吟遊詩人

登録日:2018/04/22 Sun 12:40:33
更新日:2023/12/14 Thu 20:38:53
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吟遊詩人とは、旅をしながら歌を歌って生活をする人のことである。「bard」の訳語。
「旅から旅の旅がらす」であるが、決して「bird」ではない。

実際の吟遊詩人

一言で言うなら、「歌手+音楽家+レポーター+新聞記者+小説家」と言ったところか。

そもそも、中世というのは今よりも圧倒的にヒトの動きが少なかった。産まれた土地を一生離れず過ごす人も少なくなかった時代である。「他の土地の情報」を知る数少ない手段が吟遊詩人の歌だったのだ。
吟遊詩人達は各地を旅してはできるだけ他の土地で受けそうな情報をかき集め、それを物語として面白おかしく仕立て上げ、人々の前で披露して日々の糧を得る。
ある意味「物の代わりに情報を商う商人」とも言え、「歌が上手ければなんとかなる」という簡単な仕事ではなかったりする。
演奏の場所は道端であったり夜の酒場の書き入れ時や感謝祭だったり、領主の晩餐会だったりと様々。当然ながら収入は腕次第、デカい仕事程実入りも大きい。ピンからキリまで、同じ「吟遊詩人」でもその生活にはかなりの格差があった。

なお、「女の吟遊詩人」には「春」を売る者も少なからずいたらしい……。

ちなみに、当時の吟遊詩人の社会的地位は極めて低かった。
これは根本的に昔の社会が「土地」を基準に成り立っているため、土地に縛られることを拒絶し社会構造からはぐれた吟遊詩人達は、税を納める必要がない代わりに社会的補償も受けられなかった。地域によっては 「吟遊詩人は民衆に暴力を振るわれても仕返しをしてはいけない」 という決まりまであったそうである。
ただし、社会的地位が低い一方で、社会からは必要とされる存在でもあったため、祭りなどの催し物があれば必ず呼ばれる存在でもある。

昔の日本では平安時代の琵琶法師、江戸時代の旅芸人などがその役割を担っていた。
但し琵琶法師は地鎮祭などで儀式を行うなど、宗教的な役割も併せ持つので卑しい身分とは一概に言えない。
旅芸人も身分的には下位だが、土地に縛られないマレビトとして信仰されたケースもあり、関所でも芸を披露して芸人であることを証明するだけで通過できるなどある種の特権を持つ面があったので、吟遊詩人とは相違点もある。


フィクションにおける吟遊詩人

基本的には

  • 1.非戦闘員で、ストーリーテラーや物語のキーパーソンを担う
  • 2.歌または音楽を武器に戦う(?)職業

として登場する。
プレイヤーが就ける職業としての吟遊詩人は、歌と肉体的能力の按分率によって、さらに「支援特化型」と「魔法戦士型」の2系統に分かれる。
使える武器は楽器(武器)は基本装備として押さえているが、それ以外は短剣・暗器に革・布製の防具etc…と前に出て戦うには貧弱なことが多い。
吟遊詩人のさらに上を往くクラスやジョブがある場合、歌って踊れて…みたいなパターンになることも。

以下、吟遊詩人が登場する作品をメジャー、マイナー問わず挙げていく。

フォーチュン・クエスト

「吟遊」ではないが、主人公のパステルが詩人兼マッパー。
但し音楽の才は微妙なので、主にバイトも兼ねて冒険の合間に実体験を元にした小説を執筆・投稿して詩人らしさを発揮している。

アサシンクリードシリーズ

歩くお邪魔キャラ・障害物。
町の入口を始めとした街中の大通りにおり、近くを通ると主人公に纏わり付きながら歌を披露し、歩くのを邪魔してくる。
無辜の一般市民なので接触してもいきなり戦闘にはならないが、攻撃すれば騒ぎになるし悪評も広がる…と、隠密行動を旨とする主人公にとっては相当に厄介な存在。

ウィザードリィシリーズ

6作目(BCF)で追加。
BCF以降のナンバリングやその流れをくむ外伝シリーズでは「盗賊+魔法使い+楽器演奏」の3種複合ハイブリッドの魔法戦士型、クロニクルではバフ効果を持つ楽器演奏による支援特化型。

ドラゴンクエストシリーズ

NPCとしては割と初期から頻繁に登場しているが、プレイヤーが就ける職業として吟遊詩人が登場しているのは7のみ。
戦闘力はそこそこだが、旅を快適にする呪文・特技と、戦闘補助の歌を覚える支援型。
後の作品では旅芸人という職業が登場している。

バーズテイルシリーズ

「吟遊詩人の物語」の名に偽りなく、吟遊詩人が非常に重要な役割を担う作品。
系統としては魔法戦士型。ギリギリ前衛に立てる程度の装備と独自の効果を持つ歌でパーティーを支える。
FC版ではテコ入れされて強化。演奏した歌に応じてBGMが変化し、さらに1では吟遊詩人がいないとラスボス戦で間違いなく詰む。

ファイアーエムブレムシリーズ

『聖戦の系譜』以降登場。
聖戦の系譜およびその続編の『トラキア776』では魔法使い系で、支援能力は一切ない。クラスチェンジして上級職のセイジになれば、回復や補助の杖が使えるようになる。
それ以降の大半の作品では支援型。「指定したユニットを再行動可能にする」能力を持っていることが多い。女性が多い踊り子の対になりがち。
詳細はこちらの記事を参照されたし。

ファイナルファンタジーシリーズ

FF3以降頻繁に登場。魔法戦士型と支援特化型両方登場。
FF3、4(TA含む)、14では魔法戦士型。3、4では微妙性能だったが、リメイク版3と4TAでは強化された。
14では狩人とのハイブリッドという異色の組み合わせで、火力と支援能力を併せ持っている。
FF5では支援特化型の強ジョブとして登場し、以降11やTなど多くの作品で支援特化型に設定されている。

もんむす・くえすと!ぱらどっくすRPG

上級職の一つとして登場。遊び人をマスターすることでジョブチェンジできる。
主にサポート向きの職種である事は他RPGと同じで、より強力なスキルを習得可能な上級職のスーパースター、
最上級職の神唱の歌姫に転職するためにも中継ぎとして必要不可欠な職業である。
ちなみにイベントで加入するサキュバスのサキは、アイドルなだけあって加入時点で吟遊詩人をマスター済み(デフォルト職はスーパースター)。

ロマンシング サ・ガシリーズ

作品を通して吟遊詩人が登場する。
初代では非戦闘員で、世界各地に出没しては主人公に助言を与えてくれる。その正体は…
2ではゲーム冒頭とエンディングで登場。「これまでの戦いを歌として語っていた」という演出はお見事。
3では戦闘員としてパーティーに参加。ただし、一度パーティーインすると、ある条件(加入している状態で四魔貴族を倒し、創作意欲を満たさせる)を満たさないと離脱を拒否するという一面も。

八神庵(THE KING OF FANTASY 八神庵の異世界無双 月を見るたび思い出せ!)

異世界の楽器でヘビメタを奏でたが紆余曲折あって楽器を借りパクすることになったため、便宜上の職業を吟遊詩人にされた。
その後勇者として認定されたため、ファンタジー物としては異色の吟遊詩人勇者となる。
なお、もちろん戦闘では炎や爪といった八神流古武術で戦う。楽器も元々の持ち主に叩き返した。

スーパーロボット大戦シリーズの「歌枠」

『超時空要塞マクロス』のヒット以降、「物語において『歌』がキーとなる」もしくは「歌を聞かせて味方を鼓舞したり、敵を弱体させたりする」作品がチラホラ出るようになった。
そうした作品がスパロボに参戦した場合、「歌で味方を支援する」という、まさしく吟遊詩人的なポジションを担うことが多い。

以下、スパロボに登場した作品のうち、有名どころを挙げる。

FIRE BOMBERSの皆さん(マクロス7

「俺の歌を聞けぇ!」で有名な熱気バサラとその愉快な仲間たち。
各歌にさまざまな効果が割り振られており、状況に合わせて歌い分けることで絶大な支援能力を発揮する。開幕での気力上げや要所でのSP回復に加え、果ては合体技扱いで大きな効果をもたらすことに。
なお、作品によっては「バジュラや次元獣などの一部の敵には歌でダメージを与えられる」「一部の敵の気力を下げられ、一定以下にするとなんらかの支配から解放でき、撃墜扱いで離脱させることができる」
という仕様が存在しており、そういった敵を相手取る際には比類なきアタッカーとして君臨する。

マイク・サウンダース13世(勇者王ガオガイガー

「歌を武器に戦う」勇者ロボ。
機械の活動を阻害する「ディスクM」、GSライドやジュエルジェネレーターを活性化させる「ディスクP」は、スパロボでも効果がアレンジされて再現されている。
さらにはマクロス7との絡みで「俺の歌を聞けぇ!だっぜっ!」なんてセリフが飛び出したことも。

フェイ・イェンHD

電脳戦機バーチャロンシリーズ初音ミクが奇跡のコラボ!
初音ミクしか知らない人には狂気のコラボに映ったが、歴戦のチャロナーからは「その程度の事なら初代OMGの時点で既にやってる」とさほど驚かれなかった。
さらに、これを目ざとく見つけた寺田Pがスパロボ参戦オファー!セガとクリプトンが参戦を承認し、『スパロボUX』にて参戦した。
特技の一つ「エモーショナル・ウェーブ IBS」ではDr.ワタリが書き下ろした「In the Blue Sky」の歌詞をミクさんの声で歌う。そしてこれが反則的な性能を誇っている…。

余談

TRPGにおいて、良くない仕切りをする進行役のことを吟遊詩人と呼ぶケースがある。
意味合いとしては他の参加者に提案の機会や選択の余地を与えずに、自分のシナリオを語りたいだけ語って自分だけ満足する振る舞いに対して皮肉であり蔑称である。




追記・修正は歌唱の腕を磨きつつお願いします。

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最終更新:2023年12月14日 20:38