P-38 ライトニング

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P-38 ライトニング - (2021/06/10 (木) 12:36:12) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2014/05/02 (金) 23:17:00
更新日:2022/11/07 Mon 21:33:53
所要時間:約 7 分で読めます




P-38 ライトニングは、第二次大戦期にアメリカ陸軍で運用された双胴双発戦闘機である。
他に類を見ない形状から物を知らない人間からはネタ機扱いされることがあるが、それはひょっとしてギャグで言ってるのか?

目次



性能諸元(P-38L)

全長:11.53m
全高:3.00m
翼幅:15.85m
翼面積:30.43㎡
空虚重量: 5.80t
運用時重量:7.94t
最大離陸重量:9.80t
最大速度:高度7,620m時667 km/h
失速速度:170km/h
最大航続距離:3,640km
航続距離:1,770km
実用上昇限度:13,400m
上昇率:最大1,448m/min
固定兵装:20mm機関砲1門、12.7mm機銃4門
爆装:各爆弾倉に最大900kg×2 or 5インチロケット弾10発

開発経緯

本機の開発要求試案が提出された1930年代後半、アメリカの航空戦力は何というか、その、非ッ常にお粗末なものだった。34年まで複葉爆撃機が現役だったくらいだしな
彼らは彼らで「ジャパニーズイエローモンキーごときに近代的軍隊が作れるわけねーぜHAHAHA!!」と思ってたわけだが……とりあえずお前が言うな
そこに国際情勢の緊迫とB-17の開発開始が重なった*1こともあって、各方面から高性能戦闘機の配備を求める声が高まっていき、1937年2月に要求試案が策定され、ロッキード社のモデル22がXP-38として選定された。

その性能要求は、
1.単座で高々度防空・迎撃能力を備えること
2.最高速度は580km/h、上昇力は高度6,500mまで6分以内
というもので、これを両立させるべく考案されたのが本機の特異な形状だった。
これは初期の長大なターボチャージャーを空気力学的に最も効果的、かつ実用的に配置させるためのもので、中央のコクピットブロックに固定兵装と操縦系を、主翼の双胴部にエンジンを組み込むことで実現した。
主任務は本土付近での爆撃機邀撃であるため、火力と最大速度に特化し、一撃離脱戦法に長けた機体として設計されている。
航続距離が零戦真っ青な領域なのは異常なまでの軽量化*2と広大な北米大陸上空での運用を考慮したから。
そのため、後述するように欧州戦線のようなB-17を護衛しつつの制空戦闘には限りなく不向きだった。

1939年1月末に初飛行を行い、同年9月に制式採用が決定した。

双発戦闘機と単発戦闘機

双発戦闘機はそのものずばり、エンジンを2基搭載した戦闘機のことだ。大出力を活かして強力な火砲を搭載しつつ高速力を維持しつつ、ペイロードを生かして燃料を沢山積んだり翼面積の広さから航続距離に優れるが、
また、ペイロードの多さを活かして爆装することで戦闘爆撃機(ヤークトボマー、略してヤーボ)としての運用も容易だし、除装して偵察機としても運用できる。
火力や兵器搭載量を生かした多用途機としての側面が強いタイプと言えるだろう。
ただしエンジンを複数搭載するだけあって単機あたりのコストや整備性は悪化するし、機体重量がかさむこともあって格闘性能も高くはない。
実際対戦闘機戦は度外視して爆撃機や輸送機のようなやや鈍重な航空戦力の襲撃や、対地攻撃に使用されることが多い機種でもあった。何でもある程度はこなせるが特化機ほどの性能にはならないことが多い、と覚えておけばそう間違いはない。

一方の単発戦闘機だが、これもそのものずばりエンジン1基で飛行するものだ。
ペイロードの上限は双発機に劣るが、その分軽量に仕上げられるので運動性は高くなる傾向にある。
ちなみに大正義アメリカ軍のように技術力と工業力ががっちりスクラムを組んでると、火力と防御力と機動性と運動性が満点花丸でなおかつ大量生産余裕でしたとかいう悪夢めいた光景が現出する。
こちらは純粋に制空戦闘に特化したものが多いが、米軍機みたいに大出力を活かしてヤーボとして運用可能な機種も結構ある。と言うか米軍の大戦後期以降の単発戦闘機は大半ヤーボ。

つまるところ、双発戦闘機の優位性は速度と大出力が生み出す一撃離脱と火力にあり、速度で劣るようでは単発機には絶対に……とまでは言わないがほぼ勝てない。

イギリス空軍に間借りしていた自由フランス軍のエース、ピエール・クロステルマンは本機を「本機の特性を熟知した熟練パイロット部隊が編隊空戦に持ち込めば大戦果を挙げられるが、性能を活かせない新人パイロットが対戦闘機戦を挑めば凄惨な結果になる」と評している。

戦歴

欧州戦線

主にドイツ本土を爆撃するB-17の護衛機として投入されたが、Bf109やFw190というドイツ屈指の名機が強敵として立ちはだかる。
そもそも運動性でどうしても単発機に勝てない本機で、速度のほとんど変わらないドイツ単発機相手にはどうしても苦戦は免れなかった。
とはいえ、爆撃機を戦闘機から守る迎撃戦闘機の役目は「爆撃機を落とされないこと」。
敵機を落とすのは主力戦闘機の役目であり、究極的にはダメージを与えずとも、交戦せずとも爆撃機は目標地点まで行って帰ってこれればいい。
むしろ筆者としては善戦したのを褒め称えたいくらい。
後発機のP-47やP-51が欧州戦線で本格運用されるようになると主任務地はアフリカ方面となり、運用方式も純粋な戦闘機ではなくペイロードを活かしたヤーボとなっていった。
実際、独軍機にボコボコにされた飛行隊に後発機を充てて立て直した例は結構多い。
また、高速かつ航続距離が長大なことを活かして偵察機としても運用されている。『星の王子さま』で有名なサン=テグジュペリが最後に搭乗した機体もこのP-38偵察仕様。

太平洋戦線

緒戦ではラバウル方面に進出していた帝国軍最強格の超練度エース軍団*3に低高度格闘戦に誘い込まれていいように叩き落とされまくる。
そもそもその手の格闘戦は帝国軍機の十八番、勝とうと思ったらスピットファイアやヘルキャットでも持ってこい、なわけで……
挙句、簡単に落とせるということで「メザシ」「ペロハチ(=Pろ8)」と思いっきりナメられる羽目に。

が、配備が進み、性能向上が行われ、ゼロ戦の弱点が暴かれると、本機の特性を活かした戦法が確立されて状況は一変。急上昇で引き剥がされてからの急速反転/一撃離脱でキルレシオが反転。
帝国軍のベテランパイロット喪失も相まって無双状態となる。……が、ヘルキャットやコルセアなど同等の性能を持つ後発機種の台頭もあって大戦末期はいまいちパッとしない。
でも米軍エースのワンツーフィニッシュは本機で記録されてたり、太平洋戦線における機種別撃墜数が3位だったりする。
航続距離の長さからなんだかんだで重宝された。潰しが利くのはいいことです。いくら航続距離が良くても重視しすぎな零戦みたいなのはアレだがな
山本五十六大将の暗殺計画が実行された際、彼の搭乗していた一式陸攻を撃墜したのも本機だが、これは本機の航続距離なしに実行不可能な作戦だった*4という。

戦後は米軍のレシプロ戦闘機がP-51で統一されることが決定したため、海外残存機は廃棄処分、本土残存機も順次退役して一線を退いた。
何だかんだで想定された通りの運用をされることはついになかったが、本機もまた名機と呼ぶに値する存在だった。
と言うかこの時期の米軍機って悪名高いP-39すら他国に比べれば普通に名機ばっかじゃねーか、大正義ってレベルじゃねーぞ

バリエーション

  • P-38:プロトタイプと大差ない初期生産型。機首に37mm機関砲1門、12.7mm機銃4門装備。
    • P-38D:防弾燃料タンク搭載型。
    • P-38E:これ以降、機首の37mm機関砲が20mm機関砲に換装される。装弾数がアレすぎて改善要求が殺到したかららしい。
      • F-4:E型の写真偵察機改装型。
    • P-38F:燃料タンクか合計900kgの爆装を選択可能な爆弾倉を双胴ユニットに搭載した初期主要生産型。
      • F-4A:F型の写真偵察ry
    • P-38G:出力向上型。1,082機が生産された中期生産仕様。
      • F-5A:G型の写真ry
    • P-38H:同上。爆装能力強化。
    • P-38J:さらに出力が強化された後期生産仕様。2,970機が生産された。
      • F-5B:J型のry
      • F-5C:B型のカメラ性能改善型。
    • P-38L:最終生産仕様。シリーズ最多の3,923機が生産された。
      • F-5E:F-5C準拠の改装を受けたJ及びL型

創作におけるP-38

Kindle限定小説『マイアと銀の翼』(神野淳一 電撃文庫『シルバー・ウィング』のリメイク版)にP-38Dが主役機として登場。魔法使い二人が操縦と索敵を分け持ち、パラレル世界の英国で活躍していた。
ウォーシミュレーションにはたぶん出てる、はず。
とりあえず飛ばしてみたかったらIl-2をプレイして、どうぞ(モロマ)
『エイセス/大空の誓い(原題:Iron EagleⅢ)』という映画にも主役機のひとつとして登場しているのでチェックだ。



追記・修正は本機で零戦に巴戦を挑んでからどうぞ。

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