賭のパトスは絶対的な喪失に九分どおり賭けているという戦慄に存する。その時彼は99%までの敗北を予感しているのである。勝利の機会はただ1%である。確率的にはどうあろうと、心理的にはまさにそうである。客観的に賭の偶然性を支配する確率の法則と、賭ける者の情熱とは全く別のものである。勝利した時の喜びは、むしろ奇妙な期待はずれの失望感をまじえた安堵にさえ似ている。だから。彼は再び賭けるのだ。彼は負けるまで賭ける。あたかも、賭は負けなければならないものであるかのように。敗北することにこそ賭の目的があるかのように。
石原吉郎