日常の謎

登録日:2010/07/16(金) 01:46:17
更新日:2023/09/04 Mon 17:52:29
所要時間:約 4 分で読めます





『日常の謎(にちじょうのなぞ)』とは、日本における推理小説の用語、もしくはジャンルの一つ。
あらゐけいいち氏による漫画作品の謎ではない。謎だらけな作風ではあるが


【概要】

主に、ミステリーによくある殺人や重大な犯罪といったものではなく、
あくまで日常的に身近な謎の“なぜ”、“どうやって”を解く過程を描く。
例をあげると、「ある日、登校すると教室の黒板に意味の分からない落書きがあったが、誰がなんのために書いたのか」といったものや、
「雨も降っていないのにを差している人がいたが、何故その人は傘を差しているのか」というごく身近な謎である。

小説では多々見かけるが映画やテレビドラマではほとんど見ることはない。
これは、日常の謎が地味で比較的動きが少なく絵的に映えないことと、
仮に解き明かせなくても主人公らが生命の危機に陥ったり、必ずしも犯罪はなく犯罪者を逮捕するという公益的な必要性がないからである。
しかし、何気ない日常の出来事の裏に潜む人間の心理や、
小さな謎から思いがけない真実が露わになることも多く、地味だからと敬遠するのは損である。

「日常」という字面やライト文芸の主流ジャンルであることからほのぼのとしたイメージを持たれることが多い。
が、その実、登場人物全員が誰も幸せにならないバッドエンドやビターエンドを迎える作品も少なくない。
「人が死なない」=「ハッピーエンド」とは限らないのである。


【主な作家】

※作品は「日常の謎」限定で挙げてます

・北村薫

「日常の謎」作家の元祖とされる。
デビュー作の『空飛ぶ馬』がこのジャンルの先駆けとなり、影響を受けた作家も多い。
男性作家だが、女性を語り部とした作品が多く、ミステリー抜きにして物語としての評価も高い。
第141回直木賞受賞。

代表作『円紫さんと私』シリーズ、『時と人』シリーズ、『ベッキー』さんシリーズ等

・加納朋子

デビューから多くの日常の謎作品を発表しており、
ミステリ作家でありながら殺人事件はあまり扱わない、「日常の謎」派の代表的な作家。
連作短編形式が多く、優しく柔らかい作風が特徴。

代表作『駒子』シリーズ、『掌の中の小鳥』等

・米澤穂信

〈古典部〉シリーズ、『小市民』シリーズ等、
「日常の謎」の中でも「青春ミステリ」と呼ばれる作品を主に発表している。
高校生が主人公の話が多く、若者からの支持が多い。
「儚い羊たちの祝宴」「インシテミル」など人が死ぬ小説なども書いている。
ちなみに「インシテミル」は映画になった。ただし原作とは少し設定が異なるようだ。
「このミステリーがすごい!」ランキングの常連。
ちなみに〈古典部〉シリーズ第2作『愚者のエンドロール』では、「人が死なないミステリー」という概念に言及されるシーンがある。

代表作・『古典部』シリーズ、『小市民』シリーズ、『さよなら妖精』等
この古典部シリーズは「氷菓」としてアニメ化された。

・若竹七海

本格からハードボイルド、ホラーに至るまで様々なジャンルの作品を手掛けているが、「日常の謎」作品もまた得意ジャンルの一つ。
人の悪意を潜ませた作品が多いため、後味が悪く好みが分かれやすい作家。
『五十円玉二十枚の謎』の体験者でもある。

代表作『ぼくのミステリな日常』等

・光原百合

初期は絵本や童話を中心に活動していたが、
98年の『時計を忘れて森へいこう』から日常の謎を主に手掛けるようになる。
女性らしい優しくさわやかな話が特徴。ファンタジー要素のある話も多い。

代表作・『十八の夏』、『時計を忘れて森へいこう』、『最後の願い』等

・加藤元浩

漫画家。代表作の『Q.E.D. 証明終了』シリーズでは日常の謎を扱った話も多く、
大体二回に一回くらいの割合で日常の謎が扱われる。
理系出身らしく、その筋道立った論理展開は本格派のミステリファンにも高く評価されている。

代表作・『Q.E.D. 証明終了』、『C.M.B. 森羅博物館の事件目録』等

・坂木司

通称「引きこもり探偵」シリーズ、全3巻。
その他、「和菓子のアン」や「シンデレラ・ディース」など、
主人公が一つの職業のアルバイトをし、その中で起きる謎を解く物を書いている。

・似鳥鶏

米澤穂信の古典部シリーズのような青春ミステリーのシリーズ「理由あって冬に出る」が既刊8冊。
比較的キャラクター重視で、ライトノベル好きにもお勧め。


・初野晴

日常の謎&青春ミステリー「ハルチカシリーズ」が好評を博している。
こちらも「ハルチカ」としてアニメ化された。

・三上延

ラノベ畑出身で、自身初の日常の謎ジャンル「ビブリア古書堂の事件手帖」シリーズが3巻で300万部の大ヒット。
更に文庫初の2012年本屋大賞にノミネート。



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最終更新:2023年09月04日 17:52