エジソン卿(紫影のソナーニル)

登録日:2018/01/18 (木) 08:21:45
更新日:2024/03/16 Sat 10:59:37
所要時間:約 22 分で読めます







文明の発達こそが我が望み。

私が神であるなら、私が司るものこそまさしく、文明だ。






エジソン卿はライアーソフトのPCゲーム『紫影のソナーニル』の登場人物。

CV:越雪光

元ネタはアメリカの発明家エジソン。


概要


《発明王》の称号を持つ世界最高の頭脳のひとり。
その頭脳で合衆国どころか世界の文明に貢献したとさえ言われる偉人である。本名はトマス・アルヴァ=アヴァン・エジソン。ロードを付けて呼ばれることも。
機関(エンジン)(この世界での主要な動力機械)とその送力管に関する様々な発明で多大な功績を残し、現代における蒸気機関は彼が存在しなければ成立しなかったと言われるほど。
ニューヨークに建設した超高層ビル「エンパイアステートビルⅡ(トレヴァー・タワーⅡ)」を拠点に、その叡智でニューヨークを世界最大の重機関都市として栄えさせた。
弟子にアラン・エイクリィやE博士などがいる。
しかし1902年の12月25日にニューヨークで起きた原因不明の大災害《大消失》により、300万人のニューヨーク市民と共に行方不明となる。
その5年後となるゲーム開始時(1907年)には既に死亡した扱いであり、登場人物欄にはいるが登場するのは基本的に過去の記録でのみ。


経歴と謎


我々の知る史実とは違い、こちらのエジソンは合衆国の独立宣言起草委員のひとりで、合衆国憲法を形作ったアナポリス大会議の参加者。
蒸気機関時代に突入してからは機関からエネルギー供給を行う送力管「機関導力管」の原理と設計図を発表し、生活の機関化を促進した。
ニューヨークの研究所地下には大機関を設置、後に研究所は世界最高級の建造物となるエンパイアステートビルⅡへと姿を変え、そこに集められた優秀な頭脳たちと共に合衆国の発展を支えた。

世界的な有名人でありながら実は出身地などの経歴は合衆国政府が彼の頭脳を保護の名目で一切公開しておらず、素性は謎に包まれている。
上では事実のように書いたが、実際のところエジソンが合衆国建国の父のひとりという話は、
『1777年頃に描かれた起草委員たちの肖像画にある「ロード・エジソン」なる人物と、撮影された今のエジソンの姿が酷似している』
という疑惑が元になっており、現在は肖像画の行方も分からず真偽は定かではない。

もちろん年齢など考えると20世紀では100歳を超えることになるので、同じ名を継ぎ続ける一族であるとか、
体を機械に置き換えて生き永らえている、といった様々な噂がまことしやかに囁かれ、《大消失》で行方不明になるまでは半ば生きた都市伝説と化していた。
エジソン本人はこれらの噂について質問をされても不思議なことに否定も肯定もしなかったというが、エジソンと親交があった一部の人物には「合衆国建国の父のひとり」と断言されている。
廃墟になる前のニューヨークで発行されていたガイドによれば、偉人のこの手の長命の噂はこの世界ではわりと多いこともあって不思議と受け入れられていた節がある。
まぁ100歳とかスチパン世界ではまだ若い方と言えなくもない。


人物


普段から全く表情が変わらず、人間味の感じない機械のような印象を受ける男。
声は無機質で口調も淡々としているが、時に嘲笑するような含みを言葉に持たせることがある。
容姿から年若く(年齢不詳)見えるが、既に多くの財団群を有する大富豪で権力者。
《大消失》の直前には概要だけ見れば真偽を疑うような巨大プロジェクトを基礎理論を秘したまま第一次実験段階にまでこぎつける荒業を行えるほど、多方面で大きな力を持っていたことがうかがえる。


神の力? いいや、違う。違うとも。

ただの私の力だとも。それを、人間に分けてやろうというだけだ。


何よりも文明の発達を望んでおり、頭脳・功績と合わせてまさに偉人と呼ぶにふさわしい人物だが、上の台詞のように己を神と同列に語るかのような不遜な一面もある。
周囲からも半ば神格化され塔の中では絶対的な王、または神として君臨し、数々の偉業もあって余人が言えば与太話としか思えない内容も彼が言えば絶大な説得力を持っていた。
自分が周囲より上であると理解しているため、弟子を含めた他者を「人間」と見下す言葉も平然と口にする。
(例:弟子に天才と称され「それは君のことだろう」と謙虚に返した次には「人間にしては大したものだ」と続くなど)
異境のカダス北央帝国による身柄保護の申し入れを拒否したのも、この傲慢さからきているのかもしれない。

才能が存分に振るわれないことは損失だという考えを持っており、才能の発掘と引き抜きも行っている。
その成果か、エジソンの私有物であるトレヴァー・タワーⅡには国籍・所属を問わない様々な組織の研究施設が集められていた。
一介の機械工だった人物がエジソンの教えを受けた後に大成したり、作中でエジソンが名を挙げ才能を評価した者たちは過去作でも大きな役割を持った人物だったりと、才能を見出す眼も確か。
反面、電気という新エネルギー(この世界では蒸気機関が異常発展した世界)を扱った学問を広めようとした天才ニコラ・テスラに如何なる理由か圧力をかけたこともあったという。

当然敵も多く、一部の人物や組織からは敵対されており、エジソンが認めるほどの才を持つ先のニコラ・テスラ、ライバルであったと言われる進歩的投資家ミスター・シャイニーや《月光協会》がその例。
中でもテスラからの決別は数少ない悩みの種だった様子で、そのことを弟子に相談もしていた。

感情をまるで感じない人物ではあるが、意外にも科学に対する『熱意』やその根源にある『欲望』といった無形の概念を否定せず、むしろそれらはあらゆる文明の原動力になると尊重している。
弟子のアランが重大な実験に私情を挟んでいるのを見抜き、その理由が『大切な人との約束』だと分かった時には「素晴らしい回答だ。ならば、私はその手助けをしよう」と快く背中を押したことも。
エジソンは自分が周りと比べて感情が豊富ではないことを自覚しており、だからこそアランの望みに何か思うところがあったのかもしれない。








きみの願いは叶うだろう。アラン・エイクリィ。

ただし――そうとも、ただし、

愛なるものが夢や幻でなく、本当に、存在すればの話ではあるが。











以下、ゲーム本編およびシリーズ全体のネタバレ










チク・タク
チク・タク
チク・タク


チク・タク
チク・タク
チク・タク


チク・タク
チク・タク
チク・タク



【紫影のソナーニルでの活躍】



変わることなき厳然たる現実、喪失のもたらす絶望へと、還るがいい。

さあ――ここが、旅の終わりだ。



エジソンこそが1902年に物理現象を数式の演算によって歪める『現象数式(クラッキング・エフェクト)実験』を行い、未曾有の大災害《大消失》を引き起こした張本人。
作中ではずっと紫影の塔からリリィとエリシアの苦悶する様を見下ろし嘲笑していた。
噂レベルではあるが、地下においても「チクタクマン」という謎の存在として確認されており、多数のダーク・ギャングを統べる有力者である西の魔女すら支配下にあると伝えられている。
登場する際にはいつも顔が黒く塗りつぶして見えない演出がされており、その顔は歯車と鋼鉄でできているとも、
絶えず炎が噴き上がって光輝いているとも言われていたが、エリシアとリリィと対面した時には地上のエジソンの貌で現れた。

現象数式実験で実行されたのは7体の白き現象数式体《御使い》の顕現と300万のニューヨーク市民の虐殺、そして現象数式の異世界《地下世界》の創造。
これは全てエジソンが図ったことで、実験対象の選定を任されていたアランや他の職員も全く知らされていなかった。
(ロスアラモスといった一部組織は感知、または関与していた疑いがある)

地下世界とその住民たちは全て地上で《御使い》が殺した死者の記憶の断片を元に現象数式で形作った偽物であり、住民の大半が抱いている「5年前に地上から地下に都市ごと落ちた」という認識も間違い。
地上のエリシアが歩く廃墟としてのニューヨークが存在している時点で察せることだが、
ニューヨーク市民は既に死体も残らず殺されて(おそらく溶かされて)おり、地下世界は生還した人間が集まる場所などではなかった。

彼によって創られた地下世界の理は地獄と呼ぶに相応しい無慈悲なもの。ジャガーマンが言うには「辺獄(リンボ)」とのこと。
地下世界の住民は周期的に現れる《御使い》によって地上と全く同じように惨殺されるが、死んだ人間はその後になんと肉体が再生して生き返り、蘇る度に肉体の一部が無機質な機械に変質、生前を含めた記憶のどこかが失われる。
これは《ルフラン》と呼ばれる現象で、繰り返されると住民たちはかつての生活や家族・友人・恋人との繋がりすら徐々に忘れさり、機械化されていく肉体も症状によっては日常生活も困難となっていく。
そして全てを諦めると最後には物言わぬモールと呼ばれる存在と化してしまう。

強い未来への希望や執着によって症状を遅らせることはできるとされているが、
逃げ場がなく《御使い》による死が刻々と迫る恐怖、失っていく記憶への不安、肉体が人外に変わっていく拒絶感と絶望の中でそれらを抱ける人間などそういる筈もない。
この地獄が5年間続けられた物語開始時にはかなりの数の住民がモールに変わっており、一見正常に見える人間ですら生前親しかった人物を忘れているほどに記憶が擦り切れてしまっている。
《ルフラン》が行われた次の朝に、記憶が退行し昨日と全く同じやりとりを繰り返してくる住民の姿は中々にホラー。

この《ルフラン》は、エジソンが地下世界を「死のない世界を再現」として創る際、死なないだけではつまらないので「人々の最大の思い出(死の体験)を」と考えた結果である模様。
これは十中八九戯れで行ったと思われるが、彼は地下の者たちを『救済の浄化を受け入れない罪人』と定めている節もあるため、何らかの意図もあったようだ。

ゲームタイトルにあるソナーニルの元ネタが夢の国に存在する苦しみのない理想郷であるのは皮肉としか言いようがない。

エジソンが現象数式実験で求めた成果とは、人間が口々に信じる無形の概念“愛”の存在証明。
第一次実験でアランが願った『青空』という愛のかたちの証明(否定)のためにエジソンは都市を地獄に変え、地下世界を創造した後に共に地上から姿を消した。
実験からの5年間で既に証明は終了したと認識しており、不要になった(飽きた)地下世界にリリィを導き旅を観察。
地下世界の理たる《御使い》を破壊させ、リリィの手で地下世界を崩壊させるように仕組んだ。

そして塔の頂に到達したエリシアとリリィに全てが自分の戯れだったという真実を明かし、「ここにきても何もない」という厳然たる現実を突きつける。
そのままリリィを消滅させ、崩壊する地下世界と共に全ての幕を閉ざそうとしたが、かつての弟子であるアランの仕掛けた式によってリリィが塔に帰還。
地上のエリシアの言葉とAが残した黄金銃に込められた想いを感じたことで彼女を認め、そのまま撃たれることになった。

【悪神チクタクマン】


エジソンの正体は《時計人間》(チクタクマン)と呼ばれる宇宙的存在。
蒸気機関の爆発的発展がなかった《史実》の世界からやってきたとされる外なる神の一柱である。
クトゥルフ神話で言うところの這い寄る混沌ニャルラトテップに当たるが、この世界のニャルラトテップである《黒の王》とは別固体であり、その顕現体のひとつというわけでもない。
ややこしいが、ニャルラトテップが一つの宇宙に二柱同時に存在している状態で、両存在を知る者からは区別して認識されている。

前述したように、史実という別の世界から来たもうひとつの黒の王であるが、実はある理由から一線を画した別物。
元から黒の王と同じ存在・機能・御名を持っているが、加えて時間と空間を支配するヨグ=ソトースを喰らってあらゆる時空における連続体となっているだけでなく、
A.Z.T.T.(アザトース)の巨大な欠片である《虚空黄金瞳》をも手中にあるという規格外の総体を持つ。
単純に考えて『ニャルラトテップ+ヨグソトース』というクトゥルフ神話関連の知識がある者なら目を疑うような存在と化している。ニャルとヨグが両方そなわり最強に見える。

顕現体、または依代と思われるエジソンの姿も、肉体はある金属で構成された半人半機の異形であることが示唆されており、100年以上経っても姿が若々しいのはおそらくこのため。
あるいは不老の魔人が蔓延る《結社》と同じように《回路》技術によって肉体の老化を誤魔化しているのか。
これらの理由から、その身は黒の王と同質でありながら《月の王》《時計仕掛けの神》《時を這い寄るもの》《発狂の時空》《昏き意思》等々喰らった存在の要素も混ざった多くの名を持つに至った。
この世界にやってきた理由や、文明の発達を手助けした理由の一切が不明。
ジャガーマンからは「カダスに浮かぶ(アザトース)が喚びしもの」と称されたこともあるが、真相は定かではない。

同じ存在である黒の王と同じくあらゆることに無関心なのかと思いきやそんなことはなく、
何故か地球の生命……特に人類に残酷な興味を抱き、迷惑なことに人間やその文明に干渉し暗躍している。
《発明王》として人類に叡智を授けたのも事実だが、末路を見るにそれも破滅へ布石だったことは間違いないだろう。

いつ災厄を引き起こすか分からないからか、世界の裏側に属する教団や秘密結社等も当然警戒しており、一部は殺す機会をうかがっている。
地下世界でリリィの黄金銃に撃たれはしたが、これでもわずかに圧した程度とされ、その脅威は健在。それでも、彼の邪悪を知っている者には希望を抱かせた。


すべて。そう、すべて。

あらゆるものは意味を持たない。


彼を語る上で印象的なのは、自分が手に掛けた数多の命を遊具と当然のように言い放つ傲慢さと、口を開けば一方的に「意味はない」と繰り返す虚無的な価値観。
意味こそが存在し得るものの価値であり、意味なきものにそれはない。
人から見れば神に等しい永遠の存在である彼から見れば、人間が行うことは全ていずれ消える幻のようなものとしか映っておらず、そこにどのような物語があろうと結局は何の意味もないと断じている。
何度も淡々と言い放つその姿はまさに機械の如くで、観察対象である人類や自らが創造した世界であろうともその扱いは変わらず、『紫影』本編でリリィにそうしたように目的が済めばあっさりと放棄する。
いくら彼に意味を説こうとしても、少なくとも彼と同じか脅かせる程度の土俵に立てなければ馬耳東風といった態度を崩さず「それにも意味はない」と冷徹に全て否定する。
何というか、話す上ですごく面倒な性格をしてるなこいつ……。

無駄を好まない理路整然とした印象を受けるが、現状ではやることなすこと全て己の愉悦と気まぐれで起こしたという風に描かれている宇宙規模の暇人にして愉快犯。
人間のことを「滑稽なるものども」と称し、観察しておもしろい存在という程度には捉えているようだが、玩具として弄ぶ以外に執着する場面は殆どない。
人類とは視点が違いすぎるためか、またはすべてに意味はないと定義している故か、人の命を何とも思っておらず、
発明王と自分を崇める多くの部下を突如裏切り《大消失》で都市ごと皆殺しにしたことについても罪悪感は微塵も感じていない。
しかもエジソン当人は彼らを利用したという自覚すらないことからも、彼が如何に人を小さな存在として扱っているかが分かる。まあ元々人外であるため、人の倫理観が通じないのは当然ではあるが。

人類のことを生物として遥か格下に見る認識は、黒の王やそれに準じる他の宇宙的存在も同じ傾向にあるが、
小さきものに大人気ないという感じに無関心だったり、地球の支配者だからという自負から放任していたり、人類には有害と知らず一方的に慈しんでいたりと、
理由がなければ基本静観しているモノが殆どの中、この神さまは積極的に干渉して破滅に誘う、人類にとっては正真正銘の邪神である。
黒の王によれば「奴は、常に“隙”を用意する」らしく、これは彼の享楽を表す言葉なのか、それとも裏に意味があるのか。

そういう意味では『宇宙的存在に成す術もなく一方的に蹂躙される人類』というクトゥルフ神話お約束の構図に忠実な存在とも考えられる。
むしろ本家ニャルであるMさんはもっと見習うべきなのでは?と感じるほど黒幕していると評判。

とはいえ、あらゆることに意味がないと口で言っているわりにテスラに執着していたり、すぐに消せるはずのリリィに執拗に問いかけたりと、何かしらの答えを求めている可能性も否定はできない。
アランの願いを聞いた時には「たとえ何があっても、きみは、そう言ってみせるか?」と後に起こる惨劇を考えると、彼の愛を試すような言葉を投げかけている。
如何なる経緯かヨグを喰らい、本来は使者や騎士のように共に在る立場である筈のアザトースを手中にしている理由も含めて、真意が計れないのが現状である。


【シリーズでの暗躍】


《時計人間》という単語は『白光のヴァルーシア』から登場していたが、シリーズで直接登場したのは5作目の『紫影のソナーニル』のみ。
ソナーニルでも登場シーンは少なく、分かったのはエジソンがニューヨークを廃墟にし地下世界を創造した黒幕であることや、残酷で神の如き力を持つことのみ。マジかよ、エジソン最低だな。
プレイヤーからはチクタクマンという呼称から黒の王の顕現体の一つなのでは?とも考えられていた。
その後に『ソナーニル・ノベルブック』や各作品のSFFといった媒体で断片的に設定が明かされ、スチパン世界の根幹に関わるキャラクターであることが判明していった。

Mによればこっちに現れたのは三度ほどで、一度目が『氷河が大地覆う頃』、二度目が『灰燼が大空覆う頃』、三度目が『1822年』、と機関時代が始まる遥か昔からこの世界に干渉を続けている。
(ロード・エジソンとして活動していた時期とややズレているが、詳細は不明。)

バイロンやアステア、マールートといったシリーズの重要人物に機関の導く未来を幻視させ狂気に導いたとも言われており、それを考えるとシリーズの半数以上の事件が実質彼のせいで引き起こされたと言っても過言ではない。

終末世界の物語である『灰燼のカルシェール』では彼と思われる存在が人類滅亡の口火を切り、人類は阿鼻叫喚の地獄を味わいながら絶滅するまでその様を観察された。
その手段は非常に悪質であり、惑星の機能を枯れさせ物理法則を狂わせる、最大で千kmもある《柱》を何十本も地球に落とす、
生命を鏖殺する機械兵器を人間を素材にして生産する、眠っていた蛸顔の邪神やこれまでのシリーズのラスボス級の面々を滅びに便乗させるetc……とここまでせんでも思うくらいの残虐さを発揮した。
もっともこの物語はシリーズのバッドエンドが積み重なったIF世界なので、一概に彼だけの気まぐれとも言い切れないが。

我々に近い歴史を辿った未来が記された史実の書の中には、外典として世界の終末が幾つか補足されており、その内容は共通して《邪悪なる円柱(カルシェール)》が突き立って世界が終わることが記されている。
これを踏まえると本筋の世界でも同じようにいつの未来か少なくとも惑星規模の災害が起こされる可能性が高い。
というか既に円柱の内一本は落されているが、会社を辞めて暇を持て余していた本家ニャル様にモグられたことで被害は最小限に抑えられた。

『ソナーニルウェブノベル』と一部媒体では「チャールズ・バベッジの望んだ世界を歪めた」という意味の一文があり、
そうなると排煙によって世界の空と海が汚染されるというバベッジが犯してしまった罪や、史実との大きな分かれ道である蒸気技術の異常発達すら仕組まれたものだった可能性もある。
これを裏づけるものではないが、異境カダスの存在が表に出ていないIF世界の年表によれば、
バベッジが失踪~帰還(おそらくはカダスを行き来していた)する間にエジソンは突如新理論を発表し、カダスとの技術交流を実質行わないままで進歩的蒸気機関技術が開発されている。
つまり彼は先進的な蒸気技術を既に持っており、この世界ではバベッジが引き起こすカダス由来の技術革新が遅れることを見越して新理論を先んじて発表したのではないか、という考え方もできる。
この世界ではバベッジが失踪した年にエジソンが『最後の文明の始まり』を宣言しており、この時点でこの世界に見切りをつけたのかもしれない。

シリーズで重要な意味を持つ『現象数式』も当初は異形都市インガノックのアステア大公によって生み出されたと伝えられていたが、
実はインガノックの数年前にエジソンが先んじて現象数式実験を行っていた事実がある。
後にアステアに現象数式の技を与えたのは《結社》の盟主トート、または世界最高の頭脳であるエジソンであるとの説が世界の暗がりでは主流の見解になっている他、
《結社》内の通説では黒の王から原理を賜ったとも言われており、どの人物も設定的に時計人間と縁がある者ばかり。
公式設定とするかは判断に迷うところだがAKIRA氏の同人誌に寄稿された短編によれば、西暦1541年に錬金術の王と呼ばれるフォン・ホーエンハイムが、
半人半機の姿をした『時の王』を放逐する力として現象数式を使用し、これに時の王が興味を持つというエピソードがある。
時系列的に考えればこれが最も古く、この『時の男』なる人物が時計人間に当たるならば、ここで見た現象数式の技術を使って、後に世界初の現象数式実験を行ったとも考えられる。


【能力】


人類を導くだけの叡智を宿しているのは疑いようも無いが、驚くほど黒幕していただけあって彼自身の具体的な能力は不明。黒幕だからね、仕方ないね。
しかしニャルラトテップ+ヨグというシリーズで最も強大な存在の一角と思われ、人間から見れば正しく神と言えるほどの力を持つ。
彼の気分一つで人類の未来が決まると言っても大袈裟ではない。というか実際に滅亡させた世界もあった。

戦闘能力も一切不明だが、戦闘に特化しているニコラ・テスラを返り討ちにして時間牢獄に放り込むなど強大な力を持つのは確か。
少なくとも地下世界においては全知全能と言っても過言ではなく、紫の塔の頂上でリリィとエリシアの旅を常に認識し、空間を曲げたり相手の存在を問答無用で消すことすら可能だった。
地上と地下世界の両方に同時に存在することもでき、地下世界に引き篭もっていた時期に異界であるカダスにまでちょっかいを掛けていたこともある。

彼を象徴する存在と言えるのが《大機関時計(メガエンジンクロック)》と呼ばれる大小様々(数km~千km)な柱時計。
隕石代わり、目覚まし時計(物理)、ついでに戦闘等と色々な用途がある便利な時計で、かのド・マリニーの時計を思わせる要素があるという。
『ソナーニルRefrain』では地下世界のルフランの機構を担っていることが判明し、果てには時間の逆行すら行っている。
時計に意思がある様子は無いが、この時計単体でもニャルラトテップの眷属とされ、かつては《怪異》相手に不動のテンプレ戦闘を誇ったMをして「ただ喰らっても殺せるが面倒だ」と言わせるなど、単純に幻想としても強大。

史実では古代最大の図書館として有名な「アレクサンドリア図書館」をかつての規模以上で完全自動化させた上で稼働させているらしく、『紫影のソナーニル』のゲームパートにある図書館がこれなんだとか。
各勢力が観測した情報、乙女のプライベートな一幕も含めた多種多様な情報が随時記録されている諜報員泣かせな図書館で、バロン曰く「(アレクサンドリア機関図書館に)皆様は全て記録されている」とのこと。
具体的な記録方法は不明だが、地下世界ではジャガーマンが記録の配達人を務めており、後に機関図書館の遣いなる硬質な機械のような存在が彼の中から記録を抜き取ったと思しき描写がある。
知識の墓とも呼ばれ、ただの人間が辿り着けるような場所ではないため、記録された知識はただ死蔵されるのみ。


【関連人物】


宿敵。我々の史実では互いに嫌い合っていたとされているが、こちらではテスラから一方的に敵視されるだけで、エジソン自身はその才能を高く評価していた。
ただし電気学を広めようとしたことには何か考えがあったのか、圧力をかけたとされている。
エジソンは弟子の助言により一度テスラに歩み寄ろうとしたが、
「友情の証として今度やる実験一緒に頑張ろう。あ、ニューヨーク市民は犠牲になるけど良いよね(要約)」という言語道断な勧誘を本人の前で言い放ち、当然決裂している。
テスラはニャルラトテップと戦うのは2度目だったが、こっちは流石に容赦がなくそのまま時間牢獄へと幽閉されることに。


  • リリィ・ザ・ストレンジャー
地下世界に落ちたエリシアの感情の影。エジソンは役目を終えた地下世界最後の余興として彼女(とエリシア)の物語を観察した。
最果てに至ってそのまま終わるはずだったが、様々な要因が重なってエジソンに一矢報い、そのまま世界初の独立した現象数式体となって車掌Aと共に二人旅を満喫中。
エジソンはリリィと彼女の世界を認めはしたが、最後まで人そのものに理解を示すことはなく、その様子を見たリリィは「可哀想なひと」と同情している。
色々ネチネチ言われて流石のリリィもエジソンに良い感情は持っていないが、Aや地下世界の人たちに会えたのはある意味では彼のおかげであるため感謝もしている。
後にニコラ・テスラを時間牢獄から開放するのもリリィであるあたり因果である。

  • 機械姉妹(キネトロープ、バルブガール、フォノグラフ)
地下世界のエジソンが侍らせている3体の人型機械。時計人間が造りだした従者。一応それぞれ名前があるが姉妹まとめて呼ばれることが殆ど。
それぞれデザインと名前の元ネタは史実のエジソンの代表的な発明品である『映写機』『電球』『蓄音機』から。
他者の記憶にある「耐え切れない現実と過去」を強制的に映し・照らし・聴かせる力を持ち、相手のSAN値をごっそり削って精神を弄ぶ。
地下世界で有数の力を持つ魔女でさえ逃れる術はなく、最低でも死を体験しているこの世界の住民には最悪の相性といえるかもしれない。
キャラクター紹介によれば結構個性的な姉妹なのだが、彼女らの内面が語られることはなかった。
ぶっちゃけ影が薄い。リリィどころか主人からすら一度も名前を呼ばれてないくらい。本編でやったことはかなり悪質だが。
後に無意識領域にある酒場バールでリリィと再開している。てかお前ら酒飲めるのか?


別宇宙の同一存在。子供に優しいツンデレの方のニャル様。
他にも顕現体を持つが、黒の王と言えば主にMさんを指していることが殆ど。バロン「そういうこともあるでしょうが(以下略)」
エジソンと対面したことがあるかは不明だが、Mさんは《黄金の瞳知らぬ者》《堕ちたるもの》と称しており、良い印象はない模様。
同じ存在なだけあって価値観的には似た考えを持つが、モランやメアリとの出会いもあって以前よりも変質してきており、だいぶ丸くなった印象がある。


  • 《結社》
一応は敵対関係にある組織。エジソンの方はどう思っているかは不明だが、《結社》から見れば翠の石の蒐集を邪魔されると同時に姿を隠され大迷惑。
エジソンは表向きには死亡しているが、時計人間を信仰するヘンリー・フォードや教団《血塗られた舌》といった手駒が地上に残っており、《結社》としてもその影響力は未だに無視できないだろう。
しかし《結社》の総帥トートの三位一体の一つはアザトースの御子であるとか、カスパール体は時計人間と共に在るとか色々と言われており癒着が疑われている。


【余談】

邪神としての元ネタはニャルラトテップの化身の一つであるチクタクマン。
機械やAIという形で現れる化身で、TRPGにおいては現代~近未来が舞台だったり、SF設定のある作品・シナリオの場合に活躍できる。
ニャルラトテップは人類に何らかの叡智を与えた後に自滅を促し嘲笑うことで有名な邪神であり、発明や既存品の改良、それらの普及といった功績を残すエジソンという立場は、ニャルラトテップ的には性に合う立ち位置かもしれない。






すべて、すべて。

あらゆる項目は意味を持たない。

たとえば――全消しされれば何の意味も、ない。

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最終更新:2024年03月16日 10:59