ボーイング727

登録日:2017/02/02 Thu 22:43:41
更新日:2022/08/03 Wed 17:32:43
所要時間:約 4 分で読めます





ボーイング727とは、米国ボーイング社が開発した中型ジェット旅客機である。
通称としては「B727」が主流だが、日本国内では時刻表の機体表記で使われていた「B2」と呼ばれることもある。
B2だからと言っても別にステルス能力は無いし爆撃もしないのだが。

概要

ボーイングがB707シリーズに続いて送り出した中型3発ジェット旅客機。
ローカル線向けの機体として開発されたため、「プロペラ機の置き換え用」として小規模な空港でも扱いやすい設計となっている。
尚、ボーイングでは唯一の3発ジェット旅客機である。*1

開発の経緯

1956年にDC-4などのプロペラ旅客機の後継機としてに需要を見込んで開発が始まった。
機体設計は開発期間を短縮するために先代のB707の設計を流用している。ぶっちゃけると「3発版707」。
エンジンに関しては後年のDC-9などのように(経済性などの面から)双発とする予定だったが、
実際に航空会社に話を伺うと「中距離路線と言えどもカリブ海を超えるような洋上飛行を行うこともある、そうなると双発では不安だ」*2という声が寄せられたため、3発機となった。

またこの仕様は、「ホーカー・シドレー トライデント*3の仕様に不満を持った航空会社の意見を受けて決定した」ともされている。
トライデントの仕様は初期案こそ魅力的だったが、開発が進められていくうちに色々(だいたいロンチカスタマーの英国欧州航空が駄々こねたせい)あって「ダウンサイジング」されてしまい、航続距離・乗客数などで不満の多い物となってしまった(特に航空輸送の需要の多い米国に於いては)。
その為「じゃあうちがそんな飛行機作りますよ」となった結果生まれたのがB727ということである。

仕様

先述の通り胴体設計そのものは、B707のものを流用している。
胴体こそB707だが尾翼はT字尾翼(垂直尾翼の上に水平尾翼が付いている)となり、エンジンは後方に3発を集約するという形状になっている。
エンジンを機体後方に集約させたことで主翼はクリーンな状態となり、高揚力装置をしこたま盛り込み凶悪なSTOL能力を得ている。*4
どれくらいのものかって、そりゃあ今まで「滑走路短くてジェットなんて夢のまた夢だあ!」と嘆いていた地方空港にも離着陸できるほど。*5
このためT字尾翼の採用と相まって、結果的とは言え「運動性に全ステ振り」状態になったゆえ、当時の旅客機としては非常に高い運動性を得ている。日本国内では「旅客機のスポーツカー」とか言われたくらいに。
但し運動性が高いということは上昇率・降下率も高くなるということであり、特に今までのプロペラ機に慣れたパイロットの場合は降下率を見誤ったのが原因で事故を起こす…と言った例も幾つかあったようだ(全日空の墜落事故もこれが原因とされている)。
エンジンは(当時の)新型ターボファンエンジン、プラット&ホイットニー JT8Dを採用。
このエンジンはA-6イントルーダーなどに搭載されたJ52ターボジェットエンジンを基としている。
あまりに傑作すぎてB727以外にも搭載機が星の数ほど現れ、稼働時間の累計は15億時間を突破している。*6
低バイパス比エンジンなので今となっては騒音や燃費の面で見劣りするけど、そりゃ今時のエンジンと比べるからだ。当時はターボジェット全盛の時代、これでも他に比べれば遥かに低燃費低騒音ハイパワーだったのだ。

設備の貧弱な地方空港でも取り扱いを容易にするため、機体尾部には収納式のタラップ「エアステア」が内蔵されている。
尾部から加工してタラップになる姿はSF映画のようでカッコイイ…のだが、このエアステアの使用は「D.B.クーパー事件」の影響で使用が中止された。
この事件はどんなもんかというと、D.B.クーパーという男がノースウエスト航空のB727をハイジャックし、身代金をゲットした後でエアステアを飛行中に開けさせて「あーばよ、とっつぁーん」とばかりにそこから脱出したという事件である。これなんてコマンドー?

日本では

日本ではかつてJAL・ANAが(運輸省からの通達による)統一機材として導入していた。
……が、この際ANAは自社保有機の発注に加え、ユナイテッド航空からB727を乗員ごとリースするという契約も結んでいた。(当時はB727は超人気商品であり、真面目に発注→納品を待っていたら年単位の時間を要することとなる)
これにより「B727=ANA」のイメージを形作ることに成功したというエピソードがある。
これらの他に国内ローカル線を飛ばすTDA(東亜国内航空・後の日本エアシステム)でもB727は使用されており、数機がJALにリースされている。

国内幹線の女王として長らく君臨したB727だが、その栄光の裏には勿論負の面も存在する。
特にANAはB727で1966年の全日空羽田沖墜落事故と1971年の全日空雫石空中衝突事故二度の死亡事故を経験し、日本の航空事故犠牲者数ワースト記録を二度も塗り替えて、悪い意味でも「B727=ANA」のイメージを固定させてしまった。
なお1966年の事故当時は航空規則がまだ緩かったためフライトプランをキャンセルし東京大阪を27分・東京~札幌を46分という今では考えられない高速輸送が行われていた。
対するJALのB727は事故を起こしたことはなかったが、こちらはこちらで日本初のハイジャック事件「よど号事件」の舞台となったのである。

余談

B737はB727の胴体設計をさらに流用して作られている。
現行の第三世代の737は基礎設計そのものは一新されたが、機首の部分は未だにB727のものを引き継いでいる。
ロシアのツポレフはB727に近い設計のTu-154という旅客機を作っている。だがこっちはエンジンが高バイパス比エンジンになっていたりする。
元々貨物と旅客どちらにもできる設計がされていたため旅客運用から外れた後に貨物機になった機体が多い。
親米政権時代であったイランでは皇帝専用機として採用されたが、イラン革命の際に皇帝が休暇と称しエジプトに亡命する際に皇帝自らが操縦した。


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最終更新:2022年08月03日 17:32

*1 DC-10やL-1011の3発機競争の際に747を3発機にしたプランを提示したことはある

*2 当時はまだジェットエンジンの信頼性がそれほど高くなく、ETOPSでも例えば『太平洋や大西洋を横断する飛行機は3発機以上が望ましい』となっていた。当時の状況からすれば航空会社の意見はもっともである

*3 ホーカー・シドレーが開発した中距離用3発機。ANAも導入を検討していたことがある

*4 似たような設計思想の機体としてはビッカースVC-10やイリューシンIL-62などもある

*5 ジェット機はプロペラ機と比べるとSTOL性で不利、要するに滑走距離が長くなる傾向がある

*6 日本では空自の川崎C-1輸送機なんかに採用されている