空の上のおもちゃ(前編) ◆wYjszMXgAo
悠然と夜闇の中でもなお真黒く強く輝く陽の巨星。
其の威光は星々の煌きを掻き消し地の上に等しく圧を遣わす。
この閉ざされた箱庭に於いて、それを目にせぬ者は無し。
ヒトであろうとも、ヒトでなかろうとも。
其の威光は星々の煌きを掻き消し地の上に等しく圧を遣わす。
この閉ざされた箱庭に於いて、それを目にせぬ者は無し。
ヒトであろうとも、ヒトでなかろうとも。
「何だ……何だというのだ、あれは……!」
黒金が鎚にて数多が塵芥を葬りし猛き英士は、地にて遥か天蓋を仰ぎ見る。
「あのような物までも……ニンゲンが使いこなすというのか!?
ならば、この俺の体一つではどうしようもないではないか……!」
ならば、この俺の体一つではどうしようもないではないか……!」
悟るは己が力の限りと宿業と。
はたまた――――
はたまた――――
「……何故、我らを造り出したのだ、螺旋王……ッ!」
咆える。吠える。吼える。
何処までも何処までも響く声に応える者はおらず、誰よりも逞しき矮躯にて憤りを隠しもせずに。
然して、其の矛先を決して違えずに。
何処までも何処までも響く声に応える者はおらず、誰よりも逞しき矮躯にて憤りを隠しもせずに。
然して、其の矛先を決して違えずに。
「……ならば、御覧に入れて見せようぞ……!
この俺の……否、獣人全ての誇りに懸けて!」
この俺の……否、獣人全ての誇りに懸けて!」
叫ぶ。疾駆する。跳躍する。
闇を穿ち突き進む。
其の足に迷いは無く、嘆きもなく。
闇を穿ち突き進む。
其の足に迷いは無く、嘆きもなく。
「……王よッ!! 今此処に怒涛のチミルフは宣言する!
これまで俺は確かにニンゲンどもを嘗めていた!
この場に来る前に聞かせて頂いた『あれら』の所在、わざわざ使うまでも無いとタカを括っていた!
だが――――」
これまで俺は確かにニンゲンどもを嘗めていた!
この場に来る前に聞かせて頂いた『あれら』の所在、わざわざ使うまでも無いとタカを括っていた!
だが――――」
最早彼の者に油断は無く、慢心も無し。
ニンゲンを、その力を認め、然しなお己の誇りを知らしめる為に。
自らの生全てへの感謝を、造物主に伝える為に。
ニンゲンを、その力を認め、然しなお己の誇りを知らしめる為に。
自らの生全てへの感謝を、造物主に伝える為に。
「俺は、貴方から賜った全てを振るう事を此処に誓おう!
そしてこの怒涛のチミルフは、今こそ貴様らニンゲンを敵と認める!
これより俺は、俺の得てきた力を惜しげもなく貴様らを叩き潰す為に用いよう!
覚悟し、剋目するがいいッ!! そして抗い立ち向かえ!
俺がこの手でその悉くを蹂躙してみせるのだから!」
そしてこの怒涛のチミルフは、今こそ貴様らニンゲンを敵と認める!
これより俺は、俺の得てきた力を惜しげもなく貴様らを叩き潰す為に用いよう!
覚悟し、剋目するがいいッ!! そして抗い立ち向かえ!
俺がこの手でその悉くを蹂躙してみせるのだから!」
黒き暗き陽光の中、武人は只唯弛まない。
道程の行き着く先は故に一所。
己が全てを捧ぐに足る王より耳に伝えられし、彼がチカラの眠りし其の墓地へ。
道程の行き着く先は故に一所。
己が全てを捧ぐに足る王より耳に伝えられし、彼がチカラの眠りし其の墓地へ。
◇ ◇ ◇
「……フン、螺旋王の用意した箱舟といった所か」
ギルガメッシュは誰もいない瓦礫の中で一人呟いた。
そう、そこにいるのは彼だけだ。
遥か天に揺蕩う黒の太陽を、王の王は見定めるように睨み続けている。
そう、そこにいるのは彼だけだ。
遥か天に揺蕩う黒の太陽を、王の王は見定めるように睨み続けている。
「蛇。一時なりとはいえ我が臣下だった貴様の殉じた道、成程、それなりのものだったと見える」
それだけを口にしながら足下に転がる死体を一瞥だけした後、再度彼は空を仰ぎ見る。
「……だが、彼の王の居地まで至らねば貴様は所詮そこまでの存在だ。
これから我の進む先にある天を貫く道から振り落とされるとは、見据える先を誤ったな」
これから我の進む先にある天を貫く道から振り落とされるとは、見据える先を誤ったな」
死体の握っていた宝石を弄びながら呟き、それきり彼は死体に関する興味を一切失った。
彼の関心があるのは常に未来であり、自分の進むべき先のみである。
それこそが王の在り様であり、既に物言わぬ抜け殻に感慨を持つなど全くの無駄でしかない。
彼の関心があるのは常に未来であり、自分の進むべき先のみである。
それこそが王の在り様であり、既に物言わぬ抜け殻に感慨を持つなど全くの無駄でしかない。
黒い太陽の闊歩する天蓋に向かい合いながら、ギルガメッシュは考える。
……アレには、何の意味があるのかと。
……アレには、何の意味があるのかと。
殺し合いをするにはあまりに過ぎるその力。
たとえ未だ目立った動きを見せていなかろうと、あらゆる財を集めし王の眼力はそこに秘められた真実を見抜くことを容易く可能とする。
たとえ未だ目立った動きを見せていなかろうと、あらゆる財を集めし王の眼力はそこに秘められた真実を見抜くことを容易く可能とする。
「……雑種共に無限の動力を供給する源泉。そしてそれを封ずる為の栓、か。
全くけしからんな。
……力とは、王のみが自在に使うに能うモノだ。ならばアレは我の物であるに相違無いというのに。
雑種如きが振り回すには過ぎた玩具よ、早々に取り戻さねばなるまい」
全くけしからんな。
……力とは、王のみが自在に使うに能うモノだ。ならばアレは我の物であるに相違無いというのに。
雑種如きが振り回すには過ぎた玩具よ、早々に取り戻さねばなるまい」
あまりにも傲慢ながら、しかし彼はそれを当然の判断として気にも留めない。
空に浮かぶ大怪球は幸か不幸か彼の持つべき財として認められ、ひとまずの破壊を逃れたと言える。
己が財に対しては、英雄王はいきなり乖離剣を持ち出し叩き潰すなどという蛮行はまず行うまい。
むしろ、同じ潰すにしてもいかに上手く使い潰すかを考えるのがこの男であろう。
空に浮かぶ大怪球は幸か不幸か彼の持つべき財として認められ、ひとまずの破壊を逃れたと言える。
己が財に対しては、英雄王はいきなり乖離剣を持ち出し叩き潰すなどという蛮行はまず行うまい。
むしろ、同じ潰すにしてもいかに上手く使い潰すかを考えるのがこの男であろう。
……そう、黒い太陽の意義を考えねばなるまい。
殺し合いに使うのではないならば何が目的なのか。
それこそ、螺旋王の目的たる螺旋の力に何か関係するに違いない。
だが、現状アレは螺旋の力の覚醒そのものには関与はしていないのだ。
ならば回答は一つ。
殺し合いに使うのではないならば何が目的なのか。
それこそ、螺旋王の目的たる螺旋の力に何か関係するに違いない。
だが、現状アレは螺旋の力の覚醒そのものには関与はしていないのだ。
ならば回答は一つ。
「……この世界を発ち、彼の男の居城に至る術。
その手段でありながら、同時に螺旋の力の選別に用いる、と見るべきか」
その手段でありながら、同時に螺旋の力の選別に用いる、と見るべきか」
あの黒い太陽はこの世界を抜け得る手段の一つであり、それを行う過程において螺旋の力の成長を促しつつ、不要な者を切り捨てる算段なのだろう。
いずれにせよ、まずは黒い太陽を手中に収めねば検討はできないのであるが。
いずれにせよ、まずは黒い太陽を手中に収めねば検討はできないのであるが。
と、そこまで考えた時。
「戻ったよ、ギルガメッシュ。いやいや、辺りがぼろぼろだったから中々まともなのが見つからなくてね。
さて、とりあえずこっちの用事は終わったけど、すぐにあっちに向かうかい?
それともやっぱりデパートに向かうかな?」
さて、とりあえずこっちの用事は終わったけど、すぐにあっちに向かうかい?
それともやっぱりデパートに向かうかな?」
両腕に簡素な衣服を着た少女を抱えながら、王ドロボウが帰還した。
◇ ◇ ◇
しばし時間は遡る。
博物館から出た彼らを出迎えたのは黒い太陽の闊歩する凍てついた廃墟だった。
刑務所のあった辺りが崩壊してまともな形状をとどめていないその光景は、デパートに向かわんとするジンとギルガメッシュに行く先を再考させるには充分だったのだ。
刑務所のあった辺りが崩壊してまともな形状をとどめていないその光景は、デパートに向かわんとするジンとギルガメッシュに行く先を再考させるには充分だったのだ。
刑務所にいたはずの人間や奈緒、ドモンはどうなったのか。
それを見極める必要があるだろうし、彼らの持つ情報を失うには惜しい。
施設の道具はなくならなくても、人間の命はそうではないのだ。
あれだけの規模の破壊、自分たち以外にも確実にそれを目の当たりにした参加者がいるはずである。
仮に刑務所の人間が生き延びたとして、目ざとく集まって来る殺し合いに乗った参加者に殺されては元も子もない。
そもそも、助かったとしても怪我で長くないという可能性もある。
ならば、そちらに向かって情報だけでも搾り取った方が有益というものだ。
それを見極める必要があるだろうし、彼らの持つ情報を失うには惜しい。
施設の道具はなくならなくても、人間の命はそうではないのだ。
あれだけの規模の破壊、自分たち以外にも確実にそれを目の当たりにした参加者がいるはずである。
仮に刑務所の人間が生き延びたとして、目ざとく集まって来る殺し合いに乗った参加者に殺されては元も子もない。
そもそも、助かったとしても怪我で長くないという可能性もある。
ならば、そちらに向かって情報だけでも搾り取った方が有益というものだ。
そしてもう一つの違和感が、彼らの目にする景色の中に確かに存在していた。
正確に言うならば『しなかった』が正しくはあるのだが。
二匹の怪獣による破壊の爪痕、それは確かに其処此処に刻まれているにもかかわらず最早轟音や炎の一つすら見えはしない。
戦いの終結をこれ以上なく明確にしながら、静寂はただただ彼らの周りに満ちていた。
正確に言うならば『しなかった』が正しくはあるのだが。
二匹の怪獣による破壊の爪痕、それは確かに其処此処に刻まれているにもかかわらず最早轟音や炎の一つすら見えはしない。
戦いの終結をこれ以上なく明確にしながら、静寂はただただ彼らの周りに満ちていた。
そんな最中、ジンが見つけたのが二人の少女だった。
一人は気絶、一人は死体。
どちらにせよ動かぬ彼女たちを目の当たりにするだけで、王達は即座に事態を理解する。
そして決断も速やかに。
一人は気絶、一人は死体。
どちらにせよ動かぬ彼女たちを目の当たりにするだけで、王達は即座に事態を理解する。
そして決断も速やかに。
あれだけの破壊をもたらす竜使いたち。
加えて、己が首輪を燃やし完全に束縛より解き放たれたその姿。
二人の王は、単純な興味とそれ以上の打算で以って生き延びた少女を確保することを合意した。
加えて、己が首輪を燃やし完全に束縛より解き放たれたその姿。
二人の王は、単純な興味とそれ以上の打算で以って生き延びた少女を確保することを合意した。
とはいえ両者の意見の一致はそこで一時終了となる。
さっさとその場を去ろうとする英雄王に対し、王ドロボウが物申す。
紳士で気障なジンとしては、生まれたままの姿になっていた少女に着せる服くらいは与えてあげるべきではないかと告げるのは当然のことだろう。
寛大な心を見せるのが王だと言われれば、ギルガメッシュもそれに頷かざるを得なかった。
ついでに周囲の探索も兼ねて、ジンは少女の目覚めを待ちつつ服を探しに行く。
さっさとその場を去ろうとする英雄王に対し、王ドロボウが物申す。
紳士で気障なジンとしては、生まれたままの姿になっていた少女に着せる服くらいは与えてあげるべきではないかと告げるのは当然のことだろう。
寛大な心を見せるのが王だと言われれば、ギルガメッシュもそれに頷かざるを得なかった。
ついでに周囲の探索も兼ねて、ジンは少女の目覚めを待ちつつ服を探しに行く。
――――尤も、破壊されつくした周囲でまともな服が見つかるはずもなく。
映画館の方まで足を伸ばしたものの、見つかったのはでっかい大穴、そして簡単な墓と幾つかのアイテムだけ。
待ち合わせたスパイクもいないので卸売り市場のほうに行ったと判断するも、あまりギルガメッシュを待たせれば碌な事にはならないだろうとその場でターン。
墓に刺さっていた剣を除いてドロボウらしくそれらを頂いた後、しばし探し回れど着せられそうなものは無しのつぶて。
仕方ないのでようやく見つけた1枚のシーツを服らしい形に纏わせて、帰還した次第という訳である。
映画館の方まで足を伸ばしたものの、見つかったのはでっかい大穴、そして簡単な墓と幾つかのアイテムだけ。
待ち合わせたスパイクもいないので卸売り市場のほうに行ったと判断するも、あまりギルガメッシュを待たせれば碌な事にはならないだろうとその場でターン。
墓に刺さっていた剣を除いてドロボウらしくそれらを頂いた後、しばし探し回れど着せられそうなものは無しのつぶて。
仕方ないのでようやく見つけた1枚のシーツを服らしい形に纏わせて、帰還した次第という訳である。
◇ ◇ ◇
遠く遠く、戦の足音はただ遠く。
昏き闇と緑の織り成す深層の奥に在る物は、生きとし生けるものに眠ること許さぬ寝所。
昏き闇と緑の織り成す深層の奥に在る物は、生きとし生けるものに眠ること許さぬ寝所。
断ち割られ、斬り割られ、分かち割られ。
十の傑が一人に頭を蓋を崩落されしその場は月の光に照らされる。
旧き墳墓。
はやヒトは近づかず、不敗の名を持つヒトの極みも立ち去り久しい。
十の傑が一人に頭を蓋を崩落されしその場は月の光に照らされる。
旧き墳墓。
はやヒトは近づかず、不敗の名を持つヒトの極みも立ち去り久しい。
煌々たる天の光の一つも届かぬ闇の奥に辿り着きしは獣の勇士。
彼の者は己が座に舞い戻り、地の底よりニンゲンに脅威足る巨躯の封を解いて同胞の誇りを知らしめる。
彼の者は己が座に舞い戻り、地の底よりニンゲンに脅威足る巨躯の封を解いて同胞の誇りを知らしめる。
黒き太陽が地の底に眠るならば。
ソレを穿つ勇士の化身も地に眠る。
「……螺旋王ッ! 俺に力を与えてくれたことを感謝しよう!
そして、その力を更なる高みに引き上げてくれたこともだ!
見るがいい……ニンゲンども!」
そして、その力を更なる高みに引き上げてくれたこともだ!
見るがいい……ニンゲンども!」
“入れ”た。
「……これが、我ら獣人の力だッ!!」
瞬間、眩き光が辺りを満たす。
地の底に封ぜられし鉄の覇者。
強く剛く、力の限りに振るうは豪拳。
眠りから醒めたからには寝所の役目は既に失せ、在りし建物は其処に無い。
地の底に封ぜられし鉄の覇者。
強く剛く、力の限りに振るうは豪拳。
眠りから醒めたからには寝所の役目は既に失せ、在りし建物は其処に無い。
墳墓の全ては只の一撃で破砕。
舞い散る欠片は一つ一つで建物にも等しく、伴う風は嵐も越える。
舞い散る欠片は一つ一つで建物にも等しく、伴う風は嵐も越える。
赤き巨神が舞い降りる。
地が割れ、森が割れ、山が割れ。
家が割れ、道が割れ、空を突く。
家が割れ、道が割れ、空を突く。
嗚呼、その名は大紅蓮。
大顔山を制して自らの信ずる道を進み作り出す、男達の集いし夢の跡。
山を越えて雲を衝く。
偉大なりし雄姿は黒き太陽に勝るとも劣らない。
然してその先端に起つは彼らに非ず。
山を越えて雲を衝く。
偉大なりし雄姿は黒き太陽に勝るとも劣らない。
然してその先端に起つは彼らに非ず。
白き虎、猛き虎。
嘗て異なる世界にて、月を目指すと語った男を屠りしその姿は実に威風堂々と。
輝く槍をその手に掴み、黒き太陽に刃を向ける。
嘗て異なる世界にて、月を目指すと語った男を屠りしその姿は実に威風堂々と。
輝く槍をその手に掴み、黒き太陽に刃を向ける。
「……さあ、ここからが本番だニンゲン!
このビャコウとダイガンザンが、貴様らの死を以って我らの生きる意味を証明してくれよう!!」
このビャコウとダイガンザンが、貴様らの死を以って我らの生きる意味を証明してくれよう!!」
遠吠えは、何処までも。
箱庭にいる生者全てに確たる存在を刻み込む。
箱庭にいる生者全てに確たる存在を刻み込む。
全ての蹂躙される者に哀れみを。
――――成す術など、在りはしないのだから。
◇ ◇ ◇
「……何だか凄いことになってるね。怪獣達の宴の後は太陽と巨人の争いか」
――――星をも盗む流石の王ドロボウも、そう呟くだけでやっとだった。
真東より立ち上がる赤い巨人。
その大きさは大怪球にも匹敵し、ただ立ち上がるだけで周囲のあらゆるものを破壊する始末だ。
もはや人間が一人でどうこうできるレベルではない。
刑務所に向かうのには危険すぎる。
しばし刑務所方面からは手を引き、当初の予定通り施設を巡るべきだと考える。
それも東側ではない方角だ。あれだけの大きさ、怪獣同士の殴り合いよりひどいことになるのは明々白々。
何処まで被害が及ぶか分からず、万一巻き込まれてはたまったものではない。
お姫様抱っこの体勢で抱きかかえている少女の話も聞きたいし、安全な場所へ行きたいものである。
とりあえず、西へ。
どんな施設があるか考えると発電所の辺りがいいだろうか。
その大きさは大怪球にも匹敵し、ただ立ち上がるだけで周囲のあらゆるものを破壊する始末だ。
もはや人間が一人でどうこうできるレベルではない。
刑務所に向かうのには危険すぎる。
しばし刑務所方面からは手を引き、当初の予定通り施設を巡るべきだと考える。
それも東側ではない方角だ。あれだけの大きさ、怪獣同士の殴り合いよりひどいことになるのは明々白々。
何処まで被害が及ぶか分からず、万一巻き込まれてはたまったものではない。
お姫様抱っこの体勢で抱きかかえている少女の話も聞きたいし、安全な場所へ行きたいものである。
とりあえず、西へ。
どんな施設があるか考えると発電所の辺りがいいだろうか。
即座に思考を展開させ、少女を座席に横たわらせながらジン自身も消防車に乗り込む。
後は気難しい同行者の機嫌を取って、兎にも角にも逃げ出すだけだ。
後は気難しい同行者の機嫌を取って、兎にも角にも逃げ出すだけだ。
「ギルガ――――」
しかしその算段は破綻する。
当然だ。
英雄王に退くという選択などありえない。
当然だ。
英雄王に退くという選択などありえない。
言葉を途中を止め、ジンは彼の姿を見る。
黒猫姿がいまいち場にそぐわないとはいえ、その背中から王気は迸り、止まらない。
黒猫姿がいまいち場にそぐわないとはいえ、その背中から王気は迸り、止まらない。
右手にあるのは乖離剣。
赤い光を満たしたまま、螺旋はゆっくりと蠢き続けている。
ぐるぐると、ぐるぐると。
赤い光を満たしたまま、螺旋はゆっくりと蠢き続けている。
ぐるぐると、ぐるぐると。
「――――王ドロボウ、それが貴様の王道か?」
黄金の王は振り向かず、問う。
「そうだね、欲しい物は盗みつつ、逃げるべき時にはとんずらさ。
何事も引き際が肝心。特に今は仕込みの時期で、あまり表立って動く訳には行かないのさ。
輝くものは目立つんだし、人目につかないうちにドロボウらしくこそこそと、ね」
何事も引き際が肝心。特に今は仕込みの時期で、あまり表立って動く訳には行かないのさ。
輝くものは目立つんだし、人目につかないうちにドロボウらしくこそこそと、ね」
返答に王はどちらもにやりと口端を歪める。
自身の王道を告げる言葉に迷いは無く、答えるまでのタイムラグも無に等しい。
故に際立つのはジンのその在り様だ。
それに満足しつつ、しかしギルガメッシュは決してソレを認めない。
自身の王道を告げる言葉に迷いは無く、答えるまでのタイムラグも無に等しい。
故に際立つのはジンのその在り様だ。
それに満足しつつ、しかしギルガメッシュは決してソレを認めない。
「フン……ならば見るがいい。貴様の進む道は、真の王者の通る道に塗り潰されるものでしかないと」
そう、王の道はただ一つ。
王の王が、自身以外の王道を許すことはないのだから。
だからこそ彼は見せ付ける。
彼の選んだ、在り様を。
王が王であるというその証拠を。
王の王が、自身以外の王道を許すことはないのだから。
だからこそ彼は見せ付ける。
彼の選んだ、在り様を。
王が王であるというその証拠を。
「ク、ハハ、ハハハハハハハハハ……ッ!」
轟、と風が集い始めた。
螺旋の剣が光を放つ。
赤く、紅く。
周囲の空間そのものが歪むように。
螺旋の剣が光を放つ。
赤く、紅く。
周囲の空間そのものが歪むように。
ジンは本能と直感と理性と体と、ありとあらゆるもので理解する。
……ギルガメッシュが何をやろうとしているのかを。
……ギルガメッシュが何をやろうとしているのかを。
「ちょっと待ったギルガメッシュ、会場を破壊するのは――――」
それだけは止めねばならない。
会場にはまだ大量の人間がいる以上、ここでその崩壊に彼らを巻き込むわけにはいかないのだ。
うっすら冷や汗をかくジンに、しかし英雄王は彼の言葉を否定する。
会場にはまだ大量の人間がいる以上、ここでその崩壊に彼らを巻き込むわけにはいかないのだ。
うっすら冷や汗をかくジンに、しかし英雄王は彼の言葉を否定する。
「心配する必要はなかろう王ドロボウ。
忌々しいことに、この場でエアを使おうとまだ会場を破壊する事は出来ん」
忌々しいことに、この場でエアを使おうとまだ会場を破壊する事は出来ん」
どういうことだろうか。
疑問に思い、言動の裏について思索する。
考えてみれば、そも先刻の『財を集めてから会場を破壊する』という言葉に反しているのだ。
もしや何らかの考えがあるのかもしれないと思い至り、ジンはそれを口にする。
疑問に思い、言動の裏について思索する。
考えてみれば、そも先刻の『財を集めてから会場を破壊する』という言葉に反しているのだ。
もしや何らかの考えがあるのかもしれないと思い至り、ジンはそれを口にする。
「どういうことかな? 詳しく説明してくれると助かるけど」
未だ赤光を、風を集め続け、静かに唸りを上げる乖離剣。
既に二者も担い手を葬った死神を平然と操りながら、ギルガメッシュは兼ねてよりの考察を根拠に一切合財を切り捨てる。
既に二者も担い手を葬った死神を平然と操りながら、ギルガメッシュは兼ねてよりの考察を根拠に一切合財を切り捨てる。
「貴様とあの走狗が言っていたろう? 会場はループしていると。
あの時も言ったがな、会場のループという措置は周囲の結界に触れさせないためのものだ。
同時におそらくその結界は、内部からの脱出を防ぐ為にそれなりの防御力を持っていることだろう。
この実験場はな、
参加者を地図の対面に転送する『転移結界』、
螺旋力覚醒の促進や外部からの遮断を行い、参加者の力を制限しつつ脱出を防ぐ『防護結界』、
そして、それらの外側――――この箱庭そのものの外枠、実験場という名の『世界の殻』。
これら3つの壁を破壊し初めて脱出できるように出来ている。そこまでは分かるな?」
あの時も言ったがな、会場のループという措置は周囲の結界に触れさせないためのものだ。
同時におそらくその結界は、内部からの脱出を防ぐ為にそれなりの防御力を持っていることだろう。
この実験場はな、
参加者を地図の対面に転送する『転移結界』、
螺旋力覚醒の促進や外部からの遮断を行い、参加者の力を制限しつつ脱出を防ぐ『防護結界』、
そして、それらの外側――――この箱庭そのものの外枠、実験場という名の『世界の殻』。
これら3つの壁を破壊し初めて脱出できるように出来ている。そこまでは分かるな?」
ここまでは博物館に入る前に告げた考えだ。
しかしよくよく吟味すれば、この世界に崩壊をもたらす要素は一つしかない。
しかしよくよく吟味すれば、この世界に崩壊をもたらす要素は一つしかない。
「……成程ね。つまり、『世界の殻』を砕きさえしなければこの会場は壊れないということか」
納得とばかりにジンが頷いて見せれば、相変わらず赤の巨人を見据えたままのギルガメッシュが苦笑するのが背中越しに感じられる。
それが、自身が認めるに相応しい切れる男に出会えたことの喜びと、それすらも敵視しようとする己の性癖に向けたものなのか。
はたまた別のものなのかは、本人以外には分からない。
それが、自身が認めるに相応しい切れる男に出会えたことの喜びと、それすらも敵視しようとする己の性癖に向けたものなのか。
はたまた別のものなのかは、本人以外には分からない。
尤も、たとえどのような感情を抱いていたとしても英雄王のなすべき事は動きはしないのだが。
「その通りだ。
我の目的は、あの木偶に加えて『転移結界』と『防護結界』の破壊でな。
貴様が心配するまでもなく、いかにエアでも力を制限された状況では『防護結界』を貫くのがせいぜいといったところだろう。
少なくとも空間を制するエアならば転移結界を破壊するのは容易い事だ。
……さて、これ以上の御託は必要か?」
我の目的は、あの木偶に加えて『転移結界』と『防護結界』の破壊でな。
貴様が心配するまでもなく、いかにエアでも力を制限された状況では『防護結界』を貫くのがせいぜいといったところだろう。
少なくとも空間を制するエアならば転移結界を破壊するのは容易い事だ。
……さて、これ以上の御託は必要か?」
……本音を言うならば、あるに決まっている。
あの螺旋の剣から放たれる力がどれ程のものかは分からないが、ろくな物ではないだろう。
周囲にいる誰かを巻き込む可能性だって充分だ。
……だが、そんな事を言ってもこの男は聞きはしない。下手に突けば更なる惨事をもたらす可能性もある。
ならば、とりあえずは小より大。
一発撃って気が済むのならば、被害は最小限に済ませられるはずだ。
故に、ジンは気が進まないながらもそれをおくびにも出さずに決断を下す。
あの螺旋の剣から放たれる力がどれ程のものかは分からないが、ろくな物ではないだろう。
周囲にいる誰かを巻き込む可能性だって充分だ。
……だが、そんな事を言ってもこの男は聞きはしない。下手に突けば更なる惨事をもたらす可能性もある。
ならば、とりあえずは小より大。
一発撃って気が済むのならば、被害は最小限に済ませられるはずだ。
故に、ジンは気が進まないながらもそれをおくびにも出さずに決断を下す。
「ノープロブレム。
……制限を無くせるのならそれに越したことはないしね。お手並み拝見といくよ。
ギルガメッシュの王道とはどんなものか、この目にとどめておく事にしよう」
……制限を無くせるのならそれに越したことはないしね。お手並み拝見といくよ。
ギルガメッシュの王道とはどんなものか、この目にとどめておく事にしよう」
この天災を相手に、どうにかできるのは“藪を突かない”事くらいだ。
……願わくば、誰も巻き込まないよう。
……願わくば、誰も巻き込まないよう。
「――――フン」
王ドロボウの見届けを背に、ギルガメッシュは掌の中の存在に力を込める。
「クク、出番だエア……見るがいい、都合のいい事に的が出ているぞ。
あの様な不細工な木偶人形に存在を許可した覚えはあるまい?
なに、不満はあろうがお前を振るう理由は充分だ」
あの様な不細工な木偶人形に存在を許可した覚えはあるまい?
なに、不満はあろうがお前を振るう理由は充分だ」
夜の闇に生まれ出でた赤の巨人。
ギルガメッシュたちなど虫ケラ同然と、こちらなど全く意識していないソレにあからさまな怒りを示しながら。
そして、どれだけ体躯の差があろうと、平伏すべきは彼奴であると傲岸不遜な態度はそのままに。
全てを掻き消すべく更なる紅の光が一点に集い凝集していく。
ギルガメッシュたちなど虫ケラ同然と、こちらなど全く意識していないソレにあからさまな怒りを示しながら。
そして、どれだけ体躯の差があろうと、平伏すべきは彼奴であると傲岸不遜な態度はそのままに。
全てを掻き消すべく更なる紅の光が一点に集い凝集していく。
「今宵お前を使うのは的を薙ぎ払う為ではなく、王を名乗る者に王とは何かを知らしめる為なのだから。
……そして、身の程知らずに教えてやるとしよう」
……そして、身の程知らずに教えてやるとしよう」
周囲の景色が歪んでいく。
眼前にあるモノ全てを切り裂かんとする、空間を統べかつて天と地を分かったノウブル・ファンタズム。
知識と魔法と水を象徴する神、エア。その力は豊穣と死をも司る。
今こそその化身は正しき担い手に渡り、ようやく歓喜の表情を露にしつつあった。
眼前にあるモノ全てを切り裂かんとする、空間を統べかつて天と地を分かったノウブル・ファンタズム。
知識と魔法と水を象徴する神、エア。その力は豊穣と死をも司る。
今こそその化身は正しき担い手に渡り、ようやく歓喜の表情を露にしつつあった。
「この世に獣が闊歩できる余地は無し、全ては等しく我の玩具であると――――」
空間そのものが震え、軋んだ。
余波を浴びただけで人ならば動くことも能わない。
ぎしぎしと、ぎしぎしと。
存在する万のモノが悲鳴を挙げている。
余波を浴びただけで人ならば動くことも能わない。
ぎしぎしと、ぎしぎしと。
存在する万のモノが悲鳴を挙げている。
「…………天地乖離す、」
告げる。
終末を。
終末を。
三つの円柱が吼えるのは、原初の記憶。
命が生まれ落ちることすら許さないハジマリの世界。
命が生まれ落ちることすら許さないハジマリの世界。
「開闢の星――――――――!」
紅の光が“居る”事をひとしなみに禁じていく。
◇ ◇ ◇
始まるは滅びの宴。
新世界の創造とは旧世界の破壊に他ならない。
新世界の創造とは旧世界の破壊に他ならない。
博物館の南東から放たれた一閃は、まず眼前のモノレールの線路を紙きれよりなお容易く消し飛ばした。
大地を割りながら突き進み、海に触れた途端、水蒸気爆発が発生。
上空数百メートルまで舞い上がる勢いの大量の水塊はしかし、わずか数十cm動いただけで完全に『無くなった』。
蒸発したのではなく、分子原子、素粒子のレベルで世界から消え失せる。
大地を割りながら突き進み、海に触れた途端、水蒸気爆発が発生。
上空数百メートルまで舞い上がる勢いの大量の水塊はしかし、わずか数十cm動いただけで完全に『無くなった』。
蒸発したのではなく、分子原子、素粒子のレベルで世界から消え失せる。
それも瞬くよりなお短い時間のこと。
陸に舞い戻った極光は、ロムスカ・パロ・ウルラピュタの名残を粉微塵よりなお細かく砕き割った。
陸に舞い戻った極光は、ロムスカ・パロ・ウルラピュタの名残を粉微塵よりなお細かく砕き割った。
『幼き戦士エリオ・モンディアルと義手義足の少年を殺した外道、ここに討つ』
――――二人の戦士が仇を討ち、悲しみとともに記した言葉も。
『最後の瞬間まで戦い続けた、幼き戦士エリオ・モンディアルに勝利の栄光を』
砂上の楼閣のように崩れ去る。
消えていく。消えていく。
想いも勇気も嘆きも悲哀も悔しさも、全て、全て。
想いも勇気も嘆きも悲哀も悔しさも、全て、全て。
総合病院を構築する全ての要素が剥離し、光の中に溶けていく。
奇しくも同じ力によって命を落としたアニタ・キングは、完全なる“乖離剣”によって今度こそページ一枚、一行、一文字たりとも痕跡を残しはしなかった。
エドワード・エルリックは分解されたまま、二度と再構築されることはない。
勇者エリオ・モンディアルであろうと、彼を殺したムスカと同じ命運を辿るのは等しく同じ。
相羽シンヤの死体も無念と兄への想いを道連れに、この世にいたという証拠を全て抹消されていく。
奇しくも同じ力によって命を落としたアニタ・キングは、完全なる“乖離剣”によって今度こそページ一枚、一行、一文字たりとも痕跡を残しはしなかった。
エドワード・エルリックは分解されたまま、二度と再構築されることはない。
勇者エリオ・モンディアルであろうと、彼を殺したムスカと同じ命運を辿るのは等しく同じ。
相羽シンヤの死体も無念と兄への想いを道連れに、この世にいたという証拠を全て抹消されていく。
――――まだまだ終わるものかよ。
この程度で終わるものか。
創造の、螺旋の剣の力は止まる事はない。
この程度で終わるものか。
創造の、螺旋の剣の力は止まる事はない。
数多の人の想いの残滓如きで止まりは、しない。
◇ ◇ ◇
「……病院が、光っ――――!?」
素晴らしき屍をも喪わせながら。
今まさに飛び発たんとする紅蓮の巨人が光に飲み込まれ、掻き消える。
旧き墳墓など当に跡形もなし。
今まさに飛び発たんとする紅蓮の巨人が光に飲み込まれ、掻き消える。
旧き墳墓など当に跡形もなし。
夜の闇に、僅かに染み渡った声は誰のものだったか。
二つ名の通りまさしく怒涛の勢いで蹂躙されるが彼の定め。
二つ名の通りまさしく怒涛の勢いで蹂躙されるが彼の定め。
星の記憶、死の国の原点は獣人であろうが生命の終わりを告げるに躊躇いはない。
◇ ◇ ◇
高笑いが響き渡る。
紅蓮の巨人はもういない。
立ち続けるはただ一人。
王はただただ、笑う。嗤う。
紅蓮の巨人はもういない。
立ち続けるはただ一人。
王はただただ、笑う。嗤う。
「ワハハハハハハハハハハハハハハハッ! ハ、この程度か獣、なんとも手応えがないではないか!
ハァハハハハハハハハハハハハハハハハ、ハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!」
ハァハハハハハハハハハハハハハハハハ、ハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!」
夜の闇に風が吹く。
威風と暴風の螺旋は、未だ留まり止まない。
威風と暴風の螺旋は、未だ留まり止まない。
ひとしきり哂い続け――――そして終わればすぐにまた哂う。
と、不意に耳に届く声がする。
と、不意に耳に届く声がする。
「――――」
この音は誰のモノだったろうか。
彼が王として対するに相応しい、盗人の王のものだったろうか。
告げられた内容を嚥下し、咀嚼。
……如何なる意味か、状況にそぐわない。
彼が王として対するに相応しい、盗人の王のものだったろうか。
告げられた内容を嚥下し、咀嚼。
……如何なる意味か、状況にそぐわない。
言葉の意味を問いただそうと振り向き、その光景を見る。
既にそこには誰もおらず、目に入るは一つの色のみ。
紅の幕が眼前に。
迫る。迫る。見慣れた光が自身を包む。
紛う事なき己が剣のその力に。
紛う事なき己が剣のその力に。
その光景の中に英雄王は、一つの事実を確信し、染まっていった。
螺旋の王の力の一端に忌々しげな表情を浮かべながら。
螺旋の王の力の一端に忌々しげな表情を浮かべながら。
「――――貴様、よもやそこま、ガ――――!!!???」
◇ ◇ ◇
――――何の事はない。
ダイグレンを掻き消した後、地図の端にあたる場所に触れた瞬間に、天地乖離す開闢の星が対面に転移しただけだ。
エアの空間介入の力は『転移結界』を容易く破った後、『防護結界』まで突き進むはず。
ギルガメッシュの見積もりならばそうなる筈だっただけで、事はそう単純に行かなかったというだけの話。
ダイグレンを掻き消した後、地図の端にあたる場所に触れた瞬間に、天地乖離す開闢の星が対面に転移しただけだ。
エアの空間介入の力は『転移結界』を容易く破った後、『防護結界』まで突き進むはず。
ギルガメッシュの見積もりならばそうなる筈だっただけで、事はそう単純に行かなかったというだけの話。
まあ、伝聞情報のみに頼って実際どういう現象が起こっているかを確認しなかったギルがメッシュの油断が招いた事態と言えるだろう。
神の視点を持つものならば、二度に渡る乖離剣の暴発を持ってさえ会場の結界を破ることが叶わなかったことは知っている。
ならば、そこに何らかの仕掛け――――高出力攻撃への対策が施されている事に思い当たるのは難しいことではない。
それだけだ。
神の視点を持つものならば、二度に渡る乖離剣の暴発を持ってさえ会場の結界を破ることが叶わなかったことは知っている。
ならば、そこに何らかの仕掛け――――高出力攻撃への対策が施されている事に思い当たるのは難しいことではない。
それだけだ。
地図の端に至った後、亡びの具現は会場を一周せんと目先のモノレール駅を抹消する。
流石に二つの建物を葬り減衰したとはいえ、世界を切り裂く一撃に矮小な小屋を砕くなど造作もないことだ。
指向性に些かの揺るぎもなく禁止エリアに突っ込み、今度は灯台にぶち当たってその機能を停止させる。
消滅させるには至らなかったものの建材の悉くを露出させ、なおその力は前へ前へ。
ゆっくりとぐらりと倒壊する灯台を尻目に、紅の光は英雄王の下へと帰還する。
流石に二つの建物を葬り減衰したとはいえ、世界を切り裂く一撃に矮小な小屋を砕くなど造作もないことだ。
指向性に些かの揺るぎもなく禁止エリアに突っ込み、今度は灯台にぶち当たってその機能を停止させる。
消滅させるには至らなかったものの建材の悉くを露出させ、なおその力は前へ前へ。
ゆっくりとぐらりと倒壊する灯台を尻目に、紅の光は英雄王の下へと帰還する。
そして主を呑み込んだ。
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