徒物語~ももこファントム~(上)◆1aw4LHSuEI
「最後に教えよう。―――おまえの起源は“孤独”だ。東横桃子」
静かな部屋に男―――荒耶宗蓮の声が響く。
語りかけられたのは女―――東横桃子。
しかし彼女はじっと彼を見詰めるだけで、それに応えようとはしない。
「―――そう、おまえは元より誰とも交わることのない人間だ。それ故、おまえは他人に求められない。他人を求めようとはしない。
父や母といった肉親でさえ―――おまえには無関心だ。そして、自身もまた肉親に対し無関心だった。
友人が、教師が、肉親が、当然のように与えるはずの情を―――おまえは知らない」
やはり、東横桃子は応えない。
しかし、その瞳に揺れる色だけが、荒耶を認識していないわけでないということを象徴している。
「“それ”を、疑問に思ったことはなかったのか。辛いと感じたことはなかったのか。
―――あろうはずもない。
“それ”こそが、おまえの起源であり、何よりも自然な状態であったのだから」
目を閉じて、そして開く。
そして、彼女は彼と向き合った。
「だから―――」
「む―――」
そして、初めて。
こうして顔を合わせてからから初めて。
東横桃子は荒耶宗蓮に応える。
「―――だから、それが、私にとって、何だっていうんすか」
「―――意味などない。おまえの行為が、同じく無価値であるように」
果て無き時を生きる魔術師は不愉快そうに告げる。
「死者蘇生―――それがおまえの望みであったか。
――――愚かな。
無意識ながらも起源を自覚し、利用しているおまえが。今更、何を求めようというのだ。
おまえには最初から、絆などと呼べるものは存在しない―――」
「……嘘。違う、違う、違うっ」
突然に。
今までの静寂が嘘であるかのように。
髪をかき乱し、頭を振って桃子は声を上げた。
聞きたくない。
違う。
そんなはずはない。
私は、確かに先輩を―――
「そう、だって、それでも先輩は、私を―――!」
「認められぬか、東横桃子。おまえの起源を。だが、それでもおまえは辿り付かない。
おまえが望んだものは、最初から、偽りだったのだから―――」
その言葉を言い終わるより先か、それとも後であったのか。
銀色の光が煌めき、吸い込まれるようにナイフが胸を貫く。
ごふ。
赤い血が口から漏れる。
命が、奪われていく。
命が、失われていく。
それを、どうしようもないほどに感じて。
東横桃子の目は虚ろに涙を流し。
荒耶宗蓮は、揺るがない。
そうして。
ここでまた一人の人間が死に至る。
所詮、有り触れた光景。
それもまた歴史の1ページに過ぎなかった。
卍 卍 卍
「なあ、セイバー」
「……なんですか、コヨミ」
このことについてセイバーとそろそろ語り合わねばならない頃だと思う。
僕にはきっと、その義務がある。
僕らが拠点としていた駅に襲撃者が現れた。
それは、衝撃的であったし、また壊滅的でもあった。
いずれにしても僕らは運が悪かった。
いや、それは無責任な言い方であり、僕が悪かった、と素直にいうべきなのかもしれない。
結局、僕が一般人でなければ。いや、一般人であると偽ったりしていなければ、これほど悪くはならなかったはずなのだから。
真田幸村という名前の、どこか歴史の本にでも載っていそうな仲間が、僕たちにはいた。
先ほどまでは。
襲撃があった際に、セイバーに僕を保護しろと言い残し、単身その場に残り敵を相手にとったらしい。
……馬鹿野郎。
「ここは俺に任せて先に行け」、だなんて。
お約束過ぎて笑えねえよ。
そんなことをしたら、死ぬに決まっている。
死亡フラグとか、そんなチャチな話じゃない。
常識的に考えて、だ。
ああ、本当に。
千石やあの子のことも併せて、笑えないことばかりだ。
そして、僕らがなにをしているのかと言えば―――現在、駅に向けて帰還しているはずの、枢木との合流だった。
このまま彼が駅に移動すれば襲撃者と相対してしまう。それを防ぐことと、こちらの戦力強化が主な目的となる。
勿論、両儀やデュオのことを考えないでもなかったが、距離的に考えれば早く帰ってくるはずの枢木よりは優先順位は低い、と判断した結果だ。
そのため、僕たちは政庁に向かって移動していたのだが……。
「……やっぱりさ、入れ違ってると思うんだけど」
「…………」
そうなのだ。
D-6エリアの駅にいた僕たちは襲撃者を避けながら北周りに移動を開始して……そして、今はD-5エリア。
それも、政庁と呼ばれる建物が肉眼視できるほどの距離まで来ている。
もう少ししたらいるかも、戻ったら襲撃者が追ってきているかも―――? なんてことを思いながらずるずると進んでしまった。
だがしかし、未だ枢木には出会えていないわけで……これは明らかにすれ違っていると考えられた。
途中の民家で休憩するついでに、幾つか道具を回収も出来たけど……。やっぱり北側に迂回したのがまずかったかなあ……。
「で……どうする? セイバー」
「……ここまで来てしまった以上、政庁を調べていきましょう。調査が長引いた彼が未だ留まっている可能性もありますし……。
他の参加者がいる可能性もあります。なんにせよ情報は欲しいですし」
セイバーの意見は建設的に聞こえるけれど、結局は次善の策というか、その場しのぎというか。
他人のことを言える筋合いではないのだけれど、結構セイバーって、でたとこ勝負だな、なんてことを僕は思った。
「―――何か不満でも、コヨミ?」
「いえ、滅相もありません」
じとっ、と僕を睨むセイバー。
移動中に話していて分かったが、武術をやっていたせいかセイバーはやけに勘がいい。
こちらの気配を読んでくるというか……言いたくないことまで伝わっていることがある。
やっぱり武道をやってる人ってのは違うのかな。うちの妹も妙に鋭いときがあるし。
…………はあ。
気軽に突っ込めない相手は、やっぱり少し疲れるな。
八九寺あたりが恋しい……。
「……コヨミ? どうかしましたか?」
「ん、いや、何でもないよ。少しこれからのことについて考えてただけさ」
そんな他愛もないことを話しながら僕たちは政庁に向かう。
このとき僕はまだ、枢木に忍野に、もう一人同じ声の奴がそろってトリオになったら嫌だなあ、とか。
そんなどうでもいいことを考えていられた。
このときは、まだ。
卍 卍 卍
「―――それは災難でしたね。セイバーさん。阿良々木さん」
ルルーシュ・ランペルージ。
政庁に入ってすぐに出会った、僕と同年代に見える彼はそう名乗った。
枢木が探していた名前の一つでもある。当の本人がここにいないために感動には薄いけど。
関係をさり気無く問いただしても誤魔化されてしまったし。
外国人の名前はよく分からない。
八九寺なら面白く噛みそうな名前だ、なんて思ったが他にもっと突っ込みどころがある。
その格好だ。
足元まで届くマントっていうのは、ルルーシュの国では普通なんだろうか。
ほら、ポンチョとか、あんな感じの一品。すごく似合っていない。
それとも何か止むに止まれぬ事情でもあるのか。
その態度はとても爽やかなものだから、余計にそのギャップに戸惑った。
顔はいいのに、なんでこんな珍妙な格好なんだ。
外国人のようだし、なにか宗教上の理由とかそういう奴かもしれない。
セイバーは平然としてるし、ひょっとするとどこかの国では常識なのかも。
まあ、真田の名前および格好をスルーした僕だ。これぐらいはどうってことないさ。
……というわけで、それには深くは突っ込まないことにした。
閑話休題。
とにかく。
僕たちが警戒しながら政庁へと到着したとき、対称的に全く警戒の様子も見せずに姿を見せたのが、このルルーシュだ。
「初めまして、ルルーシュ・ランペルージです」
爽やか笑顔はまるで俳優のようである。
「…………」
「…………」
うさんくせえ……。
忍野とは別の意味でうさんくせえ……。
だが、まあ、敵意はないようだったので、こちらも警戒心ばりばりってわけにはいかない。
こちらも敵意をないことを伝えた。
すると。
先ほどは全然警戒していない……というようなことを言ったけれど、最低限、気を使うつもりはあったらしい。
後から隠れていた女の子が現れた。
「どうも、東横桃子っす」
「…………」
「…………」
……何キャラ?
今時その語尾って、体育会系なのだろうか。
神原とキャラ被りは……ないない。まさか、あれとは被らないだろう。
あんな百合マゾ変態は一人でお腹いっぱいだ。
しかし、二人組みともなれば、そこまで警戒しなくてもいいだろう。
1Fにちょうどロビーがあったので、僕達はソファに座って今までの情報を交換し合うことにした。
「はあ……。つまりキタローさんたちはD-6駅を拠点に行動していたんすね?」
「待て、キタローって僕のことか?!」
確かに独特な髪型はしているけれど!
前髪で片目が見えなくなってるけど!
別に目玉になった親父を連れていたりはしねえよ!
「じゃあ、墓場鬼太郎さん」
「印象が悪化した!」
せめてゲゲゲでお願いします!
でも、突っ込めるっていいな!
東横、ありがとう!
そんな感じにグダグダ気味に、僕たちは情報を交換した。
僕とセイバーはD-6駅を中心に同盟を組んだこと、そこで得られた危険人物や等の情報を。
ルルーシュと東横は宇宙開発局辺りを中心に動いていたようで、僕たち以外の参加者を見たの初めてだ、とのことだった。
だから、どうも緊張感に欠けているように見えるのだろうか?
にこにこと笑いながら、殆ど一人で話しているルルーシュを見てそんなことを思った。
「しかし……枢木さんと再会できるかも分かりませんし、とりあえずこの施設を調べませんか?
僕たちもここに来てからあまり経っていないし、情報は得られるときに得ておきたい」
こっちもそのつもりだったし……と。
僕とセイバーはその提案を二つ返事で受け入れる。
どこかに枢木がいるかもしれないってことで、階段を使っての一階ごとに調べていく。
そんな念入りに調べる必要があるのかとも思ったけど、ルルーシュの話を聞いてるうちに、そんなものかな、と思ってしまった。
そうして四人で政庁内を探索していたんだけど……。
「―――なんで、僕だけいつの間にかみんなとはぐれてるんだ?」
そんなことをトイレの前で呟く男子高校生がそこにはいた。
ていうか、僕だった。
まいったな。
この年にもなって迷子ってのはどうなんだろう。
いや、向こうもトイレに行ってる間にいなくなってるとかちょっと酷いよな……。
やっぱり少し気恥ずかしいからって、東横とセイバーには黙って行ったのが悪かったのか?
でも、ルルーシュにはちゃんと言っといたのに。あのイケメンめ。
同じ建物内なんだし、このまま会えないってこともないだろうけど。
顔を右に向けて階段についている階数表示をちらりと見る。
どうでもいいけど階段とトイレって大体近くに設置されてるよな。
法律で定められていたりするんだろうか。今度、羽川に聞いてみようかな。
そして、現在の階数は、3F、か。
それを確認した僕は階段場に向かって足を向ける。
まあ、1Fのロビーで待ってても戻ってくるだろう。
先に下りておこうか。
「―――阿良々木さん、見ぃつけたー」
漠然と、そんなことを考えていた僕の耳に、背後から聞き覚えのある声が届いた。
…………。
ドクン、と。心臓の音がやけにはっきりと耳に響く。
同時に、全身の毛穴が開いてそこに氷水を流し込まれた様な、冷たさ。
思い出す。いや、忘れない。
それは、このゲームが始まって、僕が最初に出会った参加者。
そして、決して忘れることの出来ない、見逃すことの出来ない僕の罪の証。
ゆっくりと振り向いて確認する。
「―――平沢、憂」
そんな僕を見て、彼女は少しだけはにかんだ様に笑い―――言った。
「えへへ。正解です。―――じゃあ、阿良々木さん。さっさと死んでください」
言葉と同時に、とんでもない重さが横向きに僕にかかって、吹き飛ばされる。
激しい衝撃。
そして、舞台は暗転する。
卍 卍 卍
東横桃子っす。
私たち三人は、紆余曲折の後に、タワー、ホールを探索し、政庁に着いたんすよ。
……いや、流石にこれはあまりな気がするし、もう少し説明するっす。
本題ではないといえ、伏線は張られておくものだと思うんで。
さて。まず、私たちは予定通りにG-5のタワーに向かったっす。
宇宙開発局の管制塔になってるらしくて、色々と使えるものもあるんじゃないかって、ルルさんは期待してたみたいっすけど、
タワー自体にはあまり大した物はなく、肝心の権限もほぼ凍結されている。
ルルさんも少しがっかりしてたみたいっすね。
それでも一応使えそうなものを適当に持っていく辺りは流石、ルルさん。せこいというか、用意周到というか。
……そもそも私に言わせれば、ルルさんは今まで支給品以外で強力なアイテム手に入れすぎなんすよ。
揚陸艇とか盗聴器とか。
まあ、私もそのおこぼれに預からせてもらってるんすけど。
「ねえ……早く行きましょうよー」
ゴスロリさんには、機械ばかりのタワーは退屈だったようで、しきりに急かしてきた。
そんなに阿良々木って人を殺したいんすかね。
ゴスロリさんが急がせることもあって、私たちは早々にタワーを後にしたっす。
一応、駐車場で足も確保。
……いやあ、まさか、ここにこれがあるとは思わなかったっすけど。
パスワードも一発正解。役満成立。
でも、予想通りとはいえ少し苦笑させられる。
それを聞いたルルさん。
よくやったぞ、桃子。だなんて、爽やかに。
何故かその顔を見て。
ああ、この人の笑顔はイマイチ信用できないな、と。
失礼なことを考えた。
揚陸艇に乗って、次にたどり着いたのはF-7のホール。
そこは5つの扉があるだけという先ほどにもましてシンプルな構造。
そして、扉の前には麻雀の役を模した入室条件が示されてたっす。
それぞれ。
1『平和の広間:参加者を一人も殺害していない者のみ入室可能、ただし同行者2人以上が必要』
2『四暗の広間:参加者を四人以上殺害した者のみ入室可能』
3『一発の広間:ゲーム開始から6時間以内のみ入室可能、6時間経過後に室内に居る者の首輪は爆破される』
4『国士の広間:第六回放送後のみ入室可能』
5『 』
色々とルルさんは試してたんすけど(蟹アタックとか)、やっぱり条件があった扉しか開かないということが判明。
とりあえず、今のところ誰も殺していない、かつ同行者二名という条件を満たしているため、平和の広間に入室。
同行者は人を殺していていいのかと、不安ではあったけれど、開いたってことは問題ないようで。
警戒も半ばに入らせてもらったっす。
そして、そこで得たものは結論から言うと……。
うーん。USBメモリ、『服』、『武器』、マント。
だったっす。
詳しい説明は後ほど。
ついでにここでお互いの荷物を交換。
持っていても使いどころのなさそうな道具を他人の使いやすそうなものと再分配。
互いに信頼が無いと難しいこの行為。
ルルさんがここまでそれをしなかったのは、多分、私の警戒心が薄れるのを待っていたからかな、と。
少し思った。
そこからまた揚陸艇での移動。E-5の岩陰に揚陸艇を隠してそこからは陸っす。
陸路もタワーにて入手した車でらくらく。
蟹は車に入らなかったんで、一旦デイパックにしまったっすけどね。
というわけで。
私たち三人は、紆余曲折の後に、タワー、ホールを探索し、政庁に着いたんすよ。
またしても使えそうなものや施設の情報を漁っていたルルさん。
それを余所につまらなさそうにして、受け取った双眼鏡で外を見ていたゴスロリさん。
特に何もしてなかった私。
そして、暫くすると、ゴスロリさんが嬉しそうに飛び込んで言ったっす。
「阿良々木さんが、こっちに来てます!」
確認してみたところ、阿良々木暦さんとその同行者が政庁に近づいてきているようで。
もう、そのときのゴスロリさんといえば、おおはしゃぎだったっす。
こうしてると、普通に可愛い女の子なのに……。
「今すぐ、ブチ殺しましょう!」
と、意気込むゴスロリさんは―――。
……やっぱり、ちょっとひく。
「まあ、待て。殺すのはいつでも出来る」
それに待ったをかけて、作戦を伝えるルルさん。
まず、顔の割れていない私とルルさんで接触。
情報収集の後に、ここの探索を提案。
そして、阿良々木暦と適当なところではぐれさせて……。
そこをゴスロリさんがズガン。
さっさと殺してしまいたいのか、ゴスロリさんはちょっと渋ったっすけど、
「いいから、俺を裏切るな」
と、言われたら素直にうなずいてたっす。
……なんか弱みでも握られてるのかってぐらい素直で不気味っすね、しかし。
で、始めた作戦は今のところ成功。
上手いところキタローさんをこっちの金髪さんと分断できた。
はっきり言ってルルさんの演技が寒すぎることを除いたら、問題はなし。
……優勝狙いの私としては、金髪さんもどこかで殺せたら。
なんて、思うんすけど。
―――この人、なかなか隙を見せてくれない。
んー。さて、これからどうするっすかね?
以上、回想終わり。
卍 卍 卍
「う、おおおおおおっ!?」
攻撃を喰らって叫ぶだけの余裕が自分にあったことに驚く。
吹き飛ばされ、壁に叩きつけられながらも、僕は「それ」を見た。
「それ」は巨大な蟹。その蟹が振り回した鋏が、自分にぶつけられたのだということを知る。
「―――おもし、蟹?」
驚きながら、僕は言葉を紡ぐ。
そう。それは、戦場ヶ原に取り付いた思いと体重を奪う蟹。
あのときの僕には視認出来なかった蟹が、今は、見えている。
……奪われたい思いが、今の僕にはあるってことなのだろうか。
千石を失い、僕のせいで誰かを死なせてしまったという事実から逃げたいのか、僕は。
僕のせいで人が死んだのは、別に初めてではないのだけれど。
やはり、それは何度重ねても慣れていいことではないのだから。
でも、この思いはやれないな。と、口に出さずに僕は思った。
まるで。
どこかのヒーローのように。
「あれ? 知ってるんですか、神様のこと」
「……幸いにも、よく知ってるよ」
「これ、私の言うことを聞いてくれるんですよー」
憂ちゃん……いや、平沢は、そう言って哂う。
おもし蟹を使役している? 仮にも、神を……?
いや、それよりも。
何があったのか、それとも何がなかったのか。
僕には分かりはしないけれど、平沢は初めて会った時と、同じ人物にはとても見えなかった。
言葉や態度、雰囲気も勿論だけど……。
なによりもその格好が。
……ゴスロリ?
まあ、それもいいや。
変な格好には突っ込まないと決めている。
壁に手を当てながら、僕は何とか立ち上がった。
体中が痛くて仕方ないけど、骨や筋に傷がいったりはしてなさそうだ。
まだ、動ける。
平沢を見ると、少しは会話をする気があるのか、これ以上すぐに攻撃を仕掛けてくる気はないようだ。
「―――やっぱり、まだ誰かを殺そうとしてるのか」
「はい。まずは阿良々木さんを殺しますよ」
「どうして、だ? やっぱりお前の姉さんのため―――」
「違います」
きっぱりと。
平沢は僕の言葉を否定した。
「私が人を殺すのは、私が死にたくないからです。お姉ちゃんは関係ありません」
「……そっか」
あの時とは違い、言葉に嘘が込められていない。
姉に対する、思いがなくなっているのか。
おもし蟹に思いを奪われた。
そういうこと、なのだろう。
しかし、それは。
彼女は、自分の姉を重みと思っていた、ということで。
関係はないけれど、少しだけ、それを悲しいと思った。
「因みに、阿良々木さんはお姉ちゃんのギターを取っていったのと、私の胸を触ったから殺します」
「…………」
割と台無しだった。
というか、気付いてたのかよ。
気付いてたのかよ!
不可抗力なのに!
「……僕にもさ、お前を止めなきゃならない理由がある」
「はい?」
「……僕と会った後、人を殺しただろ」
「殺しましたよ」
あっさりいう彼女に、やはり僕は自分の罪を確信する。
この子を、放置しちゃいけなかった。
人を殺した彼女。
人を殺そうとする彼女。
それを見逃したというのなら。
彼女の罪は、僕の罪も同然だ。
「だったら、これ以上、僕はお前を見逃さない」
「…………」
人を殺すことはいけないことだ、なんて今更、言うまでもない。
だから、僕は単純に、一言で語る。
「平沢、お前は僕がここで倒す」
「…………っ」
「はははははは!「はは!「あははは!」
一瞬の絶句の後に、爆笑。
そして静寂。
無表情になった平沢は手にする手綱で蟹を駆り、僕に差し向ける。
「―――主人公みたいなことを言うんですね」
「…………まあな」
「―――殺す。殺す。殺す。ここであなたを殺して殺す、私がっ!」
……上等だ。
僕だって。
その蟹やお前のことを。
殴り飛ばしてやりたいと、ずっと思っていた―――!
轟ッ―――!
風を切る音が響き渡り。
そうして、本当に久しぶりの、僕の異能バトルが幕を開けた。
卍 卍 卍
無数のパソコンにコンピューター。
さまざまな情報を掌るこの政庁の中心となる部屋。
―――情報管理室。
その部屋の端で。
壁に向かい何やら刻んでいる人影。
それは紅い赤い朱い、魔法陣。
司るは結界。定めるは制限。
失われたXを補うように。
いまここに新たな陣が築かれる。
「剣士のサーヴァント、セイバー。そして、ギアスの継承者、ルルーシュ・ランペルージ。
『ステルス』、東横桃子、か」
自分の人間がついにこの部屋へと侵入してきたことを感じて。
苦悩に満ちた眼差しを携えた男は振り返り、そう言った。
「……何物だ、貴様」
ここは最上階である7F・情報管理室。
暦とはぐれてしまった後。すぐに探そうといったセイバーを制して、分散した結果さらにはぐれては、まずい。
同じ建物である以上、再会は難しくないだろうから、とりあえず探索を続けよう、と言ったルルーシュ。
セイバーは少し何か言いたそうにしていたが、結局は「もう子供ではないのだし」と折れて探索を続けていた。
そして、ここに来て。
この黒い男と相対した。
その気配で。……いや、そこにいるのに、まるで気配が感じられないという事実で。
セイバーは察する。
この男、常人ではない。
背にした魔法陣は赤く輝き。
セイバーの問いに対して、その男は眉一つ動かさず答えた。
「魔術師―――荒耶宗蓮」
言葉は重々しくこの場に響く。
名乗りを聞き、ルルーシュと桃子が息を呑む。
それは、二時間ほど前に得た情報。
主催者側からの、介入者。
ルルーシュは考える。
こいつは、出来ればここで捕らえて、聞きた出したいことがある。
そのために、名前どおりに剣の心得があるらしい、セイバーの協力を得たいところだ。
「……セイバーさん、こいつは主催側の人間だ」
「―――それは、真実ですか。ルルーシュ」
魔術師から目を逸らさずにセイバーはルルーシュに問い返した。
そこにはルルーシュに対する当惑と疑惑も含まれている。
何故、そんなことをルルーシュが知っているのか?
この殺し合いの舞台に連れられてきてから、殆ど参加者と接触せず、情報も得ていないはずではなかったのか。
当然のように、疑問を思い浮かべる。
「―――然り。私は、確かに主催者側の存在だ」
しかし。
呆気なく魔術師はその言葉を肯定する。
セイバーはその疑いを一先ず後回しにし、魔術師を強い眼光で見据える。
「馬鹿な。―――では、何故貴方も首輪を受けて参加者に混じっているのですか。魔術師よ」
「私には私の目的がある。―――故に、おまえたちにはまず、ここで死んでもらう」
まるで平素と変わらぬ様子で魔術師は殺人宣言をする。
魔術師の目的、両儀式の奪取のため、それを邪魔するだろう対象、セイバーは殺しておくべきだ。
さらに、主催者側からつつかれたこともある。ここで、星を稼いでおくことは悪くない。
何、それほど分の悪い賭けではない。
ここは荒耶が体内にして、工房にも近い。
それ故に建物ごと潰すような真似はできないが……地の利はこちらにある。
さらにセイバーのサーヴァントは接近戦が主。現在は宝具も持っていない。
増して先ほどの戦いで消耗しているとくれば……対抗する手段は、充分にある。
そのほかの二人も厄介な能力こそあるが、身体的には常人を脱してはいない。
警戒さえ怠らねば、ものの数ではないのだから。
そう、この荒耶宗蓮は元より世界人類六十億の意志を敵に回す覚悟をした。
今更、三人相手とて恐れることがあろうか―――。
死んでもらう、という言葉を聴いたセイバーは即座に反応して七天七刀を抜き、インビジブル・エアを纏わせる。
風が、刀身を隠していく。これこそがセイバーの持つ宝具にして能力、風王結界―――!
そして、同時に展開するのは自身の体の一部ともいえる魔力で紡いだ鎧。
これにより、耐魔力スキルと相まって、物理、魔術ともにセイバーを傷つけることは難しくなる。
それは、刹那の間。
それだけの時間で戦闘の準備を完成させ、構えまで取ろうというセイバーはまさに英霊。人間を超えた存在だと言ってもいいだろう。
―――だが、そこまでだ。
「―――粛」
魔術師の、左腕を突き出しての、短い呟き。
その言葉とともに閉じられた左腕は、何かを握りつぶすような動きを見せた。
「―――ッ!」
同時に、セイバーが装着したばかりの鎧に、ビシリと罅が入り、体中に圧力がかかる。
僅かな動作と呪文のみでの攻撃。
全ての方向からの目に見えぬ衝撃。
裂けていく体の痛みを感じながら、セイバーは即座に攻撃の正体を察する。
それは、空間そのものの圧縮。
セイバーのいた空間そのものを周囲から握りつぶしたのだ。
しかし、何故耐魔力が働いている様子がないのか―――?
セイバーは知る由もなかったが、それはこの会場が荒耶の体内そのものであったからだ。
自分の体内の空間を潰すのは、最早魔術ではない。
それはただの運動だ。
そう、魔術はセイバーにかかっていたわけでも、潰された空間にかかっていたわけでもない。
最初から、この会場にかかっていたというわけだ。
「――――ぐ、まだっ!」
しかし、流石はサーヴァント・セイバー。
体が裂け、鎧に罅を入れられた。
だが、その程度で止まるはずもない―――!
膝を付き掛けた足を、強引に振り上げ、裂帛の気合を持って踏み込む。
彼我の差は精々10メートル程度。
セイバーならば一足にして移動できる距離である。
相手とて、一撃を放った直後。
そして、この威力、自らの耐魔力すら上回る魔術判定。
現代に生きる魔術師として考えられる常識を超えている。
……恐らくは、攻撃魔術に特化している魔術師の全力の技だろう。
そうでなくては説明が付かない。
だというならば、その直後。
今ならば充分以上の隙がある!
そして、一瞬にして間合いに踏み込み、振り上げた剣を降ろそうとして―――
―――“静止”する。
「不倶、金剛、蛇蝎、」
短く紡がれる迷いなき苦悩の言葉。
そして浮かび上がる三重の結界。
(真逆。結界を体に纏って―――!?)
結界。
それ本来であれば、場そのものを守るためのものだ。
故に、それが動くことなどありはしない。
しかし、この魔術師はその常識を覆す。
そう、こと結界という一点に関して言うならば、荒耶宗蓮は世界最高峰の魔術師である。
相手の得意分野を見誤った。
それが、ここで騎士王が魔術師に遅れをとることになった要因の中で、最も大きなものだった。
荒耶の、動乱を生き抜いた男の鍛え上げた拳が、華奢な少女の胸を貫いた。
卍 卍 卍
そして僕は、
逃げるんだよォォォーッ!
と、ばかりに、後ろを向いて脱兎の如く走り出した。
尻尾を巻いて、と言い換えたっていいだろう。
とにかく、どういう形容でも構わないけれど。
僕は平沢憂から逃走した。
「…………」
流石に、少しの間だけ平沢は驚いたように固まった。
あれほど格好を付けて大見得切った相手が。
まさか、一瞬のためらいもなく退却を選ぶなんて誰が思うだろうか。
「……あはははははははははははっ!!」
そして、爆発。
平沢は手に持つ手綱を引き絞り、おもし蟹を追走させた。
轟轟轟轟――――ッ!!
逃げる僕の耳に響いてくるのは空気を切り裂く音。
まさか音速を超えているということはないだろうが、あの蟹はかなり俊敏だ。
僕は、戦場ヶ原の一件でそれを充分に知っていた。
だから、こうする。
「ふあうっ?!」
悲鳴。それに加えてドガンっ、という音。
振り返らなくてもそれが何の音かは分かる。
加速した蟹の気配を察して、横向きに僕が飛びのいた結果。
壁にぶつかったのだ。
あの蟹は確かに早いけど、精密性にかける。
そもそもあの神は大雑把な性格らしいし、操られようともその辺りは余り変わってないんじゃないかと考えた。
どうやら実際にそのその通りだったようで、コーナリングは苦手らしい。
それは、もしかしたら平沢が未だ蟹の使役に慣れていない、ということだったのかもしれないが。
とにかく結果としては上手くいった。
さて。
問題はここからだ。
「―――どうした! 僕を殺すんじゃなかったのか?」
「っ―――! 言われなくてもブチ殺してやりますよっ!!」
振り向かずに挑発してそのまま走る。
衝突のダメージなんてたかが知れている。
特に蟹のほうはあの程度じゃ、少しも衝撃を受けちゃいないだろう。
僕は後々の伏線のために挑発をしながら、階段を駆け上がる。
この階段は、直線が多数の部位に折れ曲がった形、一般的な階段と同じ形をしている。
だから、あの蟹で僕を追おうと思うなら、少し安全運転しなければならない。
もっとも、階段にはいずれ終わりが来るけれど……。
そのときまでには、何かいい案が思いつくはずだ。
もしくは、セイバー達と合流できるはず。
うん。
というわけで、阿良々木暦は自身の伝統的な戦い方。
『逃走』を今のところ選ぶことにした。
卍 卍 卍
「なるほど」
感嘆の声を上げるのは、魔術師―――荒耶宗蓮。
そして、それを上げさせたのは剣の英霊―――セイバー。
「魔力放出。それにより我が結界より逃れるか」
「―――残念ながら、避けきることはできませんでしたが」
セイバーの持つ魔力放出スキル。
これは、本来己の動きにあわせて使用して、身体能力を倍増、いやそれ以上に見えるほどに強化する、という使い方が主である。
だが、それだけしか出来ないわけではない。
魔力そのものを放出し、推進剤のように利用することとて可能だ。
荒耶宗蓮の結界内で静止するのは生物のみ。魔力放出による移動を防ぐ方法はない。
もっとも、本来の力を制限されさらに消耗している現在では、それは充分とは言えず。
心の臓を貫くはずだった腕を僅かに逸らすに留まったが。
攻撃の勢いと再びの魔力放出により、間合いを離すセイバー。
元の間合いである10メートルほどとまではいかないが。
その半分ほどには離れた地点へと舞い戻る。
しかし、攻撃から逃れたとはいえその息は荒く。
七天七刀を支えにして、やっと立っているような状態。
……当然といえば当然のこと。
サーヴァントであるために、その核を潰され消滅するまでは死ぬことはない。
しかし、バーサーカーやランサーのように、セイバーは戦闘続行スキルを持っているわけでもない。
致命傷を喰らえば、やがては動けなくなり、死に至る。
そして胸の穴が開いた状態を、致命傷でないかというと。
それは、サーヴァントをもってしても言い難いものだ。
だが、即死ではない。
―――ならば、まだ戦える。
人々を守らなければならない。
その為の、自分の剣はまだ折れていないのだ、と。
セイバーは魔術師を見据えてそう断ずる。
「ルルーシュ。モモコを連れて逃げてください」
「なっ……?」
「ほう」
セイバーは脇で驚いたような顔で固まっていたルルーシュに声をかけた。
彼らは何の能力も持たない一般人。
自分が守らなくてはならない。
しかし、この相手は―――強い。
自分も出し惜しみをせず、全力を出していくしかないだろう。
すると、彼らを巻き込むかもしれない。
だから、逃げろと。
そう告げる。
その言葉を聞いて、ルルーシュ・ランペルージは考える。
逃げるべきか。戦うべきか。
それを考える。
正直、目で追うことすらやっと、というレベル。
本当に、こいつらは人間なのだろうか?
それがルルーシュのこの戦闘に関する偽りなき感想だ。
完全に侮っていた。
魔術師と、そしてこの女、セイバーを。
(この先、こんな奴らを相手にしなければいけないというのか……?)
ナイトオブゼロ。枢木スザクすら、彼らの前では分が悪いだろう。
真っ当に対抗しようと思えば、自分などKMFでもなければ戦闘に介入できる気がしない。
もしも敵に廻られれば、非常に厄介だ。
ギアスの力を使おうと隙を窺っていたが、魔術師はまるでルルーシュを見ようとはしない。
意識的に、視線を向けないようにされている。
―――能力や、プロフィールは知られている、ということか。
覚悟はしていたことだが、やはり辛い。
……なんとかならないか。
いや、しなくてはならない。
俺が、この先望みを叶えるために。
「……いやだ、セイバーさんを見捨てられるわけがないだろう」
こいつには聞き出したい情報がいくつもある。
まだ、策は尽きていない。だというのに、逃げ出すわけにはいかない。
―――そう、この魔術師をここで打倒する!
「―――何を、言っているのです。ルルーシュ! 貴方がいたところでなにも変わりはしない! だから……!」
しかし、出来れば相手の能力を知っておきたい。
さきほど使ったのは、空間の圧縮、そして接近した場合に強制的に動きが止められる魔術、か。
拳の威力から、接近戦も充分に可能。そして、空間の圧縮には左腕を用いた動作が必要、といったところか。
それが荒耶宗蓮の現在測ることの出来る能力。
もっとも、未だ隠している札があるかもしれないので、詳細は不明瞭だが。
…………。
これなら、どうだ。
「ルルーシュ……!」
なんとか説得しようと、一瞬だけ振り向いた彼女に、語りかける。
自らの策。荒耶宗蓮を破る策を。
「――――――!」
魔術師に聞こえないように、しかし、聞き間違えや解釈違いのないようにはっきりと。
ルルーシュはその言葉を口にした。
「―――分かりました」
一瞬の硬直ののち、
セイバーは言葉を聞いて、再び見えない剣を構える。
これで無理なら、いよいよ逃げる手段を考えなくてはいけないな。
と、ルルーシュは心のどこかで考えた。
荒耶宗蓮は待っていた。
一撃の機会を。
式にすら、一度見せれば対応された。
スペックで言えばその上をいくサーヴァントに、空間圧縮は二度は通じまい。
動作を見た瞬間に範囲外に逃れられてしまうだろう。
しかし、相手も傷ついた身の上、足手まといを抱えている。
その上、剣士だ。
遠距離戦は望むまい。
ならば、接近戦にて、我が結界で静止させ。
今度こそ、撃ち貫いて見せようと。
その機会を待つ。
そして、その機会はきた。
セイバーが、先ほどと同じく何も考えていないかのように突撃してきたのだ。
「―――たわけが」
その様子に少々の失望を覚える。
サーヴァントとは英霊。常人の域を凌駕した存在。
何度も苦渋を飲まされた、抑止力に近しい存在。
それが、この様に無様な特攻をするしかないのか。
飛び込んでくるセイバーに併せて自らも前進する。
それに伴い移動する結界。
「、戴天、頂経、王顕」
それを展開し、今度こそ英霊の息の根を止めようとした所で―――
「なに―――?」
気付かされる。
セイバーの目に光る、赤い色。
何を自己思考することのない瞳。ギアスの証。
その事実に関わらず、神速の踏み込みはそのままで。
荒耶宗蓮の結界まであと一歩というところ。
英霊は、命令に従い風王結界を解き放った。
交叉。
暴風が、形をもって室内に吹き荒れる。
風圧で割れるモニター。壊れていく精密機器。
もはや、それらが使いものにならないことは、誰の目をもってしても明らかなほどに破壊される。
しかし、それらは余波に過ぎない。
本流の行き着く先は、黒の魔術師。
そして、その仏舎利を備えた左腕。
刀を使い覚醒した両儀式にすら容易には傷つけられぬその聖人の加護を。
強引に、ただ膨大な魔力による風の刃が切り開く。
これこそが、騎士王アルトリアが宝具の一つ。
―――【風王結界】の解放である。
―――しかし、荒耶宗蓮も、それを座して見ていたわけではない。
最後の一歩を詰め結界へと英霊を捉える。
切り裂かれゆく左腕を見ても、顔色ひとつ変えることなく。
残された右腕で少女の胸を撃ち貫く。
ぐしゃり。
鈍い音がして二つのものが、落下する。
一つは肩口より裂かれた荒耶宗蓮の左腕。
一つは小柄な少女の肉体。
とっさに右腕での攻撃へと変更したため。
未だセイバーは死にいたってはいない。
だが、どちらが大きな被害を負ったかは明白で。
そして、どちらが事を思惑通りに動かせたのかも、また明白であった。
「―――まさか、サーヴァントを捨て駒として使うとはな」
「切ってこその切り札だ。―――そうは思わないか、魔術師?」
ルルーシュ・ランペルージはそう言って愉快そうに。
全ては計画通りとでも言うように。
唇を吊り上げ、顔を歪めた。
時系列順で読む
投下順で読む
最終更新:2009年12月31日 23:20