SCP-2040

登録日:2017/12/10 Sun 11:56:08
更新日:2024/02/01 Thu 12:47:54
所要時間:約 9 分で読めます





宇宙ニ物理法則ハ無用デアル。物理法則ハ生命ヲ縛リツケテイル。物理法則ハ宇宙ヲ破壊シテイル。
我々ハコノ問題ヲ解決シタイ。ソノタメニソチラノ助ケガ必要ダ。返信乞ウ。

SCP-2040とは、SCP財団本部が収容しているオブジェクトである。タイトルは「The Iron Messenger/鋼鉄のメッセンジャー」。
オブジェクトクラスはEuclid。
SCP-2000コンテスト出品作の一つ。

特別収容プロトコル

SCP-2040は改造した人間収容用セルに収容というか保管されている。
このセルは無線通信をシャットアウトするような仕様に改造されている。

SCP-2040は、最低でも一日一回の対話を必要としている。
ただしSCP-2040の言うことを受け入れる形で、という条件付きであるが。
もう一つ言ってしまえば、何かを話しかける際には「これは、プライマリ・メッセージへの返答ではない」という前置きをしてから、となっている。

仮に奴が収容違反を起こした場合、奴が落ち着くまで「我々はプライマリメッセージへの返答を作成中です。指定の待機場所へ戻ってください」と繰り返し話しかけることとなっている。

要するに「もう少し待ってくれ」を永遠に続ける、ってことだ。

説明

SCP-2040は人型機械の実体…要するにロボットである。
その設計は(外見からも見て取れるように)ものすごくシンプルであり、
内部の電子回路に至ってはかなり古めかしいものとなっている。

が、そこは人間の常識が通じないSCPオブジェクト。
そんな古めかしい内部回路からは想像の付かない高度なAIを備えている。
どれくらい高度かって、ロボットなのに人間と遜色ない高度な知性を有しているほどには高度。
これまでに一切の補給を受けたことがないにも関わらず、一切のエネルギー切れの兆候を見せない。どうやら半永久的な動力源で動いているようだ。
尚、エネルギー源は本人(機)曰く原子力だとのこと。
…ただしそれ以上の回答はない。

SCP-2040はイオン光線兵器、光ジャンプなどの機能も備えている…と自称しているが、
これらの機能は「必要なしに各種機能を使うのはプログラム違反である]」と言い張り、使う様子を見せたことがない。
また、SCP-2040は未知の言語を含めた各種の言語に堪能な模様。ただ、本人(機)は英語で会話することを気に入っているらしい。

SCP-2040は、基本的にはプライマリ・メッセージ、つまり冒頭に挙げたあのメッセージへの返答を求めてくる。…時折横柄な態度で。
但し、「回答を考えている」と返せばいつまでも待ってくれる。律儀なやつだ。
ただ、そこは機械ということで融通がきかない面もあるため、迂闊に「プライマリ・メッセージへの回答」とみなされるような答え方をしてはいけないように注意すべき。

SCP-2040はプライマリ・メッセージへの回答以外は基本的に聞かないが、地球へ来るまでの「旅行記」に関しては色々語ってくれる模様。
それこそ話がそれる程度には。
彼の「旅行記」の構成は基本的に一定しており、目的の惑星に到着したものの、こんな逆境に出会って~という流れになっている。
但しその中には未知の惑星や生命体の情報も入っている模様だが、彼の「故郷」に関する情報だけは一切含まれていない。

えっと…たぶん日本支部の職員の方々なら、何か思い当たるオブジェクトがあるはずだよね?
そう、こいつはいわば例のドリル戦車の本部版」なのだ。
但しこの世界でも基本機能はしっかりと稼働している、或いは彼の製作者も(SF世界の技術が現実化できない理由は)「この世界の物理法則が原因である」と認知している、などの違いはあるようだが。

補遺

そして、キノシタ研究員がSCP-2040に対しインタビューを行ったときの記録がこれである。

キノシタ: これはプライマリメッセージへの返答ではありません。この会話を行う間は、プライマリメッセージへの返答は行いません。いくつか質問をしたいと思います。

SCP-2040: 質問を述べよ。

キノシタ: プライマリメッセージについて、またそれを送った人物について説明してもらえますか?

SCP-2040: メッセンジャーが応答内容に影響を与えることを避けるため、メッセンジャーがプライマリメッセージおよびプライマリメッセージの送信者に関する機密情報に言及することはプロトコル上禁止されている。すべての質問は送信者に直接行うこと。

まずはキノシタ研究員、「あなたは誰にどうやって作られたのか」と質問。
しかしSCP-2040は「それは機密事項であり解説はできない」の一点張り。
ただ、彼自身はこの任務(おそらく財団世界の地球に来る任務)に就くにあたり、それ相応の改修を受けているようだ。

そして、彼の製作者などは、この世界を「制限ゾーン」と呼んでいることにも言及している…が、
彼の「世界」の人物からすれば、制限ゾーン…つまりこの世界で生命体が活動しているという事実そのものが驚きである、らしい。
どれくらい驚けるのかって、制限ゾーン、つまりこの世界は彼のやってきた世界と比べると非常に過酷な環境であり、生命など存在できないという認識であったくらいである。
もう少し突っ込んだことを言えば「物理法則的、というか物理法則そのものが原因で、この世界は生命体の活動できる環境ですらない」というのが彼らの世界の住民の見解のようだ。

で、その「制限ゾーンの外の世界の生命は一体どうなってるんだ?」と聞いたとこと、
SCP-2040は「それに言及するのはプロトコル違反」と言って答えようとしなかった。
…このロボ、飽くまで「メッセンジャー」でしかないようだ。

そしてインタビューを終えようとしたキノシタ研究員に、SCP-2040がこんなことを語りかけてくる。

SCP-2040: ヒトよ。言いたいことがある。

キノシタ: はい? なんですか?

SCP-2040: おまえたちの指導者に告げろ。制限ゾーンでは時間の経過が異なる。ゆえに、私は応答を待つことができる。だが、永久に待つことはできない。我々はおまえたちの助けを必要としているのだ。

「YAT安心!宇宙旅行」のコミックス版で描かれたように、次元が違えば時間の流れ方が違うというのもありえない話ではない。
だから彼は、この「制限ゾーン」たる世界においてはいつまでも"プライマリ・メッセージ"への返答を待つ事もできるのだろう。
だが、時間の流れが違うというのは、流れる速さが違うただそれだけなので、「期限」そのものは存在している。
そして、物理法則のお陰で地底戦車が行動不能になり、UFOがスペース或いはサイエンス「ファンタジー」の世界の宇宙船の域を出ず、
搭乗型の巨大ロボットが現実ではロマンだけの非合理的なマシンに過ぎなくなってしまうような世界は(彼らの世界から見た)生命体にとっても不都合だらけの過酷な環境なのも間違いはないのかもしれない。
つまり、彼の言いたいことも分からないではない。

が、ちょっとまってくれ。
幾らこの世界が物理法則に縛られている -それこそあの地底戦車が活動できなくなり、ただの「原子炉を積んだ棺桶」と化してしまう程度には- とはいえ、
我々はその"物理法則が原因で制約だらけとなった制限ゾーン"の中でも元気に(SCPオブジェクト、或いはK-クラスシナリオの恐怖と戦いながら)生きているのだ。
もっと言ってしまえば、我々はこの世界の「制約」や「仕様」に合わせて進化し、生きているのだ。更に突っ込めば、「この世界の仕様が前提で生きている生命」である。
そんなこの世界の物理法則を、「宇宙を壊し生命を縛り付ける無用なもの」とだけ言って書き換える、或いは消し去ったら、どうなる?

例えば我々は「重力」という力が存在するお陰で、地球の上に立っていられる。
重力が大気をつなぎとめてくれるお陰で、1気圧下で呼吸をして活動もできる。
重力がなくなれば、極端な話「生命そのものを維持できなくなる」のだ。

生命活動だけではない。
我々の今使っている「技術」も、この世界の物理法則が前提で成り立っている。
気流で揚力を生み出しているから飛行機は飛んでいる。
気化した燃料が爆発し、それが力となるから自動車も船も動いている。
摩擦力があるから「車輪」を使って自動車や列車を走らせられるのだし、
E=MC^2で質量が莫大なエネルギーに変えられるからこそ原子力発電ができるのだ。
半導体にPとNがあるからそれが「パーツ」「回路」となり、コンピュータなどを構成できる。
物理法則に縛られているどころか「物理法則を利用している」、或いは「この世界の物理法則でなければ成り立たない」技術や生命なのだ。

それを、外宇宙から見て「制約、害悪でしかない」の一言で、書き換えるなり破壊するなりしたら、この世界の物理法則を前提として「生きる」「活動する」をしている我々はどうなるのだ?
それはれっきとしたCK-クラスシナリオだし、そうなれば「今の物理法則が前提で"正常に"稼働している」我々は文明として、そして生命体として機能を喪失しても何もおかしくはない。

例として、件のドリル戦車には「熱線砲」という武装が搭載されていたが、この兵器は構造的には基底世界に於ける電子レンジのそれと同じものであることが判明している。
異世界では熱線を放出する「兵器」として機能していたものが、物理法則そのものが異なる財団世界に迷い込んだ結果、単なるマイクロ波発振器に成り下がり機能を喪失してしまったのだ。

が、これを逆に考えてみてくれ。仮に何らかの方法で、例えばあの戦車の世界の「物理法則」に書き換えられたとしたら…
家のキッチンにある電子レンジが、下手をすれば殺人光線を発する兵器に変わってしまう。弁当などを温めようとしたら、電子レンジから照射される「殺人光線」に頭を焼かれてしまうという、笑えそうで笑えない、あのトマトすら戦慄するような光景が世界各地で繰り広げられるのかもしれない。
ましてや家庭用の数倍の出力を持つ、業務用レンジが物理法則の書き換えにより「熱線発生器」に変わったとしたら…
仮に我々が生命体、そして文明として崩壊を免れたとしても、
もしかしたら物理法則が書き換えられる、或いは破壊される事により、ゴジラのような巨大怪獣も「存在できる」世界となり、そのような"新たな脅威"との果てしなき戦いが待っているのかもしれない。
或いはその「新たな力」が良からぬ者の手に渡ることにより、従来では考えられないような破滅的な戦禍が起こるのかもしれない。


「夢の未来技術」と、それを「実現可能な世界」は、本当に我々にとっての理想郷なのだろうか?


類似するオブジェクト


日本支部が収容しているオブジェクト。
異世界から財団世界に迷い込み、物理法則が変わったお陰で立ち往生し機能喪失してしまった「夢の21世紀の世界」の地底戦車。
なお、本来の運用者によってこの戦車に与えられていた番号は「2-040」である。


アニヲタWikiニ荒ラシハ無用デアル。立テ逃ゲハ記事ヲ縛リツケテイル。荒ラシハ記事ヲ破壊シテイル。我々ハコノ問題ヲ解決シタイ。ソノタメニソチラノ助ケガ必要ダ。追記・修正乞ウ。


CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-2040 - The Iron Messenger
by Nighkos
http://www.scp-wiki.net/scp-2040
http://ja.scp-wiki.net/scp-2040(翻訳)

SCP-1712-JP - "21世紀"の地底戦車
by Ikkeby-V
http://ja.scp-wiki.net/scp-1712-jp

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最終更新:2024年02月01日 12:47