短機関銃

登録日:2010/11/18(木) 21:56:24
更新日:2024/04/25 Thu 10:53:50
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短機関銃(サブマシンガン)とは、拳銃弾を使用する個人携行可能な小型の機関銃の総称である。

その原型は19世紀後半にイタリアの「ビラール・ペロサM1915」と言われている。
だがそれは左右に並んだ銃身をもち、それぞれが独立した機関部をもっているという軽機関銃クラスの大きさであった。

現在の短機関銃の元となったのは第一次世界大戦でドイツ軍が使った「MP18」である。


重機関銃の登場によって塹壕戦を強いられ、狭い塹壕の中では長く、連射の利かないライフルは使用できず、拳銃スコップといったもので戦っていたところに登場した。
ライフルより短く取り回しが利き、拳銃よりも装弾数が多く連射ができるMP18は期待通りの威力を発揮した。

しかし、アメリカ軍もトレンチガン(塹壕戦用に改良された、放熱板や銃剣を装着した散弾銃)やトンプソンといった短機関銃を開発し結果的にドイツ軍は敗北してしまう。
このことから当時はあまり評価されなかったが、「局地兵器としてならつかえるのでは?」との意見から各国で研究されることになる。


第二次世界大戦が始まると各国が研究していた短機関銃を投入する。

  • ドイツのMP40
  • アメリカのM1928/M1トンプソン
  • M3グリースガン(映画「セーラー服と機関銃」で撃ちまくっているのがこれ)
  • ロシアのPPSh41

などが有名だろう。

しかしアサルトライフルの登場により最前線からは姿を消し、主に後方部隊などの自衛用として使われていくことになる。


軍隊では以前ほど使われなくなり、逆に二次大戦時に闇に流れた短機関銃たちは資金がないマフィアやゲリラたち、そうでなくとも
禁酒法時代のアル・カポネに代表されるマフィアらのメインウェポンとして大いに歓迎された。これは…

  • 在庫処理のために軍から安く売り払われたこと
  • 安く手に入りやすい拳銃弾を使用していること
  • 低い練度でも容易に使え、隠しもつことが可能なこと

と言うメリットを兼ね備えていたからである。以上のことから強盗や暗殺、民族紛争やテロなどで活躍し悪名を轟かせていく。

1970年代以降、こうした凶悪犯罪に対抗するには拳銃では難しく、突撃銃や機関銃では威力が過剰で市民を傷つけてしまいかねないことから短機関銃が再評価されていく。 



ここで短機関銃の作動方式を説明する。

主な作動方式は2種類に分けられる。オープンボルト方式とクローズドボルト方式だ。

オープンボルト方式(以下OBと書く)は単純堅牢で生産性もよく、発射サイクルも早い。
クローズドボルト方式(以下CBと書く)は高精度で、撃ったときのブレも少ない。

マフィアやゲリラたちがよくつかうのがOBである。
低い技術力で生産でき、あまり整備をしなくても稼働する。さらに精度が低い点も、まず狙わずに撃ちまくるので問題ないとされた。


しかし軍隊や警察官はそうはいかない。なぜなら市民の安全と犯人の確実な排除が目的なためである。
「OBでは犯人だけ狙えないし、突撃銃では貫通した弾で市民を傷つけてしまう…。もっと高精度で威力が適切な銃はないか?」と言う銃は、今まで存在しなかった。
それこそ、第二次世界大戦後に台頭したのは、イスラエルの「IMI UZI」であり、世界を席巻していたし、ドイツ国内でも(ユダヤに対する贖罪と言う政治的意図もあったが)。コイツが制式採用されていた。

そんな中で開発・登場したのが、ドイツのH&K社がG3アサルトライフルをベースに開発したCB式の「MP5」である。
ただし、風当たりは激しかった。と言うのも、部品の複雑化までやっておいてコスト掛けてまで拳銃弾撃ってワリに合うのか?しかも壊れやすいと言う欠点も存在した為、過剰性能と忌避されていたのだ。
その結果、G3と並行して行われていた短機関銃トライアルでは上述通りUZIがMP2として採用される事になると言う憂き目にあっており順調ではなかった。

そこにこの銃が世界的な脚光を浴びた…いや、短機関銃に革命を起こす事となる出来事が発生する。
1977年におきたドイツ赤軍と組んでいた、パレスチナ解放人民戦線によるルフトハンザ航空181便ハイジャック事件である。
この事件において機長が射殺されるも、突入時に人質に死者を出す事なく犯人3名を射殺・残り1名を逮捕する大戦果を挙げる。
そしてこの制圧劇を鮮やかに解決した立役者として、西ドイツ(当時)の特殊部隊GSG-9がMP5を装備していたため世界各国から脚光を浴びた。

MP5はコストが高いとは言え、CBを採用しており文字通りアサルトライフルをスケールダウンしただけのため、
「価格が高く、マメに整備や訓練をしなくてはならない」と言う欠点は、軍隊・警察の特殊部隊ではあまり問題ではなかった。
さらに豊富にオプションパーツも存在しているためどんな条件でも使用できた。


これをきっかけにアメリカのSWATやイギリスのSAS、日本のSATなど世界中の軍隊・警察を問わない特殊部隊に配備されることになる
(なお日本のは特注品で、MP5Fをベースにフラッシュハイダーを標準装備し、強装弾にも対応している。通称MP5J)

登場から半世紀経とうとする今となっては、MP5は先進国おろか途上国まで広く使われる言わば標準装備にして短機関銃の顔となりつつある。
これに対抗すべく、他メーカーもシュタイヤーTMP(1994年)やSIG MPX(2003年)といったCB短機関銃を投入しているが、MP5の牙城を崩すことに
難航しているようだ。なにぶんH&Kもアメリカ向けに.45ACP向けのH&K UMPを開発するも、牙城を崩すには至っていたいのだ。

ところが時代が経つにつれ、ボディアーマーの高性能化などを理由として拳銃弾では対応しきれないという懸念が生まれてくる。

■PDW(Personal Defense Weapon)の登場

ここからは短機関銃から発展したPDWについて説明する。

近年のゲリラたちの重装化やボディアーマーの高性能化により、短機関銃の威力不足が心配されてきた。
しかし突撃銃では何かとかさばるため装備は難しい。

「ならボディアーマーを撃ちぬける小口径高速弾薬と、短機関銃サイズの銃を開発させればいい」としてアメリカは求めている銃のスペックを公開した。

それは
  • 後方施設内全域で戦闘行為をおこなえる有効射程200~300mの物
  • 短機関銃のようなあらゆる兵科の兵士があつかえる利便性を持つ物
  • 片手撃ちが可能なサイズ、または形状の物
  • 発射反動が片手使用であつかえる物
  • 上記射程範囲内で対物貫通能力が小銃並みに高いもの
  • 装弾数が可能なかぎり多い物

つまり短機関銃サイズで、片手でのあつかいが容易く、短距離でなくとも小銃並みのボディアーマー貫通能力を持ち、尚かつ装弾数が多い銃という無理難題をだした。

しかし、ベルギーのFN社がそれらをすべて満たした銃を開発する。それが「P90」である。


まずアサルトライフル弾を小さくしたような新型弾を開発。
防弾繊維は貫通しやすいが、人体に当たると内部で暴れまわり、体内に留まる。貫通による二次被害も心配なく、さらにストッピングパワーも期待できる。

銃のデザインも人間工学に基づいたものであり、サイズダウンを図るためブルパップ方式を採用したが排莢口を下にしたため利き手に左右されず、
さらには50発もの装弾数を可能とした。


まさに理想の銃だったが、デザインやシステムが斬新過ぎたことや、新型弾による既存の弾丸との互換性やコスト高、供給量の不安により市場からは理解されなかった。


しかしペルー日本大使公邸占拠事件で突入部隊が使用していたり、互換弾薬を使う「Five-seveNピストル」の流通により評価は上がってきている。

さらにイギリス陸軍のSASでは実際に追跡潜入任務に投入している。


対抗馬としてH&K社の「MP7」があり、新機軸を満載したP90とは違い、従来の技術を利用した手堅いものとなっている。

またこちらも新型弾を開発していて「あらゆる点においてP90の弾と同等、もしくは凌駕している」と発言しており相当な自信が窺える。
銃自体も「ドットサイトを付ければ特殊部隊でなくとも200m先の敵の眉間を撃ちぬけ、サプレッサーを装着した際の静粛性はMP5SD以上だ」と発言している。

しかし実戦での能力はまだまだ未知数であるため、今まさに各国でのトライアルに耐えているようだ。




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最終更新:2024年04月25日 10:53