多々良島ふたたび

登録日: 2015/05/19 Tue 12:59:11
更新日:2024/04/02 Tue 00:42:54
所要時間:約 7 分で読めます






『多々良島ふたたび』とは『S-Fマガジン2015年1月号』に掲載された短編小説。
同時に掲載された作品に『マウンテンピーナッツ』がある。
著者は『ソード・ワールド』シリーズ等で有名な山本弘。イラストは田中光。

その名の通り『ウルトラマン』の第8話『怪獣無法地帯』の後日談となっている。
主人公は松井であり、ピグモンの話も出てくる。ただしウルトラマンは出て来ない。
まぁ、S-Fマガジンに掲載された作品でウルトラヒーローが登場したのは『マウンテンピーナッツ』の初代ウルトラマンくらいである。
ギンガ』に出て来てくるのに、自分の作品が舞台で出て来ないのも変な話ではあるが……。

また近年のウルトラシリーズのように『ウルトラマン』は『ウルトラQ』からの地続き作品となっており、『Q』からのキャラや名前が登場する。
山本氏は本作を書くに当たり『怪獣無法地帯』を舞台に選んだのだが、本編との矛盾を無くすために『ウルトラQ』等を何度も見直したようだ。

円谷プロとS-Fマガジンのタイアップ企画による作品群共々、
2015年7月23日発売予定の書籍『多々良島ふたたび ウルトラ怪獣アンソロジー』に収録された。
2018年6月19日には文庫版も発売。

『第47回星雲賞 日本短編部門』を受賞した。


■登場人物

  • 松井
この作品の主人公。怪獣無法地帯でピグモンに助けられたあの人。
半年前の事件でなんとか助かった松井は測候所を再建すべく調査に向かう。
由利子の事が何かと気になるで、喜多村に好きな子に意地悪する子供と称された。

  • 江戸川由利子
松井ら調査隊の船に密航した女性の記者。Qからのゲストキャラ。
危険だからと松井等について来るのを反対されたが、なんとか多々良島にまで無事に来られた。
扉絵にも描かれているが由利子を演じた桜井浩子氏に似ていない。田中光氏の絵柄の癖のようなものだろうか……?

  • 中谷教授
『怪獣殿下』にてゴモラサウルスを発見した教授。
多々良島に大量の怪獣がいたせいか今回同行することに。
ピグモンという貴重なサンプルを解剖出来なくて残念がっていた。
他にも人食い植物のスフランが本来大型動物がいない多々良島に生息しているのは可笑しいので、
火山活動で絶滅した植物の空白の席を乗っ取った、ジョンスン島等の余所の島の植物であると推測している。
教授の予想だと人食い機能を保つためのエネルギーをこの島で確保するのは難しいため、数年後には生存競争に負けるとのこと。

かつて松井を助けてくれたものの、命を落とした怪獣。
中谷教授も疑問を抱いていたが、ガラモンと非常に似ているが他人の空似である。
だが本作においてはピグモンとガラモンは深い関係がある。
ピグモンの名前は、科特隊の人がガラモンとそっくりだったため、ガラモンの矮種(ピュグマイオイ)として名付けたそうだ。
元々ピグモンとはチルソニア遊星に住んでいる原住生物であり、チルソニア遊星人ことセミ人間のペットであった。人間に友好的なのはそのため。
ガラモンとはピグモンを兵器利用したもの。

かつてウルトラマンに背負い投げで殺された怪獣。
通常倒された怪獣は腐敗が始まる前に自衛隊が処理するのだが、多々良島は住民がいないので放置されていた。
現在のレッドキングは内臓が消えた途方もなく巨大な骨になっている。

本編ではレッドキングと戦い敗北、逃走した後の行方は分かっていない怪獣。
本作においては本編後の半年間の間に力尽きていたらしく、骨になっていた。
この怪獣は科特隊から報告されていなかったので、
新種の怪獣であり第一発見者のヴィンセント・L・チャンドラー博士の名前が付けられた。




■以下ネタバレ






















  • チルソニア遊星人/宇宙怪人 セミ人間
本作の黒幕。地球人からチルソニア遊星人と呼ばれている、セミのような姿をした宇宙人
を自由自在に屈折させる事が出来るため、幻を生み出し、変身している風に見せかけることが出来る。
ウルトラQで一人だけ生き残った個体。
そのまま母星に帰れば作戦失敗の咎で処刑されるので、ウルトラマンを倒し成果を挙げることで免れようとしていた。
本編では江戸川由利子に変身していた。別に殺していた訳ではなく、都合が良いので由利子と名乗っていただけで由利子の顔すら知らない。
扉絵で似ていないな……と思ったら実際、彼女?も由利子を知らないので似せようがなかったらしい。
とりあえず調査の結果地球の男は可愛い女に弱いとの事で、可愛い子に変身していた。べつに可愛い子に弱いのは地球人だけじゃないんだけどな…

チルソニア遊星人が地球侵攻の為に確保していた複数体の怪獣の一匹であり、その中でも最強の性能を誇っていた。
逃げ出したレッドキングたちに壊された基地の中で、奇跡的に無事だった。
元々再生能力が極めて高かった怪獣だったがチルソニア遊星人が改造を施した結果、攻撃を受ければ受けるほど体質を変化させ無敵になるという体質を得る。
チルソニア遊星人曰く、ウルトラマンでも絶対に勝てないとの事。
チルソニア遊星人の手によって次元回廊に送り込まれ、数日後に東京付近に出現することになる。






■以下ストーリーのネタバレのため注意





















調査隊が怪獣に襲われ松井のみが助かった事件から半年、また調査することになった。


孤島に観測所を建てるとか予算の無駄だろ? 的な声が国会や世間の声が大きくなったことから、その批判に応えるためにも行く必要があるという。
松井はガイド役としてついて行くことに。


出航して一日ほど経った時に密航者の女が見つかった。彼女は自分を記者の「江戸川由利子」と名乗る。
相手が女性のため、野郎ばかりな調査隊は身体検査が出来なかったが、荷物を確認したところカメラと寝袋ぐらいしか無かったこと、
燃料と予定的に引き返せないとリーダー格の中谷教授の判断でこのまま多々良島に。

多々良島に無事に着いた一行。由利子含め10人程度の調査隊は二手に分かれ多々良島の調査をすることに。
スフランやレッドキングの死骸等を調査したりしながらその日の調査を終える。


女だから花が好きだと思ってるの?


その日の夜、喜多村のナンパをスルーした由利子は喜多村が眠りについたことを見届け、夜の火山に向かって歩き出した。
暫く歩き辿り着いたそこは、巧みに隠されていた地球人には建設出来ないような秘密基地だった。
しかしそこで由利子は困ってしまう、何故なら基地は既に壊れていたからだ。
しかし由利子の目的でもある次元転送装置は無事で予想外にも怪獣――ザラガスは無事であり、東京に転送させようとコンソールを弄り始める。


しかしそこで松井が猟銃を持って現れる。
松井は由利子を気にしていたのは気になる異性だからではなく、純粋に怪しんでいたのだった。

由利子――チルソニア遊星人はバレない為に頑張って地球人の事を勉強したのに……と落胆して、どうして正体が分かったのか松井に尋ねる。
松井は荷物を確認した時から怪しんでいたと答える。怪しいものは無かった筈だとチルソニア遊星人は訝しむが、松井は無さ過ぎたと言う。
女性が旅に出る時は一日や二日ならともかく、替えの下着や生理用品を持っているはずで、
記者でしかも多々良島について行こうとするはずの由利子が、替えの下着も持っていないことに松井は怪しんでいたのだった。


それを聞いたチルソニア遊星人は自身の正体と目的を松井に話し始める。
かつてガラモンを地球に送って失敗したが、その事を反省し、考えた結果とりあえずコスト削減しようという事になった。
宇宙人と言えど何百光年と離れた所に物を送るのは大変なようだ。
そこで態々ガラモンを造るよりも現地調達しようという事になり、多々良島にて人工的に火山活動を再開させ、集まったレッドキングたちを確保し改造を開始した。
しかし地球の怪獣はピグモンとは勝手が違いレッドキングたちは暴走、逃走ついでに基地を破壊した。
この時基地にいたチルソニア遊星人の誰かが飼っていたピグモンも一緒に逃げ出したらしい。

地球に派遣されたチルソニア遊星人たちは日本にいた個体を除き全滅、日本にいたチルソニア遊星人も多々良島に帰るすべを失う。


その後新聞で怪獣はウルトラマンに退治されたことを知るが、同時に基地の一部はなんとか無事ということも知る。
多々良島への渡航は禁止されていたが、今回調査隊が多々良島に向かうこと、本物の江戸川由利子という記者が海外に取材に行った事を知り決行することに。
当初は基地の破壊が目的だったが、ザラガスが無事だったため予定を変更した。



地球の怪獣の獰猛さを見くびったせいだ! おとなしく自分の星に帰れ!

私たちの星の掟は厳しくてね。失敗した者は殺されちゃうの。



その後松井とチルソニア遊星人は激しく戦いを繰り広げるが、なんとか松井は勝利することが出来た。
しかし次元転送は既に完了しており、ザラガスは転送されていた。

松井はこの事を東京にいる人に伝えるため、基地から出ようとする――




追記・修正はセミ人間を口説こうと質問攻めにしてからお願いします。


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最終更新:2024年04月02日 00:42