Caravan(スーパーロボット大戦Dコミックアンソロジー 青き地球の勇士たち)

登録日:2018/02/22 Thu 00:11:11
更新日:2023/02/14 Tue 12:07:45
所要時間:約 9 分で読めます




Caravan(キャラバン)』とは、『スーパーロボット大戦D』の公式コミックアンソロジー
『スーパーロボット大戦Dコミックアンソロジー 青き地球の勇士たち』(2003年11月25日発売、光文社・火の玉ゲームコミックシリーズ)に掲載された短編漫画である。
作者は景山まどか。

スーパーロボット大戦シリーズの醍醐味と言えば、原作では和解あるいは同情の余地を残しながらも
悲劇的な最期を迎えてしまったキャラ等に「救済」のセカンドチャンスを用意するスパロボ補正が挙げられるが、
その中でも『スパロボD』は従来作に比べて、ネオ・ジオン総帥としてのシャアや、ギュネイなど、
原作では勿論の事、長らくスパロボにおいても「分かり合えない敵」でしかなかった相手が、
ある者は無条件で、またある者はフラグ次第で続々と自軍に加入し、プレイヤーが運用することのできる、
2003年当時としては非常に「特異」な作品であった。

俊英・景山まどかが執筆した本作は、そんな『スパロボD』だからこそ原作の運命を乗り越え、
自軍に加わる展開を迎える事となった二人のキャラクターを通して、
「スパロボ補正」のアフターに対する「一つの回答」を描いたと言っても良い内容となっている。
見ようによっては『機動戦士Vガンダム』のIFエンド、と受け取れるかもしれない。


登場人物(主だった面々)


機動戦士Vガンダム』における敵役……だが、『スパロボD』では条件次第で漂白され、自軍入りする。
曲がりなりにも地球で虐殺を繰り広げていたモトラッド艦隊の司令とその共犯者とも言える2人が、
ルイーナ打倒後の地球で一体どのような処遇を受けるのか気掛かりだったプレイヤーも少なくないだろうと思われるが、
本作ではそれに対する一つのアンサーが物語のキモとなる。

逆襲のシャア』敵役……だったが、『スパロボD』特有の特異性により、本作では晴れて自軍メンバーの一員に。景山まどか大歓喜
カテジナとクロノクルの処遇に対して、軍属の立場からどちらかと言えば「大人」としての見解を述べるが、
本人の言い分からしても、一度は同じ釜の飯を食った相手に対して思うところが無かった訳ではない様子。

  • 矢作省吾
メガゾーン23』主人公。彼もある意味スパロボ補正で原作のバッドエンドから断ち切られた身の上。
戦後のカテジナとクロノクルの処遇について淡々と述べるギュネイに対し、「大人の都合」と反感を示す。

『逆襲のシャア』敵役……だが、本作では最初から無条件で自軍運用できる組。
一触即発に陥りかけたブルー・スウェアの面々を仲裁する。

『スパロボD』男主人公並びに女主人公。ギュネイとクェスのマブダチ。
ギュネイの操縦するサザビーに相乗りしたりと相変わらず仲が良い。

『機動戦士Vガンダム』主人公とヒロイン。
彼らもまた、クロノクルやカテジナの指揮していた勢力のせいで、母親やオリファーといった人々を喪った身ではあったが、
「戦争」という常軌を逸した状況に身を置いた経験を経て、自分自身なりの言葉で2人の処遇についての素直な意見を出す。

『逆襲のシャア』敵役にしてラスボス……だったが、彼もまた運命を乗り越え、自軍部隊のまとめ役という大役を担った。
クロノクルとカテジナの罪に対しては毅然とした態度だったが、ある意味、彼もまた良い意味での「大人の対応」を取ることに。

『逆襲のシャア』主人公と艦長コンビ。
ブルー・スウェアの若年パイロット達に絆される形となったシャアを揶揄った。


登場メカ


カテジナの乗機。本作ではカテジナとクロノクルが相乗りし、自軍から逃亡する事に。

ウッソがシャクティ共々搭乗し、ゴトラタンの逃亡を幇助する形となる。

お馴染みシャアの愛機だが、本作では本人から直々の了承を得てギュネイが搭乗、ゴトラタンとV2ガンダムを追撃する事に。


ストーリー紹介

Everyone has their own epilogue.


プロトデビルン、ギシン星間帝国、そしてルイーナ……地球、ひいては宇宙を狙った数々の敵対勢力との戦いを経て、
遂にペルフェクティオを撃破して「破滅の王」の顕現を阻止したブルー・スウェア。
全てが終わり、ジョッシュ達ブルー・スウェアの面々は、各々の身の振り方を考えることとなる。

ふと、シャクティが、かつての敵でありながらも紆余曲折を経た末に、
宇宙の脅威を相手に共闘することとなった「おじ様」クロノクル・アシャーに対し、今後どうするのかを訪ねるが、
クロノクルは寂しそうな目をして「…私は敗軍の将だ。覚悟はできているよ」と返答する。
言葉の意味を理解しかねたシャクティに対し、傍らに居たカテジナ・ルースはその言葉の意味を分かりやすく要約した。
……つまるところ、戦争が終わったのであれば、「自分達2人は戦犯として裁かれるのではないか」と。

具体的に彼らがどうなるのか……疑問を抱くブルー・スウェアの面々に対し、職業軍人であるギュネイが答える。
モトラッド艦隊の所業を考えれば、司令であったクロノクルについては少なくとも銃殺は免れないだろうと
一同からは「せっかく生き残ったのに」「隼人やシャアに頼んで情緒酌量はできないだろうか」などという意見が上がるも、
ギュネイは「こいつらが人を街ごと踏み潰したのを忘れたのか?」「それこそどういう独裁だよ、裁判があるだけまだマシさ」と正論で返す。

当の本人らも居る前で、あまりにも冷淡に正論を唱えるギュネイの態度に、省吾はネオジオンにそんな権利があるのかと
激昂し掴みかかるも、ギュネイは腹を立てながらも、自分達は勝ってザンスカールは負けたんだと、一向に態度を崩さない。
「大人の都合」すぎる意見に憤りを隠せない省吾だったが、ギュネイも「俺だって別に知りたくなかったさ」と暗にその本心を漏らす。
一触即発に陥った一同を尻目に、カテジナらは、自分達のやった事については責任を取る、それが大人というものだと平然と答えるのだった。

そんな様子に不満げだったのは、他でもないクェス。
あまりにも煮え切らない態度の面々の間に割って入り、大人とか権利とか責任とか、皆そういう事を言いたい訳ではないだろうと諭す。
そしてウッソ……彼もまた、クロノクルの指揮した勢力によって、結果的に仲間や母親を奪われた立場であり、
クロノクル達が自身にとって仇であることが間違いないながらも、戦争が終わった以上、どういう理由があれ死ぬ事はないのではないかと、
主義主張はよく分からないなりに、彼自信の言葉を紡ぐ。

そこまで話がまとまったところで、デュオが提案する……つまるところ、「逃げるなら今の内」と。


ラー・カイラム艦内から突如として無断発進した、ゴトラタン……並びにV2ガンダム。
ゴトラタンにカテジナとクロノクルが搭乗している事は指揮官の側も把握しており、結果的にウッソが絆されてしまった事にアムロ達は頭を抱える羽目に。
見逃す訳にもいかず、マックスはモビルスーツの機動性相手にスーパーロボットでは追撃は難しいと判断、
D( ダイヤモンド )フォースに出撃命令を出す……が、既に先手を打たれており、
子供達から頼まれたガビルによって、ガムリンらはスピリチアを吸われて全員ダウンする羽目に陥っていた。

シャアは、クロノクルらの罪はそんな甘いモノではないと断言、ギュネイに出撃命令を出し、相手が相手なだけにサザビーへの搭乗も許可すると通達する……が、
モニターに移されたのは、目を潤ませて懇願するブルー・スウェアの若年パイロット、並びに同乗していた子供達。
シャアはモニターとにらめっこして一瞬逡巡した末、改めてギュネイに指示を出す。

シャア
「…ギュネイ。連れもどせなければ撃墜しろ。逃亡者の生死は問わない!逃亡機を撃墜しろ!」

……要約すれば、「ゴトラタンだけ撃墜して、中の人間については好きにしろ」という事であり、歓声に包まれる一同。
ギュネイはシャアのサザビーを借り受け、ゴトラタン並びにV2ガンダムの追撃に出撃する。

アムロ
「『甘いモノではない』?」

シャア
「…無罪放免だとか、そういうわけではないぞ。よく戦ってくれた子供たちへ、ごほうびだよ」

ミリア
「まあまあ、見て空がキレイよ。ホントに、いいコばかりでママうれしいわ」

出撃したサザビー(ちなみにミノフスキードライブ装備で飛行可能)……だったが、
そのコックピットにいたのはギュネイだけではなく、クェス、ジョッシュ、そしてスージィら子供達まで同乗していた。
ジョッシュ曰く、口下手なギュネイを心配してとのことだが、当のギュネイはサイコミュに盛大にノイズが入ってしまい、操縦に一苦労の様子。

ともあれ、一同は逃亡中の2機を発見……ウッソ達の側もそれに気付き、未だ事情が伝わってないこともあってか
追撃をできるだけ足止めすべく、ゴトラタンを先行させてギュネイのサザビーに果敢に挑もうとする。
カテジナは「…どこまで甘いの、憎んでくれてもいいのよ?」と呟くも、
ウッソはこれが自分の素直な気持ちだ、今2人が死んだらきっと泣くだろうと、自分のありのままの言葉を告げる。
クロノクルはウッソにただ一言「すまん…!」と返し、ゴトラタンを猛スピードで発進させる……

予想通りというべきか、ウッソの側が無線を閉じている事を確認したギュネイは、
機体を直接くっつけての接触回線……俗に言う「お肌の触れ合い回線」でコンタクトを取るべく、
クェスとの協力でファンネルを発射してV2ガンダムを翻弄、相手がバランスを崩したところに機体を接触させる。

……かくして、ウッソの側にシャアの「命令」を伝えることに成功、
ゴトラタンの元には、シビルのフィールドに包まれたバサラ、ミレーヌ、省吾、そしてクリスが向かった。

クロノクル
「カテジナ…我々は生きていてもいいらしい…」

カテジナ
「はい…」

手を差し伸べるクリスに迎えられるかのように、クロノクルとカテジナはゴトラタンを捨て、シビルのフィールドに乗り移った。
そして、主を失った……あるいは「送り出した」ゴトラタンは、ギュネイの駆るサザビーによって撃墜される。
かくして、2人は表向き、「ブルー・スウェアから脱走の末、撃墜された」という事になった……


とある平原、既に夜は更けていた。
クロノクルとカテジナは、自身らを送り届けたブルー・スウェアの面々に感謝の気持ちを述べつつ、一先ず近くの町へ向かうこととする。
白鳥早苗らが用意した弁当をウッソが手渡すと、カテジナはウッソの頬に口づけをする。

カテジナ
「ウッソ、どうか元気で。そしてできれば心静かに」

そう言ったカテジナの表情は、憑き物が落ちたかのように穏やかなものとなっていた。
シャクティもまた、クロノクルと抱擁をして別れを名残惜しむ。
夜の闇に姿を消した2人を、ウッソは涙を蓄えながらも、いつまでも見送っていた――――


Fin



追記・修正は、クロノクルとカテジナの先行きに想いを馳せながらお願いします。

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最終更新:2023年02月14日 12:07