番長の王国

登録日:2011/02/08(火) 20:14:18
更新日:2024/03/07 Thu 15:26:58
所要時間:約 4 分で読めます




【あらすじ】
時は45年前。
全国を支配した抜刀番長の死後、どの高校も暴力が渦巻き人心が荒れ果てた無秩序の暗黒時代に突入していた。
その大混乱を収めるべく二人の英雄が立ち上がる。
一人がピストル番長。もう一人が魔法番長。
西でピストル番長が腐敗を撃てば、東で魔法番長が悪を成敗する。
しかし、そうして悪を一掃した後に待ち受けていたのは全国を二分する勢力争いだった。
二大番長は総力戦を避け、且つ自分達の卒業後も抜刀番長登場以前の平和な時代に落ち着くよう慎重に調整しつつ冷戦状態へ。
そんな中、綺羅星の如く出現した鋼鉄番長が事態を一変させる。
やがて三つ巴の軍勢は、多くの死傷者が避けられない壊滅的な大決戦へ突入する事を余儀なくされた。
そして決戦の日、待ち受けていた衝撃の結末とは………


【主な登場人物】
◆抜刀番長(永森新吾)
全ての始まりにして諸悪の根源。世に言う『番長暗黒時代』を生みだした男である。
本人は多少喧嘩が強い程度の凡庸な男だが、日本政界を牛耳る父親の威光を振りかざして自治体や警察さえ押さえ込み、全国の高校を恐怖政治で支配した暴君。
父の後ろ盾に基づく不良軍団による問答無用の強襲と、命知らずの抜刀突撃が主な戦術。
そうして瞬く間に全国の高校を支配下に置いた彼だったが、突如として急逝し、『番長暗黒時代』もその死と共に終焉を迎える。
実は彼は高校入学前から不治の病(白血病)に冒されており、強引な全国の高校支配も自らの死期が近いが故の焦りによるもので、
そんな自分の夢を叶える応援をしてくれた父に看取られながら、その短い生涯を閉じることとなった。
末期の言葉は「いい夢だった。お父さん、ありがとう」だった。

◆ピストル番長(相沢竜馬)
抜刀番長の死後に起きた混乱の時代、世に言う『番長群雄割拠時代』を二分した英雄の1人。
成績優秀で勤勉な美少年で、六連発リボルバー『ハヤブサ』を片手にローキックで敵をなぎ倒す知将。
抜刀番長の死後、自分の通う高校が荒れに荒れたのを見かねて決起した。
不良「あんなうらなりを番長と呼べるかよ」
       ↓
不良「ちくしょう、奴こそほんとの男だぜ。見かけで判断しちゃいけねぇ」
元々、彼は不良や番長等に興味はなく、決起した理由も「自分の高校に平和を取り戻して勉強に集中したい」という至極真面目なものであり、
全国統一はもとより、そもそも不良のリーダーである番長になるつもり自体なかったのだが、
孤児の身の上故に、自らに助けを求める他の高校の一般生徒も見捨てられずに手を差し伸べた結果、
助けた高校の不良たちが自発的に自らの傘下に集まり、思わぬ規模に成長した自身の組織に手を焼くようになっていく。

◆魔法番長(京谷淑子)
漆黒のマントを羽織り、2メートル近い『鷹の杖』を持ったクールな美少女。
ピストル番長に匹敵する戦術家で、薙刀の腕前は免許皆伝。
むさい男共の行く末には無関心を決め込むつもりだったが、番長達の横暴で最も虐げられてきた女子たちの為に決起。
その事によって騎士(武士)道精神に目覚めた不良やモテたいチャラ不良が傘下に。
不良「女を番長と呼べるかよ」
       ↓
不良「魔法番長は俺が守ってやるぜ」
彼女もピストル番長同様に、番長だの全国統一だのに興味はなかったのだが、
何の因果か彼女もまた、父の愛を受けずに育ち、母はその父に虐げられて死んだという劣悪な家庭環境で育ったため、
救いを求める他校の女子たちの声を無視できず、魔法番長として他校の生徒にも手を差し伸べていった結果、
ピストル番長と同じように、自らを慕う不良たちが集まって組織がみるみるうちに肥大化し、
同規模の組織であるピストル番長の勢力と(番長同士の思惑とは裏腹に)抜き差しならない緊張状態に突入していく。

◆鋼鉄番長(荒木三郎太)
「ピストル番長」と「魔法番長」、その二大派閥がにらみ合う時代に突如現れた大柄な快男児。
「組織ではなく仲間の連帯」を重んじる真の番長を目指す彼は、どこかシステマチックなピストル番長・魔法番長のどちらの陣営にも属さず、
第三勢力として相棒の軍師・稲葉弘志と共にその勢力を伸ばし、全国統一に乗り出す。
仲間の為には颯爽と駆けつけ、鋼の如き肉体一つで無数の敵を蹴散らす無敵の漢。
その強さは、養父グレゴリー・マクドナルド元中佐に教わったアメリカ陸軍流格闘術に基づくものだった。
近所の工場の協力を得て制作した「鋼鉄バッチ」がトレードマーク。

◆稲葉弘志
鋼鉄番長と運命的な出会いを果たした、彼の優秀な右腕であり、無二の親友でもある男。
二大番長時代の「味方でなければ敵」という当時一般的であった価値観に否定的で、二大番長が築き上げた組織論を真っ向から批判する。
空手で黒帯を持つ武闘派であるのと同時に、人心を読むのに長けた頭脳派であった彼だが、
二大番長ほどのカリスマ性がないことを自覚しており、彼らに匹敵するカリスマを持つ『真の番長』の到来を待ち望んでおり、
荒木こそが自らの望む『真の番長』だと確信した彼は、その右腕として彼を支えることとなった。
そして、後述の『番長黄昏時代』には、鋼鉄番長の側近であったことを高く評価され、
三大番長が去った後のことを彼ら当人から託されることとなり、その期待に応えるかのように番長時代の終焉に貢献。
稲葉自身は自ら番長を名乗らなかったが、その活躍を見た周囲からはいつしか「星影番長」と呼ばれるようになったという。



【簡潔な歴史の流れ】

●番長暗黒時代
抜刀番長、左右田工業高校へ入学。当時の番長を倒し1年にして番長に。
父である宗光の威光を用い、日本全国の高校へ支配の手を伸ばす。
宗光の息のかかった大人、抜刀番長にへつらう不良たちによる支配体制により、全国の高校はスラム化すると同時に旧来の身内的な番長制が崩壊。


●番長群雄割拠時代
抜刀番長が病で急逝し、その後ろ盾であった宗光も『小日向紋十郎の乱』により失脚し、その影響力が失われるが、
抜刀番長時代の残党と旧来の番長勢力による衝突によって時勢は更なる混乱へ。
しかし旧来の番長像とは異なるイメージの『二大番長』の台頭により、やがて全国は東西に二分される形で平定される。


●番長冷戦時代
肥大した組織と抜刀番長による『全国統一』のイメージにより、ついに二大勢力の衝突が始まる。
しかし、全面衝突も全国統一も望まない両番長の努力により、小競り合いこそ起こりながら、最終決戦は回避され続けた。


●番長三国志時代
抜刀番長の死後、空白地帯となっていた左右田工業高校で鋼鉄番長が台頭。
旧来の番長像から離れた二大番長と組織立ったその勢力に不満を抱く、旧来の番長像を打ち出す彼を慕う人々により、
ピストル・魔法両番長の二大勢力に並ぶ第三勢力として、鋼鉄番長が台頭し始める。


●番長黄昏時代
既に高校三年生であるピストル・魔法両番長の卒業が迫ってきたことで、
彼らより年下であるが故に、両番長の引退後も現役である鋼鉄番長とその勢力を危惧する声が両陣営から上がり、
両番長卒業前に全国統一を成さんと、三陣営の緊張状態はさらに高まり、事態は悪化の一途を辿っていく。
やがて最終決戦は回避できないと覚悟を固めたピストル・魔法両番長が「決戦の日は2月1日」と発表し、
鋼鉄番長もそれを受け容れたことで、悪夢の最終決戦はついに現実のものになると思われた。

しかし、その2月1日を前に、鋼鉄番長が謎の死を遂げる。
鋼鉄番長の遺体に目立った外傷はなく、第一発見者が家を訪れるまで密室状態にあったこと、
鋼鉄番長直筆と思われる「無用な犠牲を出す最終決戦を止めるべく自死を選ぶ」という旨が記された遺書が両番長の下に届いたことから、
最終決戦を憂えて自死を選んだ鋼鉄番長の遺志を尊重するという形で、両番長は最終決戦の中止を決定・通達。
こうして、一人の偉大な番長の尊い死と引き換えに、未曽有の決戦は回避されることとなった。

その後、卒業する二大番長より後を託された稲葉率いる『鋼鉄部隊』が、
二大番長の後釜を狙おうと各地に次々と現れた野心を持つ番長たちを悉く潰すと共に、
各学校がかつての二大番長勢力の如き巨大な組織に頼らず自立できるように支援などを行うことで、抜刀番長以降続いた全国的な混乱は終結を迎えた。
稲葉にはそんなつもりはなかったものの、結果的には彼の勢力が三大番長も成し得なかった全国統一を果たしたことから、
稲葉は「綺羅星の如く現れた三大番長の後に現れた」番長として、いつしか『星影番長』の名で呼ばれるようになった。

しかしこれ以降、『番長』という存在は急速に衰退していくこととなるのであった。











以下ネタバレを含む



『番長の王国』とは、『小説版スパイラル~推理の絆~“鋼鉄番長の密室”』に登場する架空の著書。
著者は(作中世界における)有名大学の教授であり、上述したような熱い番長たちの物語はノンフィクション
つまり、そのぶっ飛んだ内容は全て作中における史実。ぜひ読んでみたいものだ。
まるで青春漫画のような、暑苦しい登場人物たちや展開が目白押しだが、一方で番長達の家庭環境や闘争の結末など、妙に重苦しい部分もある。

残念ながら本編ではその全文は読めず、歩が(ものすごく精神を擦り減らしながら)読んだ一部の内容しか読者には分からないが、
それでも、原作者で(一応)本格推理小説家の城平京がノリノリで書いた事が文章からうかがえる。
“鋼鉄番長の密室”』自体は、45年も前に起きた番長戦争の結末を左右した「鋼鉄番長の死」の真相を、
とあるめんどくさいツンデレ先輩(ヒロイン)と関わったことで解明する羽目になった鳴海歩が探っていくという内容。

ただ、真相を探るといっても、既に件の鋼鉄番長の死から45年も経過していること、
警察への伝手も何もない男子高校生の身では、参考に出来る資料など『番長の王国』くらいしかなく、
推理したところでそれを裏付ける証拠を手に入れることもできないという事情から、
歩は「『番長の王国』の内容は全て事実に基づくものである」という前提の下に「それらしい真相」を数パターン導き出して提示し、
その上で、「どの真相もそれなりに説得力があるが、どれにも確証はない」ことを明示することで、
提示した真相のどれを真実と考えるか、それとも全てデタラメだと切って捨てるかはヒロイン(と読者)自身に委ねるという、推理小説としては珍しい展開になる。

また、常識人である歩にとって、「番長の王国」に記された暑苦しいにも程がある高校生たちの青春ストーリー(と荒唐無稽に思える全国統一云々)と、
それが劇中世界におけるれっきとした史実であるという事実は非常に受け入れがたいものらしく、
読み進めては「これ以上は俺の精神がもたない」とばかりに放り出したり、非常に冷めたツッコミをしてはひよの達に怒られたりしている。

歩「鋼鉄番長が真の番長なんか目指さなかったら、全国はすごく平和なままじゃなかったのか?」




「クソ項目を立てていきがるな、wiki籠り!我が燃える魂の追記・修正をくらえ!」
「おお、勝負だ!だが心は萌えても内容が薄ければ意味がないぞ!」

歩はそこまで読んで本を閉じた。
話の流れからして、wiki籠りは自治厨を見事に倒すのだろう。倒すに違いない。
もう勝手にしてくれと言うしかない。

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