私鉄車両めぐり

登録日:2012/10/04(木) 18:41:16
更新日:2020/08/18 Tue 14:10:20
所要時間:約 4 分で読めます




私鉄車両めぐりとは、月刊鉄道雑誌「鉄道ピクトリアル」にて連載されていた人気シリーズである。

  • 概要

「鉄道ピクトリアル」は、現在出版されている鉄道雑誌では、
「鉄道模型趣味」に次いで古く、実物を扱うものに関しては日本最古の歴史を持つ。
その後多くの鉄道雑誌が刊行されたが、その中でも鉄道ピクトリアルは、
綿密な調査や数多くの情報に基づいて丁寧に書かれた記事が多いのが特徴である。
鉄道ファンのみならず研究家、鉄道会社の関係者も多く執筆し、なんとその記事が科学的な論文として認定されている事も多い。
単なる鉄道雑誌よりもどちらかと言うと学術誌寄りな部分が大きいのである。

その中でも、名物シリーズだったのがこの「私鉄車両めぐり」である。

  • 特徴

その名の通り、毎回一つの鉄道会社に焦点を当て、その歴史や車庫、
駅などの施設、ダイヤ、そしてメインとしてその路線に籍を置いていた車両の情報を記載している。
…ここまでなら、他の鉄道雑誌やこのwikiでもよくありそうな感じに思えるだろう。だが、明らかに違う点が一つある。
このシリーズ、記載してある情報量が半端ないのである。

前述の通り、主に車両の情報が記載されているのだが、定員は勿論、車両の寸法、
重さ、出力、ギア比、さらには台車の形式、連結器の種類まで事細かに記録されているのだ。
それに加え、どんなに複雑な経歴を持つ車両でもそれに関して調べる事が出来た範囲は全て書かれており、
記事を読むだけでその会社の車両が一目瞭然となってしまうのである。

さらにもう一つの特徴として、取り上げる鉄道会社の量にある。
こういった記事だと大手私鉄やそれに準じた鉄道会社が多く取り上げられがちなのだが、
「私鉄車両めぐり」に関しては、北は北海道、南は九州まで津々浦々、
ローカル私鉄から路面電車、大規模な専用線、さらには何故か韓国の電車まで取り上げられていた。

このシリーズは1952年に始まり、2002年まで続いた長期シリーズであるが、
恐らく一番盛り上がったのは、1960年代~70年代初頭であろう。

経済成長に伴うモータリゼーションの進展の中で、自動車に押されて廃止される路線が出てきた頃。
しかし、まだまだ各地の地方私鉄は元気であり、ラッシュ時に6両編成の電車も運用されている所もあった。
そんな各地の会社を、当時の鉄道ファンの方や鉄道研究会の人々が訪れ、
鉄道運営に携わる人々からの貴重な資料などを基に記事を作っていったのである。
当然ながらその中には貴重な資料も数多く、
こういった地方私鉄に関する記事がある場合、参考文献として真っ先に「私鉄車両めぐり」という名前を目にする事も多い。

なお、このシリーズ以外でも鉄道ピクトリアルでは日本全土の私鉄の情報が掲載されており、
それが載ってある本を見つければ一部を除いて日本各地の私鉄を網羅する事も可能である。

  • 現在の状況

…ここまで見て、読みたくなった方もいるかもしれない。ただ、さすがにいくつか欠点もある。
まず情報が1960年代や1970年代のものであると言う事。
昔の情報はすぐに分かるのだが、さすがにそれ以後の未来の情報までは書かれていない。まあ仕方ない事だが……。

そしてもう一つ。あまりに古いため、記載されている本そのものがとっくに絶版している事である。
何せ掲載されているのが1960年代に発売された雑誌、もう半世紀近く前のものである。
図書館で見ると言う手段もあるが、ここまで古い雑誌が残っている場所はそんなにないだろう……。
今となっては、古本屋ぐらいしか当時の本を買う手段は無い……。



……と思われていたこのシリーズ。
実は今、新たに再収録されたものが発売されているのである。

これまで「鉄道ピクトリアル」誌が長い歴史の中で積み上げてきた貴重な資料を纏め、別冊として発刊する「アーカイブスセレクション」。
その一環として、私鉄車両めぐりも再販されているのだ。
しかも、ただ当時の記事を並べているだけではなく、その後の車両の推移や歴史の補足、
誤字脱字の修正、さらには新たな写真の掲載など、バージョンアップしたものとなっている。
貴重な当時のカラー写真も最初のページに纏めてあるのもうれしい。

現在は「関西」「山陰山陽」「関東(1)(2)」の4冊が発売されている。
今後のラインナップにもぜひ期待したい。


私鉄車両めぐり 追記・修正鉄道。

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最終更新:2020年08月18日 14:10