特別警備隊(海上自衛隊)

登録日:2011/10/17(月) 01:14:47
更新日:2021/07/11 Sun 21:17:03
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世界には「特殊部隊」と呼ばれる部隊が数多く存在する。
代表的な例を挙げるならSASSBS、グリーン・ベレー、デルタフォースSEALs、SWAT、KSKGSG-9、スペツナズ、GIGN、SASR…等といったところだろう。

では日本の特殊部隊は?と聞かれたらアニヲタの諸君らは何と答える?

多くの者は警察庁のSATを、少しマニアックな者は海上保安庁の特殊警備隊(SST)と答えるだろう。

しかし上記の二部隊は所謂、法執行機関系特殊部隊であり、犯罪の解決---被疑者の逮捕を至上とする為、被疑者の殺害は最後の手段とされている。
他にもこれらの特殊部隊は法執行機関であるが故に、活動できるのは国内だけである。
では日本は海外で活動できる特殊部隊を保有していないのか?
答えはNOである。
TVニュース等では殆ど報道されていないが自衛隊内にも幾つか特殊部隊は存在する。
その一つがこの項目で紹介する海上自衛隊が保有する特殊部隊特別警備隊である。




【概要】
特別警備隊は、2001年に陸・海・航空の三自衛隊の中で最初に創設された特殊部隊で、
後述する北朝鮮の工作船による能登半島沖不審船事件が契機となって創設された。

部隊の創設に先立ち、英国王室海軍海兵隊の特殊部隊SBSから教官を招聘して基礎訓練を受けている。
英語ではSpecial Boarding Unitと表記される為SBUと呼ばれることもある。
(直英訳したSpecial Guard Team SGTと表記されることもある)
本部は広島県海上自衛隊江田島基地にある。
帝國海軍でいう聯合艦隊である自衛艦隊の直轄部隊で、つまり日本の海を守ってきた組織のお膝元の特殊部隊である。
海上自衛隊内からは特警隊、単に特警などと呼ばれている。
隊員数は百人前後(らしい)。



【任務】
特別警備隊は海上警備行動時における不審船の武装解除、臨検、場合によっては武力を用いた標的の無力化を主任務としている。
その為隊員達は不審船へのヘリコプターや特別機動船(RHIB)を使用した強襲、潜水による水中浸透や狭い船内における近接戦闘(CQB)を中心とした訓練を受けている。
その一方でSBSやSEALs等の海外の海軍系特殊部隊と同様の海岸・沿岸部の偵察。
さらに海岸から内陸部への長距離偵察や海上における人質救出作戦等の多様な任務も付与されているといわれている。
実際、一部の隊員は第一空挺団から空挺降下に関する様々な訓練を受けており、海上自衛隊の自衛官にも拘わらず、空挺徽章やレンジャー徽章を保有する隊員も存在する。

また将来的には陸上自衛隊の特殊部隊特殊作戦群とも連携して任務にあたることも想定されている。



【部隊編成】
隊本部の下に総務班・運用班・作戦資材班・医務班が存在する。
さらに運用班の下に4個小隊が存在し、1個小隊内には2個班が存在する。(1個班の人員は9名)



【隊員と訓練】
特別警備隊は年に一度募集要項を海上自衛隊の全部隊に通達する。
どんな職種でも(警務官からパイロットまで)応募できるが、隊員になるには幾つかの条件があり、
原則として射撃・運動・水泳に優れた30歳未満で、3等海曹以上の階級を有する者とされている。

因みに運動能力に優れるとは、隊内の体力測定二級以上を指す。
その内容は以下の通りである。
腕立て伏せ(2分間)72回以上
腹筋(2分間)77回以上
3000m走12分22秒以内
懸垂14回以上
走幅跳4m80cm以上
ボール投56m以上

同様に水泳能力も体力の水泳測定二級以上となり、50m平泳ぎ、自由形共に40秒以内が基準となる。
なお指導を受けた護衛艦付き立入検査隊の隊員によると、別格の化け物達で間違いなく日本最強とのこと。

応募した者は約8ヶ月の基礎課程と約1年3ヶ月の応用課程から成る特別警備課程を受け、特別警備隊隊員となる。
基礎課程は江田島の第一術科学校で行われ、応用課程は特別警備隊内で行われる。

特別警備隊の隊員は水中処分隊の爆発物処理員(EOD)や陸警隊の出身が比較的多く占めている。

創設されたばかりで、さらに人手不足が深刻な海上自衛隊の台所事情もあり、部隊の規模は決して大きいとは言えないが、
隊員個々人の技能は非常に高く、特に遠距離潜水浸透能力は世界トップクラスといわれている。
実際、横須賀に駐屯するアメリカ海兵隊の特殊部隊である艦隊対テロリズム保安チームFASTは特別警備隊を自分達と同等の実力を持つと評価している。



【装備品】
特殊部隊の例に洩れず、特別警備隊でも部隊の規模、訓練内容、隊員の素性や装備品については詳しくは伝わっていない。
しかし2007年に公開された訓練では89式小銃2型(折り曲げ銃床型)と9mm拳銃の他に自衛隊には採用されていないSIGSAUER P226Rを携行する隊員が写っている。
また軍事専門誌にはH&K MP5を装備した写真も確認されている。
その他にも平成20年度調達予定品目に「研究・評価用」としてHK416の弾薬が掲載されている為、HK416も配備されている可能性がある。
特別警備隊の隊員には中央にコウモリ、その下にサソリを配したデザインの特別警備隊き章が与えられる。
このき章はコウモリのように闇夜を飛び、サソリの毒で敵を討つという意味らしい。

特殊作戦群の特殊作戦き章やNavy SEALsのトライデントと比べると目茶苦茶格好悪い。



【何故海上自衛隊に?】
さてこの項目を読んでいるアニヲタの諸君らは疑問に思っているだろう。
何故陸上自衛隊ではなく海上自衛隊に最初の特殊部隊が創設されたのか。
ここではその疑問についての説明をしよう。

実をいうと陸上自衛隊には特別警備隊が創設されるより以前から特殊部隊は存在している。
正確に表現するなら他国から見れば特殊部隊と言われても良いような部隊である。
第一空挺団、冬季戦技教育隊、対馬警備隊等がそれである。
上記の部隊は秘匿性の面では本家特殊部隊には及ばないものの、特殊部隊あるいは準特殊部隊と呼ぶには十分な能力を持っていた。
ただ武力の行使にことさら臆病な日本政府が、特殊部隊とは公式に表明していなかっただけの話。

つまり特別警備隊は、日本政府が公式に「特殊部隊」と呼んだ最初の部隊なのである。



【創設まで】
ここでは特別警備隊創設の経緯を説明する。
多くの外国の海軍では海戦だけでなく陸戦を想定した海軍陸戦隊や海兵隊を運用している。
しかし海上自衛隊では予算の都合や無知な政治屋の怠慢のおかげで陸戦や白兵戦を想定した部隊は存在しなかった。

ところが1999年3月。後に能登半島沖不審船事件と呼ばれる出来事により事態は一変する。
この事件の最中追跡を担当していた海上自衛隊の護衛艦の艦内では不審船へ乗り込み制圧しなければならない可能性が出てきた。
しかし前述の通り白兵戦のノウハウが薄い海上自衛隊は艦内から腕っ節の強い乗組員を選出し、臨時の決死隊を編成した。
しかし腕っ節が強いといっても専門的な近接戦闘を受けた訳ではなく、手渡された装備も旧式の64式小銃と9mm拳銃だけであった。
結果、不審船はまんまと北朝鮮へ逃亡。
決死隊が出動することはなかったのだが、この事件の屈辱を教訓に海上自衛隊では確実に臨検を行える部隊の必要性を痛感した。
特別警備隊が主任務に臨検を掲げているのはこの教訓の為である。



【不祥事】
2008年9月第1901期応用課程で学生1人が15人を連続で相手にする格闘訓練中に死亡する事件が発生した。
特殊部隊はその特性上、訓練内容に危険極まるものが多い為死者がでることもある。
しかし調査の結果この格闘訓練は特別警備隊の正規の訓練ではなく、
特別警備課程を辞めることを希望していた被害者隊員に対する制裁的な訓練であったことが判明している。
この、"事故"で特警隊の隊長は更迭され、事態は一応の終息を迎えた。

また2009年には覚醒剤所持で隊員の一人が逮捕されている。



【余談】
海上保安庁にも特別警備隊という部隊が存在するのだが、海上保安庁の特別警備隊は特殊部隊ではなく警察の機動隊に相当する。
そのため海上保安庁の特別警備隊はテロ事案には出動せず、テロには特殊警備隊(SST)が対応する。

本拠地の江田島近くで訓練をすることが多いため、地元の牡蠣の養殖漁師には度々目撃され、訓練の様子をビデオに撮られていたこともあるらしい。

機密とか色々大丈夫なのか防衛省






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最終更新:2021年07月11日 21:17