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~第一話~《選ばれた少女》 - (2009/03/10 (火) 18:11:36) のソース

私は東京が嫌いだ。

そんなことを思いながら「よいしゃっ」は、大通りの歩道を1人で歩いていた。

13年前に母の仕事で山形からここに来て

小さなマンションで暮らしている。

両親はその一ヵ月後くらいに離婚して

母が一人で育ててくれたが

その母が去年交通事後で死んだしまってからは

1人で暮らしている。

実際、ここから歩いて10分くらいの「ローソン」というコンビニで働いているわけだが

とくに毎日が楽しいわけでもない。

どちらかというと、つまらない日々である。

今日も、商品の値段の張替えを間違えて

店長に怒られたばかりである。


マンションに着いたが、暗くて鍵がどこにあるか解らず

結局ドアの前で2分くらいバッグの中を探していた。

「ただいまぁ~」

部屋に入ると、いつもの静かで真っ暗な部屋が出迎えた。

買い物を冷蔵庫にしまい、ついでにビール缶を2つ出した。

最近お酒の消費が激しい気がするが

怒られてカリカリしている自分を治めるには、これがいいのである。

すぐにPCの電源を付けて、「柿の種」に手を伸ばした。


ブログを書くのが習慣になっていた私は、毎日PCに向かって1人話をしている。

読者は多くはないが、皆自分の気持ちをわかってくれるいい人達である。

よいしゃっ:今日もバイト先でテンチョーに起こられちゃったよ。

うさぴょんさん:ドンマイ^^;どんな間違いしたの?

よいしゃっ:「からあげクン」を105円で売ってしまった。。。

ボルシャックおじさん:それはまた。でも客さんにとってはうれしいかも?

暗い中、キーボードの音が響く。

その後何分も、くだらない話が続き、気づけばもう夜中の2時である。

明日もバイトなので、この辺でやめておくかとPCを閉めようとすると

ブログ内に匿名でコメントがあった。

「なに、、、これ?」


匿名さん:あなたは「西洋文化研究会」定員6人のうち1人に選ばれました。 
          明日の午前0時に六本木にある「フルハウス」と言う店においでください。お待ちしております。


わけが解らない。

「せいようぶんかけんきゅうかい?」

そんな会聞いたこともない。

ただの荒らしだろうか。

ほんとにこんな会があるのだろうか。それさえも不思議である。

たとえあったとしてもそんなわけも分からないところなんか入りたくない。


しかし「お待ちしております」と丁寧に書いてあることだし

行って断るくらいはするか。

明日はバイトが半日なので何とか間に合うだろう。

とにかく眠かった。

電源をけして

そのまま布団に入って寝てしまった。






いつも通り、うるさい車の音で目を覚ます。

いつもと変わらない動作で身支度をして、

いつもと変わらない道のりを歩いて、バイト先に向かった。

なのに今日は珍しく、目立った失敗もせず一日が終わった。


そして、六本木へと向かった。

臭い。

ここは東京で「臭い空気ベスト10」に入るくらい臭い。

そう思いながら、大通りから一本はずれた道の一角にある

ぼろぼろでかすれた字で

「フルハウス」と書かれた店の前に立った。

#ref(おおこししいい.bmp)

「ここか・・・。」


といって、断る決心を持ちドアノブに手をかけて

力強く、ドアを引いた。



開かない、呼んどいて留守はないだろう。

そう思いながら、ドアを思いっきり蹴った。


するとドアは普通に開いた。

ドアは「押すドア」であった。

1人で恥ずかしがりながら周りを見渡し

誰もいないのを確認しながら

ドアを押して中に入った。


ベルの鈍い音が、店内に響き渡った。