視点がコロコロ変わるので注意ね。



夏のある日、川で涼もうと歩いているとゆっくりの一家を見つけた。
親らしいゆっくりれいむとまりさが一匹ずつ、子れいむが三匹に子まりさが二匹だ。

「「ゆっゆ~♪」」
「「「ゆゆ~ん♪」」」
「「ゆ~♪ ゆ~♪」」

別に一家を虐めてもいいのだが、こう暑いとやる気も半減である。
だらだらと涼を求めて川へ向かう。
あの一家は幸いにも俺に気づくことなく森へ入っていた。

暑くて仕方ないのに虫がそこら中にいる森へ行く気は起きない。
多少遠くても森を迂回するようにして川へと進む。

「おーう。待っていたか我が桃源郷よー。…お?」

暫くして川辺に到着した俺は、先ほどのゆっくりの一家を見つけた。
いや、数が同じなのでそうなのだろうと思っただけだ。

すわ虐待してやろうか?等と考えたが、まずは暑いのを何とかしなければなるまい。
川の水に足をつけてひんやりとした心地よさを堪能する。
ついでに両手で水を掬って顔を洗う。ここに来るまでに少々汗をかいてしまった。

「ふー…。一人で水浴びっていうのもなんだかなー…。
 はぁ…。
 男一人で水浴び……。
 はぁぁ……」

いかん。テンション下がってきた。
こういうときは…




川の中で膝をついていた男は、その視線をゆっくりと一家に向けた。
楽しそうに遊ぶ子ゆっくりたちと、それを見守る親ゆっくりの一家へと。




そんなことは露知らず、親まりさは子まりさ二匹に川渡りを教えていた。
まず親まりさが見本として帽子を浮かべ、木の棒を使って流れないように固定する。

「ゆっ! まずはぼうしがどこかへいかないようにしてね!」
「「ゆっくりりかいしたよ!」」

返事をした子まりさたちも帽子を水へ浮かべる。
そして多少もたつきながらも何とか固定することが出来た。

「つぎはゆっくりとぼうしにのるんだよ! ゆっくりちゅういしてね!!」

そう言って親まりさはするりと帽子に乗り込み、数回泳いで見せた。
子まりさはそれをみて感激し、親れいむは誇らしくなった。
親まりさは、親れいむの中ではゆっくり一泳ぎが上手いゆっくりになっているのだ。
伴侶の華麗な泳ぎを見て子供たちもきっと尊敬しているのだと。

とはいえ、別にこのまりさはそれほど上手く泳げるわけではない。
どこかにはずっと水上で生活しているまりさもいるというのだから。
まぁ、見たことも聞いたこともないものを知るということは出来ないので、しょうがないといえばしょうがないのだが。

閑話休題。

子まりさたちは両親の声援を受けながら、恐る恐る自らの帽子へ乗り込む。

「ゆっくりのってね!」
「ゆっくりがんばってね!!」

「ゆっくりのるよ!」
「ゆっくりがんばるよ!」

二匹は餡子を振り絞って帽子へ乗り込んだ。
一匹が落ちそうになったが、親まりさがきっちりサポートしていたため事なきを得た。

「「ゆっくりのれたよ!」」

「さすがまりさのこたちだね!」
「ゆゆ~ん♪ れいむのこでもあるよ!!」

二匹が無事泳げたのを見て、両親は子供たちを褒めちぎった。
しかし子れいむたちは不満だった。

「ゆー! れいむたちもおよぎたいよ!」
「「れいむたちもおよぎたいよ!!」」

「れいむたちはぼうしがないからしょうがないよ!」
「みずのなかでゆっくりしてるととけちゃうよ!」

「「「ゆぅー!」」」

親れいむはそう言い聞かせるが、子れいむたちは納得できない。
だが、何度か水に浸かりすぎて溶けてしまったゆっくりを見ているので納得するしかない。
子れいむたちは極めて不満であった。

「「「でもれいむたちもおよいでみたいよ!」」」




「どうしたんだい?」

子れいむたちの餡子の叫びに、上から声が降りてきた。

「「「「「ゆゆゆ!!!?」」」」」

ここでゆっくりの一家は、初めて人間の存在に気づいた。

「小さなれいむたちは、川で泳ぎたいのか?」

人間は一家を見回しながら、ゆっくりと問いかけた。

「ゆ…ゆっくりおよぎたいよ!」
「「ゆっくりおよぎたい!」」

初めて見る人間に驚きながらも、自らの欲求を果たしたがる子れいむたち。

「だけど、帽子がないと溶けてしまうんだろう?」

「そうだよ! あんまりゆっくりしてるととけちゃうんだよ!!」

親れいむも人間の言葉に追従する。
帽子が無いのは仕方の無いことだと、説得しようとする。

「「「でもまりさたちだけずるいよ!!」」」

「おかあさんのいうことをきいてね!」

「うるさいよ! れいむたちもおよぎたいんだよ!!」
「「うるさいおかあさんはだまってね!!」」

「どおじでそんなこというのお゛お゛お゛お゛!!!」

しかし、子れいむたちは引こうとしない。
罵倒された親れいむは涙ながらに説得を続けようとする。

「じゃあ、大きなまりさの帽子を使えば良いじゃないか」

「ゆゆっ? どういうこと? ゆっくりせつめいしてね!」

突然現れた人間を警戒して、水から上がった親まりさは人間の言葉に面食らった。
元から面しかないのだけど。
人間はまりさの言葉には反応せず、まだ陸に上げただけの帽子を取り上げると何かを括り付け始めた。

「まりさのぼうし! ゆっくりかえしてね!! かえしてね!!!」
「おにいさんはゆっくりできないひとなんだね!!!」

親れいむとまりさは人間に帽子を返すように言うが、人間はそれを無視して子れいむたちへ近づく。
子れいむたちが危ないと感じた親まりさは体当たりを仕掛けるが、跳ね返されてしまう。

「ゆぎゅっ!」
「まりざあ゛あ゛あ゛!!! いやあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
「ゅゅ…」

親れいむは泣き叫ぶだけで動かない、いや、恐怖で動けない。
餡子に刻まれたトラウマでも思い出したのだろうか。

そして子れいむたちも同様に動けなかった。
親まりさよりも大きな人間が、ゆっくりにとっては命より大事な飾りを持って迫ってくる。
人間はその大きな手を自分たちに向けてきた。

「ゆっくりやめてね!」
「ゆっくりおねがいね!!」

ようやく逃げようとしたが、遅かった。
人間は子れいむをゆっくりと一匹ずつ親まりさの帽子へ入れていく。

「「「たずげでええええ!!」」」

帽子に三匹全てを入れ終えた人間は、ゆっくりと川に帽子を浮かべた。
そして中の子れいむたちに何かを囁きかけた。
すると帽子から子れいむたちが笑顔で顔を見せたではないか。

「ゆっくりー!」
「ゆっくり~!」
「ゆっくり~♪」

「「ゆぅ…?」」

唐突な状況の変化に戸惑う親二匹。
人間の行動を図りかねているうちに、人間は帽子から手を放してしまった。
流れに沿って動き始めた帽子を見てようやく親まりさが我に返った。

「まりさのぼうし!!! まりさのぼうしをかえしてね!!!」
「れいむのこどもたちもだよ!!」

ついで親れいむも我に返り、二匹で返せ返せと騒ぎ出す。
人間はゆっくりと親たちに近づき、手に持っていた紐を差し出した。

「ほれ、これさえ持っていれば小さなれいむたちも泳げるだろう?」

「「ゆゆゆっ?」」

「帽子に縄を括り付けたから、これさえ持っていれば帽子が流されることもない。
 引っ張れば帽子も子供たちも回収できるよ」

そう言った人間が紐を引っ張ると、確かに帽子がこちらに動いたではないか。
親まりさは再度差し出してきた紐を受け取った。

「ゆっくりりかいしたよ! おにいさんありがとう!」
「ぷんぷん! そういことならはじめからいってよね!」

親まりさは礼を言い、親れいむは文句を言った。
人間はそれを一瞥すると、何も言わずに森へ消えていった…。




親まりさは紐をくわえながら、家族が無事だったことに安堵していた。

「ゆふぅー。ぼうしとこどもたちがぶじでよかったね!!」
「ほんとにね! びっくりしたけどぶじでよかったね!!」

れいむも、思う存分水の上を堪能している子れいむたちをみて機嫌を直したようだ。

「ゆっくりできてるー?」
「「「とってもゆっくりしてるよ~♪」」」

と、ここでまりさは何かを忘れていたことに気づいた。
とても可愛くて、大事だった何かを。

「ゆゆ…」

暫く悩んだが、思い出せないので忘れることにした。
思い出せないということはそれほど大事なことじゃないだろう。

「ゆ?」

ガサゴソという音がする。
なんだろう…?他のゆっくりかな?
そう思ってゆっくりと振り返ったまりさが見たのは、見たのは…




念願の帽子の上でゆっくりを達成できた子れいむたち。
ぷかぷかと水の上を泳い(実際は浮かんでいるだけ)でとてもゆっくりしていた。

「およぐのってたのしいね!」
「とってもゆっくりできるね!」
「ゆゆ~♪」

とてもゆっくりしていたそのときだった。

「れっれっれみりゃだああああああ!!!!!!」
「うわああああああああああああ!!!!!!」

「「「ゆぅ?」」」

おとうさんの叫び声と、聞いたことのない声があたりに響く。
同時に帽子も緩やかに動き始めた。

「ゆ~♪ ゆっくりうごきだしたよ!」
「「ゆっくりできるね!」」

気分を良くした子れいむたちは、調子の外れた歌を歌い始める。

「ゆぅ~っくり~♪」
「「ゆっくり~ゆっくり~♪」」

段々と遠ざかる親たちに気づくことなく、子れいむたちは流されていった。




「ちょっと時間がかかっちまったな…」

様々な虐待道具を持って森を歩く。
先ほどはゆっくりの悲鳴や絶叫を聞いてテンションを上げるつもりだった。
しかし予想以上に上がりすぎてしょうがないので虐待道具を取りに帰ったのだ。
準備に少々手間取ったが、去り際の様子から暫くは留まると判断した。

川辺ということで、水を使った虐待なんぞしようかなー等とニヤニヤしながら森を抜けた。
そこにはゆっくりしている今日の俺の獲物が

「獲物…が…いない?」

いや、一匹のれみりゃがうあうあと踊っていた。
そして足元には赤いリボンが一つと、ゆっくりのデスマスクが二匹分。

「………………………」

「うっうーうあうあ♪」

「………………………」

「うっうーうあうあ♪」

「………………………」

「うっ「ゆっくりしね!!!!」あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」

泣きたいのはこっちだよ!!!





おわれ。

他に書いたの→波乗りまりさとか

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2022年05月03日 15:27