SCP-216-JP

登録日:2016/12/25 (日) 18:42:00
更新日:2023/03/05 Sun 15:10:40
所要時間:約 5 分で読めます




SCP-216-JPとは、怪異創作コミュニティサイト「SCP Foundation」の日本支部によって生み出されたオブジェクトの一つである。
項目名は『タブーなんてない』。オブジェクトクラスは「Safe」に指定されている。

SCP-216-JPは20■■に某出版社から出版された、自己啓発セミナー向けのパンフレットだ。

A5サイズでフルカラー、中央をホッチキスで止められた至って普通の外見をしており、ページを開くとこの様な巻頭言が目に飛び込んでくる。

タブーなんてない!
やってはいけないことなんて存在しません!
何にでも挑戦することから、あなたの人生は始まるのです!

一見すると、自己啓発の観点から見ればごく当たり前のことを書いている様に見えるこの記事であるが、
実はこの記事を見てしまうとその人物(以下対象)はとんでもない事態に陥ってしまうのである。

この記事を目にしてしまうと、対象の価値観は崩壊してその時『これはやってはいけない事なのだ』と認識していたことを
『悪いとは理解してるんだけどやってみたい』と言う衝動に駆られるようになり、最終的にはその衝動に負けてしまい実行に移してしまうのだ。

つまり、この記事には対象が忌避していることをやりたくなってしまう様に精神構造を作り変えてしまう重篤なミーム汚染が仕込まれているのである。

大抵の場合、人間が忌避するのは他人の心身や財産をむやみに傷つけたり、自らの身体に修復不可能な損害を与えてしまう行為である。
これらの行為は、自らの行為が他人に与えてしまう被害の重篤さや、リスクを犯したことで
結果的に自らが被ることになる不利益の重大さなどが足かせとなって通常は実行されることはない。
しかし、このオブジェクトに仕込まれたミーム汚染はそのリスクを認識できない様にし、好奇心の赴くままにそれらの行為を実行させてしまうのだ。

その結果、対象は周囲の人間に衝動的に危害を加えてしまったり、
本来ならどう考えても無茶苦茶な行為にチャレンジして結果的に命を落としてしまうなど大惨事を引き起こすことになってしまう。

ただし、このオブジェクトが齎らすミーム汚染は突発的なものである為、対象が自らの衝動を実行に移す前に取り押さえたり、
衝動を実行に移すためには甚大な手間と時間がかかることなどを認識することが出来れば中止させることが可能である。

だが、汚染そのものは不可逆性であるため、万が一対象が新たなタブーを犯したいという衝動に駆られてしまった場合には
阻止が間に合わずに大惨事が起こってしまう危険性も否定できない。

幸い、SCP-216-JPの印刷部数と配布先の管理が徹底されていたため、
正式に発行された全数を回収または破棄を確認することに成功しているのが唯一の救いであろうか。

なお、当然の事ながら、財団はこんな傍迷惑なオブジェクトをばら撒いてくれた出版社に探りを入れている。
しかし、問題の記事は担当編集者が外部のライターに「ネガティブなやつらがポジティブになれる、死ぬほど面白い記事を書いておけ」と言う無責任な言葉と共に丸投げしたものであり、実際に記事を執筆したライターは行方不明。
しかも、記事に協賛していたのは準要注意団体である『Entertainment & Enterprise』(通称『E&E社』)*1であったことが判明するなど、
ロクデモナイ結果に終わってしまったのだった。

一度きりの人生、楽しまなきゃ損じゃない? レッツ エキサイティング!

※記事の末尾に記載されていた言葉


SCP-216-JPが関係している主なTale

Taleとは、SCPを題材にした二次創作小説のことである。


「 私は博士 」
針山博士は、恋人である水瀬真紀にふられてしまった。

彼の落ち込みようは半端ではなく、せっかく新しいscpオブジェクトの研究を担当することになったのにまるで力が入らない有様である。

SCP-404-JP、「ロストメモリー」。
オブジェクトクラスSafe。形状は市場に流通している一般的な電子辞書に酷似。
使用者の望む記憶と記録を取得し、中規模な範囲で持続的な改変を起こすオブジェクトだが、その動作に不明な点も多く、過去改変オブジェクトである可能性もある。

助手の嫌味混じりの励ましを得て、何とか再起した針山博士は実験終了後、彼女に強引に別れを告げられた経緯を語った。

その後、カフェテリアに向かった針山博士だったが、腕時計を忘れてしまい仕方なく研究室まで引き返す。
そこで、彼は残酷な現実と直面することになった。
なんと、元恋人が針山博士をふったのは新しい恋人ができたからであり、その新しい恋人が自分の助手だったのだ。

あまりの事態についその場から逃げ出してしまった針山博士は、施設内をさまよい歩いた挙句にオブジェクトの保管倉庫へと迷い込んでしまう。
そこで、とあるオブジェクトを搬送中だったフィールドエージェントと鉢合わせした針山博士は、オブジェクトを収納した後で道案内して貰う約束を取り付け、エージェント達に同行した。

さて、いよいよオブジェクトを収納しようとした時に…事件は起きた。
エージェントの一人が、オブジェクトを格納していたアタッシェケースを開け、その中身をばら撒いてしまったのだ!!

タブーなんてない!

財団職員たる自分がオブジェクトをばらまくなんてもってのほかである…という矜持が、オブジェクトの影響で崩壊してしまったらしい。

咄嗟のことで身体が動かず、ミーム汚染の源である記事をバッチリみてしまった針山博士はその場から逃げだしてしまう。

またもや彷徨っているうちに、執務室まで戻ってきた針山博士に寝取りヤローの助手が声をかけてくる。

タブーなんてない!

喉笛にボールペンを突き立てられ、血の海に沈んでいる憎っくき助手の死体を前に、針山博士は考えた。

もう財団にはいられない。
逃げよう。
逃げれば追ってくるか。
なら、自分がここにいた痕跡を消してしまおう。
この、助手の死体ごと。

タブーなんてない!

ちょうど良いオブジェクトが私の手元にあるではないか。
序でに、このオブジェクトの情報も消してしまえば完璧だ。

タブーなんてない!

それからどうしよう。
そうだ、楽しいことをしよう。
ちょうど、ワンダーテインメント博士という、楽しい事をする見本がいるじゃないか。
404を使えば、どんなオブジェクトも作り放題だ!

タブーなんてない!

まずは、自分に関する情報を消してしまおう。
名前も必要ない、単に『博士』で十分だ。

タブーなんてない!

さぁ…『楽しもう』。

財団が警戒している要注意団体の情報に精通し、彼らの悪質なパロディを生み出してしまう程の技術力を持った謎の存在。
日本で暗躍している要注意団体の一つ、『博士』の一つのオリジンを扱ったTaleである。


CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-216-JP - タブーなんてない
by dr_toraya
http://ja.scp-wiki.net/scp-216-jp

私は博士
by hal_aki
http://ja.scp-wiki.net/i-am-dr

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最終更新:2023年03月05日 15:10

*1 過去に報告されて居るのはSCP-092-JP、2000円弱で依頼者を主人公とした映画のPVもどきの映像を作ってくれるサービスである。このPVの内容はどんなに荒唐無稽なものであろうとも実現してしまうため、もしアクション映画風やホラー映画風だった場合にはーー