「ゆっくりしていってね!!!」
目が覚めるといつものように妹たちを起こすために叫ぶれいむ。
「!?ゆゆゆ!!!」
言い終わるとすぐに異変に気づいた。
自分以外に誰もいない。そして自分の巣よりも堅そうな、知らない物質でできた正方形の部屋。
「ここからだしてええぇぇぇ!!!おうちかえるううぅぅぅ!!!」
所々に付いた小さなライトが空しく叫ぶれいむを照らしていた。

「ゅぅ…ゅゅぅ…」
結局いくら叫んでも何も変わらなかった。
ならば実力行使。そう考えたれいむはキッと壁をにらみ、助走をつけてタックルした。
が、
「ぽぎゅ!!」
言うまでもなく結果は惨敗。ただただ顔を強打して泣き叫ぶだけだ。

泣き止むとあることを思い出していた。それは今は亡き母親の言葉。
『かこうじょにはちかづかないでね!はやくにげてね!』
何でも一度そこに入ると二度と生きて出られないとか。
ならば絶対に死ぬわけにはいかない。
「はやくでていくからね!!!」
れいむの心に火がついた瞬間だった。

まずはこの部屋を調べようと四方を見回した。
すると中央にはゆっくりのジャンプよりも少し低いくらいの高さの所に通路を見つけた。
だがその先は壁、どうやら全て行き止まりのようだ。
上を見ると天井の中心から縄梯子が垂れている。
銜えて跳ねてを繰り返せば上まで辿りつくことができるだろう。
だがこちらも行き止まりのようである。

とりあえずもう少し詳しく調べよう。そう考えて四方の一箇所に近づき、ジャンプで通路に入る。
が、やはり壁。しゅんとなってこつんと軽く頭突きをした時だった。
ガゴン!
重々しい音がすると頑丈な壁がゆっくりと動いたのだ。
この扉にはゆっくりを感知するセンサーが仕掛けてあったがゆっくりはそれを知らない。
だが「触れれば開く」ということは何となく理解したようだ。

「これでゆっくりできるね!!!とじこめたやつはゆっくりしね!!!」
ここを出ればみんなに会える!あの広い野原を走り回れる!わくわくして笑顔で通路を急ぐれいむ。
だがその先につくとその表情はすぐに崩れた。
部屋。今いた部屋と同じ部屋。少しライトの光の色が違うだけ。

それでもれいむはまだ完全には諦めていなかった。壁の開け方を知ったからだ。
ぽよんぽよんと跳ねながらその部屋の中央へと足(?)を運んだ。その時!

シャキン!シャキン!シャキン!シャキン!
ぷしゅ!ぷしゅ!ぷしゅ!
「ぐぎゅびゅぶ!!」
避ける暇も無く一瞬で下から飛び出たたくさんの金属製の針に体を貫かれるれいむ。
「…ゆ゛ぶり゛…ばなぢべべ…」
舌も貫かれたのかまともに喋ることもできない。
そして
しゅうぅぅぅぅぅぅぅぅ…
「あぶ!!あぶび!!」
音を立ててだんだん熱を持ちはじめる針にれいむは身を悶えさせる。
しかし針で体を持ち上げられているために逃げ出すことはできない。
「ゆ゛ぐ!!!ぎゅ!!ぐぶぶ!!びょびお゛!!」
だがいくら悶え苦しんでも体の中から来る熱は止まらない。
そして…
シャキン!シャキン!シャキン!シャキン!
「ぐひ…かひぃ…」
針が再び隠れた時、そこにはカラカラになったゴミが落ちているだけだった。

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最終更新:2020年09月21日 13:35