モチモチの木

登録日:2017/11/11 (土) 01:45:52
更新日:2024/04/07 Sun 03:41:17
所要時間:約 5 分で読めます






人間、やさしささえあれば、やらなきゃなんねえことは、きっとやるもんだ。




「モチモチの木」とは、斎藤隆介(作)、滝平二郎(絵)の絵本。

【解説】



1971年に岩崎書店から出版された作品で、臆病者の男児の勇気を描いた作品。

小学校の国語教材などでも掲載されたことがあるため、絵本でも知名度が高い作品。
というか教科書経由で本作を知った人がかなりの割合を占めるのではないだろうか。

本作の特徴としては、切り絵作家であるで滝平二郎によって描かれた絵本のイラスト。
太く鋭い線で夜の恐ろしさやモチモチの木の大きさが描かれており、インパクトに残りやすい。
作者の斎藤隆介は本作の切り絵に対して「格調高く、描写は適確で、情熱は沈潜し、しかもそれだからこそなつかしい無限の抒情がうたわれている。」と述べている。

物語面でも、怖がりな男の子が勇気を出して行動に出る一連のストーリーは評価が高い。
物語全体から出る温かい雰囲気やラストシーンなども見所の一つ。

部数は現在までで130万部を突破しており、絵本としてはベストセラーの部類に入る。


【簡単なあらすじ(ネタバレ注意)】


峠の猟師小屋に祖父と住む豆太は、祖父や死んだ父親に似ずに怖がりだった。

夜中には祖父に連れて行って貰わないと便所に行けなかった。
家の前には「モチモチの木」と名付けられたトチノキがあり、美味い実を付ける木だった。
そんな木に対して昼は強気に実を催促するのだが、夜になるとお化けのように見えて豆太は脅えていた。

霜月の二十日の晩に、そのモチモチの木が灯をともす日だと教えられる。
山の神様の祭りで勇気ある子供1人しか見れないようで、祖父や死んだ父親はこれを見たらしい。
それを見たかった豆太ではあるが、恐怖心が勝って諦めて寝ることにした。

しかしその夜、祖父は腹痛で苦しみだしだ。
祖父を助ける為に決心した豆太は、裸足の寝間着姿のまま半里離れた麓の村の医者の元へと走り出す。

事情を聴いた医者に背負われながら共に小屋へと向かう中で、モチモチの木に灯がともるのを目撃する。
だが、その後は医者の手伝いに専念するのだった。
次の朝に祖父が体調を回復すると、モチモチの木の山の神様の祭りに関して語りだしたのだった。

しかし、祖父が回復した後は変わらず豆太は祖父を起こさないと便所に行けないのであった。


【登場キャラクター】


・豆太

本作の主人公となる5歳の男の子。

物語冒頭の文章で「豆太ほどおくびょうなやつはいない」といきなり罵られてしまう性格。
夜中に便所に1人で行けないという子供特有の性質を抱えている。
そのため、真夜中にじさまと呼ぶ祖父を起こしてトイレに同行させていた。

家系的には荒々しく勇敢な血筋なようで、何故豆太だけ臆病なのかと評されている。
容姿も男の子らしくないようで、女子のように肌の色が真っ白*1だとのこと。

豆太の父親は熊と取っ組み合いをした末に、頭を裂かれるという形で死亡している。
母親の詳細は不明だが、父親を失ったことで祖父であるじさまに引き取られて山の峠の漁師小屋で暮らしているようだ。

暮らしている小屋の前にある大きなトチノキを「モチモチの木」と命名している。
その実で作る粉が美味いことから、昼に木の下で実を催促するが夜中になると逃げだすという行動をとっていた。

霜月の二十日の丑三つの夜に1人の勇気ある子供が見れるモチモチの木の灯を見たがっていたが、臆病なので諦めていた。
その夜に熊の鳴き声で目を覚ますが、熊と思われたその声の主は腹痛に苦しむじさまだった。
この事態によって、医者を呼ぶために2km離れた村まで勇気を振りそぼって駆け抜けることになる。
そして、医者を呼ぶ中で灯がともるモチモチの木の姿を見たのだった。

…が、騒動後も、やっぱり夜中にじさまを起こして便所に向かうという習慣を続けている。

・じさま

豆太の祖父となる人物で、豆太と暮らしている。

父親を幼くして失ったという経緯があるからか、一緒に暮らしている豆太を可哀想と思いながらかわいがっている。
豆太の死んだ父親=自分の息子という訳だが、そう考えるとじさまも中々過酷な人生経験をしていると言える。

64歳になるが、未だに青じし(カモシカ)を追っかけて離れた岩から岩へと飛び移るなどパワフルな人物。
夜中に豆太に小声で呼びかけられてもすぐに目を覚ますなど、対応も素早い。
秋にはモチモチの木の実を使った餅を作ってもいるようだ。
作中の描写を見る限り、煙草をよく吸う(煙管を用いている)喫煙者でもある。

幼い頃、霜月の二十日の丑三つの夜にモチモチの木の灯を見た経験があることを語っている。
しかし、同じ霜月の二十日の夜中に急性の腹痛を起こしてしまう。

腹痛から回復した後は「お前は山の神様の祭りを見たんだ」として、豆太の勇気と人間の優しさを問いながら笑っていた。

・医者様

麓の村にいる高齢の男性の医者。

やってきた豆太の話を聞き、豆太と薬箱をねんねこ半纏(ばんてん)で背負いながら小屋へ向かう。
だが、焦っている豆太に足で腰を蹴られてしまう。

豆太と共にモチモチの木の灯を見るが、山の神様の祭りと呼ばれるそれを自然現象として解説している。
医者的にはそこまで大したものではなかったようだ(と言っても患者がいるんだから見てるわけにもいかんのだが)。

その後は豆太の手伝いも借りてじさまの治療を行って翌朝に帰っていった。


【余談】



実は初版はモチモチの木の月の絵が異なる。

今現在の改訂版はモチモチの木の背景に描かれる月は二十日の月。
だが、実は初版はこれが三日月で表現されていた。

ところが、初版の三日月の絵に対して小学校教諭が「丑三つ時に三日月が出るのはおかしくない?」と指摘。
これで77年版から現在の二十日の月の絵に差し替えているという経緯がある。

ただし、平二郎本人はこの差し替えに怒りを覚えており、初版の原画を捨てようとしたが妻によって止められた。
やがて初版の原画は大きく時を経た2013年になって、滝平二郎の自宅兼アトリエに残されており、長男が発見するに至る。
捨てられていたと思うと貴重な資料が亡くなっていた…正に奥さんのファインプレーである。


なお、作中でも『実を木臼で突いた後に石臼で挽いて粉にした後に、捏ね上げて蒸かして食べる』と書かれたトチの実だが、
現実でも「とち餅」として、日本各地で郷土の菓子として親しまれてきた。
有名なのは(トチ)の名を冠する栃木や岐阜、山形などであろうか。
なお、トチの実はかなりアクが強いため、食べるためには茹でた実を一週間近く流水に晒すなどの手間がかかるのだが、
きっと、じさまは豆太のために手間暇かけてこさえてやったのであろう。



Wiki篭り、暇さえあれば、追記・修正しなきゃなんねえことは、きっとやるもんだ。
それを見て、管理人がびっくらするわけよ。は、は、は。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • 絵本
  • 児童文学
  • 名作
  • 切り絵
  • モチモチの木
  • トチノキ
  • 栃の木
  • 勇気
  • 臆病
  • 斎藤隆介
  • 滝平二郎
  • 教科書
  • 優しさ
  • 不朽の名作

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2024年04月07日 03:41

*1 絵本版のみの表現で、それ以外の媒体ではこの文章は消えている。差別的表現に触れると判断されたためだと言われている。