F-2(戦闘機)

登録日:2010/01/20(水) 00:08:42
更新日:2023/06/11 Sun 15:43:47
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F-2A(第6飛行隊所属機)*1

F-2A/B


乗員:1人(F-2Bは2人)
全幅:11.1m
全長:15.5m
全高:5.0m
エンジン:F110-IHI-129×1
最大速度:マッハ2.0
航続距離:4000km

日本航空自衛隊の支援戦闘機。
F-1後継機「FS-X(次期支援戦闘機)」として開発された、第4.5世代ジェット戦闘機。
読み方は、えふに、えふツー。
非公認だが愛称は「ヴァイパー・ゼロ」
アメリカからは「フェイク・ファルコン」、つまりF-16のパクリと呼ばれている。つーか改造機なんだから当然なんですが
当然ながらその外観を見て分かるとおり青いF-16と呼ばれても仕方がない。パッと見では色以外に違いが判らないが、最初に設計された計画案に基づいたスタイルでは双発・V字翼という近代的なスタイルでF-1を発展させたようなものだった。なぜこんなことになったのか。それは、開発当時の背景に迫らねばならない。


【開発まで】

昭和30年代末期の航空自衛隊は、ライセンス生産されたF-86やF-104、全量供与のF-86Dといったアメリカ製戦闘機を運用していたわけだが、その任務はほぼ防空一辺倒であった。が、近代戦において地上部隊が航空支援をうけられないというのはありえない。そこで北部中部西部の各方面隊のF-86F装備の1個飛行隊に、対地支援を行う支援戦闘飛行隊としての任務を付与することとなった。
現代の感覚からするとF-86かよ、みたいな話になるが、現代のような電子技術のカタマリで冗談みたいな命中率を誇るミサイルが無い時代である。亜音速のジェット戦闘機に、陸自の高射部隊も海自の護衛隊群も手もなくひねられていたのが実際であった。

とはいえF-86もそろそろ寿命が見えており、その後継機がほしい。それをアメリカ製にしろという意見は当然あったが、MRJを完全撤退しても「へーそー」で流される現在と異なり、当時の日本は航空機の開発生産について世論じたいが結構アツかった。防衛産業なんてのは現在では企業側が「どうやって足抜けするか」で頭を捻ってる状況だが、当時は作らせろ、チャレンジさせろという機運があり、国防族も頑張った結果「主力戦闘機は性能的に無理だけど支援戦闘機(攻撃機)くらいなら、でも3個飛行隊分だけじゃ開発も生産もペイしないから練習機にもなるやつを作ろう」ということでまとまった。そして出来上がったのがT-2/F-1である。

日本人には舶来嗜好があり、それが強いやつが軍オタや軍事評論家をやると国産兵器はけなしておけばOKという風潮がある。ほら、キヨタニとか。酷いとF-1を使っている空自の幹部がけなしていたりするけど。

  • 戦闘機として使えない
逆である。空自の主力戦闘機が攻撃機として使えないのだ。F-4なんか爆撃コンピュータ外されたくらいだし、U-2撃墜事件が示したようにレーダーに捕捉された状態で進撃なんてできない以上、低空侵攻必須となるが燃費の悪いターボジェットで低空を飛べば燃料なんて即、スッカラカンである。だからターボファンを積んだ支援戦闘機の新規開発となったのだ。

  • アドーアの悲劇
そもそもそんなものは存在しない。T-2/F-1の開発当時、世間じゃターボファンエンジン自体が少なかった。燃費に目を三角にする旅客機でさえ、純ジェットを使ってた時代である。さらにそこから、機体規模に合わせた推力を、洋上飛行するから双発にしたいと2で割ったとき、事実上アドーア一択だったのだ。それ以外だとGEが「採用しろ」と迫った「現物の影も形もないペーパープラン」しかなかった。そして空自がアドーアに文句つけていたかというと、別にそんなことはない。設計陣も「うちで集めたデータを送り返していたが、改良に役立てば幸いである」と言ってるが、そこに「悲劇」なんてものはない。
もし何らかの理由でアドーアが存在しなければ、内局に君臨する「防衛庁の天皇」こと海原治によって、T-38/F-5の、良くてライセンス生産、下手すれば完成品輸入となっていただろう。

  • アンダーパワー
アンダーパワーであるという文句はそもそもF-1でF-16とACMやって負けたことへの幹部自衛官の八つ当たりであったり(これは相当に当人の幹部としての資質に疑念を抱かざるを得ない。F-1の任務を理解していないことになるからだ。もしA-10やF-111のパイロットや部隊長が、フランカーとの空戦で勝てないからこの機体はクソだと言い始めたら、周囲はなんと言うだろうか?)、ありもしない改良型の装備で解決するという「勘違い」にある。確かにアドーアの改良型は推力を大きく増大させているが、それはBAEホークをベースに米海軍向けにT-45ゴスホークが開発された際にアドーアも改良され、この改良されたコアに改めてアフターバーナーを付けたものであって、これがジャギュアに装備されたのは西暦2000年の話なのだ。1990年前半から退役予定のF-1に間に合うわけが無い。ジャギュアのほうはF-1とほぼ同じ推力で数トン重い全備重量になり、それで湾岸戦争に実戦参加しているのだから何をいわんやという話である。

それはともかく、省燃費なターボファンで低空侵攻、航法支援なしの低空飛行のままでも正確に目標に辿り着く国産航法装置の搭載、そして国産対艦ミサイルによる水平線以遠からの攻撃という「対艦番長」のためのパッケージがF-1で完成し、支援戦闘機3個飛行隊は順次、F-1に更新された。

で、このF-1の耐用飛行時間は3500時間であった。1960年代だと極端に短いわけではないが、年200時間で15年程度というのは長くなる一方の開発期間に対して結論から言うと短すぎた。だが、当時の関係各所はそれに気づかないまま、昭和65年ごろの更新を目指して、次期支援戦闘機FS-Xの要素研究に邁進していた。

当時、日本の国産ジェットエンジンとはT-1に使われた程度で、ライセンス生産こそこなしていたものの戦闘機用大推力エンジンの実績はゼロである。レシプロからジェットへの転換期にGHQから航空禁止を食らったとか、軍も軍需産業も解体されて研究開発をやれるところがどこにもなかったとか、そもそも超絶貧乏になって先立つものがなかったとか複数の要因があるが、FS-Xにおいてもエンジンだけは外国頼み、というのは大前提であった。それが悪いかと言うと、スウェーデンは一貫して戦闘機エンジンの供給を国外に依存していたりもするので、まるっと外国に頼らないという安全保障政策上の選択が悪いわけではない。
そういう状況において、GEのF404双発の三菱案、川崎案がカナード装備のある意味アニメチックな夢が広がりまくりんぐな完成予想図を公表したりしていた。


この瞬間までは良かった


日米繊維交渉というものがあった。衣類なんて第三世界で安く作らせて輸入するのが当然の現在においては「だからなに」でしかないが、その衣類が先進国の主要産業の一角を占めていた時期があり、アメリカの繊維業界の衰退において1ドルブラウスでトドメを刺したのが日本であった。繊維であれば、まあどうせ消えてなくなるから我慢もできた。しかしその次が石油ショック後の日本車、そしてこんどは半導体と、現在の主要産業、将来の主要産業で日本が伸長し、アメリカ市場に食い込み、アメリカ企業の商売を盛大に傾かせたのが80年代だったのである。


【米国の圧力】

FS-X開発において当初、アメリカ、正確には国防総省はエンジンの提供だけで構わないというスタンスだった。レーガン政権による新冷戦でのソビエトとの対決において、同盟国が強化されるのは望ましいからだ。同盟という外交を司る国務省も同様である。だが莫大な貿易赤字をおっ被せてくる日本が欲しい物を安全保障を理由にほいほい売ってやるという方針に噛み付いたのが商務省であった。お前らバカかと、儲けてるやつから毟らんでどうするのかと。日本にはアメリカ製完成品を買わせろ、性能に満足しないなら開発費を出させてアメリカ製完成品を買わせろ、と。

当然、商務省の要求は日本には呑めるものではない。そもそもFS-Xは国内航空産業、防衛産業の基盤の発展維持のために税金を使うのであって、防衛力の強化とは別の次元で開発を決めているからだ。

うちの子に家事を覚えさせたいからと肉じゃがの作り方を教えていたら、コストコが「メシ食いたいならうちの惣菜コーナーのピザを買え」と怒鳴り込んできたようなものである。いや、必要なのは輸入牛肉だけだっての。

実のところ、現在においてもアメリカ人はここの部分を正確には理解していない。戦闘機が欲しいならF-16を買えばよかった、4倍も5倍も高いのを国産したとかバカだ、と。グリペンやテジャスでエンジンだけ売ってるのだから、いい加減そういう商売がアリというのを理解しても良さそうなものではあるが。

とはいえ、アメリカ側も国防総省がFS-X問題の手綱を握っているうちはよかった。エンジンだけの供給も許可する気でいたし、日本側も開発期間についての見積もりの甘さからどうにも10年でブランニューが難しいと自覚し始めたら(かつ商務省が騒ぎ始めたこともあって)「ウチの現用機なら何を開発母体に選んでもいいぞ、14でも15でも16でも18でも好きに使え(この方針は最後まで維持された)」とか、さすがロン・ヤス関係と唸る程度にはなんとか協調していたのだ。

それはともかく。

詳細な経緯はWikipediaで確認してもらうとして「国産」のはずのFS-Xは「共同開発」になり、日本でしか採用しないのに生産分担(ワークシェアリング)はアメリカが4割を持っていき、アメリカに技術がなくて生産できないカーボン複合材の主翼は日本が作り方を教え設備も与え、そのパテントやノウハウはアメリカが自由に使える、FBWのソースコードもやっぱり供与しないからアメリカ企業に開発を依頼しろ、というサンドバッグ状態。石原慎太郎が「不平等条約」とブチ切れたりもしたけど、実はクライマックスはこのあとに待っていた。

「エンジンやらねーから」

なんのためにアメリカのおべっかつかっていたかといえば、ひたすらにエンジンのためであったのに、そのエンジンの技術供与を差し止めろと議会が超党派で喚き出したのである。このときの大統領であるパパ・ブッシュは拒否権を発動、議会は大統領の拒否権を議会が拒否するオーバーライドを画策。双方で壮絶な切り崩しが行われ、100票のうち67票、つまり2/3以上がオーバーライドに賛成したら日本へのエンジン技術供与が禁じられるという状況において、賛成66票、反対34票という1票差で大統領の拒否権が、すなわち日本へのエンジン技術供与が成立した。

【求められた仕様】

本機を開発する上で求められた仕様・性能は

  • 対艦ミサイル4発の搭載
  • 対艦攻撃任務での行動半径約830km
  • 対空ミサイル2〜4発搭載
  • 高度な電子戦能力
  • 全天候作戦能力

といったものだった。
特に対艦ミサイル4発の搭載は当時としては類を見ない仕様で、これが外国からの輸入を断念し、改造とはいえ新規開発に着手せざるを得ない要因ともなった。
一機あたりのミサイル搭載数が減れば、同じ数のミサイルを敵にブチ込むのにそれだけ多くの飛行機が必要になる。
その搭乗員や付属設備なども含めると、全体の調達資金が膨れ上がるためこのような要求となったとされている。


【戦力化】

こうした紆余曲折の末、F-2はジェネラル・ダイナミクス(後のロッキード・マーティン)のF-16C Block40を原型に開発することが決まった。
他の候補としてはF-15、F-18なども存在したが低空域での安定性。あるいは航続距離の問題からF-16に決定された。
単発機ということで洋上運用における安全性に対する懸念から双発化も検討されたが、F-1やF-4EJ当時と比して格段にエンジン、電子機材の信頼性が向上したためその点は妥協された。
なお改良箇所が増えたことでNATO軍向けに計画されるも破棄されたアジャイルファルコン*2の要素も盛り込まれた。

F-16Cとの大きな相違点は
  • 対艦ミサイル4発を搭載するため主翼を大型化
  • 軽量化のため主翼に炭素系複合材を用い、一体成形構造を採用
  • アクティブ・フェイズドアレイ・レーダー採用。なお火器管制レーダーとして実用機に搭載するのは世界初。
  • エンジンを推力向上型に換装
  • 国産のFBW*3を搭載(米国側はFBWのソースコードを開示しなかった。

細かな部分では
  • ドラッグシュートを搭載
  • 支柱の追加、風防と天蓋を分割したキャノピー
  • エア・インテークの改良

このように、F-16Cを基礎にしておきながらほぼ新設計と言える戦闘機となった。(原型機と同じなのは垂直尾翼ぐらい。シルエット以外はほぼ別物と言われる。)
改めて説明することでもないが、エンジンを強化したり兵装の搭載量を増やすことは戦闘機にとって問題はない。
ましてやF-16Cは世界的に見ても普及している汎用戦闘機で、運用実績も豊富である。
当初は軽量単発戦闘機を原型とすることについて、有効な洋上阻止能力足り得るか懸念も多かった。
しかし上述の新規技術導入と就役以降の改修により、概ね空自が求めた能力を満たすことに成功している。


【F-2の問題点】

日米共同開発そのものが問題と言われることも多いが、この点は意見がわかれるために割愛する。

単発機ゆえ、エンジン停止時の危険性はたしかに大きいが、この点は技術の進歩(エンジン自体の信頼性向上)で相当に補填されたと言って良い。
寧ろ問題点は他の候補より問題が少ないとはいえ、単発小型機ゆえの発達余裕の少なさであった。
現状でこそ実装に成功しているが、当初はAAM-4/5運用システムの実装も危ぶまれた。
この点は機内容積、具体的には電子部品等最容積の小ささが祟ってしまったと言われる。
実際に機体内の余剰スペースが足りないため、事実上のNATO標準データリンクであるリンク16への対応ができず、より旧式のリンク11と自衛隊独自の戦術データリンクで対応している。

加えて共同開発故に部品の一部を米国製とせざるをえず、部品損耗に際しての補充修理にも難点はある。
(この点はF-15Jやホーク地対空ミサイルなど、国外ライセンス装備全般にもいえることだが)


当初は141機の生産予定だったが、1機辺りの価格は約120億円と高価格になってしまい、最終的な調達機数は94機である。
これによる損耗予備機削減は痛恨事だったが、流石にブルーインパルスにさえF-2を…というのは贅沢だったかもしれない。*4
また製造数が削減された一因として発達余裕の乏しさを懸念されたことも存在する。

高価な機体になった原因の一つは、一機生産するごとに支払われる47億円ものライセンス料。これはF-16Cを母体にしたためである。
これに限らずライセンス生産や輸入兵器は高額になる傾向にあるが、文字通りゼロから開発して開発費がさらに高騰するのとどっちがいいかと言うと微妙なところではある。

一時期防衛省はF-2を追加調達を検討しているとの報道があり、内容としては

中国の航空戦力が近代化している最中、「F-X(次期主力戦闘機導入計画)」の難航とF-4の退役が迫っている問題への措置として
F-2の追加調達を検討。調達数は20機程度。

というものであった。
実際には立ち消えになってしまったようで、2011年9月27日に最終生産機が納入され、F-2の生産は終了。日本の戦闘機製造は一旦途切れることになってしまった。


【F-2開発時に日本の優れた技術がアメリカに盗用された?】

上記のような噂を聞いたことはあるだろうか?
中には開発中だったF-22にその技術が使われたなどという話がある。

では、実際に技術の持ち去りがあったのか?

断片的な情報から推測する他ないが、共同開発時に「"アメリカが望む"全ての技術の移転を行う」という内容が含まれているため、目ぼしい技術はアメリカ企業に移転されたと考えて良いと思われる(といっても当時の技術であるため、現在は日本もアメリカももっと進歩している)。

一応そういう契約を結んだ上でのことであり、技術を盗まれた…というのは少々語弊がある言い方ではある。
また FS-X開発におけるGAO(会計検査院)の報告書 にはこの契約でアメリカ国防省と企業に向けて公開された技術が挙げられ、
なかなか辛口な評価が書かれている。(この報告書は「FS-X共同開発がアメリカの利益になったかどうか」の評価をしたもの。)
報告書で個別に挙げられた技術は以下の通り。

  • アクティブフェーズドアレイレーダー
  • ミッションコンピュータ
  • 統合電子戦システム
  • 慣性航法装置
  • レーダー電波吸収材
  • 炭素繊維複合材一体成型主翼

別にまとめられている部分には

  • 日本製フライバイワイヤ
  • ビデオテープレコーダー
  • 操縦席テレビセンサー
  • UHF/VHF無線

について言及されており、これらを見ると見事なまでに技術を抜き取られたかに見える。

…が、
少なくともF-22に使われたとは考えられない。
F-2の設計チームが組まれた1990年には、アメリカでは既にF-22の試作機を飛ばしている。
試作機ができているのにそこから機体の大部分の材質を変えるなどの大きな改変をするのはリスクが大きすぎ、無理があると言わざるを得ない。
一応公開情報でも一体成型翼は使われておらず、機体のごく一部に炭素繊維複合材を使用したとされている。
レーダーも開発時期が重複しており、J/APG-1の技術を取り込んだとして実際どれだけ設計に反映できるものか怪しいところである。

先述の報告書によればレーダーに関してのコメントは

「F-22のレーダー技術のほうが一世代上だと思う」
「期待したほどではなかった」

…なんだかひどい言われようだが、一方で

「米国標準より高コストの方法が採用されている」
「ソフト面ではいくつかの企業が関心を示すかもしれない」

など、喜んでいいのか微妙な表現の部分もある。

一体成形主翼については実際に技術移転が行われ、ロッキード社はF-2の主翼を実際に作ってみたらしい。
報告書では「軽量化と強度を両立し、フラッター(異常振動)抑制にも貢献する」と評価した一方、「高コスト過ぎる」としてこの技術に関心を持つ企業がなかったとしている。
後のF-35でも採用されていないらしい。

だがF-2が配備された10年後に、旅客機B787型において胴体の一部と主翼(面積にしてF2の5倍)に炭素繊維複合材が採用され、
炭素繊維を東レ、胴体部を川崎重工、主翼を三菱重工が製造していることを考えれば、その10年間にも日本の技術者たちがたゆまぬ努力を重ねてきた事は見て取れるだろう。

ちなみにロッキードマーチン曰く
「工具関連のテクニックは製造コスト削減に寄与する」とのこと。それってト◯タの工場でもやってることじゃないですかね

そもそも戦闘機開発しまくってノウハウの蓄積も予算も桁違いの米国に、当時F-1とT-4ぐらいしか実績の無い日本がそう簡単に追いつけるわけもなし…
日本も一方的に技術を持っていかせたわけではなく、F-16のライセンスを手にしたことで得るものも多かった。
これについて「どちらが勝ったか」という議論は不毛であり、航空先進国の機体を原型に優れた支援戦闘機の開発、
ひいては遅れがちな航空宇宙技術を維持、発展させえたことを素直に評価してもよいのではないだろうか。

そもそも日米問わず軍事関連の公開情報をどこまで鵜呑みにできるかという面もある。



【性能】

さすが日本というべきか("日本特有の"事情もあいまって)対艦攻撃能力は世界トップクラス。
大型対艦ミサイル4発を搭載しての長距離飛行という他に例を見ない性能を有する。
運動性も高くF-15や在日米軍のF-16CとのDACTでも、遜色ない性能を発揮すると言われる。

単発機ゆえの洋上飛行の不安は現在でも唱えられることはある。
とはいえ、1995年の初飛行から十年もの間喪失ナシという結果を残しているため、信頼性自体は高いと言える。
艦船などの目標なら半径約185km、戦闘機などの目標ならルックダウンで半径約65kmで探知可能。
F-2の対艦攻撃能力の高さの源は国産対艦ミサイルにもある。
日本が開発したASM-2は世界最長の170kmという射程を有する。これを4発も搭載するのだ。
配備当時としては世界初の仕様となる。

もちろんその射程距離を活かせる高性能レーダーや電子戦能力があってのことである。
対艦ミサイル4発、対空ミサイル2発、増槽2本を搭載した状態での戦闘行動半径は820km。
重量のかさむ対艦ミサイル4発を搭載した状態の戦闘攻撃機としては類を見ない長距離巡航能力である。
対艦攻撃ミッションでは、ASM-1を搭載したF-2とASM-2を搭載したF-2が連携して攻撃を行う。
敵艦に対して同時に命中するタイミングで各対艦ミサイルを発射する。
ASM-1はアクティブ・レーダー誘導、ASM-2は赤外線画像誘導であるため、敵艦は複数種のミサイルに同時対処しなければならない。
異なる誘導方法を用いるミサイルへの対処は相手への負担を増大させ、このことも抑止力増大に一役買っている。 
さらに新型超音速対艦ミサイルXASM-3も開発中。更なる対艦能力の向上が期待されている。
空対地支援でも通常爆弾の命中精度自体が高く、近年ではJDAM導入により更に精密な攻撃が可能となりつつある。

制空戦闘でもAAM-4/5といった新世代空対空ミサイルの実装が進捗しつつあり、順当にマルチロールファイターとして進歩しつつある。
また要撃で何より重要なJADGEシステムとのリンケージも国産デジタルデータリンク実装試験に成功、今後の進捗が期待される。

機体のカラーリングは洋上迷彩という青色を基調としたカラーリング。
地上では目立つが、海上では識別が困難である。
んなバカな、そこまで困難じゃないだろ、と思う人は一度ググってみよう。
F-2は試験運用中にトラブルが幾つか発生した。

  • 火器管制レーダーの不具合
  • フル装備状態での高機動を行ったときに主翼にヒビが入る(顕微鏡レベル)

この事から欠陥機などと言われたが、その後対策がなされ欠陥は解消された。
そもそもどんな航空機にも初期のトラブルは付き物のため、この指摘は言いがかりに近いものがある。


【後継機問題】

長年日本の空を守ってきたF-2であるが、先に導入されたF-15は拡張性に余裕があることから改良を施し引き続き運用されるも
拡張性が乏しく性能の陳腐化が進むF-2は2030年ごろまでに後継機と入れ替える予定となっている。
またそのF-15も全ての機体に改良を施すわけではなく、改良しないF-15はF-35で置き換えることが決定しているため
将来的には改良型F-15の置き換えも視野に入れられていると思われる。
だがその候補選定も難航しており現状では

  • X-2などのノウハウを生かして純国産、ただし開発費が嵩むために財務省からの反発が必至。ただし、貨幣流出が生じず国内への需要投機となるため消費低迷の日本経済にとってはプラス。原材料さえあれば自国都合でパーツの生産、ストックが可能で最も実運用性が高い。
  • F-2同様他国との共同開発、船頭が多い関係上、開発成功率が低く外部委託であるため貨幣流出が起き経済的にマイナス、技術蓄積が中途半端になる恐れがある。保守部品や製造分担で炎上する恐れあり、現状複数社から日本への打診があるものの既存機の改修が多いためF-2同様陳腐化や拡張性に疑問あり。
  • F-35同様の輸入機導入、財政的には一番安く済むものの貨幣流出が多く経済的には大きなマイナス、ブラックボックスや保守整備の為の部品に入手の不安定化、独特なF-2の役割を担う機種の選定や改良、他国依存への懸念。

の大きく3つに分かれているが当初は2018年までに選定するとしていたが結局定まらず難航していた。

…そして2020年。当時の河野防衛大臣から「国内主導で次期戦闘機開発」がアナウンスされた。アメリカを含む海外企業からの技術協力にも前向きとのことだが、FS-Xほどに米政府が首突っ込んでくるかは不明(貿易摩擦なら中国の方がでっかいし)。開発が完了すればF-3と呼ばれるのであろう。超音速化・長射程化に伴い大型化した対艦ミサイルを、ステルス性維持のために内蔵できるかわかんないけどな!対艦番長路線から離脱する可能性も否定できない*5
また、イギリスとの協力・協議についても断続的に報道されていた。…それはそれで英国面に堕ちそうだけど

時は流れ、2022年12月9日。次期戦闘機は日英伊共同開発となる事が三か国首脳より公表された。
共同首脳声明には
  • 事業名はグローバル戦闘航空プログラム(GCAP:Global Combat Air Programme)
  • 共同開発は2035年までに行われる*6
  • 人材、技術、投資、利益については平等に分担する
  • 米国、NATOを含むパートナー国間での相互運用性(インターオペラビリティー)を確保する
といった内容が織り込まれた。
また、同時に発出された防衛省と米国防省による共同発表においては
  • 米国はGCAPを支持する
  • 米国は日本と、次期戦闘機を始めとした装備を補完し得る自律型システム*7に関する重要な連携を開始した
といった内容が発表された。
英国とイタリアは既に次世代戦闘機「テンペスト」の共同開発を推進しておりこれと日本の次期戦闘機計画が統合された形となる。


【関連機体】


  • F-16C "ファイティングファルコン"
言わずと知れた「ハイ・ローミックスのローのほう」。F-2の原型機。
軽量・安価な戦闘機として開発されたが、多くの国で導入され生産機数が多くなったため、それに従いアップデートが繰り返された。初期型と最新型ではもはや別物と言っていい性能差(と価格差)が生まれている。

  • F-16XL
F-2とはやや趣が異なるが、F-16を改造して作られたゼネラル・ダイナミクス社の試作機。
初飛行は1982年で、F-2の10年前。F-15Eの対抗馬だった戦闘爆撃機型だったがコンペで負け、採用は見送られた。
搭載量・航続距離の増加に重点を置いた機体で、胴体を延長して水平尾翼を廃し、主翼*8に炭素繊維複合材を採用するなどF-2との共通点がある。
開発当時は炭素繊維複合材の製造・加工技術が発達しておらず、まだ扱いにくい材料だった。
おかげで一機あたりのコストはF-15(チタン合金製)より高くなったとかそんなとこまで似なくても…

というかこのコンペ自体当初先述した要件に加えて超音速巡航性能を重視しており、このプランを提示するもゼネラルしか手をあげず計画中止。
しかしマクドネル・ダグラスがF-15Eを初飛行させたのを機に計画再開、だが要求仕様が搭載量や航続距離を重視するものに変更。
初飛行させるも設計は殆ど変えず超音速巡航性能を切り捨てたことで中途半端な機体になってしまったという事情もある。
不採用後は長らく倉庫で埃を被っていたがNASAの要請で移管され実験に使用されその後はNASAで保管されていた。
が、今度はF-16の権利を有していたロッキード・マーチンから自社で使いたいと要請を受け現在は同社で運用されている、とかなり変わった経歴を辿っている。
この独特な形状がユーザーに受けたのか、プラモデルでいくつか立体化されている他完成品を出したメーカーも存在している。

  • F-CKー1 "経国"
台湾が開発・製造する軽戦闘機。開発協力はやっぱりゼネラル・ダイナミクス社。
共同開発かつF-16と共通点が多いが改修ではなく新規開発であり、台湾独自の戦闘機と言える代物。
F-16をそのまま双発にしたような外観を持ち、初飛行は1989年。
双発機になったのは、当時米国から台湾への高出力エンジンやベースとなったF-16の輸出が許可されなかったため。
もしF-2が双発仕様として開発されていたら、このような姿になっていたかも?という、興味深い例ではないだろうか。
なおこれは新機種を要望し当初アメリカから提示されたF-20やモンキーモデル版F-16の性能に満足できず独自開発に切り替えたため。
その後紆余曲折あり結局アメリカと同一仕様のF-16の輸出を解禁し台湾にも輸出を認可したため、導入数は予定の半分ほどになった。

  • FA-50/T-50(韓国)
韓国が開発・配備・輸出するマルチロール戦闘機/LIFT(爆撃くらいなら可能な高等練習機)。
こちらもGD社の協力を得ており、F-16をコンパクトにしたような感があるが新規開発であることに変わりはない。韓国も台湾同様にF-16を配備している。
日本や台湾と異なり政治的障害が少ないため、フィリピンやインドネシアなどに輸出を成功させている。だがアメリカ空軍次期練習機コンペでは負けた模様。


【裏話的な内容】


政府がFS-X(次期支援戦闘機)の導入を計画した際、三菱重工業が名乗りを挙げた。
三菱重工業のFS-Xへの意気込みは凄まじいものだったという。
アメリカはこの三菱の熱意を「航空機産業という新たな市場への挑戦を目論んでいる」と捉えていたが、三菱側の思惑は違ったという意見がある。

戦前、戦中と“零戦”や“武蔵”を生み出し、戦後の復興や高度経済成長を牽引してきた三菱としては“日の丸戦闘機”が再び日本の大空を舞うことを夢見ていたのではないだろうか。
三菱重工業の社長・会長を歴任した飯田庸太朗はこう述べている
「防衛産業で日本のお役に立てなければ、三菱が存在する意味がない。儲かるからやる、儲からないからやらないではなく、もって生まれた宿命だと思っている。」と…
飛行性能向上、対艦ミサイル運用のために垂直尾翼以外は三菱の手によって再設計された、エア・インテークの形状までも設計し直すという、その国産への執着とも思える徹底ぶりに、ジェネラル・ダイナミックスのF-16C設計チームが腹を立てた、という噂もあった。

だが、実際は国産レーダー搭載による機首レドームの大型化によりエア・インテークを再設計せざるを得なくなっただけであり、それに対してロッキード社が「超音速衝撃波の制御を日本が出来るのか?やらないほうが良いのでは?」と指摘しただけである。
航空機の設計は線一本引き直したら工作機械ごと変更が必要なので、不必要な改変はしないのが定石なのだ。

三菱にアメリカの調査チームが来た際、三菱はFS-Xの開発構想をアメリカに説明した。
最先端技術を用いる構想を聞いたアメリカが特に驚いたのは新素材技術であったという。
そして調査を終えたチームは技術力そのものよりも到達目標の高さに驚き
”ニューゼロファイター”だ。日本は新たなゼロファイターを創り出そうとしている。」
と言ったそうな。
それ故に軍事メディアなどでは「平成の零戦」と称されることも多い本機だが、主任務が対艦攻撃なことからマニアの中にはあえて本機を「平成の一式陸攻」「平成の九七艦攻」などと呼ぶ者もいたりする。

2006年にF-2の開発に協力したロッキード社がF-2の能力向上計画を提示し、ロッキード社はF-2の改良型を“F-2スーパー改”と称した。
しかしこの計画の実現の可能性は低く、現にロッキード社は続報を発表していない。

また、こんな曰く付きのF-2だが利点がある。その姿を利用してあえてロービジ塗装にすれば米軍機に変装できるのである。通常、この手の任務は機体の細部に至るまで荒療治の改造を加えなければならないが(ドイツ軍のグライフ作戦みたいな感じ)、F-2の場合は色を変えるだけで(それだけでなく搭載兵装をAAMにしなければならないが)米軍機に偽装できる。いざとなれば、米軍機のマークと塗装で敵陣になだれ込み思わず近づいた敵機を撃墜する・・・・なんてことも出来るのはF-2だけ!他の例ではクフィルやネシェル(ダガー)ぐらいであろうか。


Viper-ZERO

【創作作品への登場】

航空自衛隊の新鋭装備、それも国産(共同開発だけど)という事もあってよく登場する。
マルチロール機なので空中戦でも爆撃でも何でもござれ!というわけで使いやすいという理由もありそう。

ゴジラ×メカゴジラ

対艦ミサイルでゴジラを攻撃しようとするも、放射火炎で全滅させられる。
実機を使用できずCGで済まされたせいか、見えづらい上にほとんど出番がない。まぁ、制式化から間がなかったので仕方ない…
しかしながら、グレーを基調とした独自の迷彩*9を施している地味にレアな仕様だったりする。

シン・ゴジラ

空自の協力を得て実機が撮影に使用された。(実機のシーンで爆装してないとか言っちゃダメ)
白組による迫真のCGもあって、存在感のある映像がもたらされている。
劇中ではタバ作戦の最終フェイズを担当し、三沢基地から発進した第8飛行隊のF-2×2機がGBU-54 500ポンドレーザーJDAMでゴジラを爆撃する。

亡国のイージス(劇場版)

特殊焼夷弾『テルミットプラス』を搭載して三沢基地から発進し、反乱を起こしたイージス艦「いそかぜ」の攻撃に向かう。
実機の銀幕デビューはこの作品であった。毀誉褒貶の激しい石破茂氏の数少ない明確な功績

エースコンバットシリーズ

日本が独自に開発した新鋭の戦闘機という事から、シリーズの常連と化している。
明確には日本が存在しないストレンジリアル世界の設定では「国際共同で開発された」と開発経緯の詳細がぼかされている。
バランス調整の一環なのか本作では基本的に攻撃機として登場している。

やはり対艦能力に優れた機体の感が強く、特殊兵装として艦船目標に大して高いダメージを与えられる対艦ミサイル(LASM)を装備している事が多い。
プレイヤーからも対艦番長と親しまれている。
他にはロケットランチャーなど。無誘導なため扱いに独特の癖があるが、上手く使えば対地目標を一網打尽にできる。
序盤から中盤にかけて登場する事が多く、また多くの場合その気になれば大規模空戦ミッション以外はこれに乗りっ放しで終盤まで進められる程に優秀。

ACE6』のアイマス痛機では、性能が調整された双海亜美仕様機が登場する。
また、『ACE7』では世にも珍しいF-2スーパー改が初登場した。
本作にてようやくマルチロール機としての登場となり、空戦にも対応できるようになった。


【損失】

F-2最初の事故はF-2B(43-8126)によるもの、定期整備最終チェックの離陸時に発生、離陸中止ができる段階だったためパイロットは無事であった。
原因は配線の誤接続によるものでこれが初の損失となった。

東北地方太平洋沖地震により発生した大津波によって、当時天候不良などで空中退避が出来ず松島基地に配備していたF-2B全18機が水没し大損害を受けた。
これはF-2全体としても2割、Bで見れば半数以上の損失となった。
当初12機が修復不可能で修復可能は6機とされたが最終的に13機になり2018年に全機復帰した。
修復できなかった5機については23-8107・23-8110・23-8114・33-8120・53-8131の5機と思われる。
なおこの松島基地はかのブルーインパルスの基地でもあり同隊も損害を受けたが、被災当時JR九州九州新幹線開業に伴う展示飛行のために福岡の芦屋基地に展開中。
更に定期整備に出ていた機体もあったことで被害は格納庫に保管されていた予備機1機だけであった。*10

だが翌2019年には訓練中に異常姿勢からの復帰に失敗し墜落、搭乗員は救助されたがF-2B(73-8132)1機を損失している。
と数の少ない複座型の損失が多く単座型の損失は2019年時点では一度も発生していない。
ただし単座型でも操縦桿の欠損、2021年にはF-2同士での接触、スクランブル機のキャノピー(天蓋部分)が脱落するなど墜落こそしていないが事故は起きている。


追記・修正、再設計、よろしくお願いします

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最終更新:2023年06月11日 15:43
添付ファイル

*1 2013年12月1日 編集者撮影

*2 機動性が低下したF-16の主翼を大型化を盛り込んだプラン、F-2の主翼はこのF-16で計画されていた主翼と同じ大きさになっている。

*3 Fly By Wire 操縦・飛行システム

*4 通常、装備の要求数は削減を見越して大目に要求しておくものであり、アクロバットチームの機材として一線級の戦闘機を使用しているのは西側では米軍のサンダーバーズとブルーエンジェルスくらいのものである。要するにブルーインパルスの分は最初から削減される想定であった

*5 ただし、2020年11月3日に公開された国際安全保障産業協会(ISIC)主催のオンラインフォーラムの動画「Defense Industry Forum (ISIC) - F-X Program Progresses」において、次期戦闘機へのASM-3搭載は必要条件だと名指しで明言されている

*6 2035年までに配備可能とする、という意味合いと思われる

*7 所謂「有人戦闘機と連携して運用される自律型無人戦闘機」のことだと思われる

*8 クランクト・アロー・デルタ翼(ダブルデルタ翼の一種)に変更して原型機のF-16より翼面積を2割増にし、ハードポイント数の大幅な増強が行われている。

*9 米軍等で見られるF-16の制空迷彩とも異なる

*10 そのため震災時には機体だけおいて隊員は基地復旧に赴き、復旧完了までは芦屋基地を臨時拠点にしていた