かもめが腕を負傷したあのミッションから一ヶ月、西洋文化研究会に新たな指令が下った。
その日は、研究のためにみんな集まっていて、これから始めようというところにメールが来た。
「来たか・・・・」
サイパンの呟きに呼応するかのように空気が変わっていく。
全員がメールを黙読し始めた。内容はこうだった。
「この社会を変えるために、また皆さんに動いてもらいます。
今回は企業関係です。
前回のあれで政治関係にカタがついた訳では無いですが、あの政治家が捕まり、
政界は少しばかり変化しています。そっちでは今動くべきではありません。
さて、それはともかく皆さんにはお話があります。
先ほど「企業」と言いましたが、これには大きく分けて二つあることを話しておかなければなりません。
紳士的な企業と腐った企業です。
今、紳士的な企業は腐った企業に比べて、あまりにも極少数です。
このまま紳士側の企業が無くなってしまったら、この腐った社会の変革も難しいものになるでしょう。
人々と企業は密接に関わっていますからね。
皆さんには「紳士側」の企業を救い、あるいは守っていただきたい・・・」
今回の作戦は前回の約束通り、フック、かたつむり、サイパンが行動することになった。
「待ってました!」
前回のように危険なことになる可能性を考慮し、coxinhaも常に近辺で待機することとなった。
「オーライ、マカセテオケ!」
「発音きれーい♪」
二日後の朝、三人は会長に指示された場所へと足を運んだ。
「橋本弁当」と書かれた看板を下げているそこは、フルハウスから見て東京の反対側と
いったところにあった。外装はフルハウスを超えるオンボロで、普通の人は身を案じて中には
入らないだろう。
「弁当屋!?」
「地図的にはここで当ってるよ」
「ならしょうがない、突入だ!」
「お、おい待てっ!?」
ドスン!!
不意に、看板が落っこちてきた、フックの30cmぐらい後ろに。
「うわーーーーーーー!!びびったぁぁぁ!」
「ちっ、惜しかったな」
「ほんと、タイミング悪っ」
「お前らなぁ・・・・」
ごちゃごちゃ言い合ってるうちに、中から大慌てで人が出てきた。
「だだだ大丈夫ですか!?お怪我は!?」
背が高く白髭白髪の、若々しいおじいさんだった。
「ああ大丈夫です、ご心配なく」
自分の大声で心配を掛けたと思い、フックも詫びたが、
「ほんと、本当に申し訳ございません!!通りすがりの方々にこのようなご迷惑をお掛けするとは!!」
相手は超必死だ。
「いえいえそんな・・・・それに通りすがりじゃなく・・・」
「まさかっ!!お客様!?ああ~もぅどう詫びたらいいのか!!申し訳ない!!」
このままじゃ拉致が明かないと、かたつむりが仲介に入った。
「違うんですよおじいさん、俺たちはここに働きに来て・・・・」
「え!?」
小さな個室に案内され、話をつけた。
どうやらここは人手不足に頭を悩ましていたようで、三人を快く受け入れてくれた。
早速、今日からでも働いて欲しいということらしい。
「わかりました、頑張ります!」
「ありがとう・・・感謝するよ・・・・。そうだな、まずはみんなに君たちを紹介するよ」
そういって老人は三人を仕事仲間の元へ案内した。
「いよいよだな・・・」
「ああ、俺たちが変えるんだ」
救うため、守るために、彼らが動き出す。