SBS(英国王室海軍海兵隊特殊舟艇部隊)

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SBS(英国王室海軍海兵隊特殊舟艇部隊) - (2013/08/13 (火) 22:26:54) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2011/10/09(日) 22:57:48
更新日:2024/01/18 Thu 02:51:15
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SBSとは英国王室海軍海兵隊に所属する特殊部隊である。
知名度でこそ英国陸軍の特殊部隊SASや米陸軍特殊部隊デルタフォースやグリーン・ベレー、ビンラディンを殺害したとして報道された米海軍特殊部隊Navy SEALsに劣るものの特殊部隊としての能力は非常に高く、少なくとも世界最強と評価されるSASと同等あるいはそれ以上と評価されている。(SBSの隊員達はSASより上であると確信している)



【概要】

SBSは英国王室海軍海兵隊の傘下にあるものの、SASと同じく英国特殊部隊司令部の指揮を受ける。
部隊の本部はドーセット州プール海軍基地に存在する。

なおSBSとはSpecial Boat Serviceの略称で、日本語に訳すと特殊舟艇部隊となる。
部隊のモットーは以前はNot by strength,by guile(力よりも知恵で)現在はBy strength and guile(力と知恵と)である。



【SBSの成り立ち】

SBSの原形となる部隊が現れたのはSASが創設された1941年よりも古い1939~1940年頃。当時英国軍はドイツ軍のガンガン行こうZ……もとい電撃作戦に為す術もなくフランスから英国本土に敗走し、殆どの装備品を失っていた。

状況を打開すべく、英国は軽装備の歩兵による後方撹乱及び奇襲による反撃作戦を立案。
それらの作戦を実行する部隊いわゆるコマンドー部隊が創設された。

そのコマンドー部隊の隷下にカヌーを使って偵察や奇襲、隠密潜入を行うSpecial Boat Sectionなる部隊が誕生している。
ちなみに英国海兵隊内にも英国海兵隊ブーム・パトロール分遣隊(RMBPD)という匿名のもと、カヌーを使った破壊工作部隊が誕生している。

これら上記の部隊はSASと同じで戦時急造編成の部隊であったため、第二次世界大戦終結後解散あるいは解体された。
しかし戦後に上記のようなカヌーを使用した舟艇特殊部隊に所属していた人員を一緒くたにした英国海兵隊小規模襲撃ウィングを創設。

その小規模襲ウィング全体を1957年にSpecial BoatCompany (特殊舟艇中隊 略称SBC)と改称して統合する。
そしてSACは1975年にSpecial BoatSquadron (特殊舟艇 略称SBS)と改称され、1987年の英国特殊部隊再編により英国特殊部隊司令部の指揮下に入った際現在のSpecial Boat Service(特殊舟艇部隊)へと改称された。



【隊員の選抜基準】

SBSの隊員は基本的に重大な軍紀違反を犯したことがなく、英国海兵隊に最低3年間所属した隊員の志願者だけが選抜試験に参加することができる。(SASは歩兵からヘリのパイロットまで誰でも応募できる。詳しくはSASの項目を。)
この英国海兵隊について詳しく書くと項目が一つ出来てしまうのでここでは簡単に説明する。

英国海兵隊は英国海軍の隷下にある、水陸両用の軽歩兵部隊である。
海兵隊の隊員は9ヶ月にも渡る非常に厳しいことで知られる海兵隊コマンドー訓練課程を合格した隊員のみで構成される。(参考までに英国陸軍の初年兵訓練が8週間。陸上自衛隊のレンジャー教育課程が3ヶ月。)

現存する海兵隊としては欧州で4番目に創設された伝統ある部隊である。

英国海兵隊のモットーはPer Mare Per Terram(海に陸に)であり、これを体現するかのように山岳戦と極地戦のエキスパートである。

上記のコマンドー課程を修了した隊員で構成される精鋭部隊であるため、SBSだけでなくこの英国海兵隊自体が特殊部隊あるいは準特殊部隊として扱われる。



【選抜試験】

1987年の英国特殊部隊再編に伴い英国特殊部隊司令部に統合されるまでSBSは「ブラック・ウォーター」と呼ばれる独自の選抜試験を行っていたが、現在は先の再編による統合によって年二回SASと合同で行われる統合特殊部隊選抜課程を合格しなければならない。

最強と言われるSASと同じ選抜方法なのである。

しかしSBS隊員候補の海兵隊隊員には選抜試験の前に2週間の適性予備試験に合格しなければならず、更に本番の31週間に渡って行われる統合選抜課程の後に8週間かけてカヌーや舟艇の操船方法や潜水の専門技能、潜水艦による潜入訓練、水中ナビゲーション術、各種実戦的な水中工作活動と水中戦闘術を学ぶ。

これらを乗り越えて始めて3等スイマー・カヌー員の資格が与えられ、晴れてSBSの隊員として採用される。

このスイマー・カヌー員の等級は昇級に伴う試験によって上がっていく。

精鋭の海兵隊隊員でもSBSへの合格率は3割にも満たないという。



【編成】

SASに比べSBSに関する資料は非常に少なく編成も資料によってまちまちであるため正確な編成はよく解らない。
少なくとも手元の資料によると、SBSは3個の現役戦闘中隊と1個の予備中隊から成るという資料と4個の戦闘中隊と1個の予備中隊からなるという資料がある。

4個中隊編成の場合だと水泳とカヌーに精通したスペシャリストで編成されたC戦闘中隊、小型舟艇、小型潜航艇、水中スクーター等の舟艇類の操縦や操作に熟練したS戦闘中隊、SBSの基本である海洋特殊作戦の他、対テロ作戦能力を備えたM戦闘中隊と予備戦闘中隊から成る。
5個中隊編成だと上記の中隊に、SASと頻繁に合同訓練を行いより海洋特殊作戦、対テロ作戦能力に特化したさながらDEVGRUのような任務を遂行するX戦闘中隊が加わる。



【SBSの任務】

SBSの任務は海上、海中、沿岸(時には内陸部まで)の偵察、潜入。主に水中での破壊工作といった特殊作戦を始め、シージャックや海上油田占拠等の海が舞台となる場合のテロへの対処。(いわゆる対テロ作戦。基本的には海上担当だが場合によっては陸上の事件にも対処する。)

そして意外なことに英国での麻薬取り締まりや国境警備にも従事している。
これは英国の沿岸警備隊(日本だと海上保安庁)が海難救助に特化した組織であるため、日本だと海上保安庁が行うような警察行為を海軍が引き受けているためである。
さらに英国の麻薬密輸は空路より海路の方が圧倒的に多く、こういった麻薬の売買にはIRAやマフィアなどの危険かつ暴力的な組織が関わっているからである。(もっとも麻薬取り締まりや国境警備は、基本的にSBSというより海軍、海兵隊の任務なのでよほどのことがない限りSBSは出てこない。)



【SASとの確執】

しかしまぁこうして見るとSBSの任務はSASとある程度重複……というかモロ被りである。
そのためSASとSBSは陸軍と海軍という関係に加え任務が重複することもあり、まぁーとにかく仲が悪い。
どれくらい仲が悪いかというと、現英国女王であるエリザベス女王自らが「お前ら少しは仲良くしやがれ(怒)」と一喝されるくらい仲が悪い。
実際、元SBS隊員がSBSに関する小説を書いた時も作中でSASをボロクソに書くくらい溝は深い。

一応SASとSBSの役割分担の境界線は高潮線から内陸に12マイル行ったところにありその陸側がSAS海側がSBSと規定されている。が、SASは独自の舟艇部隊を持ってるし、SBSも内陸部で平然と活動している。



【余談】

1991年勃発した湾岸戦争の際、多国籍軍特殊部隊が協力して行ったスカッド狩りで一番最初に戦果を挙げている。

また湾岸戦争中に占拠された英国大使館の解放を実行したのもSASではなくSBSであった。

さらにこのSBS、SASに比べ日本と少し縁がある。
2001年に海上自衛隊に全自衛隊の中で初めて(公式の)特殊部隊として「特別警備隊」が創設された際、その教官としてSBSの隊員が招かれているのである。
現在でも特別警備隊はSBSに隊員を派遣してノウハウを学ばせたり、指導を仰いでいるらしい。

因みに陸上自衛隊の特殊部隊「特殊作戦群(陸上自衛隊)」が創設された際は、SAS式の訓練を取り入れようとしたがあまりにも苛酷であったためデルタフォース式に改めたとか……まぁあくまで噂であるが。




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