SCP-832-JP

登録日:2017/11/06 (月曜日) 12:23:00
更新日:2024/04/12 Fri 11:14:53
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( ^ω^ )「さーて、今日も楽しむぞー」





SCP-832-JPとは、怪異創作コミュニティサイト「SCP Foundation」の日本支部によって生み出されたオブジェクトの一つである。
項目名は『リスポーンビーコン』。オブジェクトクラスは「Neutralized」に指定されている。

SCP-832-JPは、電池が抜かれた状態であるにもかかわらず【10月1日12:00】の時刻を表示し続ける直径20cmの電波時計…であった金属部品の残骸だ。

財団との関わり

当初、SCP-832-JPは『電池なしで動く壊れた電波時計』(のちに財団によってSCP-832-JP-1と呼称される)として財団に確保され、Anomalousアイテムとしてサイト-1024の低危険物収容金庫に収容されていた。
ところが2001年10月1日、SCP-832-JP-1が収容されていた金庫室に後述する謎の集団(財団ではSCP-832-JP-2と呼称)が突如出現。
集団は爆弾を用いて金庫室を破壊すると、中からSCP-832-JP-1を取り出して逃走を図ったのである。

財団は、直ちに機動部隊を導入して鎮圧にあたったのであるが、鎮圧用の麻酔銃が一切通用しなかったため、最終手段として銃火器の使用と謎の集団の武力制圧が許可されるに至ったのであった。
しかし、重火器まで動員したにもかかわらず謎の集団に対する掃討作戦は失敗し、集団はサイト-1024から逃亡。

幸いなことに、集団が市街地を避けてサイト-1024近辺の山林にとどまり続けたため、財団は増援を送って機動部隊を再編制させることに成功した。
結局、財団は警備員2名、研究員1名、機動部隊員15名の尊い犠牲を出しつつも謎の集団の掃討に成功。
作戦終了後、謎の集団の遺骸は即座に消滅し、消失地点には大量の松茸が残されるという奇妙な現象が発生した。

その後、SCP-832-JPは機動部隊によって元あったサイト-1024へと移送されることになったのであるが、その道中であろう事か機動部隊の一人であった日下部隊員の手によって破壊されてしまったのである。

ただ、破壊されてしまった事によってそれ以上の異常性が発現しなくなったため、財団ではオブジェクトクラスを「Neutralized」へ再分類する案を検討中だ。

(+_+)「いやー、手ごわかったね、あの集団。今までで最も難易度の高い敵だったよ」


襲撃者

SCP-832-JP-2は、戦闘服に類似した衣服とヘルメットを身に着けた体長約2.3mの人型実体で構成された集団である。
四体一組で行動しており、人間離れした膂力と反射神経を持っているうえ、火器・爆発物・刃物の扱いに長けているという非常に危険な存在だ。
未知の言語を使用しており、こちらから意思の疎通を図ることは不可能であるが、その行動パターンから少なくとも人間と同等の知能を有していると推測されている。


報告書の怪

以上の文章は、ほかのSCiPに関する記事と同様に、財団に登録されている報告書をもとに執筆されたものである…が、現在、この記事のもとになった報告書には原因不明の異常事態が発生してしまっている。
なんと、誰も手を加えていないにも拘らず、報告書の文面の一部が赤く変色してしまったのだ。

一部の文面が赤く塗られたおめでたい報告書といえば、自らに言及する情報に干渉し、自らが人間を凌駕した偉大な存在であると人間どもに知らしめるように誤認させる狼、SCP-488-JPに関する報告書が有名であるが、あちらの場合は報告書にまで干渉してくるSCiPに報告書を滅茶苦茶にされないための苦肉の策であるのに対し、こちらの場合は理由が全く判明していない。

結局、いくら修正を加えても文章の一部が赤くなってしまうため、最終的には財団で情報管理を担っている【記録情報セキュリティ管理室(RAISA)】まで駆り出されてしまう羽目になってしまい、現在、この現象とSCP-832-JPとの関連性を調査中である。

(*’’▽’’)「そうそう、納品ミッションなんかもあるんだよねー。内容は…」


インタビュー記録が語る物

以下の文章は、SCP-832-JPを破壊したのちに拘束された日下部機動隊員に対する尋問の抜粋である。

+ インタビュー対象: 日下部機動部隊員
インタビュアー: エージェント・██

日下部機動部隊員「…██さんはFPS、あーTPSでもいい、なにかそういう系のチームを組んでミッションを達成するようなゲームをやったことはありますか?」
エージェント・██「私は今までそういったゲームで遊んだことはありませんね」
日下部機動部隊員「では説明しますね。これはある戦争ゲームのルールなんですが、まずゲームを始める前に装備を決めたり仲間を募ったりするんです。私は簡単なミッションならソロで、高難度のミッションなら友人と協力して遊んでいます。で、その後参加したいミッションを選んでゲーム開始。スタート地点に転送されてその後はミッション達成のために好きに行動する。敵をキルしたり、レアアイテムを探したり、まあ目的は何でもいいです。そして、もしもミッション中に自分がやられてしまったらリトライを選んでまたスタート地点からやり直す。ここまで大丈夫ですか?」
エージェント・██「ええ、ですがそれがSCP-832-JP-1を壊したこととどういう関連があるのですか?」
日下部機動部隊員「あのデカブツ共の動きを見ておかしいと思いませんでしたか? 奴らはまるで部隊員の頭数、装備、作戦行動の全てを前もって知っていたかのように待ち伏せして迎撃してきました。しかも奴らはサイト内の構造にも精通しているようでした。建物内の死角や遮蔽物を活用されて私たちの部隊は完全に攪乱されました。あんな立ち回りは奴らに予知能力があるか、我々の内部に情報を垂れ流したスパイがいたか、もしくは以前にも全く同じ戦闘をしたことがあるかしない限り絶対に無理です」
エージェント・██「すみませんが、あなたの言いたいことがまだ理解できていません」
日下部機動部隊員「それではまた、ゲームの話に戻りますね。プレイヤーはやられてゲームオーバーになったらリトライできます。ですのでプレイヤーは何故自分がやられたかを分析して反省し、次のトライのために準備することが出来ます。装備を強化したり、強い仲間を募ったり、敵の戦力・作戦を先読みして対応策を考えたり…」
エージェント・██「待ってください、あなたはSCP-832-JP-2群がそれをやっているとでもいうのですか?」
日下部機動部隊員「ええ、その通りです」
エージェント・██「その…状況証拠以外のもう少し別な根拠はないのですか?」
日下部機動部隊員「そうですね…奴の死体から時計を回収した時に、それを見ていた生き残りのデカブツが目に見えてうろたえていたことと、後はあの時計について、奴らを殲滅して死体が消えたすぐ後くらいにいきなり液晶の部分に『Now Loading…』って文字が出てきたことですね。で、文字を見たとたんにハッと気づいたんですよ。「奴らがまたやり直そうとしている」って、そう思ったら後は、考えるよりも早く体が動いて…気が付いたらあの時計を壊してしまった後でした」
エージェント・██「はぁ…もし仮に、仮にですよ? あなたの説が正しかったとしても、我々はタイムリープ現象を観測する手段をまだ確立出来ていませんし、SCP-832-JP-1を破壊してしまったのではオブジェクトの調査も出来なくなってしまい、あなたの説の正当性を立証出来なくなってしまうのですよ?もう少し冷静になって待つことは出来なかったのですか?」
日下部機動部隊員「それでは遅いんですよ! …すみません。自分でもおかしなことを言っているのはわかっているんです。財団に所属してる職員として絶対に犯してはいけないことをしてしまったこともわかっているんです。ただ、どうしても怖かったんですよ!」
エージェント・██「何が怖かったのですか?」
日下部機動部隊員「奴の目です! 俺がとどめを刺した奴の目です! 友人とゲームで遊んでいるときに何度も同じ目をして言われたから、言葉はわからなくても奴が死に際に何を言おうとしていたのかがすぐにわかりました!」
エージェント・██「SCP-832-JP-2は何を言おうとしていたのですか?」
日下部機動部隊員「『よくもやりやがったな、次は絶対お前から殺してやる』」


(+o+)「くーやーしーいー」


補筆

破壊されたSCP-832-JP-1を調査したところ、内部に磁気媒体と思われる装置が内蔵されていたことが判明した。
記録されていたのは以下の文章である。

納品ミッション
依頼人:Xguiwhdejuioe
ミッション内容:Gyuhdiew × 40 の納品
報酬:duciGTYFtyiuw × 4
5,000,000eoi
場所:fewiofhwfio(昼)

( ˘•ω•˘ )「えー、何故か『ロードに失敗しました。ビーコンが破損している可能性があります』って表示が出るだけで二度と遊べなくなったのですが…オイコラ運営!?」











メタ視点からの余談

結局、SCP-832-JPは何だったのかというと、日下部機動隊員が推測したとおり、異世界から放り込まれたゲームのリスポーン地点を決定するための装置である。

ゲームのプレイヤーである異世界の人間にとっては、この一連の出来事はMORPG*1を遊んでいるような感覚だったのであろうが、勝手にゲームのフィールドにされてしまった財団の存在している世界(以降は基底世界と呼称)の住人にとっては堪ったものではない。
今回の場合、幸いにもSCP-832-JPを回収したのが世界最高レベルの軍事力を持った財団という組織だったからよかったものの、もし民間人に回収され、どこかの民家にでも置かれてしまったら一体どうなっていたのであろうか?

異世界人にとって、基底世界の人間はゲームのモブキャラと同様、ゲームのルールがどうなっているのかは不明であるが、もし、モブキャラに対する残虐行為が容認されていた場合、財団がおっとり刀で駆けつけてくる前に死人の山が出来ていた可能性だって否定できないのである。

また、モブキャラへの残虐行為が禁止されている場合でも…RPGを思い出していただきたい。勇者一行が、行く先々の民家で一体何をやっているかを。
ゲームのルールがどのような形になっていようとも、勝手に押しかけられ、踏み荒らされることになる基底世界の住民にとっては迷惑千万な事には違いないのだ。

そして、蛇足で良いならば、もっと「嫌な」想像もできる。
そもそも財団世界を「ゲーム世界」と見るならば、財団は言ってしまえば「内部からプログラムに干渉し世界を書き換える技術を持つ、或いはそのようなオブジェクトを多数保有する異常なNPC」と受け取ることもできる。
…例えばスーパーマリオで1-1のクリボーが、周囲を突然溶岩の海にするという「書き換え」を行い、どうあがいてもマリオをゴールさせる事をできなくさせたら、画面の外でコントローラーを握っているプレイヤーはどう思うだろう?
そんなものは楽しい、つまらないという以前にそもそも「ゲーム」として成り立たないはずだ。

そのような場合、仮に外宇宙の「運営」が無能な存在でないとしたら…
十中八九、財団という存在を抹消しにかかるはずだ。
ゲームバランスどころではない、自らの意思でゲームそのものを書き換え破壊することも十分可能な、危険なNPCなのだから。

異常存在に立ち向かうための財団の様々な装備や機器が、「ゲームバランスを崩壊させる異常な武器」とみなされれば…
財団という異常なNPCを抹消する"アップデート"が実行されたならば…?

因みに、この記事の元となった報告書は四部構成となっており、読み進めるごとに段々と手慣れていく異世界のゲーマー連中と必死になって戦う財団日本支部の苦労を知ることが出来る。



追記・修正は、この記事にまで乱入して来た異世界のゲーマーを今度こそ確実に排除できる方法を思いついた方にお願いします!!!

CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-832-JP - リスポーンビーコン
by north_country
http://ja.scp-wiki.net/scp-832-jp

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最終更新:2024年04月12日 11:14

*1 複数プレイヤー参加型オンラインRPG。複数のプレイヤーがネットワークを用いて一つの世界で同時にRPGをプレイするタイプのゲーム。【ファンタシースターオンライン】などが有名。