風のクロノア door to phantomile

登録日:2014/07/01 Tue 06:54:31
更新日:2023/01/23 Mon 17:20:17
所要時間:約 12 分で読めます





そしてぼくは不思議に思う
あさ目がさめると確かに見たはずの夢が思い出せないことがある
その夢はいったいどこへ行ってしまうのだろう
でもその日の夢は鏡を見るようにはっきりと覚えているんだ



風のクロノア door to phantomile』(Klonoa: Door to Phantomile)はナムコ(現バンダイナムコゲームス)から1997年にPlayStationで発売されたテレビゲーム作品であり、『風のクロノアシリーズ』の第一作目。

2008年にWiiでリメイク版が発売された。アプリ版も存在する。
リメイク版には追加要素がある他、ストーリーやデザイン、難易度にも若干差異がある。
というかwii版では一部の演出がオミットされているため、PSアーカイブスで旧作の方をやってみるのもまた一考である。

その後は長らくシリーズが途絶えていたが、2022年2月10日のNintendo Directにて、『風のクロノア2 〜世界が望んだ忘れもの〜』とのカップリング移植が発表された。
タイトルは『風のクロノア 1&2アンコール』。リリースは2022年7月7日。1は上記のWii版が元になっている。
リマスター版だが画面のインターフェースが変更されているなど、一部仕様が異なる模様。
ニンダイで取り上げられたので当然Nintendo Switchは対象ハードであるが、Switch以外にもPS4/PS5/XboxOne/Steam向けにも発売されている。

概要

FF7の登場で所謂「ムービーゲー」が氾濫し、ゲームらしいゲームとは何かが問われていた時期に、
ディレクターが敢えて「ゲームでしか表現不可能な世界」を構築しようとした意欲作である。
その試みは、ファントマイルの秘密が明かされる衝撃のエンディングに集約されている。

2Dの横スクロールアクションだが時たまムービーも入る。
主人公クロノアができるのは移動とジャンプ、風だま撃ち、風だまによる敵捕捉、捕捉した敵を投げる、捕捉した敵で2段ジャンプ。
上記のようにできるアクションは少なめながらも地形や仕掛け、敵の利用などでシンプルながらも奥が深い。
一見子供向けで簡単そうだが、謎解きやアクション性が必要な場所もある。終盤になってくると一撃死する場所も多くなってくる。

声もついているが、作中キャラたちが話すのはファントマイル語という特有の架空言語。
ワ行やラ行が多く、声だけ聞くと何を言っているのかさっぱりわからないがちゃんと下に翻訳がでるので安心してほしい。
このファントマイル語も夢の世界の世界観を印象付けるのに一役かっている。
設定上は作中出てくる言語は全てファントマイル語と称されているが、キャラごとに微妙に言語が違う。

以下、PS版の内容。




ストーリー


風の村ブリーガルでじっちゃんとリングに宿る精霊ヒューポーと共に暮らす少年クロノアは、ある日近くの丘の上に飛行艇が落ち、そこから出た邪悪な影が迫ってくるという悪夢で目が覚める。
いつもの夢とは違い、はっきりと覚えている悪夢。
そしてちょうどその時、夢と同じように丘の上に何かが落ちてきた。
「何か落ちたみたい。夢と同じだ…」
「行ってみよう、クロノア!」
こうしてクロノアはヒューポーと共に、夢で構成される世界「ファントマイル」と歌姫レフィスを救う冒険に旅立つ。



登場人物

メインキャラクター

クロノア
「わっふー!」「るぷるどぅ!」
主人公。猫のような顔にウサギのような黒くて長いモフモフの耳を持つ獣人の元気な明るい少年。黒い毛並み。
長い耳をパタパタさせることでジャンプ中のホバリングも短時間だが可能。走ると耳がパタパタして可愛い。
風だまを撃てるリングを持つ。
この風だまによって幻獣(敵)を膨らませてリングに吸着でき、吸着した幻獣を投げて敵へ攻撃したり二段ジャンプに利用できる。
リングに宿る風の精霊ヒューポーとは親友。風の村ブリーガルでじっちゃん、ヒューポーと幸せに暮らしていたが…
トレードマークの青い帽子にはナムコのパックマンが付いている。金色の猫目はシリーズ中一番猫っぽい。
赤のズボンに大きな赤い首輪が目を引く。上半身は何も着てないが、首輪で隠れてるから恥ずかしくないよ!
ところがWiiでのリメイクでは赤い服も着るようになった。


ヒューポー
クロノアが幼い頃に拾ったリングに宿る精霊。水色の球体に顔が付いている。
リングの力の源であり、リングに宿ることで風だまを撃つ事ができるようになる。
冒険中クロノアを励ましたり導いたりする頼もしい相棒。
出会ってすぐにクロノアと仲良くなり、以来ずっと一緒に過ごしてきたはずの親友だが…


レフィス 
世界を再生させる力を持つという伝説の歌姫。その力が邪魔になったガディウスによってさらわれ、封印されてしまった。
終盤でガディウスによってラスボス降臨に利用されてしまう。
再生の歌は歌詞こそないものの、美しい。


闇なる王ガディウス 
元凶。レフィスをさらい異空間に閉じ込めた。幻の月の国の復活を目指している。
元々月の国の者であったが三千年前に世界を支配しようとして100日間にわたる大戦を引き起こしたため、ファントマイルの国と神々によって氷の中に封印されていた。
夢の世界のバランスが崩れたために氷が融けて復活、自分を封印した世界を憎み復讐しようとする。
月の国とレフィスを利用して悪夢によって世界を破滅をさせようとする。


ジョーカー
その名のとおり丸っこいピエロの姿をした、ガディウスの僕。
自分が呼び出した幻獣の弱点や謎解きのヒントをうっかり言ってしまったり落し物をしたりとお間抜け。
しかし忠誠心は高く、ガディウスのためなら非道な行いも辞さない。日食時に邪悪な姿を現す。
対峙する場面は多いものの太陽の神殿コロニアの祭壇に辿り着いてからはようやく彼と戦うことになる。
最期はクロノアに倒され、ガディウスの名前を叫んで爆発した。

住人たち

じっちゃん 
風の村でクロノアと暮らす物知りな長老。
クロノアが丘で見つけたペンダントが月の国に由来すると判断し、月の国をよく知る木の国のオババの元へクロノア達をお使いに出す。
お使い中ペンダントはじっちゃんが預かっていたが、ジョーカーに奪われてしまった。


バルー
風の村近くの塔に住む石工のおやじ。ガンストン採掘場の石工頭だったらしい。
伝説の歌姫レフィスちゃんが大好きで、塔の外の崖には彼女の巨大な彫像が。愛にフカノーはない!
レフィスがいるとされる幻の月の国目指して塔を造っている。
ED後のおまけは彼の遅くて短い青春。


カラルとパメラ
水の国で出会った巨大魚の親子。
子供のカラルはガディウスにより操られた水の国の王によって閉じ込められていたところをクロノアたちに助けられる。
母親のパメラは王と共に操られ、クロノアたちと戦うことになる。
水の中を泳ぐだけでなく、空も飛べる。
カラルは語尾に「なの」と付ける。
大昔の大戦で多くの巨大魚が死んでしまい、生き残りはこの2匹だけだと思われる。


シードフ王
水の国のちっちゃい王様。世界の水を管理、護っている。
彼もガディウスによって操られ、パメラと共に戦うことに。
しかし戦闘中の王は基本クロノアの弾扱いである。
一人称は「ワチ」。


オババ様
木の国に住む古の伝承の語り部。
月の国の伝承に詳しいが、ガディウス一味に狙われ捕まっていた。
ムゥをぶつけちゃいけません。


ソ・ラールとソ・レール
太陽の神殿の神官。賢視者?
ソ・ラールはまじめな口調、ソ・レールは生意気な口調。
クロノアたちに祭壇への行き方を教えてくれる。
ガディウス一味に祭壇への扉を開く4つの宝珠をなすすべもなく奪われていた。
「情けないことに私どもは戦いが苦手でありまして…」
「弱えーんだ、早い話」


大神官モ・エール
太陽の神殿の大神官。
月の国へと続く祭壇と奥の聖域を守っていたがやっぱり弱い模様で、ガディウス一味に気絶させられていた。
クロノアたちにボスの弱点を教えてくれる。


月の国の女王
その名のとおり、月の国を統べる女王様。
月の国に伝わる最後の力を貸してくれる。
月の国クレスの王子のヒューポーの母上。



地名

ファントマイル(Phantomile)
人々の夢のエネルギーで創られるどこか別の世界。今作の舞台。大きく分けて5つの国(地域)に分かれている。
目が覚めた後確かに見たはずの夢を思い出せないのは、この世界を形造るためのエネルギーに使われるためだという。


風の村ブリーガル
クロノアが住んでいる村で、冒険が始まった場所。平地、丘、草原が多い。
近くにはバルーが造った塔とガンストン採掘場、崖のレフィスの彫像、鐘の丘がある。
木の国と繋がっている秘密の近道もある。
大昔は風の王国であったが、大戦の影響で衰退し場所を移して村になったようだ。


水の国ジャグポット
世界の水を管理する国。王様が住む貝の城の水車から水が作り出される。ウォータースライダーがよくある。
シードフ王が治め、巨大魚の生き残りも住んでいる。兵も持っているが口調がちょっと赤ちゃんぽいのであまり強くなさそう。
大きな滝があるが、クロノアたちが来た当初はガディウス一味の企みによって水が逆流していた。


木の村フォーロック
森の中の村。水の国の水路と繋がっている。中央の聖なる大木の上に長老が住むカラクリ屋敷がある。木の葉の足場は中盤の難所。
長老はオババ様。住民たちの口調は片言?挨拶は「チーチクパー!」
来た当初はジャグポットの水が逆流して木々が枯れていたため、水路を越える渡しの木も枯れてしまっていた。


太陽の神殿コロニア
天空に浮かぶ巨大神殿。浮いているので人の足では辿り着けない。
戦いが苦手な神官たちが月の国への扉を守っている。
ガディウスが復活したのは、夢のバランスが崩れたせいで大地を照らすこの神殿の高度が下がり、地上の気温が上昇して封印の氷が融けたため。


月の国クレス
幻とされる5番目の国。大昔は空にあったが、大戦の影響で今では姿を消している。風、木、水の力を合わせないと現れない。
女王が統治している。ガディウスはここの出身で、レフィスも元々ここにいたらしい?
中枢に巨大なプリズムを有し、それによって夢をエネルギーに変え世界を形造っている。

















+ ストーリーネタバレ
水の国、木の国を救いオババの元に辿り着いたクロノアたち。
しかしオババから月の国の伝承を聞いた際に、月の国の復活に必要なペンダントがじっちゃんの手元にあることがジョーカーに知られてしまう。
じっちゃんの危機にクロノアは急いで木の国から近道を通り村へ向かう。
しかし一歩及ばずにじっちゃんはジョーカーに襲われ、ペンダントも奪われてしまう。
ジョーカーが呼び出した幻獣バラディウムを倒したクロノア(このボス戦のBGMは評価が高い)だったが、じっちゃんの傷は深かった。
クロノアを偉大なる風の子と呼び、"短い間"だったが楽しかったこととクロノアがこれからやるべきことを伝え、じっちゃんは息を引き取った。

更に終盤の月の国でヒューポーが本当はリングの精霊ではなく、わけがあって外の世界に出ていた月の国の王子であることが判明。
正体を偽り外の世界にいた理由はまだ話せないが、世界を救うために自分を信じてもう少し協力してほしいと言うヒューポー。
そんなヒューポーにクロノアは「ぼくたち、子供の頃からの親友だろ!」と明るく返す。
ガディウスは月の国の力とレフィスの体を利用し、悪夢の結晶ナハトゥムを誕生させ夢によって作られるファントマイルを悪夢で破壊しようとする。
クロノアを「異の夢」と呼び全てをナハトゥムによって消そうとするガディウスと、ナハトゥムが狙っているのは君だとクロノアに告げるヒューポー。

しかし最後は激闘の末、全ての悪夢は五国の部族が操る月の砲台による砲撃、そしてクロノアとヒューポーの命を懸けた一撃によって消滅し、ファントマイルと歌姫レフィスは救われたのだった。
めでたしめでたし。



+ 更にネタバレ
そう、ここで「クロノアたちはファントマイルでいつまでも幸せに暮らしました。めでたしめでたし」で終わっていれば…

崩れた夢のバランスと悪夢によって荒廃した世界も、歌姫レフィスの再生の歌によって平和な元の世界に再生するだけとなった。
ヒューポーが月の国へ帰ってもまた一緒に遊ぼう、と無邪気に提案するクロノアにヒューポーはある事実を告げる。
「クロノア……実は君は……本当は……本当はこの世界に存在しないんだ!」
実はクロノアは、崩れた夢のバランスと世界を救うために別の世界から召喚された「異の夢」「夢見る旅人」であることが発覚。
クロノアは、ヒューポーによって夢ではない現実の世界から召喚されたファントマイルに存在するはずのない者。
「そんな……ううん!だってちゃんと覚えてる!君とであったことも!一緒に遊んだりしたことも!」
「それは…それはぼくが創ったいつわりの記憶なんだ……それを君は、信じこんでいたんだよ」
「……う……うそだっ!うそだうそだうそだーっ!」
つまりあの日の夢以前、冒険が始まる以前のじっちゃんとヒューポーと共に過ごした幸せな記憶、幼い頃の思い出も全てがヒューポーによる偽りの記憶…
ガディウスが言った「異の夢」とは、クロノアの本当の現実、本当の世界こそが、ファントマイルという夢の世界にとって「異なる夢」という意味だと告げるヒューポー。
驚き呆然とするクロノアにヒューポーは、レフィスが再生の歌を歌えば君もこの世界にいられない、と更に残酷な真実を突きつけた。
そして再生の歌が始まる。
「帰るときが来たんだ 君の現実(ファントマイル)に」
「そんな…いやだ!いやだ!!」
風が吹き、空に空いた穴に吸い込まれ始めるクロノア。
最初は黙って俯いているヒューポーだったが、堪えきれずにクロノアに手を伸ばす。
互いの名を呼び抗い繋ぎとめようとする二人。しかし、ヒューポーは遂に手を離してしまう。
空に吸い込まれ消えていくクロノア。
歌が終わった時、再生した夢の世界にクロノアはいない。
残されたヒューポーは青空を見上げ、微笑むのであった…

子供向けのほのぼのとした世界観だと思っていたらクロノアにとって残酷すぎる真実、悲しい別れとなったこのエンディングに呆然あるいは不覚にも泣いてしまった人もいるのではないだろうか。
大抵の創作物ではあまりよくないとされる夢オチだが、切なくどこか爽やかなエンディングである。
悪夢の現実な惨事より綺麗な夢の二次!な人にとってはかなり辛いものがある。



+ 以下、更なるネタバレ
実はこのゲームは、プレイヤーが観ていた夢の中の物語である。つまりは盛大なメタストーリー。
OPでクロノアとヒューポーの出会いを見せられたプレイヤーは、その"偽の記憶"を何の疑いも持たずに受け入れる。
この世界の独特な雰囲気に惹き込まれ、没入し、この世界の一員となっていくプレイヤー。
しかしEDで衝撃の事実が明かされる。初めに見た光景は偽りの記憶であり、この世界は夢でしかないのだ、と。
ゲームをクリアしたプレイヤーはこの世界に居続けることはできず、元の世界に戻るしかないのだ、と……

そうして目を覚ましたプレイヤーは、この時に見た夢を1冊の本に綴り、表紙に自身の名前を記すのである。

続編


風のクロノア ムーンライトミュージアム(1999年、ワンダースワン)
風のクロノア2 ~世界が望んだ忘れもの~(2001年、PS2)
風のクロノア ~夢見る帝国~(2001年、ゲームボーイアドバンス)
クロノアビーチバレー 最強チーム決定戦!(2002年、PS)
風のクロノアG2 ドリームチャンプ・トーナメント(2002年、ゲームボーイアドバンス)
クロノアヒーローズ 伝説のスターメダル(2002年、ゲームボーイアドバンス)

また、2002年には「疾風天国 風のクロノア」として漫画版が出ているが、今作等の様に夢の世界を元にしておらず、ヒーローを目指すクロノアを描いているため雰囲気・設定は違ってきている。
クロノアビーチバレー 最強チーム決定戦!、風のクロノアG2 ドリームチャンプ・トーナメント、クロノアヒーローズ 伝説のスターメダルはこの漫画版の設定を基にしている。
ムーンライトミュージアムと夢見る帝国では引き続きヒューポーが相棒。
明言はされていないが、おそらく時系列的な続編は風のクロノア2である。

クロノアはまた新たな世界に召喚されたのだと納得できるとして、ヒューポーの扱いは…。


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最終更新:2023年01月23日 17:20