クロックタワーゴーストヘッド

登録日:2010/11/06 Sat 14:20:58
更新日:2023/12/10 Sun 19:48:03
所要時間:約 7 分で読めます






―全ての人間にを―



CLOCK TOWER GHOST HEAD(クロックタワーゴーストヘッド)


もう、逃げるだけでは生き残れない







「CLOCK TOWER GHOST HEAD」は98年にヒューマンから発売されたPS用ソフト。
クロックタワーシリーズの第3弾だが、前作までと違い日本が舞台の外伝作品となっている。
シリーズの生みの親である河野一二三も関わっていない為か、作品全体の雰囲気も前作までとは違っており、
ストーリーや世界観はJホラー映画を意識した内容になっている。


【システム】

クロックタワーを参照。

本作独自のシステムとしては、

  • シザーマンは出ない
  • 主人公の人格交替
  • 武器の携帯
  • 体力は回復ポイントにある救急箱を取らない限り回復しない

…等がある。

シリーズ伝統のボタン連打による危機回避システムにRSIシステム(RENDA・SEZUNIHA・IRARENAIシステム)と云うそのままにも程がある名前が付いた。

シザーマン降板

本作ではチャプターによって襲ってくる対象が変わり、追跡者などと呼ばれている。
これまでの作品とは違いどうにかしてシザーマンをやり過ごすのかではなく、積極的に敵を返り討ちにするという事が求められている。
なおプレイステーションのブラウザで本作のセーブデータを確認すると、シザーマンの愚痴を見る事が出来る。

人格交代

本作の主人公は二重人格者である。
普段は表の人格・優が持つ「ミコシサマ」というお守りによって裏の人格・翔を抑え込んでいる。
このミコシサマをマップ上のどこかに置いて手放した状態で敵ともみ合い、パニック状態を回避すると同時に翔の人格が出現する。
置いてあるミコシサマを回収すると優の人格に戻る、というシステム。
この人格交代を活かしてフラグ立てを進めていくのが、本作独自の謎解き要素である…のはいいのだが、これが曲者。
というのも交代するにはシステム上、ミコシサマを手放した状態でわざと敵に襲われ、翔を出現させなければならない。
すなわち逆に言えば敵に追われなければ翔になる事が出来ないという、本末転倒なシステムになっている。
ちなみに優と翔の状態ではできることがそれぞれ異なり、同じ人物に話しかける場合でも優で話すのか翔で話すのかで会話の内容は大きく異なる。
謎解きはもちろん、場合によってはシナリオ進行やエンディングにも影響を及ぼすため、人格交代のタイミングが重要になる。

武器

優は前作と同じく、モップや椅子、消火器等の日用品を撃退アイテムとし、クリックで発動し敵を撃退する。
一方で翔は拾った銃火器を武器とし、射撃で敵を撃退する。
ただし翔は銃火器以外で敵を撃退する事ができず、銃なので当然弾に限りがある。拳銃は5発、ショットガンは4発、マシンガンは20発。
アイテム欄で銃のアイコンをクリックすると翔が銃を構え、カーソルが照準に変化。照準を敵に重ねた状態でクリックすると発砲する。
尚、何でか知らないが銃火器はマップの随所に隠されているラクーンシティかな?

救急箱

本作における体力回復手段。
前作では逃走状態回避後に時間経過で自然回復したが、本作では救急箱を取らない限り体力は回復しない。
置かれている場所をクリックするとその場で自動的に全回復する。
ただし持ち歩く事はできない。

【物語】


身に覚えの無い傷害事件を起こし、転校せざるをえなくなった御堂島優……。

不安を抱えつつも、父の友人である鷹野初を頼って弁天町へとやって来た。
だが鷹野家に到着した彼女が見たのは悍ましく変色し、夥しい血を流しながらも未だ動き続ける人間の腕だった…。

あまりの事態に困惑する優に、狂人の様に変貌した鷹野家の末妹…千夏が襲いかかる!!
…しかし、その時、優の内に眠っていたもう一人の人格・翔が目覚めるのだった…。

「大丈夫だ優…お前は俺が守る…」


果たして、優を待つ残酷な運命とは…!?



【登場人物】

声優表記は「ゲーム版 / ドラマCD版」

◇御堂島優

CV:荒木香恵(ゲームもドラマも同じ)
主人公。
東京からやって来た17歳の少女。
霊感が強く、何かとその方面へ結び付けて考えてしまう癖がある。
身に覚えの無い傷害事件を起こしており、自分の記憶にハッキリしない部分がある事を恐れている。
彼女の場合、追跡者に対しては従来(「」までの)通り、回避ポイントや撃退アイテムのクリックで対処する。
女性らしく気配りの利く優でないと見つけられないアイテムなどもある。
銃を拾うことは出来る*1が知識がないので扱えない。機械関係や理数関係に関しても苦手意識を覗かせる。
また死体などにも耐性がないなど、いわゆる普通の女の子である。追跡者は殴り倒すが。

◆翔

CV:瀧本富士子 / 桑島法子
優の内に潜む謎の人格。
男性の人格で、自分の目の前の障害は如何なる手段を以ても排除すると云う苛烈な性格。
尚、上記の傷害事件も優を守るべく“翔”が引き起こした物。身に危機が迫ると優に代わって翔が表に出現する。
こちらは回避ポイントを利用できない代わりに銃器を扱え、追跡者を直接攻撃することで対処する。
一見こちらのほうが楽そうに見えるが、弾数の制限が当然ある上にそれ以外の対処法が存在しないため、実は女性で丸腰の優のほうが有利だったりする。
銃や残弾がないと自信満々で棒立ちのまま敵に殺される。優の方がよっぽど強い
翔は機械や理数系に強く、事件の真相をいち早く理解するなど頭の回転が速く、死体などに耐性がある。

◆鷹野 初

CV:矢田耕司 / 里内信夫
43歳。優の父、崇の友人で弁天製薬研究所の所長。
長女がゾンビ化、次女は発狂と劇中でも特に不幸。通称バーコード(ハゲ)
元々小心者の上、上記のような不幸が重なった発端を才堂家の呪いと思い込んでいる。
SAN値がピンチなのか、錯乱のあまりに優や翔を襲うこともある。

◇鷹野 弥生

CV:中西妙子 / 溝上真紀子
初の妻。年齢は不明。玄関でゾンビ化した長女に襲われた。
夫に救助されるが長女は死亡、更に発狂した末娘に襲われる。
今度は翔に救われ、寝室に匿われた。後に千夏が正気を取り戻した際、三舞署に通報。事件の生還者の1人。
尚、千夏から弥生を助けた後に寝室にカギをかけないと…。

◆鷹野 雅春

15歳。鷹野家の長男で高校入学を控えていた中学三年生。
鎧武者のイベントをこなしていない場合、体で登場。
このままゲームを進めてしまうと…。

◇鷹野 秋代

鷹野家の長女。
帰宅途中にゾンビ化と云う青天の霹靂な目に遭ってしまう……。
ゾンビとなり自我は消失したが「家に帰りたい」という思いだけで帰宅した。
家族に襲いかかるも、父親に殺害*2されるという悲しい末路を遂げた。
全身をバラバラにされているが、腕だけは動いている。

💀鷹野 千夏

CV:鈴木富子 / 前田千亜紀
7歳。優に懐いていた鷹野家の次女で小学一年生。チャプター1の追跡者。
異常に真っ白な顔で包丁を持ち、けたたましい声を上げながら迫って来るガキ。
“黄金の像”の力により発狂…家族を襲撃した。
足は速いが耐久力は低い。でも胸を包丁で串刺しにされても死なない。
因みに最短ルートなら追い掛けられずにクリア可能。
「キャハハハハ!!こ~ろ~し~て~や~る~!」

💀鎧武者

本名・鷹野雅春。
千夏の豹変を恐れ、武者鎧を着込んで鎧武者に成りすましていたものの、
ある理由から自らも発狂…その姿のまま襲い掛かって来る。
武者鎧は一人で着ようとすると相当時間が掛かるし、何故そこに隠れた…?

耐久力は高いが鈍足。ランダムで配置されたマップ内に踏み込むことで逃走モードに移行する。
だが部屋をまたいで追ってくることはなく、マップから出れば消えていなくなる。

突然製薬所の天窓から落ちてきて理不尽すぎる強制バッドエンドを見舞う。
どうやってそこに行ったのか、何で落ちてきたのか理由も一切不明という

礎 等(いしずえ ひとし)

CV:二又一成 / 木下尚紀
25歳。
隣町の三舞町からやって来たイケメン刑事。
キザだが正義感は強く、美少女の為に危険を省みずに戦ってくれる。
優に好意を抱いているらしいが、2人の結末は脚本でも判らないらしい…。

剛元 亘(ごうもと わたる)

CV:大塚明夫 / 幸野善之
35歳。フリーのカメラマン。
空き地でリサイタル開いてそうな名前だが、見た目もそんな感じ。
見本の様な亡フラグを立てて去って行く。
声優が豪華だが、あくまでも“ついで”である。
プレイヤーの選択次第で生死が別れる。死んでしまう場合の末路は、不謹慎だがかなり笑える。

岸 温美(きし あつみ)

CV:中西妙子 / 溝上真紀子
弁天町総合病院の看護師長。
院長の不正に気付き、それを調査するも時は既に遅かった…。
優と翔の事も知っており調査に協力もしてくれるが、事態を諦めているのかややヒステリック気味。

宇路 達士(うろ たつし)

CV:大塚明夫 / 松尾銀三
弁天町総合病院の院長。黒幕の人体実験に協力し、患者の遺体等を研究所に提供していた。
すでに異変に見舞われた状況下で錯乱している為、迂闊に近付くと危険(実害的な意味で)…。
これでも元は名医だったらしいが、患者が行方不明になるなど病院に関する黒い噂が立っていた。

💀ゾンビ

チャプター2の追跡者。……いっぱいいる。
“HU599”と云う未知の細菌に感染した感染者で、寄生脳を破壊しないとなない。
寄生脳(弱点)の位置はランダムで決まるので、照準を当て虱潰しに探すしかない。
マシンガンやショットガンなら一撃で倒せる。女子高生がモップで叩いても倒せる。
ちなみに撃退すると床に染み込むように溶けて消滅する。服ごと。

◇藤香

CV:鈴木富子 / 根橋美絵子
追跡者でも無いのにトラウマになりかねない白面の女…。
色白≠表現したかったかどうか判らないが、そのCGモデルのキモさは本作を語る上で外せないものだろう…
更に消え入りそうな声で喋る…。嫌がらせか!とも思うが、優への態度を見るとあながち間違いでは無い気がする。
たまに助けてくれることもある。ファザコンでヤンデレ
「貴~女~さ~えい~なけ~れ~ば~!!」
その正体は崇の実の娘。藤香が8歳の時に両親が離婚し、母に引き取られたもののその母は1年後に他界、親戚中をたらい回しにされながら育ち、父への憎悪を募らせていた。
それから時がたったある日、往来端で幼い優を連れて歩く父の姿を見て憎悪は明確な殺意へと発展し、崇と優2人への復讐を決意する。
優の事を呪われた娘と呼ばわるが、恐らくはぽっと出の娘である優が何者なのかを調べる上で全てを把握していたのだろう。




◆御堂島 崇

CV:大木民夫 / 松尾銀三
優の父親で、大病院の院長。黒幕とも顔見知り。
優すらも知る由のなかった真実を知る唯一の人物。

💀才堂 不志人(さいどう ふしひと)

CV:大塚明夫 / 西脇保
本作のシンボルで、チャプター3に出て来る最強の追跡者。
かつては将来を嘱望されていた天才的な科学者だったが、ある人物の陰謀により”黄金の像”の力で発狂…。
般若面に大鉈を引き摺る人鬼となった……。
「全ての人間にを…」


\HEY!/\HEY!/


【用語解説】


●才堂家

才堂不志人を輩出した古い家系。
双子の女児が生まれた際に才堂家に災いをもたらすものとして、生き埋めにするという残酷な風習を現代に渡って行い続けてきた。
17年前にも双子の娘が生まれているが、当主である不志人自身の手により葬られたらしい。

●HU599菌

研究所で開発されていた、人間をゾンビに変えてしまう新型の細菌兵器。HUは恐らくHUMANのHU。
娘を生き埋めにした不志人がこの世を恨み、「世界に復讐する」という妄執と怨念に捕われ作り出した。
感染すると体内のどこかに寄生脳と呼ばれるものを生み出し、本来の脳を脳死させて乗っ取る。
乗っ取られると肌は緑色に変色し、血液は黄色くなり、生ける屍と化し人を襲う。
また、寄生脳が存在する部位を切り落とすとその部分だけが生き続ける。

●黄金の像

前作の魔像を彷彿とさせる謎のアイテム。本作におけるキーのひとつらしいが……。



【キャスト】


●荒木香恵(御堂島優)

●瀧本富士子(翔)

●二又一成(礎等)

●鈴木富子(藤香、鷹野千夏)

●大木民夫(御堂島崇)

大塚明夫(才堂不志人、宇路達士、剛元亘)



…その他。
※CDドラマ版は除外します。




【事件の真相】

※以下、Aエンディングネタバレ。
































全ては優の父、御堂島崇の才堂不志人の才能への嫉妬が生んだ昏い復讐から始まった……
優秀な研究者であった崇だが、天才・才堂不志人の出現によりその座を追われることとなった。
その才能の差はとても埋められる物では無かった。
そして名声も富も家庭にも恵まれた才堂の姿に嫉妬を募らせていく崇。

崇は不志人の周囲を探り、才堂家の秘密…古い因習を知る事になる。

そして、不志人が現実に我が子を葬った場面を待ち構え、復讐の為に不志人が葬った望まれなかった娘“凜”を掘り返したのである。
尚、この時に協力していたのが鷹野初であったが、彼は才堂家の秘宝を発掘すると云う名目で連れて来られており、真相については何も知らなかった。

こうして、復讐の用意は出来たかに見えたが……
計画は他ならぬ崇自身により頓挫する事になる。

崇は復讐の為に暗い穴から掘り返した呪われた赤子…今は“優”と名付けていた娘を愛してしまっていたのだ。

しかし復讐を諦め切れない崇は、幻覚剤入りの黄金の像を不志人に送り、彼を発狂させる。
狂った不志人は全ての人間を呪い殺す妄執に憑りつかれ、研究所内はおろか隣接する病院の患者にまでHU599菌をバラまいた。*3*4

尚、崇は口封じの為に「才堂家の秘宝が隠された像」と偽り初にも黄金像を送っていた*5
だが初は呪いを恐れて黄金像を納屋にしまい込んでいたため、17年間も無事で済んでいた。
しかし、千夏がその像をお遊びで持ち出してしまったため発狂
おり悪く家を訪れてきた優が事件に巻き込まれる羽目になってしまったのである。

研究室の地下に作られた謎の礼拝堂にて才堂と対峙していた崇は、後を追ってきた優に全ての真実を打ち明ける。

全てを語った崇は傷を負わされていたのか倒れてしまう。
崇に駆け寄ろうとした優に、銃撃で傷を負わされた不志人が執念で迫る。
不志人が鉈を振り下ろさんとした刹那、優は苦渋の表情で叫ぶ。「あなたは……父じゃない!」と……。

その後、後を追ってきた礎刑事の銃撃によって今度こそ不志人は倒れた。

崇が仕掛けた起爆装置の作動により研究所は崩壊していく……。

燃え落ちてゆく研究所を見つめる優と礎刑事。
全ては終わった。しかし暴かれた真実は、今まで何も知らずにいた優にとっては残酷過ぎた。
自分の存在が罪のない人々の運命を狂わせ死に導いてしまったと、優は自分を責めた。
(届いているのかいないのか、心の中で翔はみんな勝手に死んだだけだと、慰めの言葉をかける)
そんな彼女の様子を見て、礎刑事はこういう。
「君もあそこで死んだのさ……」

そういって立ち去っていく礎刑事を振り返る優の顔には、笑顔が戻っていた。

【余談】


人格交替のアイテムミコシサマは実はただのお守りである。
…オカルトネタはこの物語には無いのだ(“翔”除く)。

像を燃やしたことで千夏は正気に戻ったが、これは幻覚剤が燃えた化学反応によるもので超常的な力が働いた訳ではない。
この際に千夏から怨霊のようなものが抜け出る演出が入るが、これも幻覚剤の影響を受けた優が見た幻に過ぎないとのこと。
じゃあ千夏が銃で撃たれても包丁で刺されても二階から落とされても生きてるのはどうなんだ
…無理があるがそう言ってるのだから仕方ない。

全パターンのエンディングをクリアする事でミコシサマの色違いのイノリサマを入手可能…。
優無双のレーザー兵器である。

この後、ヒューマンは倒産しクロックタワーシリーズも終わりを迎えた…

と思われたが、版権を継承したサンソフトとカプコンの共同開発により、正式なナンバリングタイトル『クロックタワー3』が2002年に発売された。



“キャハハハハ!!”




“全てのWiki籠りに、追記、修正を…”


この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • クロックタワー
  • PS
  • どうしてこうなった
  • ガキ
  • 鎧武者
  • ゾンビ
  • 般若面のオッサン
  • シザーマン
  • シザーマンはメモリーカードのメッセージにて
  • 人格交替
  • 呪われた因習
  • 粗い脚本
  • ヒューマン
  • ゴーストヘッド
  • ミコシサマ
  • サン電子
  • ゲーム
  • 「親方!天窓から鎧武者が!」

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2023年12月10日 19:48

*1 ただし逃走状態中(つまりは緊急事態の真っ最中)でなければ拾えない。

*2 作中ではバラバラ死体として登場するが、家のあちこちに体の各部位が無造作な置かれ方で散在するという、隠蔽目的にしては不自然な状況や頭部を翔で調べた際の反応とセリフから、恐らくは遺体を家に隠した後で千夏によってバラされてしまった模様

*3 初の娘の秋代がゾンビ化したのは、帰宅中に待ち構えていた才堂によってHU599菌を投与されたため。発狂している割には割と計画的犯行である。

*4 また、後に研究所を訪れていた優を「この世に生きていてはいけない娘」と呼んでいた点からして、完全に発狂する前の段階で崇の企みを知った、もしくは復讐を目論んでいた本人から知らされていた可能性が高い。

*5 ちなみに実は暗い上に激しい雨が降っている中で見張り役をしていた為、視界の悪さと雨や雷のせいもあり掘り起こされたものが人間の赤ん坊だった事には全く気が付いてなかった。そのため優の事は全く気付いていない。