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エウロペの夏 - (2007/09/07 (金) 22:51:19) の1つ前との変更点
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エウロペの夏
「暑っ…」
エウロペの地に立った私、エリー・M・ベッケロイドの第一声はまさしくそれだった。私が生まれたのは中央大陸デルポイの南端だったが、そこに比べてもここは暑すぎる。大異変の影響で、現在西方大陸は赤道に一番近い(というか赤道が大陸を横断しているんだけど)大陸になってしまったらしい。私は共和国の兵士としてこの地を踏むことになったわけだけど、共和国軍ってのはそれほど戒律が厳しいわけじゃないらしい。(帝国の状況なんて教科書でしか呼んだ事ないケド)
軍服は各軍隊ごとに違い、私が所属する陸軍にもいくつかのバリエーションが存在した。カラーはブルーグレーに統一されているけど、デザインは装甲部分が多いものや、前掛けがあるものなど様々だった。
私がここに来る前に中央大陸で選んだのはシンプルな形状で、長くは無いが前掛けが付いているものだった。
「ねえ、軍服に種類がたくさんあるのはいいケド、なんで全部ズボンタイプなわけ?」
私は隣に立った士官、アーク・ワードに、自分のズボンを指さして聞いた。彼は結構な物知りで、大概のことは知ってる。
「戦争しに行くんだぞ?誰が素足にサンダルで行くもんか。」
彼はやれやれという風に、私の肩をたたいた。別にサンダルとは言ってないじゃない。私は頭に来てその場を後にした。
ただ基地内に入るために歩いただけでかなり汗をかいた。
自分のここでの部屋を確認する事もせず、私はシャワー室に向かった。入口でブーツを脱ぎ、更衣室に入る。思った通り、この時間では誰もいない。入口から少し離れたところに姿見があった。結構大きなやつだった。頭から膝まで映るようなやつ。
「ご苦労様」
私は姿見に映る自分に敬礼してみた。左頬のオレンジ色のマークが逆に付いた姿身の中の私も同じ様に敬礼した。まあ、当然だが。
「あれ?」
私は自分の姿を見てあることに気付き、ズボンを下ろす。
前掛けが微妙な長さだから、ズボンなしでも結構形になるのでは?と考えたが、どうやら正解のようだ!前掛けが十分スカートに見える!
「問題は後ろか…」
私は振返り姿見ごしにため息をついた。この長さだと、ちょっとした段差だけで下着が丸見え…。いくら涼しくても、これはちょっとなぁ。断念しかけた私の視界の端で先ほど脱いだブルーグレーのズボンが見えた。
「お?」
これを後ろにつければいいじゃん!
***
鼻歌を歌いながら私はシャワールームを出た。ズボンなしでブーツを履くのは初めてだが、そんなに悪くない。こんな事なら、ブーツもう少し小さいサイズにしておくんだった。
そんな事を考えながら格納庫に向かって歩いてる途中、何人かとすれ違った。彼らのうちの何人かは私を見て、「パイロットの軍服にスカートなんかあったか?」という顔をしていた。
アークはこれ見たらなんて言うだろうか?いや、なんで彼の評価を気にするんだ?私。
そうこうしているうちに、格納庫の入口を通過し中に入る。私たちの小隊のゾイド3機は格納庫を入ってすぐ左に並んでいた。ヘンリーは私を見て、さっきすれ違った人たちと同じ顔をしたが、「ズボン履き忘れてるぞ?」と小声で挑発した。
「忠告ありがと」
と私は笑顔で答えてやった。
アークはライガーのコクピットにいるらしく、姿が見えない。
「ねえ!」
私はライガーを見上げて叫んだ。すると「あ?」とアークが顔を出した。私のスカートに気付いていないのか「どうした?」と聞いてくる。なんて言おうか?いまさらながら、わざわざ自分で言う事でもないような気がして。「やっぱなんでもない」と言葉を引っ込めてしまった。
「なんだよそれ。」
そう言ってアークは顔を戻そうとした。そこに、何を考えたのかヘンリーが割り込んでくる。
「隊長!エリーがズボンやめてスカートにしたから見て欲しいそうです!!」
と声を張り上げて言った。
「ちょっと何勝手な事言ってんのよ!」
私は小声でヘンリーを小突く。アークは「なんで俺が?」と言いつつ、私の方を見た。
「暑いからちょうどいいんじゃないか?」
そう言って今度は完全に顔を戻した。それだけ?そう、それだけ。なんかよくわかんないけどがっかりした。
「だとよ。良かったじゃんか」
ヘンリーはそんな呑気な事を言ってる。
「良くない!バカ!」
私はウルフのコクピットに座り、必須項目をとっとと入力した。コクピットの中はエアコンが効いていて外とは別世界だった。
「やっぱあんたはいいね。相棒」
そう言って私は新品のグリップを握ってみた。
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Elly M.Beckeloyde}
END