バイオハザード ~マルハワデザイア~

登録日:2016/01/21 Thu 20:29:36
更新日:2023/11/15 Wed 23:32:17
所要時間:約 16 分で読めます




『バイオハザード』シリーズの正統なる外伝であり、週刊少年チャンピオンで連載された漫画。
著者は芹沢直樹氏。全5巻。
最終巻には「事件から数カ月後の中国」を描いた“special epilogue”も収録されている。

シリーズ初のコミカライズ作品で『バイオハザード6』の前日談に位置付けられ、同作に登場するクリス・レッドフィールドピアーズ・ニヴァンスもレギュラーとして登場しており、『6』に繋がる伏線も用意されている。

基本的に舞台である学園で起きたバイオテロやBSAAの活躍がメインであるが、校内における閉鎖的環境やスクールカースト等、学園モノならではのドロドロした人間関係も描かれている。



【ストーリー】

アジア最大の名門校・マルハワ学園。
陸の孤島であるその学園で、一人の女子生徒が謎のゾンビ化を引き起こしたという。
調査に訪れたBSAAアドバイザーのダグ教授と、その助手である甥のリッキーは、次第に拡大するその惨劇に巻き込まれていく。
惨劇の裏で不気味に微笑む黒いローブの女…。
そしてダグ教授の足取りを追うクリスらBSAAメンバー…。
偶然に絡み合った糸は必然の悪夢を紡ぎ、『バイオハザード』に新たなる血塗られた歴史を刻む。



【登場人物】

  • リッキー・トザワ
本作の主人公。20歳。「しびれるねぇ」が決め台詞。
ベネット大学理工学部2年生の青年でただの一般人
ラクーンシティの一部の一般市民のような超人さもなく、レクチャーを受けるまでは拳銃の扱いすら覚束ず、配管が入り乱れた通路で不用意に発砲してしまい、跳弾に見舞われるシーンもあった。
強いて言えば悪運の強さは一般人離れしている。
正義感が強く、明るく快活で誰に対しても物怖じなく接する人懐こさを持つ。
単位不足で留年になりかけており、単位獲得を条件に叔父のダグ・ライトの助手としてマルハワ学園へ向かう事になったのだが、そこでバイオテロに巻き込まれる羽目になる。


  • ダグ・ライト
リッキーの叔父であるベネット大学理工学部教授。44歳。
細菌学が専門でウィルスや生物兵器の知識を持っており、バイオハザードシリーズで起きたラクーン事件やバイオテロにも詳しい。
教鞭を執る傍ら、BSAA極東支部とアドバイザーとして関係を持っている。
北米支部と共にショッピングモールで起きたバイオハザードの調査を行った事があり、その縁でクリスとの面識もある。
その際に彼がバイオテロと戦い続ける事を「宿命か、或いは呪いか」と考察した。


バイオザードシリーズでおなじみの主人公。
この時点でオリジナル・イレブンの特権を放棄しており、BSAA北米支部の隊長としてバイオテロの一掃に力を入れている。


  • ピアーズ・ニヴァンス
クリスのパートナーであるBSAA北米支部の隊員。
『6』に先駆けて本作に登場。


  • メラ・ビジ
本作で初登場したBSAA極東支部の女性隊員。
某ガンダムヒロインを思わせる髪型と褐色肌が特徴。

ラクーン事件で当時ラクーンシティに出張中だった両親を失った過去を持ち、その経験からバイオテロを憎むようになり、BSAAに入隊した。
当初は科学部に所属していたが、数年後にB.O.W.を効率よく駆除したいという考えから実戦職へと転属、負け続けながらも持ち前のハングリー精神と実戦訓練で経験を積みスキルを磨いた結果、BSAAの一角を担うに相応しい実力者に成長した。
現在は極東支部にエージェントとして所属しており、初登場時は単独で大量のB.O.W.とやり合う程の戦闘力を披露していた。
因みにかなりボリューミーな食事を摂るピアーズですらドン引く大食漢であるらしく、特に麺類には目がないようで初めて食べるちゃんぽんに明らかにテンションが上がっていた。


  • マザー・グラシア
マルハワ学園の理事長。32歳。
修道服が特徴の女性で本名はグラシア・デレニカス。かつてはダグの恋人であった。
学園の運営に関しては異常なまでに力を入れており、学園を守るためなら隠蔽や犯罪まがいの行為も辞さない。
ある意味被害者と言えなくもないが、実質全ての元凶。
少なくともバイオテロが起きるキッカケを作ってしまった。


  • ビンディ・ベルガーラ
本作のヒロイン。
学園の生徒会長で黒髪と褐色肌が特徴の女子生徒。
エリート意識が強い生徒が多い学園の中で数少ない常識人である。
序盤で突然姿を消した親友のアリサを心配していた。


  • ナナン・ヨシハラ
学園の生徒である日系の少女。ある意味本作一番の被害者。
3ヵ月前から行方不明になっている。
ベネット大学の学食でシェフを務めている父親が何ヶ月も手紙の返事が帰って来ない事を不審に思い、ダグの行方を追って大学を訪れていたクリス達が彼の足跡を追いマルハワ学園に行くと知り、彼らに「ナナンを探して欲しい」と依頼した。


  • アリサ・リン
学園の副生徒会長である女子生徒。
社交的で真面目な性格であり、よそ者であるリッキーに対しても差別することなく歓迎していた。
序盤では彼に絡んできた不良の生徒を咎めて追い払ったり、積極的に好意を寄せたりと友好的であったが、のちにゾンビ化してリッキーを襲いかかっていた。その後、グラシア達の手で焼却処分された。


  • レイ・スー
主幹教諭。
年齢は不明だが、人道支援に訪れていた若き日のグラシアにタヒルと共に出会った頃はまだ10代と見られるため、少なくともグラシアよりは年下の可能性がある。
眼鏡をかけたオールバックの男性であり、サーベルの達人である。
沈着冷静な性格であるが、学園内にゾンビが現れた際にはサーベルでゾンビに立ち向かうほどの勇敢さを見せていた。
その一方では、グラシアを崇拝レベルで心酔しており、少しでも彼女を侮辱する者に対しては怒りを露わにしてサーベルを向ける一面がある。
本質的にはグラシアと同じく人格に問題がある人物と言える。
地下制御施設で立ち入り捜査をしていたところ、突然停電が起こり、その隙に襲いかかってきたゾンビに噛まれて死亡。
その後、ゾンビと化したが、最期は親友のタヒルの手で倒された。


  • タヒル・カプール
特別高等警備員。
レイとは親友同士であり、彼と同じくグラシアを心酔している。
学園でバイオテロが起きた際には、強硬的な手段で学園を守ろうとするグラシアに懐疑心を抱いて憂いたり、自分達に協力してきたリッキー達に武器を渡して銃の使い方を指導する等、学園の中では一応の穏健派かと思われたが、実際はレイや生徒と同様に強い独善に染まっており、完全にグラシアの忠実な手下になり果てている。
その一面は行動にも現れており、目的の障害となる者は容赦なく切り捨て、中盤では事態を収める為にビンディを全ての元凶に仕立て上げる事をグラシアに提案する等、冷酷な面も窺える。
最期はその行動が仇となって、ダグ共々致命傷を負わされ、自らは命を落とす羽目になる。


  • ヤン・タイミン
中国人の男子生徒。
臆病な性格でメタボな体型が特徴。
バイオテロが起きた際には幼馴染のクワンと共に逃げようとするも、最期は別の場所にいたゾンビに殺害された。


  • グエン・ティ・クワン
中国人の女子生徒。
タイミンの幼馴染であるが、彼とは逆に強気で男勝りな性格。
金属バットを武器にタイミンと共に学園を逃げ回っていた。タイミンが死亡した後はリッキーに助けられてグラシアのいる場所へと向かうのだが、最期はそこにいたビンディに外へと放り投げられたところをゾンビに襲われて死亡した。


  • その他の生徒達
マルハワ学園に在籍している学生達。
その多くが世界中から入学してきた名家の子息、令嬢である。いわゆるセレブ。
よそ者であるリッキーを歓迎してアプローチする女子生徒もいれば、逆にリッキーを差別してカツアゲしてくる不良もいるが、基本的には友好的で礼儀正しい感じである。


  • フードの女
バイオテロの裏に暗躍する謎の女。作中ではフードに隠されていて顔ははっきり描写されていない*2



※以下、物語の核心、さらなるネタバレにご注意ください。














  • 実験体C16
ナナンのなれの果てであるクリーチャー。
C-ウィルスのサンプルを投与されてサナギ化したのち、全身が肉腫で覆われたグロテスクな外見へと変貌した。面影はわずかに残った右半分の頭部のみ。
当然ながら彼女の意思はとうに無く、ビンディの命令のままに動くただの怪物だが、ビンディは生前の様に接するという狂気的な扱いをしていた。
その姿はのちの6に登場したレポティッツァに似ているが、姿形が不定形で数本の触手が生えている。
レポティッツァと同様に肉腫から人間をゾンビ化させるガスを噴射して、多くの生徒や職員、そしてダグをゾンビに変えた。
リッキー達の活躍で肉体を真っ二つにされる程のダメージを負うが、しぶとく生き延びてヘリで脱出しようとするリッキー達に襲いかかり、咄嗟にピアーズを庇ったメラを死に追いやった。

最期はピアーズが放った機銃掃射で肉体を細切れにされて死亡。
その後、現場に現れたフードの女の手によって残った肉片をサンプルとして回収された。


  • 変異ビンディ(仮)
フードの女から受け取ったC-ウィルスのサンプルを自らに投与してクリーチャー化したビンディ。
驚異的な再生力を持ち、当初は自我を失うことなく人間の姿を完全に保っていたが、戦闘のダメージで肉体が変異、顔の一部に複眼が現れ、右腕が巨大な爪に変化する等、その特徴はのちの6に登場したジュアヴォに酷似している。

学園でパンデミックを起こした後、グラシアの元へと向かい、彼女と対峙した。
ちなみにこの時点でグラシアはようやく過ちを認めて全ての真実を公表する決意を固めていたが、時既に遅くグラシアを容赦なく殺害した。
全ての復讐対象を始末した後も多くの生存者に襲いかかり、駆けつけたメラと戦闘状態になり、彼女を追い詰めたが、次第に形勢が逆転して再生力が追いつかずにサナギ化してしまう。
そして、サナギから孵化した際には巨大な蜘蛛のような醜悪な姿に変貌し、最早人間だった面影は甲殻に引っ掛かってるだけの顔の皮膚のみであり、完全に自我を失ってしまった。
最期はリッキーやクリス達の猛攻で倒され、哀れな生涯に幕を下ろした。

その後、ナナンの死に際に幻影として彼女の目の前に全裸姿で現れ、そして…


ナナン……

もういいわ……もう十分だから……

ずっと一緒だから……




【結末】

マルハワ学園を壊滅に追い込んだバイオテロは「不可解な事故」として全世界に衝撃をもって伝えられた。
リッキー達が目の当たりにした真実は、関わった人間が全員死亡した事で証明する方法が無く、裏で糸を引いていたフードの女の正体も結局わからずじまいという事でBSAA内のみの極秘事項になってしまった。

だが、事件の真相を調べていた一部のマスコミの手によってマルハワ学園が隠蔽し続けていた事件の数々が明らかになり、その異常性が全世界に暴かれる事になった。
皮肉にもビンディの思惑通りの結果となり、やがて事件は謎に覆われたままこう呼ばれるようになった…

マルハワデザイア

学園で唯一の生存者となったリッキーは事件の影響で大学を去り、行方不明となった。
一方、クリスとピアーズも多数の死者を出したマルハワ学園のバイオテロに心を痛め、その戦いで命を落としたメラの死が大きな悲しみとして2人の心に刻み込まれた。







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最終更新:2023年11月15日 23:32

*1 かつての脱走時に破壊したと思っていた移動手段がまだ隠されていた事から、今回は念入りにありとあらゆる脱出手段と外部への連絡手段を寸断していた。それでもグラシアがリッキー達に託したヘリだけは念入りに隠匿されていた為に把握していなかった。

*2 最終話では、フードを脱いだ姿が描写されていたが、やはり、顔は影を帯びたような描写であり、こちらもはっきりと描かれていない