変身(フランツ・カフカの小説)

登録日:2016/12/08 (木) 20:06:36
更新日:2023/11/16 Thu 15:06:17
所要時間:約 3 分で読めます





「ある朝、グレーゴル・ザムザがなにか気がかりな夢から目をさますと、自分が寝床の中で一匹の巨大な虫に変わっているのを発見した」

という冒頭の一文がとても有名な小説。詳しいあらすじは本家wikiが詳しい。
チェコ生まれのドイツ語作家フランツ・カフカが1912年に完成させ、1915年にクルト・ヴォルフ社から出版したが、ほとんど売れなかった。

登場人物が人間以外のものに変身する物語や小説は数多くあるが、本作は「「虫」に変身した理由」には一切書かれず、登場人物たちもそのこと自体には何の疑問も見せない。
変身後のザムザとその家族である父親と母親、妹との様子が淡々と描写されるという特徴がある。
また、彼の変身した毒虫の全体像がつかめる描写は描かれていないため、読者によってイメージにばらつきが大きいのも特徴。
(例えばある者は「ザムザが変身したのは甲虫である」とし、またある者は「ザムザが変身したのは蜘蛛である」としている)

約90ページと短く文章も難しくないため、読書感想文で「異邦人」(アルベール・カミュ)と共にお世話になったor読んで文学の世界に興味をもったor読んだが訳がわからなかった人も多いのでは?
仮面ライダーにおける「変身」という表現・単語はこの小説が由来であることを知っている特撮好きの人も多いだろう。ちなみに初代仮面ライダーが1971年から放送に対して、「変身」の最初の日本語訳(ドイツ語文学者の高橋義孝氏による)が1952年に発表されている。


日本語訳は本記事作成者が確認しただけで13種類ある(2016年11月現在)。おそらく1900年以降に書かれた小説の中ではいちばん日本語の翻訳数が多いだろう。

翻訳者一覧
  • 高橋義孝(新潮文庫、上で引用した一文はこの版から)
  • 中井正文(角川文庫)
  • 山下肇(岩波文庫)
  • 高保国世(講談社文庫)
  • 辻ヒカル(中央公論社の世界の文学セレクション36)
  • 山下萬里(岩波文庫の改訳、山下肇の子)
  • 原田義人(筑摩書房の世界文学大系、青空文庫に収録)
  • 川村二郎(新潮社の決定版カフカ全集)
  • 城山良彦(集英社ギャラリー「世界の文学」)
  • 池内紀(白水社のカフカ・コレクション)
  • 丘沢静也(光文社古典新訳文庫)
  • 浅井健二郎(ちくま文庫)
  • 多和田葉子(集英社文庫のポケットマスターピース、題名には「うつしみ」とルビをふってある)

  • 種村季弘(河出文庫の世界幻想名作集、一部のみ訳出)
  • 三原弟平(平凡社から出版された「カフカ「変身」注釈」、一文ずつを訳してそこに注釈している)
  • 酒寄進一(長崎出版の絵本版)

冒頭の一文の謎
カフカの小説には多くの謎があるが、上であげた冒頭の一文にも謎が3つある。
1、高橋訳ほかほとんどの訳で「夢」と単数形あるが、原文では「夢」は複数形である。
2、「虫」「毒虫」と訳される単語は原文で”Ungeziefer”、直訳すると「害虫」となるが、元の意味は「生け贄にできない生き物」と何か意味ありげである。ちなみにドイツ語にも「虫(昆虫)」という意味の”insekt”という単語はある。
3、いくつかの訳で反映されているように、原文では「変身した」ではなく「変身しているのに『気がついた』」である。




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最終更新:2023年11月16日 15:06