「決意」
執筆者:マド録
リヴァルディの食堂。
他の人がおしゃべりに夢中な中、シルヴィが一人何やら考え込んでいた。
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「行ってきます。」
答える者がいないとわかっていてもつい言ってしまう挨拶。
5年来続くルア・リーフェスの朝の日常だ。幼いころに両親を亡くしたルアは歳の離れた兄の仕送りで暮らしている。兄はミラージュの本社勤務で一緒には暮らしていない。一緒に暮らしてもよいのだがせっかく両親が残してくれた家を出る気にはなれなかった。
シェルター都市である「リエルシティ」の電車に乗り通学する。今朝も車窓からから外を眺めるといつもと変わらず、林立したビル群の景色が流れていった。電車に揺られること15分。ハイスクール最寄の駅に着いた。人工的に作られた空は雲ひとつない快晴。この時は自分に降りかかる災難を知る由もなかった。
ここはリエルシティの「港区」(都市全体がシェルター都市になっている為外部との連絡には沿岸の港になぞらえた港区と呼ばれる施設が担っていた。)。
忙しなく作業用MTが動き回り、積み荷のやり取りやホバー船の整備などをしている。港区ではありきたりの風景だ。その一角、ACとMTの足元に数人の人影があった。
「確かに僕は納期を守れませんでした、しかしこの報酬はないでしょう?、企業軍抗争があって遅れざるを得ない状況だったてこと承知のはずです。」
シルヴィが商人の男に食ってかかる。
「それを加味してこの額だ、こっちは納期遅れで大損をしてるんだ文句を言うなら納期をきちんと守ってくれ、それでも納得しないならギャラはなしだ。」
商人の男はシルヴィの申し出を一蹴するとさっさとACに積んである物資を運ぶよう指示を出す。
「待ってください、その額でいいです!だから報酬なしはやめてください!」
シルヴィはあきらめ商人の言った額での取引をしぶしぶ受ける。
「次からは納期を守ってくれよ。」
そう言うと商人はMTに積み荷を運ばせ、報酬を端末で使い振り込みした。
「全く・・・、こっちの苦労も知らないで。これだからシェルター都市にこもってる人たちは・・・。」
そう言いながらシルヴィは愛機ジルエリッタのコックピットに向かう。
ACを扱う何でも屋を営む彼女達は今日運送の業務でリエルシティに立ち寄ったのだ。なんてことはない運び屋の仕事だったが企業間の戦争に巻き込まれるのを避ける為、遠回りをした結果、積み荷の納期を守れなったのだ。一日の遅れでギャラは約半分、ホント勘弁してほしいところだ。
ACで操作できる端末から母船の「リヴァルディ」に遠距離通信をする。
「なにぃ!?通信が遅いと思ったら、ギャラが半分だぁ?どこほっつき歩いてたんだシルヴィ!!」
やはり親方からどやされた。
「どこほっつき歩いてたもないですよ。ミラージュとクレストの戦争があったんで巻き込まれるのを回避して遠回りしたらこの始末です。」
どうにか言い訳をする。
「仕事の為ならたとえ火の中水の中だ!」
親方は無茶を言う。
「無茶言わないでくださいよ、こっちは積み荷で肩装備なしの軽装だったんですから。無事に届けられただけでもよしとして下さいよ。」
なおも言い訳を続ける。
「まぁ、確かにお前が無事だっただけでもいいとするか、だが帰ったらこの穴埋め分しっかり働いてもらうから覚悟しておけよ!」
罰の追加労働を言い渡して親方は通信を切った。
追加労働は嫌だったが致し方あるまい。仕事も終わったことだし久し振りのシェルター街を見て歩くのも悪くない。ACをドックの駐機スペースに向かわせることにした。
AC駐機の手続きを済ませシェルター街へと繰り出したシルヴィはショッピングを楽しむことにした。
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「あ、コレもカワイイかな?」
ブティックで洋服を選んでいるところだ。
「これなどいかがでしょう?お客様に似合うと思いますよ。」
「そうね、そっちもいいなぁ。」
などとあれこれと悩んでいるともう時刻はすでに夕方に差し掛かっていた。いつもはマイが一緒でうんざりした顔をされるが今日は一人なのでそれはない。
ショッピングを終えると休憩にと公園に立ち寄った。
露天でジュースでも買おうと列に入ると先には地元の女生徒を見受けられた。
楽しげに会話している光景を見ていると僕も両親があんなことになってなかったら彼女達のように学園生活を満喫できていたのにとも思う。いや、それでも拾ってくれたシェルブの親方に感謝しなくてはならない。今自分がこうしていられるのも親方のお陰だ。
そう思いにふけっている時である。一人の女生徒の様子がおかしい。なにか虚ろな眼をして立ちつくしている。
「ちょっとルア、どうしたの?」
その様子を見た友人が声をかけるが返事がない。
肩を叩かれるとルアと呼ばれた少女は倒れこんだ。
「きゃあ、ルアどうしたの!!」
突然の事態に困惑する女生徒達。
「待って、ちょっと様子を見せて。少しなら応急処置を知ってるから。」
様子見ていたシルヴィが名乗り出る。
シルヴィが調べてみたが脈拍、呼吸とも異常はなかった。
「脈も呼吸も異常ないし、貧血みたいね。」
だが念のため友人には救急車を手配してもらった。
シルヴィはルアを抱きかかえ救急車が来るのを待った。だがすぐに目を覚ますルア。
「大丈夫?気は確か?」
「え?あ、大丈夫です。私ったら何を?」
「あなたさっき倒れたのよ。」
「そ、そうなんですか!?」
抱き抱えられてると知り恥ずかしそうに顔を赤らめるルア。
「知らない方にご迷惑をお掛けしてすいません、ありがとうございました。私ルア、ルア・リーフェスって言います。」
立ち上がり礼を言うルア。
「気にしないで。僕も大したことしてないし。僕はシルヴィアっていうわ。」
「もう、しっかりしてよね、びっくりしちゃったじゃない。」
「ホント、いつもは貧血なんてないのに。シルヴィアさんがいてよかった~。」
友人が口ぐちにしゃべりかける。
「ごめん、皆におごるから。シルヴィアさんも一緒にどうですか?」
「そうね。そう言ってくれるならお言葉に甘えます、そ・れ・と、敬語はやめてシルヴィって呼んで。僕もあなた達とそんなに歳かわらないのよ。」
「わかった。じゃちょっと待っててね。シルヴィは何にする?」
「サンキュじゃ、アイスティーをお願いしようかしら。」
かくしてルア達と知り合ったシルヴィは一緒にテーブルを囲むことになった。
「シルヴィは此処の人じゃないんでしょ?旅人?」
ルアの友人の一人マリーが尋ねる。
「まあ、そんなもんかな?運び屋の仕事で此処に立ち寄ったの。」
「私達と歳かわらないのに一人前に仕事してるってスゴいね~。」
ユーミが受けて言う。
一応レイヴンであることは隠しておくことにした。
「そうでもないよ、僕一人で仕事しているわけじゃないしね。」
「コロニーの外は大変なんじゃない?企業間の戦争もあるって言うし。」
「そうね、確かに大変だけど慣れちゃえばどうってことないよ。皆よりちょっとタフになってるだけ。」
「おお、スゴい!!」
「さすが、外で生活してる人の言うことは違うね。」
そんな会話していると、そろそろリエルシティを出る時間となった。
「そろそろ、時間ね。母船と合流しなくちゃいけないから私はこの辺でお暇するね。楽しかったわ、ありがとう。皆元気で。」
「うん、私達も楽しかったよ、それじゃあ気をつけてね。」
ルア達と別れたシルヴィは港区のAC駐機場へと向かった。
「ただいま。」
ルアは朝と同じく答える者はいないと知りつつ挨拶を言った。
居間のソファーにダイブする。
私と同い年のシルヴィは外で過酷な生活をしていると思うとどれだけ自分は恵まれているのだろう。両親はいなくともこうして普通には暮らして行けている。
そんなこと考えていると。突如家の外で隕石でも降ってきたのではないかというような大きな物音がした。
びっくりして表にでると、そこには一機のACが立っていた。ACがルアに手を差し伸べる。コアのコックピットハッチが解放されパイロットが出てきた。
「っ!!兄さん!!ケビン兄さん!!」
「ルア、説明している時間がない、すぐに俺と来るんだ。」
「一体どういうことなの?」
「説明している時間はないと言ったハズだ、お前の命が危ない、いくぞ!!」
そういうとルアの手をひっぱりコックピットに乗せた。
「お前の素性がミラージュにばれたんだ。」
「私の素性?そんなのただの人だよ、私は。」
「違うんだ、お前は父さんが引き取った生体CPUだ。」
「・・・・エ?引キ取ッタ?CPU?」
「お前は人間じゃない、ACの重要な部品である生体CPUなんだ!」
「何言ってるの兄さん、そんな、私が人間じゃナイナンテ?」
耳鳴りがしたかと思うと意識が遠ざかる感覚に襲われる、今日シルヴィと会った時と同じだ。誰カガ私ヲ奪イニ来ル。逃ゲナイト。駄目ダ。危険ガ迫ッテイル。
「ミラージュの特殊部隊が?どうしてこんな片田舎のコロニーに?」
港区の駐機場に着いたシルヴィはコロニーにミラージュの特殊部隊が進入していることをオペレーターから聞かされた。
「いや、私も詳しいことは聞かされてないんです。なんでも所属不明機がコロニー内に侵入したらしくそれの迎撃にとのことですが・・・。」
「ACの一機ぐらいここの防衛部隊で事足りるでしょう?何も本社直属の特殊部隊を出さなくても・・・。」
「そうなんですよ。ですが逆に防衛部隊は手を出すなということで、私達も困惑しているのですよ。」
「一体なにが起こっているの?」
「さあ、それはなんとも、未確認ですがパルヴァライザーも確認されたという情報もあります。」
「っ!!パルヴァライザー!!ルア達が心配だ。僕もコロニー内に武力介入します。」
「それは困ります。手を出すなというのが本社のめいれ・・・」
半ば強引に回線を切るとシルヴィはジルエリッタをコロニー内部へと通じる隔壁に向かわせた。
コロニーの内部は酷い有様だった。ミラージュは口封じに住民の消去を決定。特殊部隊は虐殺を行っていた。
「これは酷い・・・。」
無抵抗の人々が一方的に殺されていた。
「そこの所属不明機!何をやっている!」
「何をですって?これが軍人のすることなの?!」
「レイヴンか、此処を見られた以上生きては返さん。」
「ルア達がいるんだ!押し通る!!」
「ほぅ手向かうか!レイヴン風情が調子に乗るな!」
手間取れば特殊部隊の増援が来る。短期決戦を強いられることとなった。まず口火を切ったのは特殊部隊のACだ、多弾頭ミサイルを発射し接近してくる。横滑りでギリギリ回避する。避けられた見るや敵機はレーザーライフルを連射してくる。弾幕をやり過ごすと、思い切りブースターを吹かし敵機との距離を取る。
「接近戦が嫌いと見える!もらった!」
敵機はオーバードブーストで一気に距離を詰めてくる。ブレードで斬られる刹那、EOを起動、敵機の頭部を吹き飛ばした。ダメージでノックバックした敵機のコアに目掛けブレードを振りぬいた。
勝敗は決した。
「おしゃべりが過ぎたようね、接近戦はできないわけじゃないわ。」
「くっ、何故止めを刺さないんだ?」
「貴方は嫌いだけど人の命は大切だから・・・。」
「ふん、偽善者め!」
シルヴィはルア達を探すためにジルエリッタの機体を疾駆させた。
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「くそ、こうも一方的に・・・。」
一方ケビンのACはいとも簡単にミラージュの特殊部隊に追いつかれていた。
「ふん、技術者風情が・・・。我々ミラージュの精鋭相手に逃げ切れると思ったか?」
特殊部隊の指揮官リヒト・マウザーが言った。
「ルア、しっかりつかまっていろ!」
「包囲は崩すな!大人しくNO.07を渡せばよし、さもなくば。」
「ルアを渡すつもりはない!!」
「無駄な配慮だったようだな・・・。各機、目標の動きを止めろ!!ただしコアは外せよ。NO.07は無傷で奪還したい。」
多勢に無勢、その上ケビンはただの技術者だ。逃げおおせる見込みはないに等しい。
四方八方から攻撃を浴びケビンのACは手足を失い自由を奪われた。
コックピットハッチを引き剥がされケビンとルアがあらわになる。
「NO.07のみの確保でいい。技術者は処分せよとのことだ。」
「了解。」
「お前らルアに近づくな!」
「無駄だ。虫けらが!」
そう言うと特殊部隊のACパイロットはケビンをマニュピレーターで握りつぶした。
「兄さぁぁん!!」
「NO.07は丁重に扱え。場合によってはお前らの首が飛ぶぞ。」
特殊部隊の隊員がルアを拘束する。
「よくも兄さんを・・・お前達なんか・・・オマエタチナンカ、ミンナ死ンジャエイイ!!」
次の瞬間、特殊部隊の人工パルヴァライザーがACに攻撃を仕掛けた。
「どうした?そんな命令は出してないぞ?」
「いえ、か、勝手に・・・うわ!!・・・・」
特殊部隊の半数以上は自立制御が可能な人工パルヴァライザーだ。
突然の出来事ということもあり、浮足立つ特殊部隊員達。
しかもパルヴァライザーは基本スペックをはるかに上回る運動性能を発揮し特殊部隊のACに肉薄する。
「こいつら一体どうなったんです、隊長?」
「わからん、しかしブラックボックスを積んでいる兵器が役に厄介だということは確かなようだ。各員パルヴァライザーを殲滅せよ!」
「死ンジャエバイイ、ミンナ!!」
「退避!!退避!!うわぁ!」
ルアを拘束しようとした特殊部隊員はパルヴァライザーの対人機銃によって肉塊となる。
「これはNO.07の仕業か・・・。確保は一筋縄ではいかんようだな。」
ルアの様子を見たリヒトはつぶやく。
そこにシルヴィが到着する。コロニー内の戦闘は此処に絞られていた為、おのずと此処へたどりついたのだ。
そこは惨憺たる有様だった。数で勝るパルヴァライザーがAC部隊を圧倒していた。
「パルヴァライザーがどうしてこんなところに?」
「レイヴンか?」
「はい。このまま黙ってはいられません、加勢します!!」
「ありがたい、感謝する。」
通信を聞き終わる前に四脚型パルヴァライザーにマシンガンを叩きこむ。しかし異常とも言える機動性で弾幕を回避したかと思うと片腕をブレードに変更し斬りかかってきた。
こちらもブレードを使いつばぜり合いを演じる。
ふと、つばぜり合いの最中声が聞こえる。
「しるヴぃ、貴方モ殺スノ?」
声には聞き覚えがある、先ほどまで一緒にいたルアのものだ。
「!!まさか、ルア、ルアなの?」
「私、人間嫌イ、殺スコトシカシナイ人間殺ス・・・。」
「待って、僕は人を殺す為に戦ってるんじゃないの。古代兵器から人類を守るために戦っているのよ!」
「人間・・・、戦ウコトシカシナイ、ダカラ殺ス、しるヴぃ人間守ル、ダカラ殺ス!」
「っ!!ルア、やめて貴方とは戦いたくない!」
「・・・死ネ。」
パルヴァライザーのブレードの出力があがり、弾き飛ばされるジルエリッタ。
「キャア!!」
「今楽ニシテアゲル・・・・。」
倒れたジルエリッタにブレードを突き付けるパルヴァライザー。
「あなたとは戦いたくない、でも死ぬわけにはいかないの!」
言ってEOとマシンガンの火線を四脚パルヴァライザーに集中させる。
飛び退くパルヴァライザー。
そこにレーザーライフルが直撃する。崩れ落ちる四脚パルヴァライザー。
「なんてことを!アレにはルアが・・・。」
「パルヴァライザーは無人機だ。生体CPUは別のところにいる。」
狙撃したリヒトが言う。
「ミラージュ社の特殊部隊の人・・・。」
「リヒト・マウザーだ。レイヴン、今は戦力が少しでも欲しい、パルヴァライザー殲滅まで協力してもらおう。報酬も出す。」
「わかりました。」
(その後死んでもらうがね。)
「生体CPUって言うのがルアの正体なんですか?」
「そうだ。それを押さえれば戦いは終息する。貴官は生体CPUと面識があるのか?」
「はい、今日会ったばかりですが。」
「それは好都合だ、彼女を説得してくれたまえ。NO.07の現在位置を転送する。」
「了解です!!」
「援護をつける、武装もお好きなように選びたまえ。」
「ご厚意感謝します。」
バックユニットにミサイルポッド、両腕にスナイパーライフルをジルエリッタに装備させると目標地点へとジルエリッタを疾駆させる。
「リデオンってんだ、お譲ちゃん、よろしく頼むぜ!!」
「グレダ中尉だ、前衛は任せてくれ!」
護衛の2機のACから通信が入る。
「キャスパーです、よろしくお願いします!」
初めにフロート型のパルヴァライザーと接敵した。
近距離型のグレダが前に出て牽制を始める、そこに正確無比なシルヴィの狙撃が命中しパルヴァライザーは撃破された。
「よう、お譲ちゃんやるじゃねえか!」
「ええ、これでもレイヴンのはしくれですから。」
ルアのいるポイントに到達するまでに合計6機ものパルヴァライザーを撃破した。
ルアはコロニーの中心部に位置する教会に居た。
「ルア、貴方が生体CPUでも関係ないわ、僕は貴方のことを友達と思ってる。だからお願い投降して、これ以上関係のない人まで巻き添えにする戦いはやめて!」
外部スピーカーでルアに呼び掛ける。
「・・・モウ戻レナイ。私ハ生体CPUダカラ戦ウ道具ナノ。ゴメンネ。」
そう言った瞬間突如教会の上空に大型のパルヴァライザーが現れた。
「やはりコイツが残っていたか。」
リデオンが言った。
「ボスってやつだな。いくぞリデオン、キャスパー!」
グレダの掛け声とともに戦いが始まる。
大型パルヴァライザーはミサイルの雨を降らせる。
建築物の影に隠れてやり過ごしたシルヴィは狙撃を行うものの重装甲に阻まれ思うようにダメージを与えられない。
「くっ、なんて装甲なの!」
「俺が突っ込む、援護してくれ!」
言うが早い、グレダはパルヴァライザーに向けて突進を開始する。
シルヴィとリデオンの援護射撃をもらいグレダはパルヴァライザーに肉薄する。
「もらった!」
ブレード一閃。パルヴァライザーの飛行ユニットを破壊した。
「乱暴ナ人は嫌イ・・・。」
しかしグレダのACはパルヴァライザーの大型アームに捕縛され、レーザーキャノンの0距離射撃をもらう。
「なんだと!?」
悲鳴を上げる間もなく爆発四散するグレダ機。
「オ願イ、モウ向カッテコナイデ。」
「野郎、よくもグレダを!!化け物め!」
「グレダ中尉・・・。」
「よく聞け、お譲ちゃん、やつの弱点は制御基盤の集中する頭部だ。俺がかく乱するから、その間の狙撃しろ、飛行はできなければ勝ち目がある。」
「了解です!!」
「うおおぉぉぉ!!」
雄叫びとともにリデオンはパルヴァライザーにかく乱攻撃を仕掛ける。両腕のマシンガンをフルオートで乱射した。
しかしパルヴァライザーはその巨体に似合わず素早い機動で弾幕をやり過ごす。
「これもかわすのか!?」
「これじゃ飛行してた時より分が悪い。」
シルヴィは左腕のライフルをパージし、両手でライフルを構える。
リデオンの弾幕に追い立てられるパルヴァライザーに一瞬の隙ができた。
(今だ!!)
シルヴィは引き金を引き絞る。
しかし弾丸は頭部の装甲を破壊したにとどまった。
「チクショウ、マシンガンも終いだ!こうなったらもう手が無え、動きが止まったら必ずしとめろよ!」
「何か策があるんですね、わかりました!」
リデオンはオーバードブーストを起動しパルヴァライザーに接敵した。
「おらぁぁぁ!!」
雄叫びとともにパルヴァライザーに取り付いた。振りほどこうと暴れるパルヴァライザー。
「今だ、早く!!」
「っ!!」
リデオンのACがレーザーキャノンを受けるのとパルヴァライザーの頭部が破壊されるのはほぼ同時だった。
「リデオンさんまで・・・。」
しかし戦闘は終わった。シルヴィはコックピットのハッチを開きルアの待つ教会へ足を踏み入れた。
「ルア・・・。」
「シルヴィ・・・。」
「ルアのせいじゃないよ、ミラージュの特殊部隊が来たせいだよ。」
「でも関係ない人もたくさん死んだ、マリーとユーミだって・・・。罪を償わなくっちゃ。私を殺してシルヴィ。」
「それは生きてないと駄目だよ。生きて罪を償うって考え方もあるよ。」
「・・・そう?」
「僕のとこに来なよ。ウチの親方はお節介焼きだからきっと大丈夫。」
「ホント?」
ルアがシルヴィの手を取ろうとした瞬間、教会の屋根が吹き飛んだ。
「それは駄目ですね。貴方は大事な生体CPUなのですから。」
「リヒトさん!?」
「キャスパー・・・。よく働いてくれたよ。暴走したパルヴァライザーの処理もしてもらっちゃって大助かりだ。だがここまで知られた人間を生かしてはおけないんですよ。悪いが死んでもらいます。」
レーザーライフルの銃口がシルヴィに向けられる。
「させない!シルヴィだけでも!!」
ルアが祈るように念じると突如リヒト達ミラージュ特殊部隊のACの動きが止まった。
「なに?強力なECMだと!?」
「今のうちに逃げてシルヴィ。」
「でもルアを置いては・・・。」
「長くはもたないの、さあ早く!」
「ごめん、絶対助けに行くから!」
「うん、待ってる・・・。」
シルヴィはジルエリッタに飛び乗るとリエルシティから離脱コースに入った。
「ルア・・・。」
逃走中のジルエリッタのコックピットではシルヴィの頬に涙が零れ落ちていた。
再びリヴァルディの食堂。
「どうしたんだシルヴィ?何か考え込んじゃって?」
マイが問う。
「いえ、僕にも戦う理由ができたんです。絶対譲れない。」
「そうか。何か信念を持ってないとレイヴンなんてやっていけないもんな。よかったじゃねえか。」
「そう、ですね。」
「がんばっていこうぜ。」
「はい。」
力強く答えるシルヴィの眼は歴戦のレイヴンにも劣らない輝きを放っていた。
外伝「決意」 完
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最終更新:2011年09月17日 23:24