おじろく・おばさ

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&font(#6495ED){登録日}:2014/05/05 Mon 23:59:38 &font(#6495ED){更新日}:&update(format=Y/m/d D H:i:s) &new3(time=24,show=NEW!,color=red) &font(#6495ED){所要時間}:約 4 分で読めます ---- &link_anchor(メニュー){▽}タグ一覧 &tags() ---- おじろく・おばさとは、かつて日本の[[長野県]]のとある村に実在した凄惨な風習の一つである。 &s(){似たような風習は、他の村でもあったのかもしれないが。} どのような風習かと言えば、家の跡取りとなる長男以外の人間は、 小さな頃は普通に育てられるが、長男の言うことに全て従うのを当然と覚えこまされる。 そして、やがて大きくなるにつれ長男と差別的に取り扱われるようになり、 #center(){世間との交流は許されない。お祭りも参加できないし、結婚相手探しも不可。おそらく大半が一生[[童貞]]&処女。 万一結婚したい相手が見つかっても迎えたりできず、結婚するには他の家に引き取ってもらうしかない 死ぬまで無償で家の使用人として働かされる 長男や長男の嫁・長男の子供に限らず、甥っ子や姪っ子からも下っ端扱い 戸籍への記載は「厄介」…つまりは家族ではない} 人権などまったく認めていない扱いだが、彼らは反抗することもない。 現代にあれば一大社会問題となっていたことだろうが、幸いにも現代には存在しない。 16~17世紀にはじまったが、明治維新以降は先細りとなったようで、昭和40年代に生き残っていたおじろく・おばさはわずかに3人であったという。 おそらく、今は生き残っていないだろう。 もちろん、こんな制度が導入されたのには理由がある。 耕地の面積が少ない山林では、子どもに財産である田畑を次々分けて相続させる余裕などなく、人口の増え過ぎは村全体が危ない。 農地からとれる穀物の量にも、家を建てられる面積にも、自ずから限界というものがある。 「街に出れば」と言っても、その都市部でも人口は増える。そこに流民としてなだれ込んだところで、人口圧迫に拍車をかけるのが関の山だった。 また、鉄道や自動車があるわけではないため他の村とも隔絶しがちで、人をやりとりして切り抜けることが難しい。 確実な避妊法があるわけでもなく、子供が生まれれば面倒を見ないわけにはいかない。また当時は衛生観念がなく乳幼児の死亡率が非常に高く、ある程度子どもの人数を確保しないと家系断絶のリスクが高くなる。 そのため、他の兄弟たちは男はおじろく、女はおばさとして、子供を増やさせることなく、跡取りである長男のために働かされるのである。 要するに「&bold(){口減らし}」の一種である。 人口爆発によって社会が破綻するのを避けるためには、増えすぎる人間を&font(b,#ff0000){殺す}か、繁殖を&font(b,#ff0000){制限する}しかない。 前者を選ぶのが「口減らし」であり、後者を選んだのが「おじろく・おばさ」であった。 ヨーロッパでも同じことはよく起きていて、あちらでは「捨て子」という形で行われたという。 「ヘンゼルとグレーテル」の童話はその寓話という。 ただ、&bold(){そうした恐慌的なやり方でもって、やっと社会を維持できた}というのも事実。 日本が江戸時代だった同時期、中国は清代である。 清では医療技術の進歩と社会情勢の安定により、1720年代から1830年代にかけて人口が一億から四億へと、優に四倍も増加。 しかしそれによって、地方では耕地と食料が足りなくなって農村社会が破綻し、都市部では増える人口に加えて農村から逃げてきた流民もなだれ込んで衛生環境・食糧自給・就職関係など都市社会の全てが崩壊した。 特に、都市部であふれた流民たちは行き場もないので青幇・紅幇などのマフィア組織に加わる者も多く、社会情勢を不安定化させて清末に到る。 江戸時代の日本は、「間引き」「口減らし」と言った、余った幼児をすぐに殺してしまうことにより、なんとか社会の維持と資本の蓄積に成功した。 明治以降の日本が急速な近代化に対応することができたのは、この社会維持と資本蓄積があったためだとさえ言われている。 (「座敷童」も口減らしで死んだ赤子・幼児の霊だという) 逆に、中国の近代化が遅れたのは、清代の人口爆発の悪影響を払拭できなかったからだという。 &font(b,#ff0000){強権的手段に打って出てでも人口維持に踏み切らなければ、社会全体が崩壊してしまう}、そういう危機感と危険があればこそ、我が子を殺し兄弟を廃人にするという手法もとられたのである。 当時の社会情勢が為させた、家父長制の傲慢さや社会の冷酷さといった点だけでは語れないところであり、当時のことを現代の人権感覚からその善悪を論じることは差し控えるべきだろう。 実際、上では「おじろく・おばさは明治以降廃れた」とあるが、明治以降には同じく口減らし政策は廃れ、それにあわせて人口は急速に増えていった。 (日本の人口は、平安時代から室町時代までは概ね1000万ぐらいだったが、江戸時代に入ると急に増加して3000万になった。口減らしの普及によって江戸時代中期からは3000万で安定したが、明治以降は急速に増え始め、昭和十年代には7000万、昭和三十年代には一億に達する) おじろく・おばさの風習が、口減らしの一環だったというのはこのあたりからでも分かる。 さてそんな制度だが、&color(red){&bold(){そういった彼らがどういう人間だっただろうか、という点がこのおじろく・おばさの恐ろしさ}}である。 1964年に、生き残っていた3人のおじろく・おばさが学者に取材されたことがあった。 まず、彼らには将来の夢も希望もない。 感情がなく表情もない。自分から話しかけるどころか、こちらから話しかけても全くの無視。 それでいて言いつけにはよく従って働く。 取材をしても全く無視されてしまうので、薬物で催眠をかけて面接したら、やっとぽつぽつと回答が出たという。 #center(){「他家へ行くのは嫌いであった。親しくもならなかった。話も別にしなかった。面白いこと、楽しい思い出もなかった」 「人に会うのは嫌だ、話しかけられるのも嫌だ、私はばかだから」 「自分の家が一番よい、よそへ行っても何もできない、働いてばかりいてばからしいとは思わないし不平もない」} もはや奴隷同然の自分の境遇を嘆くことさえもなく、むしろそんな家庭だけが居場所、という状態である。 おじろく・おばさは決して精神的障害を先天的に持っていてなったわけではない。 元々無気力だった者だけがなったわけでもない。 彼らは子供時代は長男の言うことを聞けと言われる以外は普通に遊んでいたという。長男に万一のことがあれば、スペアとして彼らが後を継がなければならないからだ。 &bold(){20代になってから[[ロボット]]のような人格になってしまった}という。 ずーっと奴隷同然にこき使われれば、&bold(){人間はこんな風な人格にでもならなければ、生きていけない}ということの象徴なのである。 当時としては、これらは社会全体として生き残っていくためにやむを得ない面があった。 だが、現代では当然これは違法である。 未成年者相手にこんなことが行われていたら、完全な[[児童虐待]]。即刻児童相談所に通報すべきだし、大人が相手でも、このようなつまはじきは行政に相談した方がよい。 現代にこのようなあり方が制度として存在しないことを喜びたい。 元おじろく、またはおばさの方、追記修正お願いします。 #include(テンプレ2) #include(テンプレ3) #co(){ ちょっとまった。 確かに、現代にはおじろく・おばさという制度は存在していない(はずである)。 だが、おじろく・おばさに近い人間を生み出すおそれがあるのではという社会問題は存在している。 #center(){&sizex(6){[[ブラック企業]]である}} 生きていくためには、社員を奴隷のようにこき使う会社に勤めて生きていくしかないからブラックかどうかに関係なく働いていく。 そうしていくうちに、感情が死んでしまい、よそに行っても何もできない、ブラックに働いていてもばからしいとは思わないし不平もない。 こんなロボットみたいな人間が出来上がってしまう恐れがある。 ブラック社長にとってみれば、1日何時間働かせようが、最低賃金も無視した賃金で済ませようが文句ひとつ言わない奴隷人間ほどありがたいものはない。 なに?「彼らが文句を言わないのだからいいだろう」? 彼らは文句を言わないような人格にならなければ生きていけなくなってしまったということなのだが、洗脳した者勝ち、ということなのだろうか? それに彼らが働き続けることで、ブラック企業はさらに哀れな労働者を取り込んで肥大化し、また彼らのような人間を作っていく。 いつかしわ寄せは社会全体に及んでしまうだろう。 今後おじろく・おばさがどのような形でも生まれないことを願いながら追記・修正をお願いいたします。 } #right(){この項目が面白かったなら……\ポチッと/ #vote3(time=600,21) } #openclose(show=▷ コメント欄){ #areaedit() - どっかの資料で読んだな、これ。…江戸時代の旗本制度にも分家による増殖防ぐ決まり事があったりしたけど、当然こんなに酷くはない。…日本人は勤勉だと良く言われていたけど、こーなる要素を元々内包してんのかも知れないねー… -- 茶沢山 (2014-05-06 06:46:29) - 人間をこういう風に洗脳できるという良い例、いや悪い例か -- 名無しさん (2014-05-06 15:05:37) - ここまで人権無視じゃなくとも、やはり田舎には「本家と分家」や「長男と次男以下」の格差的なもんは現代でもありますよ。 -- 茶沢山 (2014-05-06 16:58:08) - 多少の金を持たせて都会に送り出す、というわけにはいかなかったのか? 成功すれば家にとってもハイリターン、仮に野垂れ死にしても家にとってはノーリスクだし -- 名無しさん (2014-05-06 19:50:44) - ↑人手は必要だし、万が一、跡取りが子孫残さず死んだ場合のスペアがいないと。 -- 茶沢山 (2014-05-06 20:57:27) - なにやら陵辱エロゲや成年漫画で使われそうなネタだと感じた -- 名無しさん (2014-05-07 06:18:02) - あと江戸川乱歩の小説とか -- 茶沢山 (2014-05-07 06:49:34) - 山村の生活の知恵を都市部の悪習と同一視するのはどうかと思うがね。 -- 名無しさん (2014-05-07 18:54:42) - 確かに、これも生活を壊さない為の制度ではあるけど、流石に悪習。 -- 茶沢山 (2014-05-08 06:30:45) - 特区設置や味s採決したから、できそうで恐ろしい。 -- 名無しさん (2014-06-16 15:43:11) - えた・ひにんみたいな者なのか? -- 名無しさん (2014-06-16 17:48:54) - ↑家族にまで差別されるんだから余計に酷い。 -- 名無しさん (2014-09-07 15:47:19) - 田舎には現代でも妙なヒラエルキーがあり 地主(いっぱい土地持ってる金持ち)>地方政治家>聖職者(僧侶・教師)>農家の長男>公務員>農家の次男以下=農家以外て感じ。 -- 名無しさん (2014-09-07 15:50:59) - 「他家へ行くのは嫌いであった。親しくもならなかった。話も別にしなかった。面白いこと、楽しい思い出もなかった」 「人に会うのは嫌だ、話しかけられるのも嫌だ、私はばかだから」 「自分の家が一番よい、よそへ行っても何もできない、働いてばかりいてばからしいとは思わないし不平もない」 -- 名無しさん (2014-11-07 12:19:19) - ↑これ、「他家」を「会社・仕事」に変えると普通のサラリーマンの心情になるじゃん。いわゆる社畜体質のヤツ。こういう風にでもならないと会社なんてやってられないってとこもあるし。 -- 名無しさん (2014-11-07 12:23:00) - もしかして:毒親 -- 名無しさん (2015-02-09 21:34:06) - 家父長制度の成れの果てだな、心が重くなる -- 名無しさん (2015-02-21 21:57:04) - ↑14庄屋ならともかく都会に送り出すほどの金なんて持ってないと思われる。都会に世話してくれるコネもないし -- 名無しさん (2015-05-11 14:05:44) - 私の親戚や両親も悪い人間では無いし、特に迫害された事等一切無いが、ただ何処かで「私は他の土地では生きて行けない。馬鹿だから。」と思う様に教育されたのかも知れない。そう言うコンプレックスを持って生きて来た。現代でも地方ではここまで酷く無くても、そこはかとない差別や格差があったりする。 -- 名無しさん (2016-05-07 10:33:11) - ブラック企業のことも含めて、本当にひどい話だ。 -- 名無しさん (2017-11-27 19:59:38) - あまり尾ひれがついた話を信用しないほうがいい。著者の文献から引用する。「いつまでもチョンマゲを結っている偏屈な者も多く、自分勝手ではあった」「このような疎外者は中流以上の家庭に多く、よく働くので、おじろくのいる家は裕福なるといわれた。」「自分はおじろくの生まれで損だとは思わぬ。福の神といわれたものだ。おじろくだとばかにされたこともなかったし、大事にされなかったとも思わぬ。」「飯田では2回ほど遊郭へ行ったこともある。」「多くの者は兄のいうとおりに働いて行けば、乏しくても衣食住への不安はないので、気概がなくなってしまったのではないかといわれる。」「二男、三男はこうあるべきだという観念から脱することができなかったことによるとしか思えない。」『開放病棟──精神科医の苦闘』(近藤廉治著) -- 名無しさん (2018-02-11 14:10:08) - こう言うのを歴史なんかで見るたびにもったいなく思う。この人たちの中には人類全部に影響を与えるような天才もいたかもしれないから。 -- 名無しさん (2018-04-20 16:37:54) - ちょうどこの地域の地主家系だけどこんな風習聞いたことない。たった1人の人間の文献だけでこんなにみんな信じるものなんだね。 -- 名無しさん (2021-09-16 02:03:33) - ↑×1 お前の方が信じられないだろw -- 名無しさん (2021-09-16 02:09:06) - ↑x2 年寄りはあんまり話したくないだろうし、昭和入るまでには廃れた風習だから、現代の現地で語り継がれなくても不思議ではないと思う。洒落怖みたいになんでもかんでも良くないことの由来知ってる方がおかしいわけだし。(アレは実害及ぼす祟り関連っていう前置きあるからそこまで不自然でないけど) -- 名無しさん (2021-09-16 23:38:06) - わりかし似たような立場(家で家僕みたいな位置づけ)だった自分からすると障害持ちで本来は保護される立場だったのに駄目な子だからなにをしてもいいみたいで、自分も仕方ないのかなと疑問を持たなかったけれども異常を異常と本人たちがきづかなければ普通だからね -- 名無しさん (2022-09-20 17:34:51) - 他の地方では余分な子供は生まれてすぐ間引きとか堕胎されると聞いたことがある。ビートたけしも子供の頃に堕ろすす -- 名無しさん (2022-10-06 09:32:20) - ミス失礼。たけしも堕胎される筈だった斗母親から親子げんかのときに聞かされてショックを受けたというし、そういったことに比べれば生かされる分だけマシなのかもしれない。そうでもないかそうでもないか -- 名無しさん (2022-10-06 09:36:23) - これ後半部分いる? -- 名無しさん (2022-10-06 13:37:52) - 薬物による催眠を使った取材ってのもすごいな…こういうのを問題視できるようにはなったが人権意識は低いっていう、現代に向けて段階を踏んでる感 -- 名無しさん (2023-05-28 18:16:31) - 探せば日本中の至るところに似たような制度の名残ありそう -- 名無しさん (2023-05-29 17:10:15) - コロナやらウクライナやらでよく言われる「陰謀論!」と、それをお国の錦の御旗にして正当化される誹謗中傷ってのも、ある種似てるよね。利益を得たい与党政治家が絡んだ全国レベルの話だから、もっと悪質 -- 名無しさん (2023-05-31 04:35:54) - これをブラック企業と掛け合わせるのは筋違いだと思う。 -- 名無しさん (2023-05-31 06:50:02) - ブラック企業と同じなのは一理あるけど項目の最後にブラック企業につなげるのはなんかおかしいと思う。一気に思想が出て…なんていうんだろうか、急に説教臭くなりすぎて冷める -- 名無しさん (2023-06-03 05:39:58) - ブラックはまがりなりにも自分の意思で務めることを選べられる、だがこの人たちは産まれたときから立場が決まってるからまったくちがう -- 名無しさん (2023-07-08 20:45:48) - ブラック企業の部分いらんやろ -- 名無しさん (2023-08-19 12:59:35) - これってある程度大人になってから事故等でいきなり長男がいなくなった家はどうしてのだろか?子どもの頃ならまだしも大人になってからいきなり社交的になれって言われてみ無理だろうし -- 名無しさん (2023-08-19 13:09:45) - 東北地方だとずんむ(神武)っていう似たような存在がいたらしいから 最後まで生き残ったのがおじろくおばさであって天龍村独特の風習じゃないと思うんだよね -- 名無しさん (2023-09-10 08:31:12) - コメント欄でもさんざん話されているように、文末にブラック企業の話へ結びつけるのは関連性が分かりづらく、当Wiki編集のルールにおける「関係ない項目に関係ないネタを入れない」「主観的な内容にしてはいけない」「全く関係の無い項目での政治思想や実際の事件に絡めた内容の追記」に抵触すると感じたため、該当部分を一時的にコメントアウトしました。将来的には削除します。また他の方が言っている通り、似たような風習は他の地域でも存在しています。個人的に東北地方で行われたおじろく・おばさと同等の文化について個人的に調査をしています。何か進展がありましたら精査の後に当ページに追記させて頂くかもしれませんのでよろしくお願いします。 -- 名無しさん (2023-09-11 12:51:42) - 薬物で催眠をかけて面接したら←いいのかよ・・・こんな非人道的な調査が許されて -- 名無しさん (2023-10-31 20:27:01) #comment #areaedit(end) }
&font(#6495ED){登録日}:2014/05/05 Mon 23:59:38 &font(#6495ED){更新日}:&update(format=Y/m/d D H:i:s) &new3(time=24,show=NEW!,color=red) &font(#6495ED){所要時間}:約 4 分で読めます ---- &link_anchor(メニュー){▽}タグ一覧 &tags() ---- おじろく・おばさとは、かつて日本の[[長野県]]のとある村に実在した凄惨な風習の一つである。 &s(){似たような風習は、他の村でもあったのかもしれないが。} どのような風習かと言えば、家の跡取りとなる長男以外の人間は、 小さな頃は普通に育てられるが、長男の言うことに全て従うのを当然と覚えこまされる。 そして、やがて大きくなるにつれ長男と差別的に取り扱われるようになり、 #center(){世間との交流は許されない。お祭りも参加できないし、結婚相手探しも不可。おそらく大半が一生[[童貞]]&処女。 万一結婚したい相手が見つかっても迎えたりできず、結婚するには他の家に引き取ってもらうしかない 死ぬまで無償で家の使用人として働かされる 長男や長男の嫁・長男の子供に限らず、甥っ子や姪っ子からも下っ端扱い 戸籍への記載は「厄介」…つまりは家族ではない} 人権などまったく認めていない扱いだが、彼らは反抗することもない。 現代にあれば一大社会問題となっていたことだろうが、幸いにも現代には存在しない。 16~17世紀にはじまったが、明治維新以降は先細りとなったようで、昭和40年代に生き残っていたおじろく・おばさはわずかに3人であったという。 おそらく、今は生き残っていないだろう。 もちろん、こんな制度が導入されたのには理由がある。 耕地の面積が少ない山林では、子どもに財産である田畑を次々分けて相続させる余裕などなく、人口の増え過ぎは村全体が危ない。 農地からとれる穀物の量にも、家を建てられる面積にも、自ずから限界というものがある。 「街に出れば」と言っても、その都市部でも人口は増える。そこに流民としてなだれ込んだところで、人口圧迫に拍車をかけるのが関の山だった。 また、鉄道や自動車があるわけではないため他の村とも隔絶しがちで、人をやりとりして切り抜けることが難しい。 確実な避妊法があるわけでもなく、子供が生まれれば面倒を見ないわけにはいかない。また当時は衛生観念がなく乳幼児の死亡率が非常に高く、ある程度子どもの人数を確保しないと家系断絶のリスクが高くなる。 そのため、他の兄弟たちは男はおじろく、女はおばさとして、子供を増やさせることなく、跡取りである長男のために働かされるのである。 要するに「&bold(){口減らし}」の一種である。 人口爆発によって社会が破綻するのを避けるためには、増えすぎる人間を&font(b,#ff0000){殺す}か、繁殖を&font(b,#ff0000){制限する}しかない。 前者を選ぶのが「口減らし」であり、後者を選んだのが「おじろく・おばさ」であった。 ヨーロッパでも同じことはよく起きていて、あちらでは「捨て子」という形で行われたという。 「ヘンゼルとグレーテル」の童話はその寓話という。 ただ、&bold(){そうした恐慌的なやり方でもって、やっと社会を維持できた}というのも事実。 日本が江戸時代だった同時期、中国は清代である。 清では医療技術の進歩と社会情勢の安定により、1720年代から1830年代にかけて人口が一億から四億へと、優に四倍も増加。 しかしそれによって、地方では耕地と食料が足りなくなって農村社会が破綻し、都市部では増える人口に加えて農村から逃げてきた流民もなだれ込んで衛生環境・食糧自給・就職関係など都市社会の全てが崩壊した。 特に、都市部であふれた流民たちは行き場もないので青幇・紅幇などのマフィア組織に加わる者も多く、社会情勢を不安定化させて清末に到る。 江戸時代の日本は、「間引き」「口減らし」と言った、余った幼児をすぐに殺してしまうことにより、なんとか社会の維持と資本の蓄積に成功した。 明治以降の日本が急速な近代化に対応することができたのは、この社会維持と資本蓄積があったためだとさえ言われている。 (「座敷童」も口減らしで死んだ赤子・幼児の霊だという) 逆に、中国の近代化が遅れたのは、清代の人口爆発の悪影響を払拭できなかったからだという。 &font(b,#ff0000){強権的手段に打って出てでも人口維持に踏み切らなければ、社会全体が崩壊してしまう}、そういう危機感と危険があればこそ、我が子を殺し兄弟を廃人にするという手法もとられたのである。 当時の社会情勢が為させた、家父長制の傲慢さや社会の冷酷さといった点だけでは語れないところであり、当時のことを現代の人権感覚からその善悪を論じることは差し控えるべきだろう。 実際、上では「おじろく・おばさは明治以降廃れた」とあるが、明治以降には同じく口減らし政策は廃れ、それにあわせて人口は急速に増えていった。 (日本の人口は、平安時代から室町時代までは概ね1000万ぐらいだったが、江戸時代に入ると急に増加して3000万になった。口減らしの普及によって江戸時代中期からは3000万で安定したが、明治以降は急速に増え始め、昭和十年代には7000万、昭和三十年代には一億に達する) おじろく・おばさの風習が、口減らしの一環だったというのはこのあたりからでも分かる。 さてそんな制度だが、&color(red){&bold(){そういった彼らがどういう人間だっただろうか、という点がこのおじろく・おばさの恐ろしさ}}である。 1964年に、生き残っていた3人のおじろく・おばさが学者に取材されたことがあった。 まず、彼らには将来の夢も希望もない。 感情がなく表情もない。自分から話しかけるどころか、こちらから話しかけても全くの無視。 それでいて言いつけにはよく従って働く。 取材をしても全く無視されてしまうので、薬物で催眠をかけて面接したら、やっとぽつぽつと回答が出たという。 #center(){「他家へ行くのは嫌いであった。親しくもならなかった。話も別にしなかった。面白いこと、楽しい思い出もなかった」 「人に会うのは嫌だ、話しかけられるのも嫌だ、私はばかだから」 「自分の家が一番よい、よそへ行っても何もできない、働いてばかりいてばからしいとは思わないし不平もない」} もはや奴隷同然の自分の境遇を嘆くことさえもなく、むしろそんな家庭だけが居場所、という状態である。 おじろく・おばさは決して精神的障害を先天的に持っていてなったわけではない。 元々無気力だった者だけがなったわけでもない。 彼らは子供時代は長男の言うことを聞けと言われる以外は普通に遊んでいたという。長男に万一のことがあれば、スペアとして彼らが後を継がなければならないからだ。 &bold(){20代になってから[[ロボット]]のような人格になってしまった}という。 ずーっと奴隷同然にこき使われれば、&bold(){人間はこんな風な人格にでもならなければ、生きていけない}ということの象徴なのである。 当時としては、これらは社会全体として生き残っていくためにやむを得ない面があった。 だが、現代では当然これは違法である。 未成年者相手にこんなことが行われていたら、完全な[[児童虐待]]。即刻児童相談所に通報すべきだし、大人が相手でも、このようなつまはじきは行政に相談した方がよい。 現代にこのようなあり方が制度として存在しないことを喜びたい。 元おじろく、またはおばさの方、追記修正お願いします。 #include(テンプレ2) #include(テンプレ3) #co(){ ちょっとまった。 確かに、現代にはおじろく・おばさという制度は存在していない(はずである)。 だが、おじろく・おばさに近い人間を生み出すおそれがあるのではという社会問題は存在している。 #center(){&sizex(6){[[ブラック企業]]である}} 生きていくためには、社員を奴隷のようにこき使う会社に勤めて生きていくしかないからブラックかどうかに関係なく働いていく。 そうしていくうちに、感情が死んでしまい、よそに行っても何もできない、ブラックに働いていてもばからしいとは思わないし不平もない。 こんなロボットみたいな人間が出来上がってしまう恐れがある。 ブラック社長にとってみれば、1日何時間働かせようが、最低賃金も無視した賃金で済ませようが文句ひとつ言わない奴隷人間ほどありがたいものはない。 なに?「彼らが文句を言わないのだからいいだろう」? 彼らは文句を言わないような人格にならなければ生きていけなくなってしまったということなのだが、洗脳した者勝ち、ということなのだろうか? それに彼らが働き続けることで、ブラック企業はさらに哀れな労働者を取り込んで肥大化し、また彼らのような人間を作っていく。 いつかしわ寄せは社会全体に及んでしまうだろう。 今後おじろく・おばさがどのような形でも生まれないことを願いながら追記・修正をお願いいたします。 } #right(){この項目が面白かったなら……\ポチッと/ #vote3(time=600,22) } #openclose(show=▷ コメント欄){ #areaedit() - どっかの資料で読んだな、これ。…江戸時代の旗本制度にも分家による増殖防ぐ決まり事があったりしたけど、当然こんなに酷くはない。…日本人は勤勉だと良く言われていたけど、こーなる要素を元々内包してんのかも知れないねー… -- 茶沢山 (2014-05-06 06:46:29) - 人間をこういう風に洗脳できるという良い例、いや悪い例か -- 名無しさん (2014-05-06 15:05:37) - ここまで人権無視じゃなくとも、やはり田舎には「本家と分家」や「長男と次男以下」の格差的なもんは現代でもありますよ。 -- 茶沢山 (2014-05-06 16:58:08) - 多少の金を持たせて都会に送り出す、というわけにはいかなかったのか? 成功すれば家にとってもハイリターン、仮に野垂れ死にしても家にとってはノーリスクだし -- 名無しさん (2014-05-06 19:50:44) - ↑人手は必要だし、万が一、跡取りが子孫残さず死んだ場合のスペアがいないと。 -- 茶沢山 (2014-05-06 20:57:27) - なにやら陵辱エロゲや成年漫画で使われそうなネタだと感じた -- 名無しさん (2014-05-07 06:18:02) - あと江戸川乱歩の小説とか -- 茶沢山 (2014-05-07 06:49:34) - 山村の生活の知恵を都市部の悪習と同一視するのはどうかと思うがね。 -- 名無しさん (2014-05-07 18:54:42) - 確かに、これも生活を壊さない為の制度ではあるけど、流石に悪習。 -- 茶沢山 (2014-05-08 06:30:45) - 特区設置や味s採決したから、できそうで恐ろしい。 -- 名無しさん (2014-06-16 15:43:11) - えた・ひにんみたいな者なのか? -- 名無しさん (2014-06-16 17:48:54) - ↑家族にまで差別されるんだから余計に酷い。 -- 名無しさん (2014-09-07 15:47:19) - 田舎には現代でも妙なヒラエルキーがあり 地主(いっぱい土地持ってる金持ち)>地方政治家>聖職者(僧侶・教師)>農家の長男>公務員>農家の次男以下=農家以外て感じ。 -- 名無しさん (2014-09-07 15:50:59) - 「他家へ行くのは嫌いであった。親しくもならなかった。話も別にしなかった。面白いこと、楽しい思い出もなかった」 「人に会うのは嫌だ、話しかけられるのも嫌だ、私はばかだから」 「自分の家が一番よい、よそへ行っても何もできない、働いてばかりいてばからしいとは思わないし不平もない」 -- 名無しさん (2014-11-07 12:19:19) - ↑これ、「他家」を「会社・仕事」に変えると普通のサラリーマンの心情になるじゃん。いわゆる社畜体質のヤツ。こういう風にでもならないと会社なんてやってられないってとこもあるし。 -- 名無しさん (2014-11-07 12:23:00) - もしかして:毒親 -- 名無しさん (2015-02-09 21:34:06) - 家父長制度の成れの果てだな、心が重くなる -- 名無しさん (2015-02-21 21:57:04) - ↑14庄屋ならともかく都会に送り出すほどの金なんて持ってないと思われる。都会に世話してくれるコネもないし -- 名無しさん (2015-05-11 14:05:44) - 私の親戚や両親も悪い人間では無いし、特に迫害された事等一切無いが、ただ何処かで「私は他の土地では生きて行けない。馬鹿だから。」と思う様に教育されたのかも知れない。そう言うコンプレックスを持って生きて来た。現代でも地方ではここまで酷く無くても、そこはかとない差別や格差があったりする。 -- 名無しさん (2016-05-07 10:33:11) - ブラック企業のことも含めて、本当にひどい話だ。 -- 名無しさん (2017-11-27 19:59:38) - あまり尾ひれがついた話を信用しないほうがいい。著者の文献から引用する。「いつまでもチョンマゲを結っている偏屈な者も多く、自分勝手ではあった」「このような疎外者は中流以上の家庭に多く、よく働くので、おじろくのいる家は裕福なるといわれた。」「自分はおじろくの生まれで損だとは思わぬ。福の神といわれたものだ。おじろくだとばかにされたこともなかったし、大事にされなかったとも思わぬ。」「飯田では2回ほど遊郭へ行ったこともある。」「多くの者は兄のいうとおりに働いて行けば、乏しくても衣食住への不安はないので、気概がなくなってしまったのではないかといわれる。」「二男、三男はこうあるべきだという観念から脱することができなかったことによるとしか思えない。」『開放病棟──精神科医の苦闘』(近藤廉治著) -- 名無しさん (2018-02-11 14:10:08) - こう言うのを歴史なんかで見るたびにもったいなく思う。この人たちの中には人類全部に影響を与えるような天才もいたかもしれないから。 -- 名無しさん (2018-04-20 16:37:54) - ちょうどこの地域の地主家系だけどこんな風習聞いたことない。たった1人の人間の文献だけでこんなにみんな信じるものなんだね。 -- 名無しさん (2021-09-16 02:03:33) - ↑×1 お前の方が信じられないだろw -- 名無しさん (2021-09-16 02:09:06) - ↑x2 年寄りはあんまり話したくないだろうし、昭和入るまでには廃れた風習だから、現代の現地で語り継がれなくても不思議ではないと思う。洒落怖みたいになんでもかんでも良くないことの由来知ってる方がおかしいわけだし。(アレは実害及ぼす祟り関連っていう前置きあるからそこまで不自然でないけど) -- 名無しさん (2021-09-16 23:38:06) - わりかし似たような立場(家で家僕みたいな位置づけ)だった自分からすると障害持ちで本来は保護される立場だったのに駄目な子だからなにをしてもいいみたいで、自分も仕方ないのかなと疑問を持たなかったけれども異常を異常と本人たちがきづかなければ普通だからね -- 名無しさん (2022-09-20 17:34:51) - 他の地方では余分な子供は生まれてすぐ間引きとか堕胎されると聞いたことがある。ビートたけしも子供の頃に堕ろすす -- 名無しさん (2022-10-06 09:32:20) - ミス失礼。たけしも堕胎される筈だった斗母親から親子げんかのときに聞かされてショックを受けたというし、そういったことに比べれば生かされる分だけマシなのかもしれない。そうでもないかそうでもないか -- 名無しさん (2022-10-06 09:36:23) - これ後半部分いる? -- 名無しさん (2022-10-06 13:37:52) - 薬物による催眠を使った取材ってのもすごいな…こういうのを問題視できるようにはなったが人権意識は低いっていう、現代に向けて段階を踏んでる感 -- 名無しさん (2023-05-28 18:16:31) - 探せば日本中の至るところに似たような制度の名残ありそう -- 名無しさん (2023-05-29 17:10:15) - コロナやらウクライナやらでよく言われる「陰謀論!」と、それをお国の錦の御旗にして正当化される誹謗中傷ってのも、ある種似てるよね。利益を得たい与党政治家が絡んだ全国レベルの話だから、もっと悪質 -- 名無しさん (2023-05-31 04:35:54) - これをブラック企業と掛け合わせるのは筋違いだと思う。 -- 名無しさん (2023-05-31 06:50:02) - ブラック企業と同じなのは一理あるけど項目の最後にブラック企業につなげるのはなんかおかしいと思う。一気に思想が出て…なんていうんだろうか、急に説教臭くなりすぎて冷める -- 名無しさん (2023-06-03 05:39:58) - ブラックはまがりなりにも自分の意思で務めることを選べられる、だがこの人たちは産まれたときから立場が決まってるからまったくちがう -- 名無しさん (2023-07-08 20:45:48) - ブラック企業の部分いらんやろ -- 名無しさん (2023-08-19 12:59:35) - これってある程度大人になってから事故等でいきなり長男がいなくなった家はどうしてのだろか?子どもの頃ならまだしも大人になってからいきなり社交的になれって言われてみ無理だろうし -- 名無しさん (2023-08-19 13:09:45) - 東北地方だとずんむ(神武)っていう似たような存在がいたらしいから 最後まで生き残ったのがおじろくおばさであって天龍村独特の風習じゃないと思うんだよね -- 名無しさん (2023-09-10 08:31:12) - コメント欄でもさんざん話されているように、文末にブラック企業の話へ結びつけるのは関連性が分かりづらく、当Wiki編集のルールにおける「関係ない項目に関係ないネタを入れない」「主観的な内容にしてはいけない」「全く関係の無い項目での政治思想や実際の事件に絡めた内容の追記」に抵触すると感じたため、該当部分を一時的にコメントアウトしました。将来的には削除します。また他の方が言っている通り、似たような風習は他の地域でも存在しています。個人的に東北地方で行われたおじろく・おばさと同等の文化について個人的に調査をしています。何か進展がありましたら精査の後に当ページに追記させて頂くかもしれませんのでよろしくお願いします。 -- 名無しさん (2023-09-11 12:51:42) - 薬物で催眠をかけて面接したら←いいのかよ・・・こんな非人道的な調査が許されて -- 名無しさん (2023-10-31 20:27:01) #comment #areaedit(end) }

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