RPGツクール SUPER DANTE

登録日:2015/02/01 (日) 21:44:04
更新日:2024/03/18 Mon 16:41:06
所要時間:約 5 分で読めます



概要

1995年にアスキーから発売されたSFC用のRPGコンストラクションソフトである。
当時のPC版で発売されていた「RPGツクール Dante98」の移植版であり、サブタイトルはその名残である。
コンシューマー版のツクールとしては初の作品となる*1

システム

主人公、マップとイベント、魔法、アイテム、敵キャラ、出現範囲、タイトルの設定等の編集を
それぞれメインメニューから選択して編集する。
メインメニュー→各編集メニューを選択して編集の流れは家庭用ツクールの基本構造となっている。

今作の仕様

購入者「よーし、これでDQやFFを超えるゲームを作ってやるぜ~」 経験者「無理です…」

今作は家庭用ハードの仕様と容量制限、そしてRPGツクールの初期の頃の作品ということもあって
かなりの制約が課せられる。具体的には…

  • フィールドはあらかじめ指定された4種類からの選択制
    • 用意されたフィールドは無駄に広く、大半の地域は手付かずとなる。
    • 短編の場合、プレイヤーが余計な所へ行ってしまいやすいので島や一大陸を利用してその中で完結させる、船や飛行船を用いる場合はイベント等で上手く誘導する必要がある。
      • 敵だけ出現するようにしておまけエリアのような扱いにするのもアリ(ただし後述の問題で標記等の配慮は必要)。
    • マップは城、町、ダンジョンの三種類のみで様々なパターンで形成されたマップパーツを組み合わせて作る。
      • マップは各エリア毎に作成が可能。
Dante98は一画面を境界線で区切る形で*2フィールドを含めた各マップを作成していた。また、マップを一から作るのは初心者には厳しい面もあるのでここに関しては使いやすくなった面もある。


  • 主人公、敵に個性を付けづらい
    • 主人公の能力=成長率となる(力を5に設定するとレベルアップ毎の成長も5ずつ成長する)。各キャラのパラメーターをしっかり調整しないと格差が生じやすくなりやすい。
      • 職業、常時発動型スキルといった要素は一切ない*3
      • また、初期装備も設定不可能。イベントなどで装備入手可能イベントを用いる必要がある。
      • 「味方加入→ボス戦」という流れだと新規加入キャラは大抵足でまといと化す。
    • 敵のグラフィックは色変えができない、ドロップアイテム設定も不可能。
      • 敵も魔法が効く効かない、2回攻撃と言った当時のドラクエ(Ⅳ~Ⅴ)レベルの設定しかできない。


  • 魔法は1人で10個しか覚えられない。それ以上覚えようとすると古いものから忘れてしまう。
    • 加えて魔法に関してもあらかじめ設定された効果を編集する内容の為に重複している攻撃、HP回復はともかく状態異常回復やテレポートなどは上手く設定しないと詰む可能性も…
    • 更に「どのキャラもLv1~99の間に全ての魔法を覚える」という仕様のため、覚えない魔法は習得Lv99にするしかなく、Lv99になると一気に全魔法を習得してしまう。
      • 魔法グラフィックを見ながら編集する事は出来ないので説明書や資料、戦闘テストを見ながらグラフィックを決める必要がある。

  • 所持アイテムはドラクエ方式で各自10
    • 重要アイテム扱いで捨てられないアイテムを設定できるが所持品が一杯の時の強制廃棄時には捨てられる。
    • また、仲間から外れるキャラに持たせると簡単に詰んでしまう。
      • あらかじめ「絶対に外れないキャラに所持させて、廃棄しないようにシナリオ上で説明させる。」、「スイッチ処理で代用し所持品とは別枠のアイテムという設定にする。」必要がある。


  • 乗り物を呼び出すアイテム等を設定できない。
    • 場所移動イベント設定等が無い島へ乗り物で移動→テレポートで簡単に詰む。これとは別に場所移動を挟むイベント中でテレポートでも最悪詰んでしまう事もある。
      • あらかじめ各地を行き来を出来るイベントを設定しておくか乗り物を出さないようにする必要がある。

  • 容量がかなり厳しい
    • イベントの容量はせいぜいドラクエ1から2の中間程度(それも1よりの方向で)と思われる。上記の能力格差や呪文忘却を考慮すると初期レベル+20前後で終わらせるのが最適と思われる容量である。
      • メッセージによる容量消費が厳しいので説明や解説を増やすとあっという間に容量を使い切る。
    • 敵はフィールドとダンジョンでそれぞれ32種類、イベント専用で16種類のみ。

  • イベントコマンドは一般的なものしかない。
    • 「特定ボタン操作で発生」、「条件分岐」、「変数」と言ったコマンドは無い。
    • 選択肢も「はい」、「いいえ」のみでランダム分岐も無い。
      • もっとも、これらに関しては当時の仕様で求めるのは酷であるが。

  • 素材の追加は不可能
    • あらかじめ用意されているグラフィックやBGMを用いてしか作れない。ファンタジーはともかくSFや時代劇や現代物を作るのは厳しい。

  • カセット単体では1つ分のゲームしか保存できず複数保存するにはターボファイルが必要
    • またハードの制約上、他者にプレイしてもらうにはゲームデータを保存したカセットが必要となる。


…以上の制約から長編RPGを作ろうとすると容量面や仕様の関係で暗礁に乗り上げてしまう。
仮にイベントを極限まで減らしたやりこみ系RPGにしようとしても成長システムや魔法制限の面でキャラクターの個性とバランスを取るのが困難になる。
イベント内容も一般的なものしかないし素材追加もできないので個性を出しづらい。
実際は「RPG作成ツール」というよりも「RPG制作ごっこソフト」と言った評価になってしまい易い。
ぶっちゃけると「本格的なのを作りたければDante98買え」なんて今作のガイドブック実践編に書かれている位である…

サンプルゲーム『Fate』

「このツクールではこんな感じのRPGが作れるよ~」という説明のために付属しているサンプルゲーム。
北欧神話をベースにしたオーソドックスなRPGで某聖杯戦争とは一切関係ありません(と言うより公表はこちらのほうが圧倒的に先)。
なお、時代の関係と仕様もあって突っ込みどころが大きく…

  • システム面
    • 元はDante98の移植版なのだが今作の仕様に合わせて大幅にストーリーの簡略化、一部シーンの削除と言った縮小処理がされているにもかかわらず容量ギリギリである。
    • ゲームクリアまでに必要なレベルは大体20前後、ほぼドラクエ1程度のレベル。
      • …とは言え後のRPGツクール4やDSのサンプルゲームに比べればボリュームはある。

  • シナリオ面
    • イベントの向きが正面固定の為に最初はウドガル王に背を向けている兵士とヴァンネス
    • 容量の都合上、自分の城が滅ぼされたのに悲しみもしないファルミア(ヒロイン)
    • 初期装備無しのために丸腰でボス戦に挑まされるエイティヴ(戦士)
    • 魔法使いは邪悪な存在と言って地下におびき寄せて抹殺しようとするが自分も(前置も無しで)魔法使えている為に説得力皆無なクライス
      • しかも3人に対したった1人で挑もうとする。コイツのスペック(補助主体で能力も微妙)だとフルボッコにされるのがオチだが…
    • 「魔王の城は山に囲まれている。」→「空を飛ぶ船を呼ぶ笛はハイムさんが持っていたよ」→「ハイムさんはジオルグにいるわ」→「頑張ってね」→ジオルグの場所はノーヒント(一応、地図は説明書にある。)

  • バランス
    • 全体的に敵が強く出現率も高め。
      • 仕様上アイテムもあまり多く持てない為に尚更厳しい。
    • ボス戦が理不尽な状況が多い。
      • 新規参戦の為に装備なしで挑むメンバーがいたり、連戦だったり、メンバーが離脱していたりと初見殺しが大半。

今作の価値

では今作は完全な駄作であるのか?…答えはノーと言いたい。

上記の制約の大半は説明書に記載されている内容であり、システムやコマンド、計算式についてはしっかりと
説明書に記載されており、ツクールに不慣れなユーザーに対する配慮は考慮されている。
Dante98と比べても改善、強化されている面もあるので一概に劣化移植とも言い切れない面もある。
事実、続編で今作の問題の大半は解消されている。故に今作の制約は初作品である為の仕様で決してバグではない。


当時はまだパソコンが普及しておらずDante98自体のユーザーも少なかった。
また、制作ツール自体もそこまで普及しておらず特に家庭用ゲーム機での「ゲーム制作ソフト」は殆ど無かった。
今作は当時の自分用パソコンを持たないゲーム制作に憧れる年少者にゲーム制作の面白さと辛さ、
仕様上の制約を乗り越えたり活かす工夫の必要性を理解させる事となった。

出来ることが限られているという反面、「使い切れなくて持て余す」と言った事が
無いのも地味に評価できるポイントである。

そして今作で物足りないユーザーはDante98や後に発売されたツクールシリーズを購入して
より本格的な作品作りに没頭するようになる等、ゲーム制作への窓口と理解を広げる役割を果たし、
後のツクールシリーズを生み出す原動力となったのである。


また、他メーカーが発売した家庭用の制作ソフトも今作のような操作系になっているのも
今作のシステムが優秀だった事の証明とも言える…筈。

流石に現在では作成ツールとして使うのは厳しいが機会があればぜひ手に取って作品を作って頂きたい。
進化を重ね、出来ることが増えた現行版RPGツクールには無い限られた環境でのゲーム作成で自らのアイディアを
表現するのもいい経験となる筈である。

ただし、現状ではおそらくカセット内のバックアップ電池は切れているので記憶の為にターボファイルも用意する事を推奨する。



余談

現在でもこの作品を購入する者は多かったりする。
…が純粋に作品を作る為ではなく ROM内に残っているゲームデータをプレイして動画などに晒す のが主な目的であるが。
未完成、投げっぱなし、(少なくとも購入者には)理解不能といった物もあるが大抵は 無音で海に放り出されている と言う内容が多い。
ぶっちゃけると ゲーム内のデータが消えている のである。
(元々バッテリーバックアップによるメモリ保持であり、発売から20年経過しているのでデータ保持率は極端に低い。)



追記、修正お願い致します(できれば経験者推奨)。


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最終更新:2024年03月18日 16:41

*1 コンストラクションソフト自体はファミリーベーシックやダンジョンキッド、デザエモン等が既に存在していた

*2 フィールドと「各マップの外観と各建物内全部」で区切るのである。

*3 武器技等は魔法設定で疑似的に作成が可能。