスまりさと親れみりゃを見つけ、お得意のダンスを披露するティガれみりゃ。
ゲス達は恐怖で青ざめさせ、親れみりゃは興奮で顔を紅潮させている。

「か、か、か、か……かっこいいどぉーーー!!!」

目をキラキラと輝かせる親れみりゃ。
自分がゆっくりゃザウルスになった時も、鏡を見ては惚れ惚れしたものだが、
いま目の前に立っているれみりゃは、そんな自分から見ても格が違う!

「ま、まさに、かりしゅまだどぉ~~~♪」

ゲスまりさ達に虐められ、子供を目の前で失い、絶望のさなかにあった親れみりゃにとって、
このティガれみりゃの存在は鮮烈だった。

これこそ、自分達れみりゃが目指すべき姿! れみりゃ達の救世主!
れみりゃの完成系! れみりゃの最終兵器! れみりゃを終わらせたれみりゃ!

「れみりゃが歩いたばしょなど、このれみりゃはすでに2000年前につうかしてるんだどぉ~~♪」

……と、錯乱するほどに、親れみりゃは感動を覚えていた。

一方、ゲスまりさ達といえば、
口をパクパクさせたまま動けずにいた。

あまりにも違いすぎる大きさは、それだけで相手の戦意と思考を喪失させる。
まして、こざかしくもこれまで何度かの修羅場を切り抜けてきたゲスまりさ達だったからこそ、
いま目の前にいる巨大なゆっくりが、いかに絶望的な存在かを本能的に察してしまっていた。

本能的な恐怖が体を萎縮させ、ゲスまりさの体を、こおりつかせて動けない状態にさせていた。

『うっ~う~♪ れみりゃとおんなじれみりゃがいるどぉ~♪』

「うーうー♪」

ティガれみりゃに呼ばれたことが嬉しくて、うれしそうに反応する親れみりゃ。
立ち上がり、一緒に踊ろうとして……

「うっぎゃぁぁっ!」

体の無い部分を動かそうとして痛みがよみがえり、
四肢と尻尾を食べられてしまっていたことを、嫌でも思い出す。

『う~~~?』

そんな親れみりゃの様子を不思議そうに眺めるティガれみりゃ。
やがて、肉餡の脳が、的はずれな答えを導き出す。

『わかったどぉ~♪ おなかがすいてうごけないんだどぉ~♪』

ティガれみりゃは言うや否や、
足下でかたまっているまんじゅうを一つつまみ上げる。

「た、たすけるんだぜ!」
「し、しらないんだぜ、まりさは無関係なんだぜ…」
「そうだぜ、それにきっとそのまりさが一番おいしいんだぜ…」
「ど、どぉじでぞんなごどぉいうんだぜぇぇぇぇっ!!!??」

ゲスまりさは、いかにもゲスらしく、自分のためだけに仲間を売り払おうとする。

『うーー、うるちゃいおまんじゅうだどぉーー』

ティガれみりゃは、つまみ上げたゲスまりさに、少しだけ力を込める。

『うるちゃいと、つかれたれみりゃがたべられないんだどぉー! しずかにしないとたーべちゃうぞー♪』

「ぷぎょげっ!」

ティガれみりゃの指に込められた力に耐えきれず、瞬時にパァーンと弾けるゲスまりさ。
ちょっとしかるだけのつもりでも、ティガれみりゃの力は、普通のゆっくりにとっては致命的な威力となってしまう。

『う~~~♪ れみりゃしっぱいしちゃったどぉ~~♪』

てへっ♪と舌を出しておどけるティガれみりゃ。

「や、やめるんだぜ~~~~!」

二匹目のゲスまりさをつまみあげるティガれみりゃ。

『しぃぃ~~~~だどぉ♪』

ティガれみりゃは、おとなしくするよう告げるが、
生命の危機にさらされた生物が、それでおとなしくなるわけもなく。

「はんすんだぜ! このでかにくまん! まりさよりあっちのまりさの方がおいしいんだぜ!」
「やぁべろぉぉぉ! ぞんなごどいうなぁぁぁぁ!」

『う~、おまんじゅうのくせにれみりゃのいうこときかないなんて、なまいきだどぉ』

いつまでたっても静かにならないゲスまりさ達に、
ティガれみりゃは、ぷくぅ~と頬を膨らませる。

「ぎょえぇ!」

無意識的につい力がこもってしまったのか、ゲスまりさがパァーンと弾け飛ぶ。

『うーーーっ! どぉーしてうまくいかないんだどぉー!』

いらつき、3匹目のゲスまりさをつまみあげるティガれみりゃ。

「や、やめてほしいでございますだぜ…」

卑屈に下手に出るゲスまりさ。
一方、ティガれみりゃはゲスまりさの言葉など聞かず、
ポケットに手を入れガサゴソと動かした後、そのまま空の手を取りだした。

『うっう~~~! すぴあ☆ざ☆ぐんぐにるを、忘れてきちゃったどぉ~~♪』

"れみりゃのおっちょこちょいさん♪"とでも言いたげに、
自分の頭を軽く叩き、頬を赤く染めるティガれみりゃ。

ちなみに、"すぴあざぐんぐにる"とは、
ティガれみりゃがポケットの中にしまって持ち歩き、
ゆっくりを狩る時に愛用する、立ち枯れた木のことだ。

ティガれみりゃは、その木の枝にゆっくり達を突き刺して、
"とくせいゆっくりだんご"を作って食べる習性があった。

「ま、まりさにひどいことすると、ドゲスたちがだまってないんだぜ、わかったらさっさと……」

ゲスまりさは、相変わらずティガれみりゃに自分を見逃すよう説得を続けていた。
しかし、ティガれみりゃ相手にそんな交渉は意味も無く、

「ゆべしっ!」

次の瞬間、押しつぶされて体を四散させていた。

『う? またやっちゃったどぉ♪』

しかたない、それじゃ次のおまんじゅうで……。
ティガれみりゃは足下をみるが、そこには既にゲスまりさはいない。

それはそうだ。
3匹のゲスまりさは、他ならぬティガれみりゃによって殺されたのだから。

『う~~~! これじゃ、れみりゃにごはんをあげられないどぉ~~~!』

鼻の上のあたりを真っ赤にしてジタバタするティガれみりゃ。

『しゃくやーー! はやくれみりゃたちにぷっでぃんもってきてぇーー!』

と、お決まりに、いもしない従者の名前を呼ぶが、当然誰かがくるはずもない。

『うー……』

しかたなく、短い手と膝をつき、顔をよせて、
小さな親れみりゃに話しかけるティガれみりゃ。

『うー、ごめんだどぉ。おまんじゅうなくなっちゃたんだどぉー』

ティガれみりゃは詫びるが、
それに対して親れみりゃの方は全く気にする素振りもない。

それどころか、自分達をいじめたあの3匹のゲスまりさを、
まったく寄せ付けず倒してしまった強さに、ただただ感動していた。

「うーうー♪ れみりゃは気にしないどぉー♪ それより助けてくれてありがとうだどぉー♪」

『う~~? いいのぉー?』

ティガれみりゃからすれば、別に助けたつもりもなかったので、
ただただ自分のミスを許してくれて、おまけに何故か御礼を言われたことに気分を良くする。

『うー♪ ちっちゃなれみりゃは優しい良い子だどぉ♪
 れみりゃは、れみりゃにごほうびをあげたいどぉー♪』

「うっ? ごほーび?」

『そうだどぉ♪ なんでも言ってねぇ~♪』

うっふんとウィンクし、
うんしょ、うんしょと立ち上がるティガれみりゃ。

「……うぅー」

親れみりゃは考える。
そして、自分の置かれた立場を思い出した。

迷子になってしまったこと、子供を失ってしまったこと。
次々に悲しみがよみがえってきて、自然と涙が流れてくる。

『うーっ! どぉーしたんだどぉ?』

「うーーー! うーーー! うーーー!」

『う~~、れみりゃに泣かれると、なんだかれみりゃもかなしくなるどぉ~~』

困ったような笑顔のまま、ティガれみりゃは目尻にうっすら涙を浮かべる。

「……う~、れみりゃ、おうちにかえりだいどぉ」

嗚咽をすすりながら、親れみりゃは口を開く。

そう、おうちへ帰ろう。
そして、ぷっでぃんを食べて、さくやに慰めてもらって、ふかふかのベッドで眠ろう。

親れみりゃは、それだけを強く願い始める。

『う~~♪ わかったどぉ~~♪』

「うっ?」

『れみりゃがいっしょにおうちを探してあげるどぉ♪』

ティガれみりゃは、潰さないよう、優しく手の平の上に親れみりゃを乗せ、
自分の顔の前へ持ってくる。

至近距離で互いの顔をじっと見つめ合う、ティガれみりゃと親れみりゃ。

『う~~♪ ちっちゃいれみりゃだどぉ~~♪』

「う~~♪ おっきぃれみりゃだどぉ~~♪」

自然と笑顔になる、ティガれみりゃと親れみりゃ。

『うっうー♪ ちっちゃいれみりゃもかわいいどぉー♪』
「うっうー♪ おっきぃれみりゃもかっこいいどぉー♪」

互いを褒め合い、たたえ合う2人(?)
ティガれみりゃは、親れみりゃを自分の頭の上に乗せる。

「う~! すっごい高いどぉー! 風がきもちいいどぉー♪」

痛みも忘れ、喜ぶ親れみりゃ。
実際、既に手足はだいぶ再生しており、
ふりおとされないようティガれみりゃの頭にしがみつくくらいのことはできるようになっていた。
最弱といえど捕食種れみりゃ。ゆっくりゃザウルスとなっても再生力は健在である。

『うー、それじゃいっくどぉー♪』
「うーっ♪」

よったよったのしのし。
よったよったどったどった。

頭の上にゆっくりゃザウルスを乗せて、
ティガれみりゃは湖に背を向けて、森を進んでいく。

……紅魔館は、湖の対岸にあるのだが、
そんなことはティガれみりゃも親れみりゃも知らなかった。

2人はそろって楽しげに、うぁうぁダンスのリズムを取り始める。

『「うーうーうぁうぁ♪ うーうーうぁうぁ♪」』

楽しげに歌って踊るうち、親れみりゃは、
自分の中に芽生えつつあった嫌な疑問を払拭しはじめていた。

疑問。
それは、あのゲスまりさ達がたびたび口にした内容。
"れみりゃ達はおぜうさまではなく、たべられちゃうにくまんなの?"という不安。

けれど、そんなのは気のせいだ。
あのいじわるなゆっくり達がウソをついたに決まっている。

(だって、こんなにも可愛くて強いティガれみりゃが、にくまんなわけないもん!)

親れみりゃは、強く確信し、ティガれみりゃにあわせて快心のリズムを刻んでいく。

『ティガ☆』

「れみ☆」

『りゃ☆』

「うー♪」

『「にぱぁ~~~♪」』

にぱぁ~のタイミングでティガれみりゃと親れみりゃは、
その下ぶくれスマイルを最高に輝かせた。

あまりにも歌も踊りも素敵だったから、気持ちよくて楽しかったから、
だから2人は気付かなかった。

ティガれみりゃの進む先、空中を浮遊する1人の少女の姿を。
人とも妖怪とも違う、もっと強くもっと恐ろしい、幻想郷からは本来姿を消した存在。

甘ったるい桃ばかりに飽きて、塩からいツマミを探していたその"鬼"の存在に。




to be continued



次回予告
『ティガれみりゃ4・誇りをかけた試練(後編)』




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(あとがき)

どうも、ティガれみりゃ第三回です。
すみません、ちょっと長くなってしまったので前編後編わけました。

……というか、風邪をこじらせてしまいまして、
そろそろ意識が朦朧としてきたので、とりあえずここで区切らせていただきます。
(ほんとはこの先が書きたくて、このエピソード作ったのにorz)

それと、本当にどうでも良いことではあるんですが、
そろそろモンハンが元ネタのタイトルが尽きてきました……。


byティガれみりゃの人

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最終更新:2022年04月11日 00:42