zilloll闇小説保管庫 @ WIKI内検索 / 「二人のたくらみ、その後」で検索した結果

検索 :
  • 二人のたくらみ、その後
      右手で壁に2度叩き付けた使用人は、頭蓋が割れ脳漿を飛び散らせている。 間もなく事切れるであろう壁と頭を同化させた存在に、「戸惑い」を赤く染まる返し手で突き刺す。 其れが絶命すると、間髪居れず槍を構えた衛兵の影に溶け込むように床を滑り、 旋回する黒い疾風が、左足の腱から膝頭に続き左脇腹の鎧の隙間に「悶え苦しむ」を捻り込む。 絶叫し捻り刻まれた側から崩れ落ちる衛兵の首にトスンと刃を落とすと、声が止まる。 そして、奧に一歩進むと、あらゆる神の御名を挙げ、命を懇願する歳把もいかぬ少女の姿。 竜王様。バイアス様。ウィルホーン様。アスラータ様。ノトゥーン様。 ノトゥーン様。の所でクロスされた刃が顔の前で番える指ごと下顎を吹き飛ばし、 「がひゅ」という断末魔とともに、そのまま首が宙に浮く。 宙をくるりと舞う首に、また十字に刃を踊らせると、美しかった「であろう」少女の額に 眼と剣の紋章が刻まれ、左右の...
  • その他
    ...三馬鹿 59-69 二人のたくらみ、その後 レイヴン・ノエル・カフィン・男主で色々、やや男色ネタあり 182-192 無題 アイリーン×チャカ 初出304 6スレ目 無題 非エロ、小ネタ、近親注意 165 瓦解小説 空想ガルドラン偽予告集 ガルドラン、非エロ、オリキャラ有り 429
  • 冒険者、その旅路に果ては無く…
    「あ~あ。また来ちゃったな」エステルは天を仰ぎ、一人呟いた。 ここはロストール。竜教信教で知られる南の大国である。 貴族階級の腐敗と、戦争での被害により黄昏を迎えているという事でも知られている 国だ。そんな先行きが良いともいえないロストールだが、それに反して今日の空の色は吸い 込まれそうな青。『悩みの無さそうな』という表現がぴったりと当てはまる快晴だった。 ロストールの能無し貴族達の象徴のようだなと、エステルの知り合いのとある二人は 思ってるんじゃないだろうか?それを想像し、彼女はふっと笑みを洩らした。 しかし、思考は現実に戻る。その過程で表情が引き攣っていくのを感じた。彼女の心 境もまた、現在のロストール程ではないにせよ、晴れ渡る空がむしろ憂鬱に感じられ る程度には荒れていたのだった。 「面倒くさいなぁ。何でボクがこんなに縛られなくちゃならないんだよ…」 広場のベンチに座ったまま、悪態を...
  • フレアEDその後
      「きつく、きつく私を縛って下さい、もう離れたくありません、一時も………」 背中に感じる女の体温と鼓動が、マグマの熱で一層熱を帯び、それが彼の愛情に勝る劣情に引火した。 彼は振り返りざまに女の唇を奪うと、そのままゆったりと着流すローブを引き裂くように脱がせ、 ねとりと絡みつく舌を引き離すと、蛞蝓(なめくじ)を這わすように女の細い顎から真っ白い首筋、 鼓動の響く乳房を経て、臍を執拗に舐り、下腹部から止めどなく流れる蜜を自らの唾液と絡め、 さらにその下の艶やかに湿る尻の穴を、残飯をあさる野良犬のように貪り尽くした。 女は身悶え、脱がされたローブを掴み、腰を浮かせ、吐息を荒げる。 前戯らしい前戯もままならず、女の陰部を自らの欲望の権化で貫いた。 ただ腰をグラインドさせ、自らの劣情を果てさせるためだけの行いを続ける間も、 彼は女の足の指の間を舐め、やわらかなでほのかに甘く薫る脇に舌噛み千切らんば...
  • 闇との和解、そして決別
      今日も朝から暗い部屋の中、アトレイア王女は一人ベッドの上で、彼女が来るのを待っていました。 今日の午後に来ます、と彼女は言い残して行きました。だからといってそれまでにやることもなく、目を覚ましたときから彼女がくるのを待っていたのです。 王女は、一人の冒険者の慈愛と冒険の賜物で見えるようになった目を半ばうつろにさせ、薄暗い壁や天井の隅を見つめ続けていました。 この目が覚めなければと思う日もたびたびあったほどです。そう、少し前までは。 アトレイアの目に光が戻ってからしばらくして、彼女が度々アトレイアの部屋を訪問するようになりました。 彼女が来るようになってから、アトレイアは日付の見方というものを教わり、初めて暦を数えることを覚えたのです。 暦によれば今は冬。彼女は早く春が来たら嬉しいと笑っていましたが、王女は春というものがなんなのか知りません。 今日は彼女が王女に春を教えてくれるといって...
  • 男主×クリュセイス
       蒼茫とくらい内海の海原を一隻の帆船がすすんでいた。 壮大な夕焼けが西の海の水平線を血色に染めていたが、しだいに蒼みがかかり、今は残光が微かにのこっているだけだ。星影が、前檣のかげに立つふたりの男女を照らしていた。 「ルヴァ!夕陽を見たこと?わたくし、うっとりしちゃった。」 「一緒にいただろ、きれいだったな。それよりあっち、リベルダムをみろよ。」 「すてき…。わたくしも、あの小さなともし火の中で暮らしていたのね。」 バイアシオン内海には夕霞がおりて、水平線のはてに浮かんだ落日が、先ほどまでその美しさで乗客を恍惚とさせていたが、日が沈んだ今は、帆をまきあげて出港したリベルダムの灯が、闇の中でうっすらと輝いて、見るものを楽しませていた。 ひとりは上品そうな楚々たる姿体の娘で、腰まである茶色の髪と丈のながいスカートを揺らしながら、舷のへりから身をのりだしている。その傍らで心配そうにしているの...
  • 無題 男主×カルラ
      分厚い雲に覆われた、少し灰色掛かった空が懐かしい。 港と言うものは人々が行き交い、心の交流で賑わう。 船員達は積荷の確認を始め、降ろす荷物、次に積む荷物の点検をしている。 城下都市方面の方を見やると見張塔の頂点にはためく、エンシャントの旗印。 正面の奥には、女神ライラネートを祀った神殿が一際映えている。 『帰ってきたんだな』と言う実感が胸に湧き上がってきた。 船が港に定着すると階段が架けられ、乗客達が次々と降り始める。 キャラック船の甲板から軽やかに跳躍し、船着場へと着地する一人の少女。 カチャッと具足が音を鳴らすと、その場で大きな伸びと深呼吸。 「はああ~~」 栗色の滑らかな髪は後頭部の頂で結われ、馬の尾のように垂れ下がった髪は腰辺りまである。 上半身を鳩尾辺りまで覆う、美しい青い鎧。 腹部と脚部には防具が無く、ハイレグ状の下着のようなものしか履いていなく、かなり露出度が高い。 その...
  • ザキヴ×女主
      賢者の森の中に、選ばれた者だけが入れると言う猫屋敷と呼ばれる屋敷がある。 その中の一室で、二人の女性が一つのベッドの中に寄り添っている。 一人は長い黒髪の美しい妙齢の女性。端正で気品のある顔立ちには、深い苦悩の色が見え る。そして着ている服は紛れもない、ディンガル帝国の制服だ。 ザギヴ=ディンガル。元はディンガル帝国の玄武将軍だった女性。彼女は今、猫屋敷で守 られるようにして眠っている。 もう一人はまだあどけなさの残る少女。着ている服装から冒険者だと一目で分かる。少女 は時々、慈しむようにザギヴの長い黒髪を梳きながらザギヴに身を寄せて彼女を見守って いる。 (こういうのはあまり良くないんだろうな) 少女は胸の中に憧れている女性を抱きながら思う。いつからこうなってしまったのか。 少女が以前からその聡明さと憂いを帯びた美しさに憧憬の気持ちを向けていた女性。きっ かけは彼女にロセンの視察の護...
  • アーギル+サイフォス×女主
      アンティノの研究室内部の通路を少女の足音が駆けてゆく。 少女は追っていた。生まれ育った村、ミイスを焼き払った魔人アーギルシャイアを。 そしてその後を追って姿を消した兄のロイを。 (追いつめた……遂に追いついた) 魔人のヴァシュタールに傷を負わされこの研究室に逃げたアーギルシャイアとサイフォスを見たばかりだ。 サイフォスは恐らく、自分の兄なのだろう。それを一刻も早く確かめたい。 パーティの仲間とはいつの間にかはぐれた。けれどそんな事を気にしている場合ではない。 自分の旅の目的が今、果たされようとしているのだから。 「アーギルシャイア!その男を……兄さんを返して!」 愛用の剣、竜破を美しい女魔人の方に構えながら少女は言った。 アーギルシャイアは黙って椅子に深く腰掛けている。傷を負っているのが深い苦悶の表情で分かる。 「兄さん?フフ……この男はサイフォスよ、私だけの仮面の騎士よ。私に刃向か...
  • レイヴン×ノエル
      荒れた内装と凶悪な魔物。 凝縮されたかのように漂う闇の気配・・・・。 エンシャントの廃城はそういう所だった。多少腕に自信がある程度では、 冒険者とて近づこうとはしない。 そんな場所に、ある種の悲壮さを秘めた三人の戦士が佇んでいた。 1人は黒装束に身を包み、両手に短剣を持った男。名をレイヴンという もう1人は赤い装束に片手剣を携えた長身の女。名をカフィンという そして最後の1人である、彼らのリーダー格の少女、ノエル 彼女はその小柄な身体を白銀の全身鎧に包み、背には巨大な両手剣を背負っ ていた。人形のようなあどけなさを残した面影に、歳相応とはとてもいえな い、張り詰めた色を浮かべている。 「さて、それではそろそろいくとしようか」そんな三人の背後より、 1人の男が現れた。金髪のソバージュを靡かせた神官服の男だった。 暗い表情のノエルたちに対し、全く気負った雰囲気を持たないその表情は、 この場...
  • 男主×エア,703
    「それで― 封印を守る巫女としての役目は潰え、その千里眼の殆どを閉ざし、 一介の、しかし、最強の冒険者の伴侶となった風の巫女、エア。 彼女は常に風の台座にあり続ける為に、魔力によって食事も、排便も、就寝も、加齢も、出産も、その全てを補ってきた。 しかし、彼女はその役目を終えたことにより、それらを人並みに行うようになっていた。 宿をとり、酒場で食事を摂り、時に吟遊詩人の唄に耳を傾け、時に酒に酔う。 そんな、冒険者として充実した毎日を送っていた。 そうしたある日、一つの冒険に区切りをつけ、伴侶の冒険者と食卓を囲っている時、エアは少し神妙な口調で上記の言の葉を紡いだ。 「それで、そなたは何時になったらわらわを孕ませるつもりだ?」 その時、伴侶の冒険者の口に何も入っていなかった事は、非常に運が良かった。 とは言え周囲の客は噴飯していたが。 「何...
  • アトレイアを処女のままひたすら犯し続ける小説4
      「よう」 「あ……アクト様」  クローゼットの扉を開けると、そこには俺の理想郷があった。  このところ俺は連日王宮に通っている。  もちろん目的はアトレイアの身体と心だ。  異様に感度がよく、俺の性欲を一身に受け止める素質を秘めた魅 惑的な肢体。実に俺好みにコンプレックスと無垢さと少女の本能が 奇跡的な調和を見せているその精神。  両方をじっくりと育み、たっぷりと味わうのだ。  平たくいえば、アトレイアを俺のものにしてやるのだ。 「来てやったぞ。存分に歓迎するがよい」  アトレイアは俺を見止めてはにかむように笑い、ぺこりとお辞儀 をした。 「はい……どうぞ、なにもないところですが……ゆっくりしていっ てください」  アトレイアは丁寧におじぎをすると、落ち着いた口調でそう言っ た。 が、その語調は相変わらず暗い。というか前より更に暗い 感じになっていやしないか。そうはさせん。 「ゆっくり...
  • 男主×ティアナ
      「死にに行くようなことはしないでくださいっ。」 ロストール王女であるティアナが、その背にひっしと縋りついてきたとき、 ロストールの竜字将軍であり、ロストール王妃エリス子飼いの密偵である男も ――名はクーファ、憧れの光の王女が一体何をしたのか、理解するまで数秒かかった。 「王女様。それは…できません。」 「一国の王女がこんなことを言ってはならないとわかっています。 それでも私は大切な人を失いたくないのです。」 向き直ったクーファは、困ったようにティアナの顔をまじまじとみつめた。 ティアナはそんなクーファの胸に飛び込み白い頬をよせた。 「クーファ様がお母様を実の母のように敬愛されているのは知っています。 ゼネテス様を実の兄のようにお慕いになられているのも知っています。 ですが、どうかクーファ様、今だけ…今だけは、 私だけを見つめるクーファ様でいてください!」 クーファを見上げている潤んだ青...
  • ロストールの長い夜と闇を翔ける白翼
      「はあっ、ああっ、どうして、どうしてこんなことに……。兄上……。」 戦闘の終わった部屋で、息をはずませながら、部屋に兄と二人残されたジリアンは凝った竜の彫り模様のちりばめられたシャンデリアのかかる天井を仰ぎ見た。 つい今までの出来事の全てがジリアンには信じ難く、今にも自分が別の現実に目覚める事ができるのではと願ってしまう。 「まさか、まさかツェラシェルの言う事が、本当だったなんて……。」 目の前の天蓋つきのベッドに死んだように横たわる兄を見つめながら、あふれてくるのはただただ声にならない感情と零れ落ちる涙のみ。 今しがたの事件を思い出して、ジリアンは親指で自分のこめかみを押さえた。 女狐の手先たち。乱心した兄。おまけに、ツェラシェルはリューガ家の当主が一夜を共にする女性を求めているとふれまわって、うら若い女性を屋敷の周りに集めさせるという巧妙な策を使ったおかげで、門の周囲は今しがたまで...
  • ロイ×ミイス主、2
    ---- ミイスの村が魔人アーギルシャイアに焼き払われたその日から、アリシアの旅は始まった。 旅の目的はただ一つ、姿を消した最愛の兄の行方を探すことだった。 その目的はある日唐突に叶えられた。魔人アーギルシャイアとその仮面の下部と名乗る男、サイフォスと自分達との対決によって-- サイフォスがロイである事を目の前で確認した時、アリシアの胸に湧いた感情は再会の喜びではなく、悲しみと嫉妬がないまぜになった気持ちだった。 兄がアーギルシャイアの支配から解き放たれてもその肉体の持ち主、シェスターと心通わせ、愛し合っていることはすぐに分かった。 アリシアはその時、泣きだしたい気持ちを必死で堪えたのだ。 (兄さま、私の兄さま……それなのに、何故……?) それからのアリシアの行動はともすると自暴自棄になりがちだった。 一緒に旅をしていた仲間の前では今まで通りの姿でいるように努めて振る舞っていたが、一人にな...
  • 無題 女主×オイフェ
    バイアシオン大陸の南東に位置する半島エルズ。海にほど近い街道で一人の少女が潮風に 吹かれて佇んでいた。その顔には見覚えのある者も大勢いるだろう、先日の作られた神と 闇との戦いで闇に打ち勝ち、人々を救った少女である。 少女は輝く海を眺めながら、先ほど訪ねた風の巫女から言われた言葉を思い出していた。 ――ネメアはこの大陸から離れた。何処に向かったかはわらわにも読めぬ。 少女の唇に、悲しい笑みのようなものが浮かんでいる。 少女と共に闇に立ち向かい、闇を退けた獅子帝ネメア。少女はこのままネメアはバイアシ オンに留まり、ディンガル皇帝の地位を存続すると思っていたのだ。 ところがどうだ――今、ディンガルの皇帝の地位は少女と冒険を共にしたこともあるディ ンガルの玄武将軍、ザギヴの許に収まっている。 ――ネメアは、なぜ我々の前から姿を消したのだろう。 風の巫女の言葉を聞いてから、少女の心の中に繰り返し答え...
  • アンギルダンと欲望の指輪1
    隣に横たわる少女の黒髪をアンギルダンはそっと撫でた 彼の胸に顔を埋めている少女はくすぐったそうに身をよじる (まだ…こんなに若いというのにのぅ…) 今年でちょうど20になる彼女の顔は大人の成熟した女人が持つ色気よりも 少女時代特有のあどけなさと可憐さを多分に残していた 埋めていた顔を上げ少女はアンギルダンと視線を交わす 「アンギルダンさん…」 切ない吐息と潤んだ瞳は言葉よりも雄弁に彼女の心を語っていた 溢れだす想いを少女を抱きしめる腕に込め、アンギルダンは少女のしっとりとした唇に 己の唇を重ねた…触れあうお互いの肌は温もりだけをただ伝え合った… 大陸を震撼せしめた闇の者達との戦い、そして竜王との死闘を経て 平和の戻ったバイアシオン大陸でアンギルダンは共に戦った戦友 無限のソウルの持ち主であるノーマとあちこちを旅していた まだ見ぬ宝や戦いを求め冒険を繰り広げ...
  • アトレイアを処女のままひたすら犯し続ける小説2
       「第二話 脇とよこちちと指ちゅぱ」    いきなりマニアックだが、先を見据えれば最初に一発この程度 はやっておかねばな。  しかも今日は射精してやるぞ。俺は心の中でこっそり宣言し つつ、アトレイアの部屋に押し入った。  当然ノックはしない。着替えや寝顔でも見られれば幸運だ。 「ん、アトレイア」 「……」  アトレイアは起きていた。また、残念なことに着替え中でもなか った。ベッドの傍で、木椅子に座ってぼおっとしている。その目は、 どこにも焦点が合っていない。ただ、何かに思いを馳せているように 見受けられた。 「アトレイア」 「はい? ……あ……アクト様っ」  近くから呼びかけることで、アトレイアはようやく俺に気づいた ようで、慌てて立ち上がった。  服装は昨日と変わりない、上質だが飾りのない絹のドレスだ。 「うむ。約束どおり来てやったぞ」 「は、はい……ようこそ、いらっしゃいました。...
  • ヴァイライラxヴィアリアリ姉妹丼エロパロ
      ロストールの宿屋にて 冷たい夜風がスっと肌を撫でていく。久しぶりの心地よい夜に、自然にテラスへと足が向いていた。 静かな夜は、なんだか眠ってしまうのが惜しくなる。こんな風に考えるようになったのは、いつ頃からだったろうか。 辺りを覆う静寂と暗闇は、心の奥に根ずく焦りや苛立ちを忘れさせ、空に煌々と輝く月は、困難を乗り越える希望を与えてくれる。 なぜだか分からないが、こんな夜が来るたびに無性にそんな思いに駆られるのだ。 「眠れないの?」 ふと振り向くと一人の少女がたたずんでいた。 (ヴィアリアリか・・・?) 「そっち行っても、いい?」 返事をする間もなく、ちょこんと隣にやってくる。 「お兄ちゃんとふたりっきりだ」 ヴィアリアリは舌をペロっと見せながら無邪気な笑みを浮かべた。 「・・・私さ、最近・・・お兄ちゃんのこと想うだけで身体がどんどん熱くなってきて・・・。 こんなこと初めてだよ。この気...
  • 箱庭に差し込む月の光
      「セラ」  涼やかな声が男を呼んだ。共に旅をする少女のものだ。  月神セリューンに由来するのだという、セレネという名の少女だ。  猫屋敷――数ヶ月ぶりに顔を合わせた少女は、少しだけ大人びて一層美しくなっていた。 「呼び出して大丈夫だった? 私の都合でごめんなさい」 「構わん、リーダーはお前だ。……で、片付いたのか」  セラの視線がセレネの身体を伝い、その腕でふと止まる。見慣れない盾。  ロイとアーギルシャイアの行方だけを執拗に追うセラに悪いからと、 戦争の気配に巻き込まれ始めたセレネはセラに別行動を勧めたのだった。  だからこの二、三ヶ月程、セラはセレネがどうしていたのかは知らない。  相変わらず高評価な噂話が伝わってくる程度だった。 「うん、一応。ディンガルとロストールの戦争の話は、セラも知っているでしょう。 ……あ、これ? えーと……ロストールの騎士の証、なんだって」 「……ノーブ...
  • シャローム・魔道の塔
      妖術宰相ゾフォルは二人の若い男女を従え、 最後の階段を昇った。 通路の中央には扉がある。 どうやらそこが目的地であるようだ。 ウリアの決心は固いはずだったが、 その扉の前に立つと心が揺れた。 彼は横に立つバシテバを盗み見た。 踵を返してここから出ていこう。 貧しくても、たとえ子々孫々に至るまで 権力に縁がなくてもいいではないか。 言葉が胸に溢れる。 しかしそれを口にすることは何故か憚られた。 一方バシテバの顔色は青ざめていたが、 あえて夫を見ようとしない。 ひたすらに前を向いて、 決心が鈍るのをかたくなに拒んでいる。 彼女は富を渇望していた。 いつか生まれるであろう我が子のためにも権力を得たかった。 ゾフォルはそんな二人を振り返り囁く。 「フフフ、お二方よ。 何を怖がることがある? さあ、扉を開けるがよい。 ただ一夜とひきかえに、富と権力が約束されるじゃろう。 扉を開けずに戻ることも...
  • 闇ティアナ×男主
       甲高い金属音が、荘厳だった廊下に響き渡る。  ひとつ、またひとつと増えるたびに、壁に床に、赤黒い染みが増えてゆく。  右から打ち込まれた突きを紙一重でかわし、最低限の動きでがら空きになった腹部に手持ちの獲物を叩き込む。  鎧ごと臓腑を貫き背骨を断ち切ったのが、柄から直に伝わる。  仲間の死に、怒り狂った竜騎士が怒声を上げながら向かってくる。  その数、三人。前方一列状二人、やや左後方から一人。  たった今、絶命させた竜騎士を剣に乗せたまま、前方の二人に投げつけるように振る。  狙った通り、前方一番前は死体がぶつからないように足を止める。後ろは、前の仲間が邪魔になり、棒立ちとなる。  長剣はそのまま大きく弧を描き、左後方から来た奴を捕らえた。  硬いものと軟らかいものを同時に断ち切る感触。幾度も血を啜ってきた愛剣は、貪欲に新しい犠牲者の血を啜る。  犠牲者の上半身が床に口付けをする前...
  • 気楽な毎日
    日々これ好日。世界の危機もなんのその。仲間がいれば乗り切れる。 そんな気楽な考えを持つ無限のソウル、アレフ。 彼とそのパーティのなんとも気楽な日々。きっとみんな気楽になる。 「肩の力を抜いて、難しい事は考えないで。世の中意外となんとかなるって」 草原に寝転んで、からから笑って、隣で難しい顔をしているアイリーンを慰める。 ちなみに難しい顔をしている原因は俺。訓練がてらやった勝負で勝ったから。 「なんで勝てないのよ!ああ…なんで…」 見事なくらい凹んでる。パーティを離れていた間に相当修行していたみたいで、自信満々で挑んできた。 それだから、落ち込みだすと底が見えないらしい。プライドが粉々になったから仕方ないと言えばまあ…。 「アイリーンは決して弱くないと思う。というかそこらの剣士じゃ相手にならないくらい強い。 ただ、ちょっと堅すぎるかな。型にはまったような戦いかたをす...
  • 女主×クリュセイス
      日が沈みかける頃、あたしはそこを訪れた。 粗末な木造の大きな机と椅子しかないがらんとしたこの部屋。 机の上のルーマ・ティーの入れられたティーカップからいい匂いがする。 ここは解放軍の本部。訪れたあたしを見ると、彼女は気高さを湛えて言った。 「よくいらしてくれたわね、待っていましたわ」 あの日、あたしは数人の冒険者達に暴行を受け、輪姦された。 リベルダムのギルドでナイトメアの雫を運ぶという依頼を受けたが為に。 胡散臭い仕事だとは思っていた。その数日前も街中で小包を運ぶ仕事を引き受けたら暗殺者呼ばわりされてしまったじゃないか。 あたしを利用するべく今目の前にいるこの娘――クリュセイス・クロイスとその伯父アンテノがツェラシェルを雇ってナイトメアの雫をあたしから奪ったのだろう。 クリュセイスは自分の父親をあたしが毒殺したと信じているばかりに、闘技場の事故に見せかけてあたしを殺すのだけが目的で、...
  • ナッジ×ルルアンタ
      僕たち四人は「乙女の鏡」に来ていた。タレモクゲの汽水を入手するために。 特にギルドの依頼ではなかったが、タレモクゲの汽水はあちらこちらの国のギルドで依頼があるので近くに寄った時に手に入れておいた方が重宝するのだ。 近くのモンスターを倒してしまうと、僕たちはしばらくのんびりとピクニック気分でそこで時間を潰すことにした。 古代の遺跡も眠る「乙女の鏡」はモンスターさえ出なければ、綺麗な景色と湖が広がり、時折吹き抜けるそよ風がとても気持ちがいい。 カイ――僕たちのパーティのリーダーの名前だ――は、ちょっと森の方に行ってくるよ、と言い残してフェティを連れて森の方へ姿を消した。 フェティは、強引ですわー、この下等生物!とかなんとか言いながらそれでも彼にくっついて行ってしまった。 あの二人、いつの間にあんなに仲良くなったんだろう。フェティが仲間になった当初はお高く止まってカイに対してもツンツンしてい...
  • 女主×フレア
      私がそれを口に含むとき、私がそれを受け入れるとき、私は常に、こう思う―― ――何故、こんなに美しく清らかなこの少女の身体にこんな忌まわしく醜悪なものが付い ているのか、と。 その時の私は疲れ果て、ひどい厭世観に嘖まれていた。かつて仲間として共に時間を過ご した人たちとも、もはや顔を合わせるのが苦痛になっていた。 ロストールとディンガルは二度目の剣を交え――レムオン義兄様も、ゼネテスももう、こ の世にいない。 私を義理の妹にして下さったレムオン様も、親愛なる相談相手であったゼネテスも、そし て光を取り戻したアトレイア王女も、私は――救えなかった。 竜殺し?無限のソウル?勇者様?笑わせないで――私はただ、運命に勝てずに翻弄され、 自分の力のなさを噛みしめるだけのでくの坊だ。 私は自分の無力さと人の目から逃げるように、気がつけばウルカーンの神殿へと向かって いた。 ただ一人の少女に会うため...
  • 男主×カルラ、852
    「入って」 扉を叩く乾いた音にカルラはぶっきらぼうに返事をした。 「失礼します。  お呼びでしょうか青竜将軍閣下」 入ってきたのはいかにも冒険者といった風情の武骨な男。 見るからに腕の立ちそうな雰囲気を漂わせた男だが 見るものが見れば腕が立つどころの騒ぎではないのはすぐにわかるだろう。 「うん、呼んだよ。  最近どう?」 およそ将軍という地位の者の言葉使いではないが 慣れているのか男は何も表情を変えない。 「特に何も・・・」 「ふふん、まあたそんな事いっちゃって!  知ってんだよ、”竜殺し”」 カルラは少し自慢気に微笑むと男に人差し指を突きつけた。 「やるじゃん!  さすがあたしの副将だわ」 さすがといっても別にこの男はカルラの副将として鍛えられた訳ではない。 ある事情で引き抜かれ抜擢されただけの事だ。 ゆえに副将などと言っても軍議などには参加させてもらえない。 その事もあってか、朗らかに...
  • ~エルズにて~
      太陽が沈み、夜の帳が降りはじめたエルズの街。 バイアシオン大陸の南に位置する島にあるこの街の夕暮れは、春先のような涼風が運ばれてくる。 宿の自室で窓を開け、そよぐ風をその身に感じたフェティは、嘆息した。 「食事は豆と芋ばかりで最悪だったけど、空気は悪くないわね」 ジルは相変わらずなその言葉を聞きながら、微笑んだ。 ああ、やっぱり。 闇の勢力が消え、大きく変化した世界においても、フェティは変わらない。 それが、とても嬉しい。 ベッドの端から立ち上がり、ジルは窓辺のフェティへ近づく。 エルフ特有の尖った耳にかかる、くすんだ金色の髪。 自然に緩やかなカーブを描くその髪に何度触れたいと思ったことか。 気持ちのままに思わず、指を伸ばす。 フェティは気づかない…。 そのまま、指を髪に絡めると、柔らかな感触。 「なによ?」 気づいたフェティが訝しげに首だけ振り返る。 ジルは、何も疑っていないフェティ...
  • 闇ゼネテス+闇レムオン×女主
    廃城の最奥の部屋にその少女は待っていた。 かつては「光の王女」と呼ばれた輝くほどの美貌と気高さで。 しかし、その瞳の色はかつての優しさを湛えた深い海の色から血のような深紅の色に変わっている。 赤い目の少女は入ってきたもう一人の少女に向かって言った。 「お待ちしておりました、もういらして下さらないのかと思っていました……」 シャリはこう言い残して消えた。 「この奥には世界を滅ぼしたいという願いがある。そして君は世界を救いたいという願いだ」 世界を滅ぼしたい願い、そう聞いて覚悟は出来ていた。 しかしそこに待ち受けていた、かつて友人として仲良く談笑したこともあるその少女の姿の変わりようを見て身がすくんだ。 「ティアナ様……」 「……あなたが……わたしを見捨てて……」 ティアナと呼ばれたそのドレスを纏った少女は目をそらして独り言のように言った。 「あなたがアトレイアを救ったからこうなった!あなたは...
  • 始まり主×アイリーン
      ――オズワルド。 破壊神円卓の騎士ヴァシュタールの餌場にして、アスティアの子クーファの故郷。 蒼い油絵具をぬったような空に、やや赤みがさしてきた頃。 魔人が眠っていた、棺と呼ばれる遺跡の頂へ連なる階段に、腰掛ける一組の男女の姿があった。 一人はクロースを着て、腰に片手剣をいう簡素な姿をした青年だ。 巨躯というわけでもなく痩身だが、凄腕の剣士らしく、そこにいるだけで四方に超人的な精気と妖気を放っている。美しい金髪とあわせて剽悍勇壮な風であった。 もうひとりは胸鎧を着込み、片手剣を大事そうに胸に抱える、騎士然とした出で立ちをした赤毛の娘で、こちらもまた凛々しい。 容貌は人並み以上だし、手足も長く、実の身長よりも高く見える。短い胴は深くくびれ、くびれた最低部には女性らしい丸みを帯びた臀の隆起があった。まず美女といっていいが、彼女を一言で表現するならば、それは美しいではなく、凛々しいであろう。...
  • ミイス近親ぶぶー!
      「ああっ!だめえっ!!」 ベッドのふちに腰掛けるようにして、男の胡坐の中心部に座らされた少女は 自分の中、最奥の泣きたくなるような切なさに身を震わせていた。 肌を覆い隠すものがない状態で、本来、自らの保護者としてかかわるべき男と 本能のままに”繋がり合い”を繰り広げていた。 自分に特定のパートナーがいるわけではないから、こうなることに何ら障害はない。 ただ、胸張って他人に公表できる関係でないのは、そこに恋慕という感情が あったというわけではないから。肉体への熱い刺激がもたらした関係であるから。 その刺激がもたらしたものが、そういう現実的なことをとりあえず今は どうでもいいこととして、思考の向こうへ追いやってしまった。 今は、もう、その感覚を手放したくないだけ・・・。 その感覚に呼応して、日常にはない音声、感覚の甘さに比例した粘度の液体が 口元からこぼれる。涎を垂らすなんてこと、普段なら...
  • カルラ×女主
      「あなた、どういうつもり?」 カルラの部下になると決めた時、アイリーンは私に言った。 「あなたはノーブル伯でしょう?騎士道精神はどうしたのよ?そんなに簡単にロストールを裏切ってディンガルに付くなんて何を考えているの? 「私はカルラ様に忠誠を捧げている。私を騎士に取り立てて下さった方だもの。でもあなたにカルラ様への忠誠心があるとは思えないわ。 「そりゃ、あの状況では嫌だと言えばあなたもあなたの解放軍の仲間もカルラ様に殺されていたかも知れない、けれど……」 アイリーンはつくづく軽蔑とも疑いとも何とも付かない表情で続けた。 「あなたは女は騎士になれない国の例外中の例外の女騎士じゃないの。騎士道から言えば、命を捨てても国に忠誠を誓うべきじゃない?」 「……そうね」 私は答えた。私はもうただの冒険者じゃない、ノーブル伯だ。守らねばならないものはたくさんある、それは重々承知だ。 「じゃあ、どうして...
  • ヴァシュタール×始まり女主
      闇の門の島に辿り着くと、その魔人は少女を待っていた。 少女の最愛の母を、そして生まれ育った町を奪ったその魔人。 「来たか……アスティアの子よ。我を倒さぬかぎり、闇の門は閉じぬ。」 魔人ヴァシュタールはその額に光る目で少女の顔を見据えながら言った。 「母も戻っては来ぬ。お前がここに来るのも必然というワケか。よかろう。このヴァシュ タールを滅ぼしてみよ」 少女の旅の目的は、最愛の母を、そして生まれ育った街を取り戻すことだった。魔人ヴァ シュタールの復活により、安否さえも分からなくなってしまった最愛の母、アスティア。 そして故郷オズワルドの町。 長い旅路の果て、神と竜王との戦いの後、少女の真の目的が遂げられようとしている。 少女は剣を構えた。母の仇――この魔人を倒さぬかぎり、母は戻ってこない。 少女の剣がヴァシュタールの身体を切り裂く。一瞬、魔人は怯んだように見えた。しか し、魔人は次の瞬間...
  • 男主×孕みエア
      無限のソウルは自らの子を孕んだ、風の巫女を抱き寄せた。 すっぽりと自らの内に収まる、小さな体。 その小さな体の上に圧しかかり、半ば無理矢理に足を開かせた。 その小さな膣内を無理矢理にこじあけ、彼女の体内に欲望と愛を最初に解き放ったのは、それほど昔の事ではないはずだ。 しかし今、その幼さを残す小さな体の腹部がぽっこりと膨れて、男女の性行為の後を、明確に知らしめる。 こんなにも幼さを残す少女が、すでに男のモノをその身に受け入れ、くわえこんで、もうすぐ母となるのだと。 男は膨れる下腹に触れた。 「エア」 「ふふ、そなたの子じゃ。間違いなくのぅ」 小さな少女は、女らしい艶やかな笑みを向ける。 「妾がイやじゃ、許せと願っても、そなたは妾を離してはくれなんだ。そなたは嫌がる妾をおもいっきり玩び、汚してくれたのう」 口調は非難めいているが、幸せそうに、男の手に自らの手を重ね、お腹を押さえて笑う。 エ...
  • ラドラス攻後
      「……は?」 エアの放った言葉に、黒髪の男、無限のソウルを宿す者は、その肩書きに似合わない間抜けな音と表情を現す。 さも可笑しげに笑い、エアは己の言葉を繰り返した。 「聞こえなかったか?わらわはやるぞ、と。自然の摂理にしたがって、子孫を残そう、とな」 笑顔のままで告げるエアとは対照的に、青年は困りきった表情で辺りを見渡すが、 いくらかの扉と柱、それからかつて翔王の座していた辺りの床が苔生しているのが判るだけで、 聖光石のほの白い光に照らされた神殿内に他の人影は無い。 あ~、と、なおも視線をさ迷わせ、言葉をしばし探していたが、溜息混じりに視線を、胸の高さに有る少女の顔へと戻す。 「……あ~、エア様、風の巫女様。ご自分の言葉の意味が判っていらっしゃる?つか、そんな事を俺に告げてどうし……ろ……って?」 頭を掻きむしりながらの困りきった言葉を言い終える前に、それを遮るようにエアは詰め寄り、小...
  • ウルグ×ノエル
       崩れかけた廃城。賢君、後に魔王と呼ばれることとなった、ひとりの王の墓標。  かつて国の要であった筈の建物には魔物が徘徊し、堅牢かつ秀麗な建築技術を用いられた壁や床は、随所で崩れ落ちている。  その隙間より差し込まれる陽光が、城内にわだかまる闇の陰影を深め、陰鬱で不気味な雰囲気を醸し出す。  闇が威圧感を放つ最深部。床には四大精霊、周囲の柱や壁には大陸の神々をモチーフとした彫刻が、天井には緻密な絵とステンドグラスで色どられている。  かつてここが、様々な行事を行っていただろう名残が残っていた。  奥まった場所に、作らせた者の性格が表れているのか、威厳を示しつつも豪華に成り過ぎない作りの玉座が鎮座している。  玉座に一人の青年が座ってる。眠っているかのように頭を垂れ、沈黙している。  その青年の膝に両手と頭を乗せ、光を薄めたような金色の髪を持つ少女・・・ロストール国の王女が、穏やかな表情...
  • TOP OF THE WORLD
    「あっ、つー……」 石壁に背を預け、上がった息を整える。 太陽は頂点に近く、壁際に出来る影は僅かで、身を隠し、涼ませるには足りない。 簡素な衣服の胸元を引っ張ってぱたぱたさせ、汗ばんだ肌に風を送る。 港まで足を運べば海風がさぞ心地よく身体を冷やしてくれるのだろうが、 ぐるりを壁と観客席に囲まれたこの闘技場には風はそよとしか吹かない。 壁際に乱暴に投げ置いていた荷物をごそごそ探って木筒を取り出すと栓を抜き、 汲んでおいた水を喉を鳴らして飲む。 「あんたも飲む?」 傍らに佇む男に声をかける。 男は、かつて長いこと王者として君臨し、今は荒れ果てていくばかりの地を じっと見つめながら石のように立っていた。先刻まで娘と剣を撃ち合わせていたというのに、 男はさほど汗をかいた様子も無く、何処か涼しげだ。 差し出された木筒にレーグがちらと目をくれる。 「……貰おう」 放り投げられた木筒を男は難なく受け止め...
  • BLIND
    「……へえ、あの化け物を使って改造モンスターねえ」 なかなか面白いことをやらかす奴らが居るもんだとゼネテスは感心したように頷いた。 面白がってる場合じゃないでしょうと傍らから冷静な突っ込みが入る。 酒場でちょいとひっかけた後(もっとも娘に言わせるとちょいとどころではない)、 出てきたところを入れ替わりに酒場に入ろうとしていた娘と出くわした。 最初から目的は彼だったのか、それとも情報収集に来ていただけかは知らないが、 娘はゼネテスを人懐っこい子犬のような瞳で見上げ、そのまま付いてきた。 しっぽがあったら振っていそうだが、彼女は良くしたもので その嬉しさを落ち着いた態度の下に隠し、ただ表情や瞳を愛らしく輝かせる。 見ていて眩しく、目を伏せてしまいたくなる程に。 広場へと通じるロストールの大通りを二人並んで歩きながら、何と言うこともない会話をする。 話題は専ら、以前ゼネテスが娘に協力して倒したテ...
  • セラ×ミイス主
      これで何度目の兄との逢瀬になったであろうか。 これで最後、これで最後と誓いながらも、劣情に負けてまた兄の元へ通ってしまう。 『もう私の元へ来てはいけない』 兄はいつもそう言う。自分も頭ではそうだと分かっている。 『私はシェスターを、お前はセラを裏切っている、許されないことだ』 兄は優しい。優しすぎるほどだ。 その優しさにつけ込んでいるのか、自分はいつも兄に泣きついて哀訴する。 兄はその度に折れて自分を抱いてくれる。これっきりだ、と言いながら。 情事が終わると自分は泣きながら謝る。もう来ません、と。 ミイスに暮らしていた頃、兄と自分は結ばれた。 その時は道ならぬ恋だと分かっていても閉鎖された小さな村の中では二人の秘め事を隠し通すことは容易であった。 この禁じられた愉しみがいつまでも続くと思っていた。 だが今はそうではない。時間は流れ運命は二人を引き離した。 兄には恋人がいる。自分にも兄以...
  • 男主×フェティ
      「見てみなよ!フェティ。」 小高い丘の上から街の景色を見下ろし、満面の笑顔で冬の空気を胸いっぱいに吸い込む仲間を見て、フェティは不満そうに口をとがらせてみせた。 「フェティ「様」ですわよー!ジップってば、ようやく街についたのよー!とっととあなたの仕事を済ませますわよー!」 フェティ様の声にかまわず、ジップは今度は空を見上げると、防寒のためのマントを外して両手で広げ、右に左に歩いて空から舞い落ちてくる白い光をうけとめようとしている。 「なあ、フェティ!雪だよ!雪が降ってきたんだ!ひゃっ、冷たくって、きれいだ。ほら、この黒いマントの上に乗せると、大きな結晶が見えるよ!」 「それがどうしたっていいますの!」 「俺はいつも何か発見しているんだ」 茶目っ気たっぷりにそういってのけるジップ。ジップはフェティの至極微々たる表情の変化を見逃さなかった。初雪を面白がって珍しそうな表情を彼女がちらりとの...
  • ジュサプブロス×女主
       ディンガル帝国の都エンシャント。そのスラム地区の一角。  痛みの激しくなってきた家屋の壁には、魔法に関わる複雑で精密な文様が織り込まれているタペストリィが張られ、床には魔方陣が絵描かれていた。  部屋の明かりといえば、正面にある机の上の燭台が二本。燈されている蝋燭が独特の臭いを発しながら、僅かに光を投げかけているだけだった。 「・・・とまぁ、このようなものじゃな」  そんな中、ゆったりとしたローブを着た老人が、話を切り終える。蝋燭の明かりを背にしている為、禿げた頭が陰影を浮き出させていた。  激しく不気味で気色悪い。子供に見せれば、十人中十人が怖いと言って泣き出すだろう。 「ここまでで何か質問は?」 「無い。要するに、君の手伝いだろう?」  そう言って、男は背にしていた壁から離れた。組んでいた腕も解す。  男・・・ジュサプブロスは色の入った眼鏡の位置を直しながら、先程の話を頭の中で整...
  • 男主×フェティ、477
    闇の狂王の歴史……後の世にそう呼ばれる暗黒時代は、竜王の死とともに始まった。 古き神々が支配する時代は終焉を迎え、人が己の足で立つ時代の幕開け。 それは希望に満ち溢れたものではなく、絶望と恐怖に彩られた幕開けだった。 狂王アデル。竜殺しにして剣聖、神をも殺し虚無を退けし無限のソウルを持つ者。 神を滅殺した時、この男の宿命は始まった。 神代の時代から生き続けた竜王がついにその巨体を支えきれず地に倒れ臥す。 巨体が地響きを轟かせ、瓦礫の破片を巻き上げる。 戦いの場となった帝国城は、その凄まじさを物語るように半壊している。 アデル………男はただ一人立っていた。 ヴァン。ナッジ。男の無二の親友たちが倒れている。 男には判っていた。 触れずとも彼らの肉体から次第に体温がなくなっていくこと。 もはや蘇生を促す魔術の奥義を持ってしても彼らの 魂 は戻らない。 魂 の戻らない肉体は朽ちゆくのみ、と。 ...
  • ナッジ×女主,63
    常春を思わせる陽気と、港で働く男達の熱気を適度に保つ、心地よい潮風。 ここはエルズ。 天地千年を見通す風の巫女、エアが治める、四方を大海原に囲まれた港街である。 そんな穏やかな気候の中、無限のソウルを持つもの───シルヴィは、病の床に臥せっていた。 なんのことはない、単なる風邪である。 宿の一室のドアが小さく開く音がして、シルヴィがまだ駆け出しの頃から共に旅を続けているコーンスの少年が、コップ1杯の水と乳鉢を持ってそっと入ってきた。 「あ、起きてたんだ。だいじょうぶ?シルヴィ。薬、持ってきたよ」 「う、うん……迷惑かけてごめんね、ナッジ」 シルヴィは弱々しく微笑む。そんな健気な彼女に、ナッジは胸に熱いものを感じた。 一緒に旅をするようになって、もう、かなりの月日が経つ。その間に、色々な事があった。 親友の仇も討つ事が出来たし(結局見逃したけど)、力の意味もなんとなく分かってきた。 それも全...
  • ネメア×オイフェ
      街道でネメアを見つけたときは、夕暮れ時だった。 オイフェが付いて行くと言い張った時も、 ネメアは特に文句は言わなかった。 ただ、少し眉を潜め、オイフェの本意を疑うような顔つきにはなったが。 リベルダムでネメアに出会って以来、オイフェの心は迷いと混乱で満ち満ちていた。 そして「生きろ」と言い放つネメアに対する疑いと憤りが新たに生まれた。 「生きろ」とは何なのだ? 誰が誰に生を強要することができるというのか。 ただの偽善だ、ふざけるな。 お前がどれほどの苦悩に、悲しみに打ちのめされたというのか? エメルは死んだ。 冒険者数人に陵辱の限りを尽くされて。 かつて傷ひとつなかった体には 遊び半分にナイフでつけられたような、無数の引っ掻き傷がついていた。 激しく抵抗したのだろう、唇は裂け、殴られた跡も数十箇所に及ぶ。 衣服は全て剥ぎ取られ、脚は大きく開かされていた。 汚らしい精液が大量にぶちまけら...
  • 男主×ノエル
     港町アミラルのギルドの親父が、ユリアシュとノエルのことを考え込んだのにはわけがある。 さきほど「ちょっと、しくじっちゃったな。」「…すいません、ユリアシュさん。」「また言った。全然変わってないな。」と言いながら、 ギルドを出て行った二人のことだ。 ロストールとディンガルの激しい戦争の中、めきめきと頭角を現していった二人は、もともと別のパーティーを組んでいた。 そして戦乱の集結を機に、新たにコンビを組んだというわけである。 実力派の二人だけに、今や大陸最高とも名高い。 一見すると、冒険者仲間として実力を深く信頼しているのみならず、仲のいい兄妹のようでもあり、互いを慈しみあう恋人同士のようにも見える。 それだけならば、とくに気にかかるという事はないのだが…。 だがギルドの親父には、小さな違和感が常にあったのだ。 二人が別々のパーティーを組んでいた頃と比べて、ノエルの笑顔にはどこか影が見え隠れ...
  • ノーブルを走り抜けた炎
      星がちかちかと綺麗に瞬く夜、ミネルヴァは、眼下に広がる穂の海を眺めていた。 穏やかな風に吹かれて、ノーブルの金の海は暗がりの中でしなやかにうねる。 「今日は何かあるのかしら…?領主の館も、道も、不自然に静かね……。」 ゆるやかに赤毛をなびかせながら一人つぶやくと、ミネルヴァは不審者がいないか畑の周囲をゆっくりと歩き始めた。 晴れが続いて作物の豊かに実るこの季節はよく、夜のくらがりにまぎれて、 治安の悪化に乗じたこそ泥が自分達の努力の結晶を狙ってきたり、ボルボラの手先が執拗に畑を荒らそうとやってくるので油断がならなかった。 田畑を荒らせば、税を納められなくなる。税をまともに納められなくなれば、代わりに父から受け継いだこの田畑を奪い、 ミネルヴァ達をノーブルから追い出そうというボルボラの狡猾な計略なのだ。 しかし、今日は何もない。いや、不穏なものがなく落ち着いているというわけでもない。違...
  • アイリーン×チャカ
      あの子はあたしのこと、いとも簡単に戦闘不能状態にすると、ロストールの 貴族の屋敷に連れてきた。一部を除いて屋敷の者にも知らされずに運び込まれたらしい。 その時のあたしは意識がなかったから、後で聞いた話だけど。 ノーブル伯ってのは冗談じゃなかったんだなと、ボーっとした頭で考えていた。 あなたも本気だったから、手加減できなくてごめんと言うと、何やら少年に指図して、 屋敷をあとにしたようだった。 カルラ様のロストール侵攻の後片付けに奔走しているのだろう。 燃えるような髪をした少女がこれほどの実力を持っていたとは、正直驚きだったが、 その瞳の力強さや、行動力にやはりと思うところもあった。 冒険者やる前はノーブルで農業やってたと笑って話す少女は、自慢の畑の話を してくれたことがあった。黄金色に輝く波打つ実りの時を本当にうれしそうに 話していた。 なぜ殺さないのかと問うあたしに、あの子は「お母さ...
  • 闇ユーリス×男主
    こんこん。 まだ陽の昇りきらない薄暗い時刻、宿屋の一角で控え目なノックの音が響く。 ノックされた一人用の狭い個室には寝ている男が一人。 ごんごん。 またノックの音。今度は先ほどよりも少し強い。 しかし、旅の疲れで熟睡しきっている彼――ルロイは目覚めようとしない。 「ルーローイーさーまー」 ノックしていた少女がドアに声をかけた。 ふわふわの金髪にリボンをつけた、人形のような顔立ちの少女である。 その声を聞いてルロイはようやく目を覚ました。 眠い目をこすり、時計を見て一瞬眉をしかめるとゆっくりした動作でベッドから出る。 「ルロイ様ーってば!!起きてくださ―」 「もう起きてるよ、ユーリス」 ユーリスと呼ばれた少女が二度目の声をかけようとした時、鍵が開く音と同時にドアが開いた。 「ルロイ様!!」 ユーリスの目がきらきらと輝く。 髪に少し寝癖のついたルロイが、迷惑そうな顔でユーリスを睨んだ。 「今何...
  • 男主×ノエル、457
     ノエルが目を覚ますと、押し倒されていた。 「……ん……」 「ほう。起きたか」  ノエルは冒険者の起床の習慣として、まずあたりを見回す。 「ここは……」  ノエルがきょろきょろと首を左右に振る。そこはどこかの宿屋のようだった。  窓から差す日差し。夕日はまだ強く窓から強烈な光が差している。  木造の部屋の片隅に木造のベッド。そこに自分が寝ているようだ。  視界のすみっこに、自分の見慣れた小さな体。愛用の鎧を着込んだままだ。 「あ、そういえば」  鎧を着たまま。そのおかげでノエルは思い出す。  さっきまで目の前の男と実戦試合をやっていたこと。  そして魔法の使い過ぎで気絶してしまったことを。  そこまで思い出したところで、ノエルは恥ずかしさのために顔を赤くした。 「すいません……と、あれ?」  きちんと謝るため上体を起こそうとして、起き上がれないことに気づく。 ...
  • ザキヴ×男主
      「待って、行かないで」 そういって背後から抱きつかれたとき、シオンはとっさに状況が理解できなかった。 「……ザギヴさん…?」 「お願い、一人にしないで…怖いの…」 普段なら決して聞くことのないであろう心細げな声。 おそらく表情は、そしてその胸のうちはそれ以上に不安に満ちているのだろう。 こうしていても背中から震えが伝わってくる。 「わかりました。どこにも行きませんよ」 こんな不安げな声を出す人を放っておけるわけがないじゃないか。 いやそれ以上に、少しでもこの人を元気付けたい、という思いもあった。 「とりあえず、少し落ち着きましょう」 「…ありがとう」 ベッドに腰掛けると少し落ち着いたのか、ややあってからぽつりと礼を述べた。 「いえ」 「ごめんなさい。私、本当にあなたには頼りっきりね」 「そんなことないですよ。 僕は結局…なにもできなかったし」 シオンの頭に幼馴染の少女の顔が浮かんでは...
  • @wiki全体から「二人のたくらみ、その後」で調べる

更新順にページ一覧表示 | 作成順にページ一覧表示 | ページ名順にページ一覧表示 | wiki内検索