※この里の人たちはとても仲が良く連帯感が強いです







「やめてね、ゆっくりやめてね!」
「いたい、いたいよっ!」
「やめでっでばぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!」
「むぎゅぅ~……」

人里の外れで、四匹のゆっくりが泣きながら懇願している。
四匹のゆっくりとはゆっくりれいむ、まりさ、ありす、ぱちゅりーだ。
この四匹は今、高さ六尺(下部を土に埋めるので実際には四尺)の細い木の棒に縛り付けられ身動きがとれない状態だった。
それぞれ縛り付けられた四本の木の棒の脇には、「このゆっくりは畑を荒らしました」と書かれた看板が立ててあった。

これはこの人里における悪さをしたゆっくりへの刑罰、『晒し首』だ。
里の中で悪さをしたゆっくりを、野良、飼い関係なく里の外れにてこのような状態にし、道行く人々に憐れな姿を晒して反省させるものだ。
もちろん殺しはしない。刑罰が終わればちゃんと帰してもらえる。
そしてこの刑罰はただ身動きをとれなくして晒すだけではない。
それは、

「やぁい、悪いゆっくり!」
「ゆっくり反省しろ!」
「うちのちぇんとは大違いだな!」

四匹のゆっくりに向けて石を投げている三人の少年の通り、道行く里の人にも刑罰を与えてよいというものだ。
多くの人々から悪いことをしたと叱責を受け、かつ痛い目にあえば、いくら餡子脳のゆっくりといえども自分が悪いことをしたと理解し、反省を促せるのだ。
ただし、殺してはならないが。

少年達の投げる石がゆっくり達の体にビシビシ当たり、その痛みにゆっくり達は顔をしかめ、泣き喚く。同時に浴びせられる言葉によってお前は悪いことをしたのだと教えられる。

「ゆっぐりやべでねっ!」
「ゆっぐりぢでいっでね! ゆっぐりぢでいっでね!」
「ごんなごどずるなんでとがいはじゃないわ゛ぁぁぁぁ!!」
「むぎゅっ、むぎゅっ……!」

この刑罰を見た里の外から来た人の中には、同じ事を人間にもやるかと問う人もいる。
だが人間とゆっくりを同じにしてはいけない。これは対ゆっくり用の刑罰だ。
それ以前に、この里では悪さを働く人間はいない。里の中の閉塞性と連帯感が強く、このような閉塞したコミュニティで悪事を働くことは自殺行為に繋がる。
それに貧富の差もあまりない。盗んだり奪ったりする程の物は他人も持ってないし自分も持ってない。
ある程度ならば頼み込めば融通を利かせてくれるという面もある。

「ふぅ、ちゃんと反省したか?」
「もうやっちゃだめだぜ」
「うちのちぇんみたいに良いゆっくりになれよぉ」

石投げにようやく飽きたのか、三人の少年達はその場を去り里の中心方向へ向かっていく。
後に残されたのは痛みに涙を流す四匹のゆっくりのみ。

「ゆぐっ、ゆぐっ、どうじでごんなべに……」
「ゆっぐりじだいよ……」
「まりざぁ……、だずげでよぉ……」
「むきゅぅ……」

グズグズと泣いて今の自分たちの境遇を嘆くゆっくり達。
そのゆっくり達を遠くから眺めるゆっくり達もいた。
『晒し首』が行なわれている場所は、里の外れの方で、そこは近くにあるゆっくりが生息する森からも見える場所にあった。
これによって他のゆっくり達への警告にもなる。悪さをしたらどうなるかという。

ゆぅ~、と木に縛りつけられながら涙を流すゆっくり達のところへ、今度は一人の青年がやってきた。

「おっ、また悪さをしたゆっくりか」

その青年は『晒し首』にあっているゆっくり達に近づいていった。彼は家の場所の関係でよくこの場所を通るので、『晒し首』にあっているゆっくりをよく見るのだ。

「ゆぐっ、でいぶだちわるいごとなにもじでないよ゛ぉ……」
「まりざだぢはゆっぐりじでだだげだよぉ……」

涙ながらにれいむとまりさは訴えた。だが青年はハッハッハッと一笑に付した。

「悪いことをしたゆっくりは皆そう言うんだよ」

青年は右手を振りかぶった。何事かと不思議がるれいむの右頬に、その手が振るわれた。
バチーン!

「ゆぶっ!?」

突然の頬に伝わる激痛にれいむは驚愕した。そしてあまりの痛みにまた涙が溢れた。

「ゆ、おにいざん、なにず──」

バチーン!
振るわれた右手が元の場所に戻る振りで、今度は逆の頬が叩かれた。往復ビンタだ。

「おにいざ、ゆっぐり──」

バチーン!
再び右手が振るわれる。

「やべでねっ、ゆっぐりやべで──」

バチーン!
また逆頬も叩かれる。

「ゆっぐ──」

バチーン!

「やべ──」

バチーン!

「ごべんなざ──」

バチーン!

「もうやべでぐだざ──」

バチーン!!

都合三十往復。
ケガをさせることなく見事に痛みだけをあたえる往復ビンタにより、れいむの頬は少しだけ赤くたるんでいた。
この青年はゆっくりへの罰を与えることにおいては既にベテランの域だった。

「反省したか? もう悪いことはしちゃだめだよ?」
「ゆっ! まりざもれいむもわるいごどなんがしてないよ!」

頬の痛みに喋ることもままならないれいむに代わり、横で縛られているまりさが抗議の声をあげる。
青年は

「ふぅ、いつもの事とはいえ、しょうがないなぁ……」

と嘆息すると、まりさの前に移動する。

「おにいさん、はやくこのなわをといてね! まりさたちはおうちにかえってゆっくり──」

バチーン!
まりさの頬に青年の右手が振るわれた。
「ゆぶっ!? おにいさん、やべ──」

バチーン!
と、よく響く音がしてまりさへの往復ビンタも開始された。
三十往復ビンタ。
ありすにもぱちゅりーにも平等にビンタが下され、青年からの罰は終わった。

「さて、これに懲りたらもう悪いことはしちゃだめだぞ?」

青年はそう言い残してその場を去って行った。
再び後に残されたのは嗚咽をこらえて涙を流すゆっくり達だけだった。

「もう゛やだっ! でいぶおうじがえる!」
「ゆっぐり゛でぎない゛ぃ……」
「どがいばのありずをおうじにがえじでぇぇぇ!!」
「むきゅぅ……」

だがその願いは叶えられない。
その後もゆっくり達への刑罰は続く。

「お前さんたちまた来たのかい、悪さはダメだって言ったろ!」
「でいぶだぢそんなごどじらないよ゛ぉぉぉ!!」
「いだい、いだいっ、おばさんゆっぐりやべでねっ!」

通りかかった女性に木の枝でバシバシと叩かれ

「けっ、薄汚れたクズ饅頭め! 人様のものを盗むとはいい度胸だ、ベッ!」
「ゆぎゃぁぁぁぁ! ぎぢゃないよぉぉぉ!!」
「むぎゅぅぅぅ……」

通りかかった壮年の男に唾を吐きかけられ

「くそっ! くそっ! お前らのせいでうちの畑はなぁ!!」
「ゆぶっ! ゆぐっ! でいぶだぢなにもわるいごどじでな──ゆぎぃぃ!!!」
「れいむ゛にひどいごどやべでねっ! やべでねっ!!」

親の畑仕事を手伝い始めた少年に殴られ

「そぉら、コチョコチョコチョ」
「ゆっ、ゆひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!! ゆっ、ゆっ、ゆっぐりでぎな──ゆひゃひゃひゃひゃ!!」
「どぼぢでごんなごどずるのぉぉぉぉぉ!!!」

鳥の羽を持った少女に発狂寸前までくすぐられ

「ほらっ! ほらっ! これがいいんだろ!!」
「いだいっ! いだいっ! ゆっぐりやべなざいっ! どがいはじゃないわ゛よっ!」
「むぎゅぅぅぅぅぅ!!」

若い女性にムチプレイの実験台にされ

「溶かした蝋を目に流し込むとどうなんだろ……」
「ゆぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「ばりざぁぁぁぁぁぁ!!! ゆっぐりじでいっでね!! ゆっぐりじでいってね!! おにいさんゆっぐりじでね!!!」
「あぁ、ゆっくりしてるよ」

新人虐待お兄さんの実験台にされたりなどをされ、自分の悪い行いをしたという自覚を痛みと共に体に覚えこませるのだ。
また、それだけでなく、それを見る人にも効果はある。

「ほら、たけし。悪いことをするとあのゆっくりみたいになるんだよ」
「僕悪いことなんてしないよ」

子供への教育にもなったりする。この効果もあるのかやはりこの里では人による悪事は起きない。

「ほぅら、まりさ。悪い事をするとあんな風になるのよ」
「ゆぅ、ゆっくりりかいしたよ!」

飼いゆっくりへの教育にもなる。もっとも、餡子脳故ゆっくりの悪事はたまに起こるが。

こうして日が暮れるまで数多の刑罰をその身に受けることになるゆっくり。
四匹のゆっくりはどれも死んでいない。まりさの右目が潰れてはいるが、それだけだ。この里の者はこれは刑罰であり処刑ではないと理解しているのだ。
ちなみに、まりさの右目を潰した青年は後で先輩虐待お兄さんに叱られた。やりすぎはよくない。皆が皆同じことをするとゆっくりが死んでしまい刑罰にならない、と。

「ゆぐっ、ゆぐっ……どうじでゆっぐりでぎないの゛ぉ……」
「ゆひゅぅ……ゆひゅぅ……」
「ばちゅりーじっがりじでぇ……」
「どがいばのおうじにがえりだいよぉ……」

木の棒に縛り付けられたゆっくりは涙を流し己の境遇を嘆く。
何故こんな目にあわなければならないのか、と。
そんなゆっくり達に近づく一人の青年がいた。それはこのゆっくり達を捕まえて悪さをしたゆっくりだと突き出した人だった。
れいむはこの青年に、どうしても訊きたいことがあった。

「ねぇ、おにいさん……。なんでれいむたちこんなめにあってるの……? れいむたちただゆっくりしてただけだよ……」
「そうだよおにいさん! まりさたちなにもわるいことしてないよ!」

れいむの呟きにまりさが追従する。
まだ言うかこの腐れ饅頭!
とは言わない。何故ならばこのゆっくり達が言っていることは、実は事実だったのだ。
この四匹のゆっくりは、森で仲良く遊んでいたところを、この青年に捕らえられ、やってもいない畑荒らしの犯人としてしたてあげられたのだ。

では畑は荒らされていないのかというとそうでもない。ゆっくりによって畑荒らしがあったことは事実だった。
では真犯人はというと、実は今は青年の家にいる。
何故か? 個人的虐待用だ。
そう、この青年は虐待お兄さんだったのだ。

「……面白いから」
「…………ゆっ?」
「おにいさん、それどういうこと!」
「とかいはのありすにもわかるようにせつめいしてね!」
「むきゅ、むきゅ!!」

「いやぁ、制裁もいいんだけどね、何もしてない良いゆっくりが酷い目にあうのも見たかったんだよ。
 あっ、畑を荒らした真犯人はちゃんと俺が罰を与えてるから大丈夫だよ。もう森には帰れないけどね」

「「…………ゆっ?」」

ゆっくり達は訳が分からなかった。
面白いから。ただそれだけでこのような酷い目にあっている現実と、ただ面白いからという理由で自分達をこんな目にあわせている青年がまるで理解できないのだ。
だが、それでも言わねばならない。

「おっ、おに゛ぃぃぃぃ!!」
「あぐま゛ぁぁぁぁ!!」
「うん、重々承知してるよ。虐待お兄さんの『おに』は『鬼』だからね」

青年は飄々とそれだけ応えると、地面に転がっていた桶を拾い上げた。

「さっ、後二日、頑張ってね」

そう言ってれいむに再び桶を被せた。れいむ達の刑罰は、まだ残っている。
青年は静かな足取りでその場を去っていった。
れいむ達は、青年が去った後も罵声を叫び続けたが、無駄なことだった。刑罰はまだ行なわれる。
畑荒しをした現場を見つけ、捕まえたのがあの青年だけである以上、あの青年が言わなければれいむ達は刑罰を逃れることはできないのだ。

「ゆぐっ、ゆぐっ……」
「おうじがえりだいよぉ……」
「ゆっぐり、じだい……すっきりじだい……」
「むきゅぅ……」

ぐすぐす、とゆっくり達の嗚咽の声が響き渡る。
それに反応するものは誰もおらず、夜が更けていく。やがてゆっくり達も眠りについた。









「うぅぅぅ!! やべるんだどぉぉぉ!!!」

次の日から、刑罰に胴付きれみりゃも加わった。
この場合の刑罰名は『磔』だが。






「ゆっくりは十進法を採用しました…………なんちゃって」



──────────────
あとがきのようなもの

誕生日になに書いてんだろ…………。


これまで書いたもの

ゆっくり合戦
ゆッカー
ゆっくり求聞史紀
ゆっくり腹話術(前)
ゆっくり腹話術(後)
ゆっくりの飼い方 私の場合
虐待お兄さんVSゆっくりんピース
普通に虐待
普通に虐待2~以下無限ループ~
二つの計画
ある復讐の結末(前)
ある復讐の結末(中)
ある復讐の結末(後-1)
ある復讐の結末(後-2)
ある復讐の結末(後-3)
ゆっくりに育てられた子
ゆっくりに心囚われた男

byキノコ馬




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最終更新:2022年05月03日 16:34