北斗の拳(1986年の映画)

登録日:2012/10/03(水) 01:44:32
更新日:2024/04/24 Wed 02:21:05
所要時間:約 6 分で読めます





痛快無比!
話題騒然の

北斗十番勝負!!


概要

北斗の拳シリーズ初の劇場版。ファンからは「旧劇場版」と呼ばれることが多い(2006年から公開された映画「真救世主伝説」シリーズとの区別のため)。
原作におけるケンシロウとラオウの最初の対決までを再構成し、完全新作で制作された劇場用オリジナル長編。
原作の流れには忠実だが物語と尺の都合上、北斗の拳には欠かせない一部のキャラクター達
(トキ、マミヤ、ユダ、シュウ、サウザー、南斗五車星の皆さん、当然アミバも)の出番及び存在がハブられてしまっている。
つまりこの映画だとジャギが北斗三兄弟の一人だったり、南斗六聖拳ではなく南斗聖拳ということになる。
また、一部のキャラは立ち位置が変更されている者もいる。


そしてこの映画を語る上で絶対に欠かせない事が一つ。それは……




グロい。

とにかくグロい。


そう、この映画は全体の70%ほどがグロでできていると言っても過言ではないくらいスプラッタ描写が過激なのだ。
一応、原作でもTVアニメでも噴水のように血は噴出したし、臓器や目玉が飛び出す描写は当たり前のようにあるのだが、
この映画はそれが過激かつダイレクトに描写されている。(それなりの映像処理はしているのだが、ほとんど意味はない)
あまりのグロさに、最初は北斗の拳映画化にノリノリだった原作者のコメントが公開が迫るにつれ厳しくなっていったのは有名な話。

そんな映画に彩りを添えた主題歌は、TV版の後期主題歌も担当したKODOMO BANDの「Heart of Madness」「Purple Eyes」。
ケンシロウの深い哀しみと決意を現すかのような、重厚でありながらメロディアスな口当たりが印象的な名曲である。


ちなみに、項目冒頭にもある「北斗十番勝負」のキャッチコピーは本作での予告編でのもの。
本編での物語の流れを最初から最後までなぞって行くと、

  • 一番 ケンシロウ vs シン
  • 二番 リュウケン vs ラオウ
  • 三番 ケンシロウ vs ジード
  • 四番 ケンシロウ vs ハート様
  • 五番 ケンシロウ vs レイ
  • 六番 ケンシロウ vs ジャギ
  • 七番 ラオウ vs 牙大王
  • 八番 レイ vs ウイグル
  • 九番 レイ vs ラオウ
  • 十番 ケンシロウ vs ラオウ

といった具合にバトルが10回用意されている所から来ている。
え?いくつか勝負とは言えない展開がある?ん~!?なんのことかなフフフ……



登場キャラクター

ご存知第64代北斗神拳伝承者にして胸に七つの傷を持つ世紀末救世主。
原作とほとんど設定は変わっていないが、悪党共をバッタバッタと皆殺しにしていく様は今作特有の描写も加わって原作よりも悪役っぽく見える
リンの村での戦いでは土にまみれた怪物みたいな姿で登場し、しかも髭面だった。*1
オマケにその姿でドカドカ廃ビルを薙ぎ倒していくのだから、ケンシロウと言うかラオウである。
物語の終盤、ラオウと戦うが勝敗は……。


  • ユリア
ケンシロウの婚約者。
原作通り冒頭でシンにさらわれるが飛び降り自殺はせず、サザンクロスからの脱出を試みたところを偶然鉢合わせたラオウに捕まる。
ちなみに劇中でユリアが「南斗の血をひく女」である事がすでに明かされている。
因みにこの映画ではユリアの生乳が拝めるぞ!!


ご存知北斗兄弟の長兄にして世紀末覇者拳王。
原作同様天を握ることを目標とし拳王として世界を恐怖と暴力で制圧する。
方法はどうあれ悪党を暴力でねじ伏せてつかの間の統治を与えているので、領民からは嫌われてはいないようだ。
こいつもパンチの風圧でビルをぶち抜いたりしている。……まあ、『天の覇王』でもそういうことしてたしな。
何気にシン、牙大王と原作では見れなかった夢の対戦をしてくれる。
「この暗黒の時代に……愛など無用だ!」……サウザーのセリフだろうそれは。


  • 黒王号
ラオウの愛馬。ただ牙大王からは駄馬呼ばわりされた。
群衆の中に混じっていたリンの気配に気づいた。


南斗水鳥拳の使い手。髪の色が既に白みがかっている。
原作同様妹のアイリを追って、七つの傷の男を探している。
牙一族編での対ケンシロウ戦は、こちらではジャギに命じられて行っている。
やっぱり南斗水鳥拳は非常にカッコいいのだが、過激なスプラッタ描写によってグロ度がアップした。
最終的にはラオウと激突するが(原作では一撃でやられてたのに対しそれなりに善戦はしたが)やはり秘孔・新血愁を突かれ敗北する。
……が、その後3日の余命を与えられず尺の都合でケンシロウに助言を言った後すぐに息を引き取った。


南斗孤鷲拳の使い手でユリアをさらった張本人。
物語の中盤、ユリアを巡ってラオウと戦う。(しかし戦闘描写はまたしても尺の都合でカット)
その後、ケンシロウと再戦するが、ラオウに突かれた秘孔の効果で倒れ、息を引き取った。
「死ぬのならお前の手にかかって死にたかった」と原作とは真逆の台詞を言う。


北斗兄弟の次男
「あの」原作よりも更に卑怯で残虐な性格の、承認欲求と嫉妬心のバケモノ
シンとの初戦に負けた瀕死のケンシロウを崖から突き落とした。(※ラオウの差し金です)
またケンシロウが負けたときにはこれ見よがしにラオウに「奴は継承者の器じゃない」と吹聴し、挙句ラオウから「お前が継承者で構わん」と吐き捨てられた。
更に原作では自ら薬を被って失明したアイリに対し、本作では自らの顔を見て怯えたという理由で失明にまで追い込んでいる。
アイリが兄を慕っていたことに関しては「なぜケンシロウはこうじゃなかった」と恨み言を言っていたが、そりゃあんただからだよとしか言いようがない。
煽り耐性がゼロに等しく、ケンシロウから銃や人質、更にレイにまで頼ったことをバカにされただけでタイマンに応じている。

最期の描写が非常にグロく、ほんの一瞬のカットとはいえ顔面が破裂し眼球や歯や脳や皮膚が飛び散る様をどアップで見せられる。
「北斗は兄貴が俺にくれたんだ、だから俺のもんだ!どうだ?はははは!ケンシロウ、俺の名前言ってみろ?俺は北斗の伝承者ジャギギギギギギィャァァァァァ!!」
ちなみに声優はTV版と違い、ブラック魔王になった。


  • リュウケン
先代北斗神拳継承者。
予告の十番勝負ではラオウと戦うはずだったが思いっきりカットされてしまう。
もう「二番勝負 ラオウ vs 仁王像」に変えてしまえ。


おなじみコンビ。
冒頭でいきなりZ軍団からバギーで逃げ回っている。
扱いは変わらないが、今作は特にリンの活躍が強く押し出されている……のだが、やはりトキのポジションを(一部とはいえ)彼女に背負わせるのは荷が重すぎた。


  • アイリ
レイの妹。髪の色が兄貴と同じ色に。
原作でもジャギに攫われていたが本作では牙一族がただの辺境部族になった都合上取り置かれており、ジャギの靴を洗わされていた。
パンチラ。


  • ジード
リンの頭を引きちぎろうとした巨漢の盗賊。
原作となんら変わりない活躍をし、なんら変わりない最期を迎える。
またケンシロウからコンクリート片を蹴り込まれたのを口で噛んで止めて粉砕するという、原作のダイヤ様がやった芸を披露している。


  • Z兵
ご存知典型的なヒャッハー!の皆さん。
原作と何ら変わらんようにケンシロウに消し飛ばされるが、先遣隊の1人はボウガンでケンシロウにかすり傷を負わせるという活躍を見せた。
最後の一人は殴り飛ばされてジードの胸に叩き付けられ十字架に磔にされたかのごとくめり込んで爆死。
ちなみに中に聖帝様そっくりな声をしてる奴がいる。


我らがデブのカリスマ・ハート様。
今作ではシンの部下ではなく、ジャギの部下として分厚い壁を突き崩しながら登場する。
そのためトランプ札に関連する名前という設定の必要がなくなり、当初は「エレファント」というオリジナルの名前で登場する予定だった。
(予告編ではしっかりエレファントと紹介されていた)
声がドクロベエ様そっくりに。
「ひでぶぅぅぅ↑↑!!」


  • ジャッカル&フォックス
ジャギの部下AとBに成り下がる。
フォックスはノコザコの頭目として現れるがレイにカマキリ野郎呼ばわりされた挙句、ケンシロウにあっさり撲殺される。
ジャッカルは寝ていたジャギの素顔におじけづいたせいでジャギの怒りを買って殺された。そんだけ。


  • ノコザコ
ケンシロウの悪評を広めるため、ノコで街の住人を処刑していたジャギの部下。
原作ではケンシロウのノコギリ引きで「ああ~バカ俺じゃないるれ、ぱっ、ぴっ、ぷっ、ぺっ、ぽおっ」という断末魔を残したが、
今作ではレイがそのポジションについている。
声は北斗界ではお馴染み過ぎる伝説声優、千葉さんこと千葉繁


  • 牙大王&牙一族
原作では凶悪な盗賊集団として登場したが、今作では人里離れた山奥の国に一族だけで面白おかしく暮らす部族という設定になっている。
侵攻してきた拳王軍に対して自分たちの部落を守るためにこの映画で最もスプラッタな戦いを挑む。
まさかの大王無双が続くがラオウの前では牙大王自慢の華山鋼鎧呼法も意味はなく、秘孔・大胸筋を闘気で突かれ、
オーラで吹き飛ばされ岩山を貫通した挙句、木っ端微塵になるという最期を遂げた。
ラオウの台詞によると残った牙一族も拳王軍に皆殺しにされた模様。


原作ではカサンドラの獄長だったが、今作ではラオウの側近として登場する。
終盤にレイと戦うが、大地を引き裂く泰山流千条鞭も南斗水鳥拳の前には敵わなかった。


  • 拳王軍兵士
本作では劇場版オリジナルのデザインとして、真っ黒い甲冑に身を固め、表情や感情が分かり難い戦闘マシーンの印象を与えている。こらそこ、ウォーズマン擬きとか言わない
牙一族との、他の作品だと『天の覇王』(とイチゴ味)ぐらいでしか描かれないであろうガチ戦争も描かれた。
終盤ではケンシロウとラオウの戦いに巻き込まれて木の葉のように吹き散らかされていった。


  • カーネル
原作ではそれなりに活躍したが、本作ではシンの部下*2その1に過ぎない。
脱走したユリアを探し求めるシンに「それどころではございませぬ」と失言したため、怒りを買って見事に誅殺される。
…この映画の悪役は我慢というものがないのか。


  • ガルフ
ガルフは拳王軍の一人*3として登場する。拳王の行幸に際し、メガホンを持って群衆に無理矢理称えさせていた。そんだけ。




なお、PSの「北斗の拳 世紀末救世主伝説」ではハート様、ジャギ様のキャスティングが本作仕様になっている。

本作の続編の劇場版第二弾制作がアニメ誌でも発表されていたが、結局お蔵入りになっている。



総評

……1990年代並びに20世紀末、映像媒体の北斗の拳は氷河期に包まれていた。

TVアニメ再放送そのものの激減、放送規制の強化、一向に映像ソフト化されないTVアニメ版、そのくせクソゲーだけはきっちり乱発していた東映動画……。
若い読者諸君にはなじみがないかもしれないが、古いアニメはニーズの都合により「1話&最終回だけ」といったビデオorLDによる販売が一般的であった。
当時北斗成分の補充として北斗ユーザーに残されていたのは放送当時の本編録画テープ(録画できていれば。テープ自体当時高価だった)、
TVアニメ版の総集編三本、そして本作の映像ソフト。
本当にこれしかなかった。なかったのだ。
故に一部のカラオケ映像で「愛をとりもどせ!!」を選ぶと、令和のご時世ですら画面のアニメ映像ではテレビ本編では無く本作の映像が流れる。*4
当然スプラッタな映像もそのままなので家族・友人・知人の前では選曲と設定に気を付けよう。

2002年以降のTVアニメ版DVD-BOXの発売、単品ソフトの発売&レンタルと、封印映像扱いからの氷解までの間本作の果たした役割は大きい。


追記・修正はいかなるグロ描写も平気な方がお願いします。

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最終更新:2024年04月24日 02:21

*1 余談だが無許可で制作された韓国版映画ではこっちのヒゲンシロウがモチーフになっているため、やっぱりラストではラオウに負ける。

*2 アニメ版では「シン=神」を崇拝する宗教団体だったが。

*3 原作設定からする間違っちゃいないが。

*4 なお「TOUGH BOY」を選ぶと普通に『北斗の拳2』の映像が流れる。