昏き底より出でる者(shadowverse)

登録日:2017/08/19 (土曜日) 23:26:50
更新日:2023/06/26 Mon 01:19:56
所要時間:約 7 分で読めます






「侵されて、破滅して、地の底へぬるりと墜つ。見渡せば暗黒、漆黒。
人よ、識りて畏れよ。其処に息衝く者、罪の肉喰らい咎の骨喰らう絶望」

―『奈落の底』、第二章、第四小節


「昏き底より出でる者」とは、スマートフォン/PC向けTCG「shadowverseに登場するカードの1つである。
CVはマダオ……もとい立木文彦氏。



【概要】


「破滅の果てに汝が罰有り」

初出は第5弾カードパック「ワンダーランド・ドリームズ」。クラスはヴァンパイアで、レアリティは最高クラスのレジェンドである。
ユーザーからつけられた愛称は「倉木」((くら)き)。
イラストはタコのような髭が生えた、禍々しくもどこか荘厳さを感じさせる巨人のような生物。
元ネタはクトゥルフ神話に登場するクトゥルフ。 海外版の神撃のバハムートからの移植である。
海外版の名前も『Spawn of the Abyss』となっておりクトゥルフ神話における海底生物達を指す名称として用いられる『緑の深淵の落とし子(Spawn of the Green Abyss)』を想起させる名前となっている。
フレーバーテキストも相まって、非常に厨二心をくすぐる、その手のジャンルが好きな人にはたまらないカードである。

……しかし実はこのカード、情報が公開された当初から「解禁されたらヤバいことになるのでは?」とシャドバユーザーたちを騒然とさせていたが、
実装後は想定以上のヤバさによりシャドバ史上類を見ないヴァンパイア一強環境という暗黒時代を作り出した諸悪の根源となってしまったことで、変な意味でも有名になってしまったカードである。


8コスト ヴァンパイア フォロワー 6/7(進化後8/9)
【潜伏】
このフォロワーが【潜伏】状態で攻撃したなら相手のリーダーに6ダメージ(進化後は8ダメージ)
【ラストワード】このフォロワーが【潜伏】状態で破壊されたら相手のリーダーに6ダメージ(進化後は8ダメージ)


8コストという重さが気になるものの、見ていただければわかるように、このカードはバーンカードとしてもフィニッシャーとしても最上級の能力を持つカードである。

何せ、フォロワーを攻撃するだけで相手ライフの1/4以上、進化すれば半分近い体力を削ることが出来るのである。
バーンの項目を見ていただければ分かるが、相手ターンの妨害が皆無に等しいシャドウバースでは、相手のライフを直接削るカードのダメージ量はかなり抑えられている。
最大で進化後の倉木を上回る9ダメージを与えられるエルフクラスのスペルカード《白銀の矢》でさえ、そのダメージ量は手札依存で安定性に欠ける上、9コストとこのカードより重い。
単体でここまで安定したダメージを与えられるのはこのカードくらいである。

だが、このカードの強みはそこではない。
テキストを見てもらえればわかるように、ダメージが発生するのは「潜伏状態で攻撃した時」。
つまり、リーダーを直接攻撃した時にも発生するのである。
相手のリーダーを直接殴るのには出してから1ターンかかるものの、進化前でも12ダメージ、進化後には16ダメージという、
強力すぎて規制された《サハクィエル》と《風読みの少年・ゼル》によるコンボを超える恐ろしいダメージを、より少ないコストで叩き込める。
その少し前に何かしらの方法でダメージを与えていればそこでゲーム終了である。

さらに厄介なことに、このカードは潜伏持ち。
相手の攻撃対象にならないどころか効果の対象にすらならず、攻撃される前に除去するのにも一苦労する。
ランダム除去のカードはそれなりにあるものの、ダメージ効果は潜伏状態で発生するラストワード、つまり破壊されたときにも発動する。
つまり、倉木を出されてノーダメージで対処するには対象を取らない破壊以外の除去もしくは変身を使用しなければならないのだが、倉木に対してそれを行えるカードは当時片手で数えるほどしか存在しなかった


……以上の点だけでも非常に対処しづらいカードなのだが、倉木「単体」では、8コスト故の重さもあって、出される前に決着をつける等まだ対処のしがいはあった。
しかし、倉木の本当の恐ろしさはとあるカードと組み合わさったときに発揮されるのである……。


バフォメット
2コスト ヴァンパイア フォロワー 2/1
ファンファーレ デッキから攻撃力5以上のヴァンパイア・フォロワーをランダムに一枚、自分のデッキから手札に加える
エンハンス5;手札に加えたフォロワーのコストを-3する



倉木がヤバいと言われていた理由はこのカードの存在があったから。
デッキの中の攻撃力5以上のフォロワーを倉木のみにしておけば確定でサーチ出来、更にエンハンス効果が発動すれば、倉木を最速6ターンで出すことが可能になる
倉木最大の弱点である遅さを克服することが出来る上、「引けないから勝てなかった」という運による敗北要素を軽減することが可能なのである。

「バフォメット引けなきゃ意味ないじゃん」と思う人もいるかもしれないが、そんなあなたにこのカード群をご紹介しよう。


ミニゴブリンメイジ
3コスト ニュートラル フォロワー 2/2
ファンファーレ デッキからコスト2以下のフォロワーを手札に加える

血の取引
2コスト ヴァンパイア スペル
自分のリーダーに2ダメージ。デッキからカードを2枚引く

べルフェゴール
4コスト ヴァンパイア フォロワー 4/4
ファンファーレ:自分のデッキからカードを2枚引く。復讐状態ではないなら、自分のリーダーに体力が10になるようにダメージ


…おわかりいただけただろうか?
これらのカードの存在もあり、かなり安定してバフォメットを手札に加えることが出来る。
ならばバフォメットのような低スタッツを出す隙を突こうなどと考えるだろうがそうは問屋が卸さない。
もともと復讐で低コストで除去を撃てたりするヴァンパイアな上に今回追加された他のカードは、

トーヴ
2コスト 3/3
このフォロワーは攻撃不能
自分の場に他のニュートラル・フォロワーが出たとき、攻撃可能になり突進を持つ。

豪拳の用心棒
4コスト 3/4
ファンファーレ 体力3以下の相手のフォロワー1体を破壊する。復讐 状態でないなら、自分のリーダーに2ダメージ。

緋色の剣士
5コスト 2/4 必殺
ファンファーレ 相手のリーダーか相手のフォロワー1体に2ダメージ。自分のリーダーを2回復。

どいつもこいつも、盤面を取ることに特化しているせいでバフォメットを出す隙をどうしても与えてしまうのである。
特にトーヴはニュートラル軸にしていればほぼデメリット無しで使える2コス3/3なせいで序盤から盤面を取られてしまいやすい。

つまり、倉木は上記の充実すぎるサポートカードの恩恵を受けた結果、
「安定性と即効性に長けた、最大16ダメージを与えられることの出来るフィニッシャー」というわけのわからないスペックを手に入れてしまったのである。


…というか《不思議の探求者・アリス》を軸としたニュートラルギミック自体が強力であり、ニュートラルシナジーカード全体の中でも前述のトーヴが特に凶悪であったため、別に倉木を出さずとも勝ててしまうことも多かった。バフォメットで呼んでくるよりそのまま盤面で押し切った方がいい場面すらあった。
7コスト疾走の《アルカード》とかもいるので倉木抜きで考えても決定力には事欠かなかった。



上記の研究が進んだ結果、前述したシャドバユーザーの危惧した通り、
……いや、それを遥かに上回るレベルで大氾濫
公式の発表によると、実装直後から7/30までの、このカードを主軸にした「ニュートラルヴァンパイア」デッキの使用率は38.1%、勝率に至っては56%というトチ狂った数字をたたき出し、
ランクマッチを阿鼻叫喚のヴァンパイア地獄に叩き落してしまった。

これは以前猛威を振るった【冥府エルフ】や【ドロシーウィッチ】、【ランプドラゴン】や【ヘクターネクロ】を凌駕する数字であり、右も左もヴァンパイアのあまりにも酷すぎるこの環境を「暗黒期」「史上最悪」と呼ぶユーザーも多い。
実際にこれを機にゲームそのものを辞めたというユーザーも少なからずおり、この時期のアクティブユーザーの割合はかつてない低さであったという。



【その後】

あまりにも暴れすぎた結果、7/31のアップデートで今までに類を見ないレベルでの大規模な修正が行われた。
まず、倉木のダメージを与える効果が、進化前、後問わず5ダメージに固定された
運営は今までレジェンドのナーフに対して非常に消極的であり、ビショップクラスの《スノーホワイトプリンセス》と共に今回初めてレジェンドにナーフが施された。
それほど運営も今回のヴァンパイア一強という事態を重く見ていたのだろう。
さらに、倉木の強さの根幹を支えていたバフォメットはエンハンス効果が削除されサーチの対象もヴァンパイアフォロワー全部と非常に広い範囲に、
トーヴはただの2コス 2/2のニュートラルを出した際に突進を得るだけのフォロワーに修正を受けることとなった。

これによって安定性を著しく失ったニュートラルヴァンパイアは第一線から退くことになったものの、顔面を殴れば10ダメージ以上を与えられるというのはまだまだ倉木の強みの1つであり、
以前ほどの活躍は難しいがフィニッシャーとしての性能は未だ逸品級である。
ナーフ後の環境では【コントロールヴァンプ】のフィニッシャーとして、環境に跋扈する他クラスのニュートラルデッキを狩る側に回ることに。
SFL環境末期においてもコントロールヴァンプの活躍から目にする機会も多かった。

だが、以降の環境では目立った活躍は見せないままスタン落ちを迎えることに。



お・待・た・せ♡

2019年3月、第12弾の実装に合わせて遂にナーフ解除が発表。
かつて環境を支配したコイツの釈放に多くのプレイヤーが恐れおののいた。


……とは言っても実際はそこまで暴れはしていないのが現実だが。
何せ前述のようにコイツの降臨をサポートしていた部下たちの大多数がナーフされているのだ。特にバフォメットが使えないのが痛い。
というか今ではアンリミテッドでしか使えず、「魔境」と揶揄されるアンリミテッドでは8ターン目は既に決着が付いていることもかなり多い。そんなところに速攻で盤面に干渉する力のない潜伏をポンと置いても、無視される確率の方が高い。
単純にフィニッシュだけ考えるなら同じコストの《闇喰らいの蝙蝠》の方が火力と即効性は上であるし。
仮にコイツを置けるような環境になったとしても、カードプールが増加した現在では潜伏を狩る手段やダメージカットが豊富にあるので、以前ほどの絶望感はない。



罪に濡れし者、破滅の果てを知るべし



天閉ざす昏き者

カードパック第13弾『リバース・オブ・グローリー』のアディショナルにて彼が生まれ変わって帰ってきた。

8コスト ヴァンパイア フォロワー 6/7(進化後8/9)
【潜伏】
このフォロワーが【潜伏】状態で攻撃したなら、囁く昏き者3体(進化後は4体)を出す。
アクセラレート 2 ; 囁く昏き者1体を出す。


囁く昏き者
2コスト ヴァンパイア フォロワー 1/2(進化後3/4)
【潜伏】
攻撃時 ターン終了まで+1/+0する


コストとスタッツ、潜伏状態での攻撃時に発動する能力という、元の昏きを踏襲した能力。
本体と、本体から生み出される囁く昏き者による合計ダメージ量は元の昏きと同じ。
しかし、潜伏状態で処理された場合には何も能力を発動できないこと。
召喚時の隙が大きいこと。本体を起動するターンでは相手側は強力なAoEを使える可能性が高いということ。から元の昏きのように暴れまわることは今のところはなく、
アクセラレートで2コストフォロワーとして扱うことが多い。


ローテーション環境では強力な展開力を理由に、《プルソン》と組み合わせて使うユーザーがいた。まあプルソンは彼の実装から1ヶ月後にローテ落ちしてしまったが。

プルソン
10コスト ヴァンパイア フォロワー 6/6(進化後8/8)
アクセラレート8;自分のフォロワーすべてと自分のアミュレットすべてを破壊する。破壊したカードそれぞれについて、「それよりコストの大きいフォロワー」をランダムに1枚ずつ、自分のデッキから場に出す。
【疾走】
【必殺】




「濡れよ、果てよ、嗚呼、嘆く声よ。遍くは飲み込まれ、暗闇の最奥へ流れていく。
さぁ、永久より長く、瞬きより短き、汝の日が始まる。」

―『奈落の底』、終章、第一小節



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最終更新:2023年06月26日 01:19