SCP-931

登録日:2017/05/05 Fri 23:21:08
更新日:2023/11/09 Thu 13:04:59
所要時間:この記事は 約三分で 読めまする





我が内に 命の記憶 宿りけり


これなるは 異能宿せし 茶碗なり

番号を 振りてつけたり 九三一

くらす分け 与へられしは せーふなり

元記事の 引用過多は 避けたしが

内容の 表す文も 乏しけり


この品の その内実を 語るらん


見るにつけ 眺むにつけど 茶碗なり

その力 認め識りたる その時に

その者の 身の内にこそ 現れん

すなわちに 財団にては かの力

認識の わざわひなると 呼びたもう


椀の内 見たる触れたる その者の

筆を取り 鍵を叩きて 記す文

たちまちに 五・七・五に 縛られん

さいわいに 季語のあれとは いわねども

まとめずに おれぬ鎖は 五・七・五

然れども 口に紡ぎし 言の葉は

この縛り 受けることなく 伝わらん

縛られし 文の形の その鎖

半の刻 過ぎたるならば 消え去らん

この期間 個々によりては 異なりて

なにゆえか いかなる線か 人知らず


この品を 知らぬ者とて 逃れえず

その者の 椀に及びし 文の上

必ずや 五・七・五を 逃れえじ


かねてより 「俳句」について 知りたれば

その文は 季語を交えし 五・七・五

この品に 触れ覗きたる おおよそは

いずれにも 俳句の知識 なかりせば

すなわちに 季語の縛りを 知らずして

五・七・五 韻のみ踏みて 記すなり



この品の 扱い方ぞ 記すよし


財団の さいと十九に 留め置きて

段位二の 仕切り戸棚に 入れ閉じむ

この棚に 立ててならざる 警備員

この品に 儘触れたるは 禁じられ

触れたくば 段位三をぞ 要すなり


ここなるは 更なる試 記すのみ


平成の 二十八年 睦月にて

この椀を くろすてすとに 用いたり

その物は 二六七三 振られたり

それなるは 死を招きたる みぃむかな

このみぃむ 捕え縛るは 詩と句なり

しかれども 常に新たな 句を要す

なればこそ 常に句を詠む この椀が

収容を 多く助くと 望まれん


ここからは 出演てーる 記したり


「旅に病で夢は枯野を駆け巡る」

このてーる 九三一が 財団の

目に留まり 留め置く以前 記したり

この茶碗 かつてはただの 茶碗なり

主との 絆はとても 深けれど

別れおば 止らることは あらざりき

そのことを 茶碗はいかに 思うのか

全貌は 自身の両目で 確かめん




この茶碗 知りて語るは 易けれど

あにをたの 記事に起こすは いと難し

書きつつも 鈍く痛みし 頭かな





この記事に 抜け誤りを 見たりなば

皆の手で 追記・修正 願うらん

しぃしぃの 表示・継承 基づきて

原文の 在り処と認可 ここに書す

SCP-931 - A Rice Bowl
by Quikngruvn
http://www.scp-wiki.net/scp-931
http://ja.scp-wiki.net/scp-931
旅に病で夢は枯野をかけ廻る 
by to2to2
http://www.scp-jp.wikidot.com/matuobasyou
この記事の 内容全て 以下に依る
クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス





















対情報災害用プロトコルAW-931「幕切れ」の作動を確認しました。
担当職員は適切なミーム接種後、報告書の作成を開始してください。




認識災害への耐性が付与されたところで、ここからは普通に説明する。

SCP-931は、シェアード・ワールド「SCP Foundation」に登場するオブジェクト(SCiP)のひとつである。
オブジェクトクラスはSafe。
項目名はまんま「茶碗」。

……ダジャレではないのでトマトはお帰りください。


これが何かというと、青磁でできたごく普通の茶碗である。
つまり物品系のオブジェクトなのだが、問題は異常な特性。

コイツに触れる、もしくは中を覗き込むことで発生する、強力な認識災害のベクターなのだ。
ではどんな内容なのかというと、曝露した対象が何かを文章に起こそうとすると、それが全部五・七・五の俳句調になってしまうのである。

季語を使わねばならないという縛りはないが、もし暴露した対象が俳句についての知識を持っていれば、その人が記す文章は季語を交えた俳句にできる。
しかも、内容が良くなるわけではないので出来が悪いのは出来が悪いまんまである。

幸いこの現象、曝露からだいたい1時間前後で消えるため実害も少ないが、個人差があるため一概には言えないようだ。
特性そのものはかなり単純で、要するに誰も見ず、触らずを徹底すればいい、というわけで、サイト-19のレベル2ロッカーに鍵をかけて仕舞われている。

しかし、Safeとは言っても完封できているわけではない。
というのは、確かにコイツを誰も見えない・触れないようにして保管しておけば曝露は避けられるが、面倒なことにこの茶碗には、認識災害ベクターのほかに自身に関する情報災害特性が併存している。
つまり、たとえ曝露していなくても、コイツについて書こうとするとやっぱり五・七・五になってしまうのだ。

実際、最初にSCP-931の報告書を書いた研究員は、自らこの特性について喋り、それを録音したものを聞きながら文書に起こそうとしたのだが、情報災害特性のため文面が全部俳句調に。
こんなもの報告書として提出できない、と何度も何度もやり直したのだが結果は同じ。
とうとう心が折れてその場に崩れ落ちてしまったらしい。


ついでに、もともとの報告書の文面を、普通に財団テンプレートに起こしてみよう。

アイテム番号:SCP-931
オブジェクトクラス:Safe
取り扱い方:SCP-931はサイト-19のレベル2低危険度ロッカーに保管されます。SCP-931に直接接触することは認められていません。接触にはセキュリティクリアランスレベル3以上の職員の許可が必要になります。当該ロッカーには警備員を置くことは認められません。
説明:SCP-931は情報災害特性および認識災害特性を有した全長12cm、口径9cmの陶磁器の茶碗です。外部は白く、青いラインが一本入っています。SCP-931は一見すると、異常性のない普通の茶碗に見えます。
SCP-931の起源は不明ですが、調査の結果古くとも20世紀に焼かれたものであることが判明しています。
SCP-931の内部部分を視認した、もしくは手で触れた場合、その対象が記す文章は日本における「俳句」の形式をとるようになります(季語の有無は問われません)。
対象の口述する言語にはこの影響は表れませんが、筆記・タイピングを問わず、文章を記す場合においてこの影響を逃れることは出来ません。この影響は曝露からおおよそ1時間で消失します。
また、曝露した対象が「俳句」についての正確な知識を有している場合、その対象が記す文章は季語を含む正確な「俳句」の形式をとることができます。SCP-931に曝露した対象の大半は「俳句」に関する知識を持たないため、その形態のみが反映されていると考えられています。
SCP-931は情報災害特性を同時に有しています。SCP-931について直接の知識を持たない人物であっても、SCP-931についての文章を記す場合、その文章は必ず「俳句」の形式を取ることになります(追記参照)。
追記:スティーブン博士は音声認識システムを利用し、SCP-931の特性を口述することで情報災害特性を回避しようと試行しました。しかし、その結果はすべての試行において「俳句」の形式となっており、スティーブン博士はその場で膝から崩れ落ちました。音声記録の視聴を希望する職員はスティーブン博士に申し出てください。


クロステスト記録:SCP-2673

現在未翻訳のオブジェクトの一つに、SCP-2673「言葉の狩人」がある。
オブジェクトクラスはEuclid。日本でいうと緋色の鳥に近い特性を持つ。
致死性の情報災害特性を持った「寄生虫」で、思考に寄生して死へ誘導、さらに死亡した曝露者が最後に読んだ文書に潜み、その文書を読んだ人物に寄生。
寄生経路は文書の他に曝露者の音声にも存在するが、その媒体となるのは主に日常生活で普通に使われる言葉。
特定の韻を踏んだ言葉を曝露者が発声し続ける・筆記し続けることでその人物の思考の中に閉じ込めることが出来る。
現在はこのオブジェクト自体の報告書の中に封じられ、最後に読んだエージェントに感染している(なので報告書自体も韻を踏んだ文書で書かれ、冒頭に対抗ミーム接種プロトコルと、末尾に曝露確認キーが添付されている)。
この「寄生虫」は韻による封じ込めからの脱出能力を持つが、それには現在の封じ込め以外の別の韻が必要になる。だからEuclidなのだ。

で、この「韻を踏んだ言葉」に目を付けた財団は、「曝露者が筆記する言葉が全部俳句の五・七・五になる」特性を持ったSCP-931に対象者を曝露させ続けることで封じこめの強化を図っている。
ちなみにまだ結果は出ていない。


余談

日本支部には類似したジョークオブジェクトとして、SCP-57577-JP-J「銀竹の 幻氷溶けて 春日向 撓わの一朶 染め射る美ぞ」が存在。
こちらも性質は似ているが、オブジェクトそのものは認識災害ベクターであるウグイスで、オブジェクトクラスはEuclid。しかも、目視のみならず曝露者の言葉からも感染するというミーマチックエフェクトを含んでおり、曝露してしまうと全ての言葉と文書が短歌形式になってしまう。
こちらよりたちが悪い。ちなみに元は蒐集院が管理していたオブジェクトらしい。


拡張は 一句読みつつ 願います


CC BY-SA 3.0に基づく表示


この項目の内容は『 クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス 』に従います。
この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • SCP
  • SCP財団
  • SCP Foundation
  • 俳句
  • 情報災害
  • 認識災害
  • 何、この…何?
  • 茶碗
  • Quikngruvn
  • コメント欄ログ化項目
  • Safe

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2023年11月09日 13:04