TRUE REMEMBRANCE(フリーゲーム)

登録日:2012/01/13(金) 11:51:29
更新日:2024/04/12 Fri 13:56:22
所要時間:約 6 分で読めます




This is a story about little occurrences in a little town.
(これは、小さな街の出来事を綴った小さな物語)


When they met in 8th Street, a story had already begun.
(八番街で彼らが出会ったとき、既に物語は始まっていた)




TRUE REMEMBRANCE






『TRUE REMEMBRANCE』は、里見しば氏によるフリー公開のビジュアルノベルゲームである。
初出は2006年。後に公開されたリメイク版では使用ソフトが変更され、新規のイラストやシナリオ、ムービーなどが追加されている。
一応書いておくと、『TRUE REMEMBRANCE』は『本当の記憶』という意味の言葉。




【概要】

選択肢・声無しという純粋にビジュアルノベルとして楽しむ作品。
構成の特徴として、まず複数話ということ(幕間劇一話を含めた全九話)が挙げられる。
また、話ごとに物語の視点が黒目とラの二人の間で交代するのも特色の一つ。こちらは人物を違う角度から掘り下げ、物語に深みを出すのに一役買っている。


ストーリーの内容を述べると、「雪の降る街を舞台にした、つらい記憶を抱えた人々とそれを癒す『封士』の物語」といったところ。
一見してネガティブに映るかもしれないが、柔らかな絵柄や良い意味で飾り気の無いテキスト、穏やかなBGMなどが優しい雰囲気を演出しており、
酷く暗い気分にさせられることは無いはず。


総プレイ時間は二~三時間程度。
短めだが気軽に遊べるということでもあるので、興味があればどうぞ。


2012年2月12日に3DSのダウンロードコンテンツにて500円で販売開始。
BGMはフリー版のをそのまま流用しているが、イラストは化物語の絵で有名なVOFAN氏によって一新されている。
また、原作者によるおまけシナリオが書き下ろされている。








【ストーリー】

忘れたいほどの悲しい記憶を持った人々が訪れる、白い街。
黒目という名の青年は、そこで記憶を封じる職業『封士』を生業にして暮らしていた。


ある日、黒目のもとに、ラという少女が記憶を消すために訪れる。
本人の意思に関係なく止め処のない涙を流す彼女は、黒目には重度のセツナ病患者に見えた。


黒目とラ。彼らを中心に様々な人々との出会いや別れを描く。




【作中用語】

◆錆色の記憶
忘れたいほどの辛く悲しい記憶を、作中ではこう呼ぶ。


◆セツナ病
錆色の記憶によって心を病むことの総称。
これによる自殺者が年々増加している。


◆『街』
セツナ病を癒すためにつくられた場所。本編の舞台。
国中から素質のある者を集めて封士の訓練を積ませた約千人、その客(患者)、国の職員、許可を得て店を開く者が住む。
人口が少ないこともあり、土地面積はそう広くはない。


◆封士(ふうし)
人の記憶を操作する力の資質を持つ者が、相応の訓練を積んで就く職業。正しくは『記憶封士』。
セツナ病患者の錆色の記憶を封じて再び『街』の外へ送り出す仕事を国から与えられ、『街』の中で暮らしている。
客との契約期間中は、本来の住居とは別の家を与えられて客と同居することとなる。そこで客の錆色の記憶を探っていく姿はカウンセラーに近い。
治療には軽症の患者なら短くて一日、重症なら月単位の期間を要する。


◆S級封士
ただでさえ数が少ない封士のなか、さらに低い確率で存在する稀少な存在。通常とは異なる能力を持つらしいが、その実態はごく一部の人間しか知らない。
他の封士の治療を受けて送り出された客は、『街』の出口で彼らS級封士によって完全に錆色の記憶を消去されるという。
そして『街』に居たという事実さえ忘れて元の暮らしに戻っていくのだとか。




【登場人物】

○黒目(くろめ)
主人公。資質に恵まれて封士となったものの、寡黙な性格ゆえに人付き合いは少し苦手。
黒目という名は“目で見”て力を行使できることに由来した偽名のようなもの。これは他の封士の名も同様。
封士になるまでは劣悪な生活環境で過ごしてきた。「生きるために何でもした」と本人が語るように、荒事まで含めて大抵のことをそつなくこなせる。
ラの治療のために与えられた家は街外れの八番街にある。彼女と過ごす日々は黒目にどのような影響を与えていくのか。

「……嫌われるとか疎まれるとか、そういうのもつらいけど。
忘れられるっていうのは……。
ちょっと本当に半端じゃなく、悲しかった」


○ラ
ヒロインの少女。彼女が黒目の客として現れる場面から物語が幕を上げる。
言葉遣いこそやけに堅いものの、その素振りはとても女の子らしい。また変に強情なところがあり、ついからかいたくなるタイプ。

「そうか……。黒目は良い奴だなあ」


○キョウ
民家よりも商店が多い六番街に住み、その例に漏れず、封士を務めながら喫茶店『AROMA』を営む陽気な青年。
彼が力を使うには香料が必要で、目で見るだけで済む黒目のことは少し羨ましい様子。*1
作中に一話だけ挿入される幕間劇でのみ、彼の視点で物語が進行する。そこでは彼と黒目の出会いが語られる。


○右手(みぎて)
黒目やキョウを含む数人の封士の上司で、彼らに客を斡旋している男性。
封士と客とが異性にならないよう仕事を組むのが常だったのだが、今回に限って黒目の下にラを送ってきた。
彼もまた封士。その力で黒目の“大切なもの”を奪ったことから、黒目には良い感情を向けられてはいない。


○マルシェロ
第一話に登場する15歳の少年。
生まれてからの自分の記憶を“全て”消すことを望み、黒目の客としてやってくる。
記憶を封じられる間際、黒目に「記憶を失うことは死ぬことだ」という言葉を突きつけられるのだが……。


○イリーナ
第二話に登場する女性。
「家族に関する記憶を取り除いて欲しい」と、『街』へ不法侵入してまで封士である黒目に会いに来た。


○リップス
『街』に住む封士の一人。第四話の中心人物で、それ以降も登場する女性。
彼女の飼い犬が黒目とラの住む家に迷い込んだことから三者の関係が始まる。


○アナライ
???に登場。
封士の力に関する研究を行い、多くの書を記したとされるS級封士。
しかしながら彼or彼女自身の具体的な逸話がほとんど見受けられず、その存在には疑いが持たれている。




以下、少しだけネタバレ?










作中のストーリーには“ある秘密”が隠されており、それが明かされる終盤に向けて巧みに伏線が散りばめられている。
タイトル画面に表示される項目冒頭の英文(訳は適当)もその一つ。
既に物語は始まっていたというのが果たして“いつ”からの事だったのか……など、クリア後にもう一度プレイすると改めて気付けるはず。



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最終更新:2024年04月12日 13:56

*1 おそらく名前の漢字表記は「香(キョウ)」