拳銃家業もラクじゃない(小説ルパン三世)

登録日:2016/11/06 Sun 23:47:00
更新日:2024/01/09 Tue 16:46:42
所要時間:約 6 分で読めます




『拳銃家業もラクじゃない』とは、ルパン三世のトリビュート小説に収録されている作品のうちの一篇。
作者は『新宿鮫』や『天使の牙』などのハードボイルド小説で知られる直木賞作家の大沢在昌。

大沢氏と言えば、夜は銀座のクラブでお姉ちゃん達をはべらせて豪遊し週末はゴルフ三昧という、アニヲタとは対極に位置するライフスタイルの人間だと思っている人も多いことだろう。
だが意外とアニメや漫画、ゲームの話題にも精通しており、こち亀エンジェル・ハートのトリビュート小説にも参加している。

本作は大沢氏が特に大好きと公言して憚らない次元大介を主役に据えており、ルパンは脇役に徹している。
ルパンが緑ジャケットだったアニメPart1の頃を意識して執筆したとのこと。表紙のルパンは赤ジャケだが気にするな。
また、作者がハードボイルド小説を得意としているだけあって、銃の描写が非常に細かく行われているのが特徴。

なお、大沢氏は本作がTVSPの原作に使われることを望んでおり、その際は自ら脚本を書くと宣言している。オファーはよ。


【あらすじ】

とある独裁国家を訪れたルパンと次元。彼らの目的は、国立博物館の宝物殿に集められたお宝だった。
だが不慮の事態で計画は中止になり、早々に出国する羽目に。
空港に着いた二人だったが、搭乗まであと少しというタイミングで警官隊に包囲されてしまう。出立の朝、次元に喧嘩を売って逆に恥をかかされたチンピラが密告したのだ。
警官隊を率いて現れたのは、ドゴン将軍の側近を務める腕利きガンマンのラピッド。
彼は次元に対し、3日後にこの国で行われる早撃ち大会に参加すればお咎めなしで解放すると約束する。
次元が渋々これを承諾したことで、二人はアジトとして使っていたアパートに当日まで幽閉されることとなったが、そこへ一人の少年が忍び込んできた……。


【登場人物】
コンバットマグナムを愛用するガンマン。ルパンの相棒として独裁国家を訪れていた。
早撃ち大会の参加者達がガンマンの風上にも置けない三下だったこともあり、マリオを救うべく銃を使ったことがきっかけで今回の騒動に巻き込まれる。
銃の腕を見世物にする早撃ち大会そのものを快く思っていない。
なお、劇中で語られる次元の過去は本作オリジナルのものなので注意。
「まったく、五右ェ門じゃねえが、朝からつまんねえモン、撃っちまったぜ」

博物館へ盗みに入るべく、半年も前から現地に入って下準備をしていた。
今回の盗みは本来なら不二子も参加することになっていたため、中止になって非常に悔しそう。
偵察のためドゴン将軍の宮殿に忍び込んだ際は、相変わらずの身体能力を披露してみせた。
そこでドゴンが特注で作らせた純金製のコルトを目にしたことで、マリオへの協力を次元に勧める。
「それでこそ次元大介、俺の相棒だ」

  • マリオ
オープンカフェで銃を盗もうとしていた少年。
結果的に自分を助けてくれた次元の腕に惚れ込み、彼に銃の使い方を教えてくれるよう懇願。代償として二人の逃亡の手助けをする。

  • ラピッド
過去に早撃ち大会で優勝し、以後ドゴンの拳銃指南役として側近を務めるガンマン。
右手を負傷しており、軽量で扱い易いグロック24を左手で使っている。
次元とは何らかの因縁がある模様。

  • ドゴン将軍
軍事クーデターを起こして国を簒奪した独裁者。
大のガンマニアで、特にコルトSAAを好んでいる。
が、腕は悪いためマシンガンを使っての掃射の方が得意。
サディスティックな性格で、捕らえた王族を処刑する際はコレクションの試し撃ちを兼ねて自ら射殺している。
後述の朗読会ではキャラを立てるためか名古屋弁で喋るようになってしまった。

  • イーグルアイ
かつて裏社会に名を轟かせた伝説の早撃ちガンマン。
その後メキシコに隠棲し、腕利きのガンスミスとして暮らしていた。
既に引退した身でありながら、名声を得るために彼の命を狙う刺客が後を絶たない。
次元は若い頃、早撃ちの極意を手に入れるべく彼の下で修行をしていたことがある。

今回はラストにちょこっと登場するだけ。しかも電話での会話のみなので姿は出てこない。
ルパンにある取り引きを持ちかける。

本作のオチ担当。故に出番はラストのみ。

出番はない。
公式でもこんな扱いだったような……。
ちなみに大沢氏は、もし本作がTVSPになった場合、大幅に加筆して五右ェ門の出番を増やすと公言している。
だからオファーはよ。


【朗読会】

作者の大沢氏が所属する大沢オフィス(現在はラクーンエージェンシーに改名)の恒例企画として毎年行われていた自作朗読会、その第8回の演目として本作が採用されている。
本作はそこそこ分量があるのに加えほぼノーカットで上演されたため、途中休憩を挟んで約1時間半ぶっ通しで行われた。
配役は以下の通り。
  • 大沢在昌(次元大介、ドゴン将軍、その他モブ)
  • 京極夏彦(ルパン三世、ラピッド、銭形警部、地の文、その他モブ)
  • 宮部みゆき(マリオ、峰不二子、大会アナウンス、その他モブ)
本公演はなんと原作者のモンキー・パンチ及びテレビアニメを制作しているトムス・エンタテインメントの全面協力により、
オープニングでは京極氏製作の映像とともにルパン三世のテーマが流れ、その後いつものタイプライター風のサブタイ表示演出まで行われている(その際に流れるBGMもテレビ本編と全く同じ)。
朗読中は前述の映像を流したスクリーンに、場面転換ごとにそれに見合ったイラストが表示されるようになっていた。
本公演の内容は翌年の朗読会会場でライブCDとして発売されているが、大人の事情でオリジナルのBGMは全てカットされている。

また、大沢氏は作中に登場した銃を海外で実際に撃っているため、公演中に使われる発砲シーンのSE全てにダメ出しをしまくったとのこと。
公演終了後のトークショーでも銃の話ばっかりしている。会場に集まった参加者は女性ファンが多かったため、案の定反応はイマイチだった。

大沢氏曰く、もし版元から許可が下りなければ登場人物の名前を変更して「ルパソ三世」または「ノレパン三世」として上演する予定だったらしい。
ちなみに京極氏の入れ知恵である。このオッサンは……。

特筆すべきはその京極氏の演技。
山田康夫の演技を意識して声を作っており、独特の抑揚や語尾の震える感じを細かく再現している。
また、地の文を語る時は『ほんとにあった!呪いのビデオ』のナレーションの口調や声のトーンを真似ている。おわかりいただけただろうか?
宮部女史はリハーサルの際につい吹き出してしまったとか。

早撃ち大会の場面では、ファンサービスとして大沢・京極両氏の他作品のキャラが出場する書き下ろしシーンがあり、会場に集まったコアなファンから笑いを取っている。



追記・修正は早撃ちの極意を教わってからお願いします。

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最終更新:2024年01月09日 16:46