レッド・ドラゴン(映画)

登録日:2012/10/09(火) 19:39:08
更新日:2024/03/13 Wed 09:37:27
所要時間:約 6 分で読めます




篭の中に囚われた赤い胸の駒鳥は、全ての楽園に怒りを導く(A robin redbreast in a cage Puts all heaven in a rage)





レッドドラゴン

『レッド・ドラゴン(RED DRAGON)』は03年の米映画。
ジャンルはサスペンスミステリー、サイコホラー。
91年の『羊たちの沈黙』、01年の『ハンニバル』の続編で、アンソニー・ホプキンス演じるハンニバル・レクターシリーズの完結編として制作された。

トマス・ハリスの同名小説の二度目の映画化作品であり、最初の映画化作品である1986年に制作された『刑事グレアム〜レクター博士の沈黙』(当時は『刑事グラハム・凍りついた欲望』)が犯罪捜査物としての体裁を取っていたのに対し、本作は『羊たちの沈黙』以来のサイコホラーを前面に押し出した内容になっている。

尚、パッケージや宣伝ではまるでレクター博士が主人公であるかの様な扱いを受けているが、本作の主人公はあくまでも元FBI捜査官ウィル・グレアムであり、噛みつき魔事件の主犯はフランシス・ダラハイドである。

尤も、原作者のトマス・ハリスも語る様に、そもそもは端役であったレクターが「サイコを操るサイコ」としてカリスマ的な人気を得た事がシリーズの継続に繋がったと云う事実もあり、殊に映画版では最大のハマり役となった“アンソニー・ホプキンス演じるハンニバル・レクター”と云う強烈な人気キャラクターが存在していたのだから尚更であろう。

また、完結編にして、時系列では最初の物語となる本作では、シリーズで初めて“現役の犯罪者時代”のレクター博士が登場している。
前作『ハンニバル』でも話題になっていたヘタクソなフルート奏者の殺人事件が描かれている他、逮捕されたレクターが収監されている精神病院のバカ院長ドクター・チルトンが12年振りに再登場してファンを喜ばせた。



※以下はネタバレ含む。


【物語】

バーミングハムとアトランタで、場所と一月の時を経て、同じ手口で一家が惨殺される事件が起きた。
残忍、且つ異常な事件に手を焼いたFBIの上級捜査官ジャック・クロフォードは、今は引退してフロリダに移住していた元FBI捜査官ウィル・グレアムに協力を依頼する。

……グレアムは、クロフォードのチームでも最高の捜査官であり、犯罪者の思考と同化出来る最高の心理分析官……。
そして、数年前にあのハンニバル・レクターを捕らえた男であった。

精神科医としてのレクターを犯罪捜査のオブザーバーとする事で協力関係を築いていた両者だが、レクター自らの起こしていた連続殺人をグレアム自身が見抜く事で両者の関係は終結を迎えていたのだ。

クロフォードの薦めもあり、事件への協力を依頼する為に訪れたグレアムに「自分達は似た者同士だ」と言い放つレクター……。

一方、自らの醜い出自を憎み、完璧な超人にならんとしていた「噛みつき魔」フランシス・ダラハイドは、グレアムの捜査への参加を知り、尊敬するレクターへと次の手紙を送っていた……。


【登場人物】
※吹替はソフト版。

■ウィル・グレアム
演:エドワード・ノートン
声:井上倫宏
元FBI捜査官。フルネームはウィリアム・グレアムで、レクターからも時折ウィリアムと呼ばれる。
レクターとの協力により、数々の難事件を解決して来た伝説的な捜査官にして心理分析官。
レクター自身の犯罪も同様に協力して捜査していたが、レクターが自らから目を反らそうとした企みにもかかわらず、犯人が食人目的で犯行を起こしている事と、レクター自身が犯人である事を見抜き、瀕死の重傷を負わされながらもレクターを逮捕した。
その後は形式上引退したが、実際には捜査協力という形で引き続き異常事件に関与しており、「噛みつき魔」事件の捜査にもその一環として加わる。
犯罪者の心理を自らの内に明確なヴィジョンとして、再現出来る能力を持つ。
しかし彼自身は異常犯罪者と強く共感してしまう自分自身に苛まれており、レクターからは自分と同じ感性を持つ人間として興味を持たれている。
原作版では不幸な結末を迎えるが、二度の映画版では何れもハッピーエンドを迎えている。

■ジャック・クロフォード
演:ハーヴェイ・カイテル
声:池田勝
優秀な捜査チームを率いるFBIの上級捜査官。
キャストは変更されているが、『羊たちの沈黙』でスターリングにレクターを紹介したクロフォードと同一人物である。
異常な噛みつき魔事件の発生に際し、グレアムに協力を依頼する。

■モリー・グレアム
演:メアリー=ルイーズ・パーカー
声:安藤麻吹
グレアムの妻。
復帰しようとするウィルを止めようとするが適わず。
……更に、一家はレクターの策略により危険に晒される事になる。

■フレディ・ラウンズ
演:フィリップ・シーモア・ホフマン
声:塩屋浩三
三流タブロイド紙「ナショナル・タトラー」の事件記者。
過激で売れる記事の為には多少の犠牲も厭わない男で、グレアムにはレクターに瀕死の重傷を負わされ、病院のベッドから動けないでいる状態の写真をリークした事で恨まれており、挙げ句にグレアムがレクターに再び接触した事をもすっぱ抜いた。
FBIを名乗り、惨殺された一家の死体解剖写真を入手しようとした件で逮捕された事により、交換条件としてクロフォードらに噛みつき魔を誘き出す為の偽記事を書く様に依頼されるが……。
死に様は人によってトラウマか爆笑かに分かれるようなシュールさだが、彼の死を知ったレクターはグレアムによる謀殺と推理しており、物語に暗い影を落とす一因にもなっている。

■フランシス・ダラハイド
演:レイフ・ファインズ
声:小杉十郎太
ビデオ編集会社で働く寡黙な男。
渾名はミスターD。
荒れ果てた豪邸に一人で住む。
本作の犯人で“噛みつき魔”の名で呼ばれるが、本人はその不本意な通り名を嫌っている。
レクターを敬愛しており、彼とは密かにメッセージの交換をしていた。
厳格な祖母により、虐待紛いの躾を受けて育てられた経験を持ち、それにより自らの容姿と存在に激しい嫌悪を抱いている。
ウィリアム・ブレイクの「レッド・ドラゴンと太陽をまとう女」の絵に描かれた黙示録のドラゴン(サタン)を自分の変わるべき姿と考え、肉体改造を進行させており、
その心の中には「彼」と呼ばれるもう一つの人格(≒ダラハイドの中の「レッド・ドラゴン」の象徴)を抱えている。
自分の顔が見えないリーバーと恋仲になるも、自らの使命と普通の幸福との狭間に悩み、最終的には自ら関係を破綻させてしまう。

■リーバ・マクレーン
演:エミリー・ワトソン
声:山像かおり
フィルム現像会社に勤める盲目の女性。
聡明で意外に積極的。
多くの女性から興味を持たれているミスターDと恋仲になり有頂天になるも、結ばれた直後に“もう一人の彼”に捨てられてしまう。

■ドクター・チルトン
演:アンソニー・ヒールド
声:小島敏彦
グレアムに逮捕されたレクターが収監された精神病院の院長。
『羊たちの沈黙』以来の登場となるシリーズ屈指のネタキャラ。
功名欲に取り憑かれた野心溢れる人物で、レクターを題材に本や論文を書こうとしては失敗している(数年経っても)。

■ハンニバル・レクター
演:アンソニー・ホプキンス
声:麦人
シリーズを通しての象徴で、最高の精神科医にして食人鬼。
前作『ハンニバル』ではヒーロー的な立ち位置であったが、本作では完全なヒール。
「サイコを操るサイコ」としての凄みを見せつける。
また、犯罪者としての「現役」時代がシリーズでは初めて明確に描かれており、前作で言及された「下手なフルート奏者」に纏わるシーンが挿入されている。
一方で(グレアムの想像ではあるが)自分を褒め称える文面を気に入り、リスクを承知でダラハイドからの手紙を保管していたなど数少ない人間らしさを感じさせるシーンも。






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最終更新:2024年03月13日 09:37