観世音菩薩

登録日:2011/05/11(水) 13:14:45
更新日:2023/08/14 Mon 23:25:03
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■観世音菩薩


観世音菩薩(かんぜおんぼさつ)は大乗仏教(顕教)の尊格の一つ。
紀元前の初期大乗仏教の発生の頃には既に誕生していたとされる、信仰専門の仏尊である。
補陀落(ふだらく)浄土に住み、勢至菩薩と共に阿弥陀如来の脇持として控える。
一般的には観音(かんのん)菩薩、観音さまと呼ばれる事が多く、その名の様に常に迷える衆生の身を案じ、世界の音(苦しみの声)を聞き監視している尊格で、
衆生(人々)を救うべく様々に姿を変化させて姿を顕す「変化観音」信仰でも知られている。

かの「般若心経」の主役。
それ故に民間でも篤く信仰されており、所謂「菩薩」と云うと先ず多くの人が思い浮かべるであろう尊格であろうと思われる。
現代でも「○○観音」と称された変化観音(観光名物)が立てられるのも上記の伝承に依る物である。


【変化観音】


観世音菩薩の梵名は“アヴァローキテーシュヴァラ”と云う。
これは訳すと“様々な姿に変化し顕れ世界を観る”となる事から漢字圏に於ては“観自在”転じて“観世音”と訳されたのである。
しかし、その名に反して起源となる伝承が曖昧で、
古代イラン(ペルシャ)の大地母神アナーヒターやゾロアスター教の六大天使の一つであるアールマティに起源を求める説も出されている。
性別に関しては大陸当時より曖昧、と云うか様々な由来の女神も男性名の仏尊である筈の観音に取り入れられており、本体ばかりか以下の六観音(七観音)にも女神を起源に持つ尊格も居る。

観音菩薩が様々に姿を変えて衆生を救うと云う信仰は既に大陸にて誕生しており、
民間信仰をも一纏めにした「三十三観音」信仰の概念も、我が国への伝来以前には成立している。
そして所謂「浄土信仰」の流行の中で主尊阿弥陀如来の手助けをする存在として観音信仰が広まる中で密教が伝来……。
密教において観音の多彩な慈悲の顕れを更に判り易く、超自然的な姿で顕した「変化観音」が誕生する事になる。


【六観音】

変化観音の中でも特に知られた存在で、各々「六道輪廻」を救うべく顕れた存在である。
一般にも知られるのが天台系の六観音だが、真言宗では准胝観音を加えて六観音。または七観音とする。


【地獄道】


■聖観音(梵名:アヴァローキテーシュヴァラ)

最も基本的な姿を顕した観音で、通常「観音」と云ったらこの姿を指す。
仏教では阿弥陀如来の第一王子ともされる。
六観音では地獄道を救う。
姿は阿弥陀如来の化仏(シンボル)を施した宝冠を被り、蓮華を指した花瓶を持つ姿で顕される事が多い。


【阿修羅道】


■十一面観音(梵名:エーカーダシャムカ)

最も早くに出現した変化観音で、インドでも7世紀の作例が存在する。
六観音では阿修羅道を救う。

その名の様に頭部に十一の顔を持つが、本面を除き十一、本面を含み十一等、様々な作例、配列がある。
左手に水瓶を持つ姿で顕される他、密教では多臂(四本腕や八本腕)で顕される場合もある。
また、祟り神として有名な象頭の暴神である大聖歓喜天(ガネーシャ)を女身(象頭の女神)に化身し和合(セクロス)する事で諫めた説話でも有名。

360°どこからでも衆生を見逃さないように多面になったと言われている。そこ「打ち首」とか言わない。
また向かって真後ろの面が爆笑(「大笑」面)しているのは知る人ぞ知るトリビア。


【餓鬼道】


■千手千眼観自在菩薩(梵名:サハスラブジャ)

所謂“千手観音”
変化観音の王とも呼ばれ、観音の本願である慈悲の働きを最大限に発揮した尊格。
尚、千とは無量円満=無限の意である。
六観音では特に浅ましい衆生が苦しむ餓鬼道を救う。

姿は名の顕す通り千本の腕を持ち、頭上に十一の化仏を頂き、本面に三眼を表し、更に掌に一つずつ「眼」を表す……。
が、流石に千本の腕と千個の眼を顕すのは難しい為か四二臂での作例が多い。
これは本体を除く四十の腕に四十の眼で一つで二十五の衆生を救う……合わせて千になると考えられた為である。

全てを救おうという思いが何本もの腕を生やしたという優しさを感じるお姿だが、どう考えても仏師には優しくないフォルムである。

数少ないがマジで腕が千本ないしそれに近い数ある像もある。唐招提寺の千手観音なんかは有名だがあれは後ろの柱に腕がビッシリなホラー仕様。

眷属として二十八部衆や風神・雷神を従える。


【人道】


■不空羂索観音(梵名:アモーガパーシャ)

羂索とは鳥や獣や魚を捕らえる網や綱の事で不空とは隙が無い=漏らさないと云う意味。
……つまりは苦悩する衆生を必ず救うぞ!と云う名前を持つ観音である。
分かり易く言うと地引き網で衆生をかっさらうのがお仕事。
額の真ん中に三つ目の眼があり、左肩に鹿皮を掛けていることから、この尊格もシヴァ神由来の仏尊の一つである。

六観音では人道を救う。
古い時代から出現した為か姿は様々に伝えられており、一面、三面、十一面。
腕の数も区々だが、我が国では一面八臂で名前の通りに羂索(その他)を持つ姿で顕される。


【天道】


■如意輪観音(梵名:チンターマニチャクラ)

密教の伝来後に誕生した変化観音の一つ。
如意とはこれを持てば意の如く福徳と財産が得られると云う「如意宝珠」と云う珠の事。
輪は仏の教え(法輪)の事で、現世利益と知恵を授けると云う意味になる。

六観音では天道を救う。仏教においては天道の神々もまた輪廻の中の迷える衆生であり、寿命が来れば死に、他の生き物に生まれ変わらなければならない。
死が近づいた神々に降りかかる「天人五衰」は地獄の苦しみだという。

「天道」と云う言葉から連想したであろう「星宿(星の運行)」の支配者ともされる。
姿は様々に伝えられるが、一般的には一面六臂が多い。
やたらリラックスしたポージング(半跏思惟像)が特徴的。 

【畜生道】


■馬頭観音(梵名:ハヤグリーヴァ)

変化観音の一つで、千手観音と共に特に特徴的で有名な尊格。
観音菩薩の変化にも関わらず、忿怒相の明王形で顕されており、背に光背では無く火炎を背負う。
……この為、菩薩では無く明王として「馬頭明王」と呼ばれる場合もある。

六観音では畜生道を救う。
獣に堕ちた衆生の無知や苦悩を断罪し、
併せて“それ”に付随する諸々の「悪」を破壊する役目を担うと云う観音の本願が強引な形で顕れた存在だと云える。
姿は様々に伝えられており、一定していない。
一面二臂、一面四臂、三面二臂、三面六臂、三面八臂、四面八臂……等がある。

「馬頭」観音の名前通り、頭上に馬頭を頂き、馬頭印と呼ばれる特殊な手の組み方をするが“まんま”馬の頭を持つ姿で顕される事すらある。
だからと言って馬面の長い顔の人を「馬頭観音様だ」なんて笑点腹黒い人横浜真金町のお爺さんの様に言ってはいけない。

また、民間信仰では馬を守る仏と考えられ道祖神ともなっているが、これは「馬頭」と云う呼び名から単純に「馬」を連想された為であろうと思われる。
尤も、梵名であるハヤグリーヴァはインド神話に於いてはヴィシュヌ神の化身の一つともされる馬頭の悪魔(アスラ)である為、偶さかにか意図的にか原典に沿った姿とも云える。



【番外】


■准胝観音(梵名:チュンディー)

元来はインド起源の女神であり、優美な姿ながら十八の
腕を持つ異形の変化観音である。
その姿と梵名のチュンディーが異名として伝わることからインド神話シヴァ神妃の一つであるドゥルガー女神が仏教に取り入れたのだと考えられている。
准胝観音は陀羅尼(長文の真言)その物を神格化したとも言われる広大な功徳を持つ仏であり、真言宗の開祖である空海は得度(出家)の守り役として准胝観音を奉った。
天台宗では准胝仏母と呼び、菩薩より更に高いランクにこの尊格を置いている故に六観音には含まなないのだと云う。
シヴァ神妃を由来とすることもあってか、ヒンドゥーのシャクティー派から発展してチベット密教にも取り入れられた無上喩伽タントラにも通じる神聖娼婦の守り神であったとする説もある。

【真言】


■聖観音
■オンアロリキャソワカ

■十一面観音
■オンロケイジンバラキリクソワカ

■千手観音
■オンバサラダラマキリク

■不空羂索観音
■オンアボキャビジャヤウンハッタ

■如意輪観音
■オンバラダハンドメイ
■シンダマニジンバラウン

■馬頭観音
■オンアミリトドハンバウンハッタ

■准胝観音
■オンシャレイソレイソンディソワカ





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最終更新:2023年08月14日 23:25