艦隊これくしょん -艦これ- 止まり木の鎮守府

登録日:2015/07/31 Fri 04:00:00
更新日:2020/07/23 Thu 12:05:08
所要時間:約 12 分で読めます





この鎮守府は、わない。




艦隊これくしょん ‐艦これ‐

止 ま り の 鎮




漫画:ヒロイチ
協力・監修:「艦これ」運営鎮守府
発行:株式会社KADOKAWA/アスキー・メディアワークス


ブラウザゲーム『艦隊これくしょん -艦これ-』のメディアミックス作品の一つ。
『月刊コミック電撃大王』誌上で2014年5月号から12月号まで連載された。
2015年2月号からは『電撃マオウ』に掲載誌を移し、2017年8月号まで連載され完結。
電撃コミックスNEXTよりコミックスを発行。全5巻。

主役は原作でも実装以来人気の最上型重巡洋艦の後期改良型・鈴谷と熊野の二隻。
舞台は深海棲艦が出現しない特殊海域に面した鎮守府。
一度たりとも出撃することはなく、戦闘行為のない穏やかな日常を描く。
立ち絵や全身像などで必ずと言っていいほど花を背負う。まるで少女マンガだな。

そして本作を表す三大要素は何と言っても、


か わ い い

百 合 描 写

不  穏


これらに尽きる。
脳味噌を空っぽにしてぼーっと読んでいるだけなら「そうか、鈴谷も熊野も皆やっぱり仲良くしたいのか……ふふ、いいことだな……ふふふ……」という具合に死ぬほど嬉しくなる程度で済むが、本作は要所に深読みする必要もないほどのニュアンスが散りばめられており、実際に原作をプレイしている提督諸氏は勿論、史実に通じている人ならば尚更、作品内での出来事や艦娘の言動へ込められた意味に気付かされてしまう。
加えて、単行本カバー下の本体表紙は古びた筆記帳を模した装飾が施されており、長い年月の経過を思わせるカップの跡や血痕めいた染み、そして第2巻には「検閲済」の判子など、一見華やかな印象の裏に決して見落とすことの出来ない陰影があることを殊更に強調している。
鎮守府の闇は深い……

また、アンソロジーでも活躍中の唯野影吉氏による艦娘紹介コラム『電撃大王鎮守府戦記』も併せて連載されており、同作は単行本にも『止まり木の鎮守府 回顧録』に改題されつつ一緒に収録されているが、単行本第1巻には執筆者として唯野氏の名義は入っていなかった。*1
果たして唯野氏はちゃんと原稿料を貰えているのだろうか?
KADOKAWAの闇は深い……

単行本第3巻の特装版には、ドラマCD『鈴谷と熊野のサンドイッチ』が付属した。




あらすじ    


深海棲艦のいない「平和」な海域に位置する鎮守府に着任した重巡洋艦・熊野。
姉妹艦の鈴谷と同じ任地に嬉しさを覚えるのも束の間、現地の緩みきった空気に彼女は愕然となる。
おまけに当の鈴谷もまた緊張感が欠片もなく、熊野は困惑を通り越して苛立ちを感じ……

何故この鎮守府は実戦に出ないのか?
深海棲艦が出現しない原因は?
一向に姿を見せない提督の意図とは?
こんな場所に何故「艦隊の切り札」が在籍しているのか?
果たして彼女らがこの場所で過ごすことの意義とは?

これは、いずれ戦いに赴く艦娘たちの、ひと時の幸せを綴る物語――




主な登場艦娘    


多過ぎるので以降は恐らく全てをまとめきれていない。
酒好き隼鷹さんやまな板龍驤ちゃんもいるっちゃいるが、大体脇役。
扶桑型姉妹や球磨など名前しか出て来ていない艦娘もちらほら。
逆に金剛型長門型一航戦五航戦などは最前線で活躍しているのか、影も形も見当たらない。


最上型重巡洋艦


鈴谷
三番艦。バストは豊満。カレー大好き。
鎮守府に長く所属しており、特有の緩さにどっぷり浸かりきっている。
一方で鎮守府の実情を知っているかのような節も見られ、熊野には最上や三隈のことを秘匿している。
行きつけのコンビニに案内した熊野が自分以上にそこへ入り浸るようになってドン引き。
持ち物は散らかしっ放しなズボラさとビニール袋は几帳面に折り畳むマメさを同時に有する矛盾塊。

熊野
四番艦。バストは平坦。画力:E-
艦艇の記憶の影響で、独力では目的地に辿り着くことが出来なくなっている。
阿武隈の転任を境に訓練に打ち込むようになるが、鈴谷と擦れ違いが生じ……
歓迎会で「こんな楽しい食事は生まれて初めて」とも語り、様々な物事に新鮮な反応を見せる。
一度無意識に大戦期の記憶を語り出し、「何か大事なこと」を忘れていることに気付く。


阿賀野型軽巡洋艦


阿賀野
ネームシップ。バストは豊満。新鋭軽巡だらし姉ぇ。ぽんこつである。
本鎮守府司令官の秘書艦を自称し、艦娘らの先頭に立つが、実務の殆どは能代がやっている。

能代
二番艦。バストは豊満。いい加減な姉と違って器用に卒なく仕事をこなす。
提督に阿賀野の後始末や尻拭いを任せられているらしく、熊野にはこちらが秘書だと思われていた。

矢矧
三番艦。バストは豊満。姉妹と別行動を取り、大和の付き人のような立ち位置。
大和とは食事や風呂にも同席するが、甘やかさないスタイルで厳しく接している。

酒匂
四番艦。一応第一・二話にモブで登場している。駆逐艦に混じっていても違和感がない。


高雄型重巡洋艦


摩耶
三番艦。バストは豊満。甘いものは苦手で、食べたら胸ヤケを起こす。猫好き。
鈴谷とは以前から親しい付き合いをしており、時に励まし、時に叱咤する間柄。
鳥海と共に姉の高雄と愛宕のいる鎮守府へ転任となり……?

鳥海
四番艦。バストは豊満。文化祭では準備段階から個性の強い面々に手こずらされている。
摩耶と同室で気配り上手。摩耶と一緒に姉二人の所属する鎮守府へ転任することが決まっており……?


利根型重巡洋艦


利根
ネームシップ。バストは平坦。妹の筑摩・鈴谷・熊野とは後期第七戦隊を組んだ仲。
姉の威厳は全くないが、自分なりに筑摩に頼られるようになりたいと思っている。

筑摩
二番艦。バストは豊満。利根のためならば何でもやってしまう面倒見の良い出来た妹。
行動原理は姉の一挙一動に尽きるが、妹として姉に甘えたいと考えることもたまにある。


大和型戦艦


大和
ネームシップにして日本の大艦巨砲主義の代名詞と呼べる存在。バストは豊満。
堂々たる佇まいに反して人付き合いに飢えており、出てくる度に激しく挙動不審に陥る。
妹の武蔵は遠方の他の鎮守府に在籍しているらしく、一人部屋である。


長良型軽巡洋艦


阿武隈
六番艦。バストは平坦。訳も解らず髪型に強い拘りを持っている。
平素の調子が上がらず寝付きも悪いが、演習で急激に成績を伸ばし、転属辞令が下る。
利根の発した「キタカミ」と前方不注意による「また」してもの衝突が鍵……?
なお直接登場はしていないが、長良や名取など他の姉妹艦も本作の鎮守府に在籍している。


夕雲型駆逐艦


夕雲と巻雲
ネームシップと二番艦。出番は少なめ。巻雲はいつも通りっつうか原作通りっつうか。

長波と高波
四番艦と六番艦。単行本第2巻末幕外で再会。
「ユキムルァッ!」「ゥヲォヤカタサムァッ!」と微粒子レベルでほぼ完全に一致した件。

早霜
十七番艦。カレーに並々ならぬ情熱を燃やし、語らせると延々と喋り続ける。
霞と仲良くしようと頑張る清霜を陰ながら支え、原作の台詞の通り見守り続ける。

清霜
十九番艦。戦艦大好き。目指せ戦艦。霞ちゃんもなれるかもしれないよ(無理)
艦娘文化祭で同じ組になった霞を精一杯誘うが、逆に彼女のトラウマを刺激してしまう。
霞の抱く恐怖と願いを看破し、体当たりで挑んだ勝負を通じて、彼女の心を開いた。


朝潮型駆逐艦


朝潮/大潮/満潮/荒潮
ガチ……いや何でもない。ネームシップ~四番艦。まるで幼稚園だな。
まとめて仲良くチューリップ組の仲間になり、満潮のツッコミが追い付かない。


十番艦。この鎮守府きってのクソ真面目な艦娘で、阿武隈の離脱を境に自主訓練に精魂を込める。
清霜との諍いがきっかけで第十八駆逐隊の面々を朧気に思い出し、周りの皆を避けるようになる。
仲間が傷付き失われることを極端に恐れ、礼号作戦を共にした清霜に対してはより一層拒絶を強めた。
一方で最も恐れているのは孤独であり、清霜にそれを見抜かれた末、わだかまりを解消した。


青葉型重巡洋艦


青葉
ネームシップ。バストは豊満。艦娘文化祭で熊野らチューリップ組にて「お化け屋敷」を発案。
多くの艦娘にとって大なり小なり因縁のある艦だが、本作では順当に熊野と親交を深めている。
一応(?)ほぼ同型艦にあたる古鷹も本作の鎮守府に在籍している。


陽炎型駆逐艦


秋雲
十九番艦。艦娘ぶっちぎりの文化系。ってなワケでやっぱり絵ばっかり描いている。
鈴谷らヒマワリ組が一致団結した様子を描き止めた。清霜のリクエストには応えたのか不明。
やたらと多い陽炎型だが、本編に登場した他の姉妹は今のところ雪風とまいのわくらい。あとは回想で。


球磨型軽巡洋艦


木曾
五番艦。第1巻末幕外で登場し、まるゆの面倒を見ることに。
なんでこの娘だけ最初から改二なんですかヒロイチさん?


夕張型軽巡洋艦


夕張
ネームシップ。彼女が練習メニューを組むと予想以上に大変なことになるらしい。
艦娘文化祭準備段階でも兵装マニアらしく装備に手を加えていて後ろの睦月と如月がビビッていた。


三式潜航輸送艇


まるゆ
浜辺に打ち上げられていたクラゲならぬまるゆさん。
木曾が一人部屋だったので強制的にルームシェアとなった。仲良きことは美しき哉。




用語など    


艦娘
最早毎度お馴染み、太平洋戦争期に活躍した艦艇が少女の姿を模して顕れた存在。
本作において艦娘は「『艦の魂』を宿すことで『艦娘』となった少女」(大本営発表)とされている。
魂に残留する記憶が蘇るにつれ、艦娘は自分自身を「かつて存在した艦艇の生まれ変わり」と認識し、艦娘となる前後で元の人格が激しく変質する事例もあるらしい。
また、艦にとって強く刻み込まれた出来事や感情は艦娘の性質や傾向にも大きく影響を及ぼす。
要するにニンジャソウルがディセンションしたのと似たようなもの……なのか?
もっとも第1話でちょろっと言及されただけで、以降のエピソードではほぼ無かった事にされてしまっている節もある。
原作通り(?)風呂に入れば傷が治る摩訶不思議でお手軽な体質。

「鎮守府」
深海棲艦が出没しないという特殊な海域を管理している、本作の主な舞台。
自主訓練や遠征・演習は行なわれているが、所属している艦娘は全員実戦経験がない……らしい。
掲げられたモットーは『衣食住最優先』で、基本的に至れり尽くせり。
トレーニングルームや自習室、工廠から入渠用の露天風呂まで完備している。エステはない。
補給所はセルフのガソリンスタンドめいている。らっしゃーせー!
ここで一定の条件を満たした艦娘は他の鎮守府へ転任となり、いなくなる。
一部の艦娘はこの鎮守府の本質と実態を理解しつつ、姉妹やこの場所を守るためにそれを黙秘している。

「提督」
上記鎮守府の最高責任者。紛うことなき海軍司令官・提督
確実に在籍してはいるものの明確に姿を現すことはなく、秘書とする阿賀野に時折指示を出す程度。
その阿賀野も普段は提督の手を離れてアウト・オブ・コントロール。
しかしながら艦娘の登録・異動など人事に関する執務は怠っていない模様。
だが、あまりにも顔を見せないためか、一部の艦娘はその存在を忘れかけている。

食事処 鳳翔/間宮
軽空母・鳳翔/給糧艦・間宮が切り盛りする鎮守府敷地内の店舗。
創作に付き物の艦娘ら行きつけとなる店であり、本作にも当然の如く登場する。
間宮は本編中でも甘味や軽食などを提供しており、お弁当の中身はまるでピクニック。
スペシャルメニューのデカ盛りカツ丼はやたらと重くて鳳翔さんでも一度に二つまでしか運べない。

艦娘文化祭
阿武隈の転属以降重苦しくなった空気を入れ替えようと阿賀野が提案した行事。
複数組に分かれて出し物を競い、優勝チームには阿賀野による予想も付かないご褒美が待っている。
祭の主役は艦娘・客も艦娘と完全に内輪の催しになりそうだが……?
たぶん陽抜は関係ない。たぶん。








忘れた痛みは何処かで消えずに残っている

羽を休める鳥たちも、やがていつかは飛び立たねばならない

少女たちに与えられた束の間の、偽りの休息

凪の海のハルシオン・デイズ








追記・修正は全てを思い出した時にお願いします。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • 艦隊これくしょん
  • 艦これ
  • 漫画
  • ヒロイチ
  • 電撃マオウ
  • 百合
  • 鎮守府の闇は深い
  • 最上型重巡洋艦
  • 止まり木の鎮守府
  • 優しい世界
  • 予備役
  • 記憶
  • 日常系
  • メディアミックス
  • 唯野影吉
  • 艦これメディアミックス項目

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2020年07月23日 12:05

*1 氏の名前自体は単行本第2巻で目次に初めて明記され、巻末にもゲストとしてイラストやコメントと併記された。欺瞞を感じる。