カエルの楽園(小説)

登録日:2016/07/06 Wed 01:05:35
更新日:2020/08/01 Sat 21:43:42
所要時間:約 5 分で読めます




我々は、生まれながらに罪深きカエル

すべての罪は、我らにあり

さあ、今こそみんなで謝ろう



カエルの楽園
THE PARADISE OF FROGS

『カエルの楽園』は百田尚樹の小説作品。
2016年2月に新潮社から発刊された。
長編小説と銘打たれてはいるが、童話的な内容の為か文章としてのボリュームはそれ程でもない。

【あらすじ】

脆弱なアマガエルのソクラテスは、凶悪なダルマガエルに荒らされた国を捨てて「楽園」を目指して過酷な旅へ。
共に国を出た六十匹の仲間達は様々な生き物や別の種類の強いカエルに殺され次々と殺され、数を減らしてゆく。

共に国を出たアシュケナージも疲れ果てて、ヒキガエルのクセルクセスが弱いアマガエルをエサにする王国に奴隷の身を受け入れてまでも留まってしまう。

僅か七匹に減った仲間達も森の中でヤマアカガエルに襲われ、生き延びたのはソクラテスとロベルトのみ。

……それでも旅を続けた二匹は大きな岩壁の下へ。
覚悟を決めて岩壁を登り始めた二匹をモズが狙うが、二匹は決死の覚悟で岩壁の頂を目指す。
二匹が崖の上に到着すると同時にモズは突如として何処かへと消えてしまっていた。

二匹の眼前に広がっていたのは、それまでに見たこともない美しい湿地。
傷ついた体を休めていた二匹に声をかけて来たのは優しいツチガエルのローラ。

二匹がたどり着いたのはツチガエルの楽園ナパージュの王国だったのだ。

ナパージュの王国は澄んだ水にも、豊かな植物にも、エサ場にも恵まれ、そこに住むツチガエル達は外からやって来た二匹にさえ誰も彼もが親切な楽園のような国だった。

厳しい世界を見てきたソクラテスには、ナパージュがどうしてこんなに平和なのかが分からない。
興味を持った二匹はナパージュが平和なのは、彼らが忠実に守る『三戒』があるからだと知る。

その事実に感動するロベルトだが、ソクラテスは『三戒』の中身を聞いてますます首をかしげてしまうのだった。

一、『カエルを信じろ』。

二、『カエルと争うな』。

三、『争うための力を持つな』。

一見すると温厚に見えるナパージュのツチガエル達は、かつてはどんなに大きくて狂暴なカエルよりも残虐なカエル達だったという。
ナパージュのカエル達は、自分達の罪を償う為に『三戒』を守り続けているのだという。

ナパージュで暮らす内に『三戒』の教えにのめり込んでいくロベルトを後目に、やはり納得のいかないソクラテスはナパージュの過去を辿ってゆく。

……一方、ナパージュの崖下のどす黒く汚れた沼地に巨大で他のカエル達を飲み込んでしまうウシガエルの国があり、近頃はナパージュの崖下にも近づいて来ていた。

……そして。


【登場カエル】


■ソクラテス
安住の地を求めて国を捨てたアマガエル。
辿り着いたナパージュの素晴らしさを持ち帰れないものかと探る内に『三戒』の矛盾に思い至ってしまう。

■ロベルト
ソクラテスに追従したアマガエルで、ソクラテスと共に生き残った。
ナパージュに辿り着きソクラテスとは逆に『三戒』の素晴らしさに急速にハマっていく。
ソクラテスと共にナパージュの歴史を知り、その事実に衝撃を受けるも目の前の幸せのために目を反らしてしまう。

■ローラ
ソクラテス達を迎え入れた若いメスのツチガエル。
『三戒』を疑うことすらしない。

■ハインツ
若いカエル。
『三戒』を信じている。

■マイク
人気者のカエル。
『三戒』を信じている。
ばかりか、それを疑わせる事をさせない。某密林では最も嫌われているカエル。

■ピエール
祖父の世代からナパージュに住むヌマガエル。
本当はエンエンの国のカエルで、エンエンをナパージュより素晴らしく美しい国と呼ぶが自分はエンエンに行った事すらない。
フラワーズと共に『三戒』を棄てようと言い出したカエルを責める。

■フラワーズ
まだ尻尾がある若いカエル達。
『三戒』を信じきっており、デイブレイクに言われるままに群れている。
自分達の行動の矛盾には気づいていない。

■デイブレイク
醜く肥え太った知識のある老いたカエル。
『三戒』の素晴らしさを集会で説き、それを徹底するために「謝りソング」を歌わせる。
温厚なカエルを装うが、わずかにも自分に反抗するカエルには態度を豹変させる。
ナパージュでも一番の物知りと言われるが、ハンドレッドが言うには「一番の嘘つき」

■ハンドレッド
嫌われもののカエルだが物知り。
口は悪いがソクラテス達にスチームボートの居場所を教えた。
『三戒』を馬鹿にしている。

■ハンニバル
■ワグルラ
■ゴヤスレイ
ナパージュのカエルだが『三戒』に背き体を鍛えている強いカエル。
誰かが困っていると助けてくれる優しいカエル達なのだが、デイブレイク達には激しく嫌われている。

【元老カエル】
ナパージュのツチガエル達で選ばれた、ナパージュの進む道を決める役目を与えられた偉いカエル達。
全部で七匹がいる。

■プロメテウス
一番若い元老で『三戒』破棄を訴える進歩派。
ウシガエルの危険を訴える。
ナパージュを守るためにハンニバル達やスチームボートに協力を得ることを訴えるが……。

■ガルディアン
一番年老いた元老で『三戒』厳守を訴える維持派。
デイブレイク達を味方につけてプロメテウスの決定を覆そうとする。
ソクラテスは、実は『三戒』を守ろうとする勢力が少数派である事に気づいてしまうが……。



【余所のカエル】

■ウシガエル達
ナパージュの岩壁の下の黒く汚染された沼に棲み、他のカエル達を食らい尽くしている。
ナパージュへの歩を近づけているように見える



【僭守】


■スチームボート
この世界でも最強の力を持つ年老いた大鷲。
かつて、ナパージュのツチガエル達との争いの末に彼らを虐殺。
その力が侮りがたかったことから、その力を奪う為に『三戒』を強要した。
……一方、時が過ぎた現在では直接の支配をしない代わりにツチガエルの好きに任せて、自分は与えられた第二の棲家を失わない為に密かにナパージュに迫る危険を排除してきた。
しかし、ツチガエル達が『三戒』の内容を変えてしまう等、危険な方向に向かっても止めようともしない等、世の中に対して疲れてしまっている部分も。
終盤、ある事をきっかけにナパージュを去ってしまう。


追記修正は平和を願うカエルにお願いします。
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最終更新:2020年08月01日 21:43